- Amazon.co.jp ・本 (297ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488027568
作品紹介・あらすじ
高校生の心中事件。二人が死んだ場所の名をとって、それは恋累心中と 呼ばれた。週刊深層編集部の都留は、フリージャーナリストの太刀洗と 合流して取材を開始するが、徐々に事件の有り様に違和感を覚え始める……。太刀洗はなにを考えているのか? 滑稽な悲劇、あるいはグロテスクな妄執――己の身に痛みを引き受けながら、それらを直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。『王とサーカス』後の6編を収録する垂涎の作品集。
感想・レビュー・書評
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2021/07/07読了
#このミス作品70冊目
フリー記者の太刀洗万智が様々な
事件の真相を追う短編集。
闇深くドライ過ぎる主人公に
感情移入しにくいが
シリーズものらしく真相も知りたい。
長編が読みたいかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
フリージャーナリスト太刀洗万智が、取材を進める中、事件の小さな綻びが見えてくる。あとがきで、他の本の登場人物というのを知って、読む順もちょっと考えたのですが、この本から読んでみました。
大きな謎ではなく、ちょっとした点から、違和感がわかり、真実がわかる6編の短編集。。スッキリというよりは、ちょっと後味が悪い感じや、なんとなくスッキリ感がないのは、米澤さんの特徴でもあるし、主人公のキャラクターもあるのだろう。
印象に残ったのは、「名を刻む死」。一人暮らしの男性の死とその第一発見者の少年。少しずつ新事実がわかる中、少年の気持ちは。表題にもなっている男性の考え方と、少年に対する太刀洗の対応が印象に残った。身近で発声したことに対して、当事者たちだけでなく、周りの気持ちも含めて、影響があることが、気になる。
記者としての複雑な心情も描かれるし、表目上の対応よりも人間的な面があるのがわかるときともあるのだが、どうもこの主人公に乗れない点があった。長編を読むのは、厳しいかなと思いつつも、ちょっと読んでみたいと思ったりもしている。 -
「王とサーカス」に登場した太刀洗万智が新聞社を経てフリー記者として活躍する短編集。
長身長髪に切れ長の目、クールで鋭い洞察力を持つ太刀洗万智の“できる女感”が魅力的。
表題作「真実の10メートル手前」は、何気ない会話のフレーズから推理を組み立てて徐々に真相へ近づいていく様が良い。
「名を刻む死」と「綱渡りの成功例」は、罪悪感に苛まれる事件の当事者に寄り添った太刀洗万智の気遣いが胸を打つ。言葉選びも巧みだ。
謎めき度と意外性は「恋累心中」が秀逸。第三者目線から太刀洗万智の特長を描くのも良い。
「ナイフを失われた思い出の中に」は、“手記”が16才の少年が書ける文体では無いよなーと違和感を持ち、中々話に入り込めなかった。
太刀洗万智が登場する〈ベルーフ〉シリーズ最初の作品「さよなら妖精」も読んでみようっと。
週刊文春ミステリーベスト10 2位
このミステリーがすごい! 3位
本格ミステリ・ベスト10 7位
SRの会ミステリーベスト10 8位
ミステリが読みたい! 1位
〈ベルーフ〉シリーズ
1.さよなら妖精
2.王とサーカス
3.真実の10メートル手前 -
記者の太刀洗万智が探偵役の短編集。
怜悧なヒロイン登場です☆
だいぶ前に「さよなら妖精」で遭遇した出来事を胸に秘め、フリーのジャーナリストとなっている太刀洗万智。
あまり表情が動かないクールな雰囲気の女性ですが、真実を追究していく熱さを秘めているようです。
「真実の10メートル手前」
ベンチャー企業で有名になった兄妹だが、破綻して、妹は行方不明に。
妹の行方を追う万智は‥
「正義感」
駅のホームの転落事故。
偶然、居合わせた太刀洗万智がとっさにとった行動とは?
「恋累心中」
高校生の心中が土地の名前を結びついて美化されるが‥
取材に赴いた記者が、太刀洗と同行して、気づいた真実とは?
「名を刻む死」
老人の孤独死のいきさつとは。
発見者の高校生のことが気にかかる万智は‥
「ナイフを失われた思い出の中に」
事件を自白した少年の手記を読み解く万智。
真犯人を見つけることが出来るか‥?
「綱渡りの成功例」
災害で埋もれた村の生き残りの老夫婦の話に、ひっかかる点があり‥?
これはちょっと、気がつく必要も報道する意味もあまり感じられませんでした。
ほかの大問題に絡んでくるという構成なら、ともかく。
取材していく中で何かに引っかかるが、それを使えるかどうかわからないという問題が起きる、ことは理解できるので、そういう話が無意味とは言いませんが。
すべて題材が凝っていて、現代性もあり、このヒロインを形作ろうという工夫が感じられます。
かなりクールでやり手といった印象ですが、若者への共感はあるようですね。
すべて解決するわけではなく、事件現場に踏み込む感覚があります。
独特な苦味やひやりとするような鋭さを味わいつつ。 -
太刀洗万智(たちあらい まち) ― 新聞記者からフリ-ジャ-ナリストに転身した女性が、事件事故の裏に隠された真相を探る、直木賞作家<米澤穂信さん>の『王とサーカス』に繋がる5篇の短編小説集。小気味よい推理と人間の深層心理を突いて、読者を最後まで飽きさせない作品が揃っている。
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話によってそれぞれ視点人物は違うが、フリーライターの大刀洗万智を事件を追求する中心に据えた短編集。大刀洗万智は「王とサーカス」という長編で主人公になっていて、非常に面白い話だった。見かけのクールさの下に熱い思いを持ったなかなか面白い人物だ。しかし、この短編集では余りにも切れ者過ぎるんじゃないだろうか。それが少し息苦しさを感じさせる上に、事件が余りにも暗すぎる。暗澹たる思いになる。後味が悪いのだ。小説としてはとても上手いとは思うのだが、私には米澤穂信は、短編より長編が良いみたいだ。
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調べることが好きで、人よりも上手。それを生活の手段にしているだけ。正当とか間違っているとかを考えて仕事をしているわけではない。一見クールでシニカルな主人公。実は純真で、優しく、正直者、加えてとても恥ずかしがり屋だ。明晰な洞察には何度も舌を巻いたが、最も心惹かれたのは情の篤さ。弱い人をほっとけない、悪に対しては徹底した敵意でぶつかる。連作短編で主人公の魅力が少しずつ明らかになっていく。気づいたらすっかり心は主人公に持っていかれている。誰にでもお薦めできる名作だ。
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癖はあるが切れるジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。粒揃いの六編。
「王とサーカス」が予約待ちなのでその間にこの作品を読む事に。
推理小説と思っていたけどちょっと違った。最初の作品など、えっ、これで終わりと驚いてしまった。
太刀洗の事件に対する思いとどう報道すべきかの苦悩、メインはここだった。事件の謎が解けても推理を披露するのではなくただ報道する。警察ではなくジャーナリスト、そう思って読んでいくと面白くなる。ここで終わり?って思った、「真実の10メートル手前」のタイトルもグッと深くなる。
だけど、太刀洗万智の人物像が掴めないので最後まで物語にのめり込めなかった。特に「ナイフを失われた思い出の中に」の太刀洗がわからない。
ミステリとしては「恋累心中」が面白かった。ゾゾっとする。
報道としては「綱渡りの成功例」が考えさせられた。ふたりのした事が報道の仕方によっては非難を浴びる事になるのだろうか。
「王とサーカス」長編なので不安だけど、読んでみたら太刀洗万智の事がもっとわかるのだろうか。