ガストン・ルルーの恐怖夜話 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488530013

感想・レビュー・書評

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  • 『オペラ座の怪人』の著者による怪談集。8つの話はいずれも解釈の余地があり、恐怖のポイントに気づくとゾッとするような仕掛けになっている。作者の時代を反映した未開・未知の恐怖ではなく、人間関係や根源的な恐怖感に訴えかけてくる内容であるのはリアルで特徴的かもしれない。1話だけ怖さの方向性が異なる話が混ざっているのは、箸休め的なことなのだろうか。

  • 「ガストン・ルルー」の短編集『ガストン・ルルーの恐怖夜話』を読みました。

    『オペラ座の怪人』や『黄色い部屋の謎』の作者として有名な「ガストン・ルルー」ですが、、、
    実際に読むのは本作品が初めて。

    「東野圭吾」の『名探偵の呪縛』を読んだ影響で、古典的なミステリー作家の作品を読みたくなったんですよねぇ。

    本作品は1920年代に発表された、以下の八編から構成されています。
    ■金の斧
    ■胸像たちの晩餐
    ■ビロード首飾りの女
    ■ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス
    ■ノトランプ
    ■恐怖の館
    ■火の文字
    ■蝋人形館

    -----story-------------
    フランス・ミステリ界を代表する巨匠が贈る世にも怪奇な物語集。
    片腕の老船長が語る奇怪な話「銅像たちの晩餐」、コルシカの復讐譚に材をとった「ビロードの首飾りの女」、結婚相手が次々と怪死を遂げる娘の物語「ノトランプ」をはじめとして、いずれ劣らずなまなましく人間心理の闇を描いて、読む者を戦慄の世界へと誘う。
    恐怖ファン必読!
    -----------------------

    約80年前の作品なので、やや古臭い感じもしますが、それも雰囲気ですかね。

    恐怖夜話と銘打っているだけあり、怪奇サスペンス… という趣の作品の連続で、、、
    映像化すると観るに耐えないような残酷なシーンが多いですが、必ずオチ(人間の犯した罪)があるので、謎解きを楽しみながら(=残酷なシーンを想像しないようにしながら)読みました。



    ≪ちょっとネタバレ≫
    意外なオチに驚かされた『金の斧』。
    殺人犯だと思い込んでいた亭主の本当の職業を知ったときの衝撃が印象的ですね。
    当時の欧州(ドイツ?)にはこんな職業もあったんだよなぁ… と感心させられました。
    イチオシです。

    食人を題材にした『胸像たちの晩餐』は不気味さではイチバンですね。
    共食いは怖い。想像しただけでも怖ろしいですね。

    『恐怖の館』の宿屋や『火の文字』の邸には、絶対に泊まりたくない。
    特に『恐怖の館』は、読みながら背筋がゾクゾクっとしましたね。
    宿屋の主が殺人鬼なのか、それとも演出なのか… 怖いけど、二重三重構造の物語が楽しました。

  • 『オペラ座の怪人』や『黄色い部屋の謎』などの原作者であるフランスの第一級のストーリーテラー ガストン・ルルーの短編集。
    収められている8篇は、文字通り短編で短いものではあるが、1篇1篇読み応えがあり、長編にみられるガストン・ルルーのエキスを濃縮したような趣の作品群である。

    5篇は老船乗りたちが集まって茶席を囲み、各自が奇談怪談を語り合うという形式をとっているが、内容はそれぞれ独立しており、他3篇もふくめ、ルルーの次々と繰り出す幻想的な恐怖の罠の糸にがんじがらめに巻かれてしまう。

    ジュネーブの名門の家に生まれた女性は、エヴィアンである青年と知り合い結婚する。ふたりは愛し合っており、幸せな毎日を送っていたが、青年の父が亡くなり、家業を継ぐため実家のシュヴァルツヴァルトに戻った。
    夫は実家に帰ってから、不審な行動をとるようになり、妻はあるとき、小屋で血にまみれた衣服と斧を見つける。
    夫を殺人者だと思った妻は恐怖に身が凍り、地元で起きた殺人事件に夫が関与していると訴えたが、実は夫は死刑執行人だった。そうとはしらずに結婚し、夫が自殺したあとも過去を断切れることができず黒衣装を纏う女性の話を回想風に描いた『金の斧』

    片腕の船長が片腕を失った戦慄の理由とは?『胸像たちの晩餐』

    コルシカの復讐談から材をとった斬首されても死ななかったこの世のものとは思えないほど美しい女性は首にビロード飾りの首飾りをしていた。なぜなら、それをはずせば首が落ちてしまうから。『ビロードの首飾りの女』

    かわいく愛らしい娘オランプ。彼女が年頃になると結婚の申し込みが殺到した。オランプは申込者に順位をつけ一位の相手と結婚したが、夫はすぐに死に、二位の相手と結婚するがまた死別。次々と夫が死んでいく新妻のオランプ。『ノトランプ』(われらのオランプ)

    など、ルルーの巧みな戦慄のストーリー8篇。
    訳者は飯島宏さん。

  • ガストン・ルルーって「オペラ座の怪人」の作者なのか〜!w
    あ…無知ですみません(^◇^;)
    有名過ぎて、作者を気にした事がなかったよwww

    そして、この本は古典って感じで、怖くはなかった、かな……(^◇^;)))))

  • 正直云えば、歴史に残る名作とされている『黄色い部屋の謎』よりも数倍面白かった。短編であるが故、贅肉が削ぎ落とされ、主題が明確だったからだ(尤も、登場人物達の芝居がかった台詞回しは相変わらずだが…)。

    各短編共、それぞれ持ち味があり、個性豊かなのだが、好みで選ぶとすれば「金の斧」と「蝋人形館」の2編。
    前者は結末が結構意外で現代ならば絶対に書けないオチだから。
    後者は、身震いするような蝋人形の描写と、皮肉なラストを賞して。

  • フランスのこわいはなし


     洋風怪談集を開いてみて、「ほんとうにあった怖いはなし」をやり出すのは、何も日本人に限ったことではないような気がしてきました。
    『恐怖夜話』は、フレンチミステリの巨匠ガストン・ルルーが最も活躍していた時期に著した、オムニバス形式の恐怖話集です★ 陸にあがった海の男たちが、みなそれぞれに奇談怪談を持ち寄って、テーブルを囲むという趣向。

     船乗りたちはその手の経験にこと欠きません。船長が自分の片腕がなくなった理由と実体験を明かせば、「第四の許婚」だったという男は、非の打ちどころのない美しい娘ノトランプと結婚した者が、必ず謎の死を遂げたことを語り出します……。寄り合いの場はカフェテラス(……という響きがちょっと可愛い★ パブでビール一杯ひっかけながら、とかじゃないんですね)。ギロチンや蝋人形などの、ヨーロピアンテイストあふれる小道具も満載です!

     どこか芝居がかった文章に、当時売れっ子作家だったルルーのサービス精神と稚気を垣間見る思いです。代表作『黄色い部屋の謎』ではもっと大仰で芝居がかった書き方だったことや、『オペラ座の怪人』は芝居がかっているだけではなく、実際お芝居に関わる話だったことなども思い出されます。
     殺到する原稿依頼に骨身を削って応じ続け、自分が書いたものの向こうにはそれを受け取ってくれる人がいると確信していた、人気作家の姿を想いました。作品の趣向はかわっても、人を驚かせることで楽しませるという路線に変更はなかったのですね☆

     1920年代に出たこの短編集は、怖くてもどこかに隙が残っています。怖いは怖いんだけど、現代の、行くところまで行き着いた過激な怪奇物になれてしまった人は、ゆるいと感じるかもしれない。でも、「怖い」ことがただ直截的に表現されるよりも、「怖い」の周りにふわっと空気を含んだような、こういうレトロな怪談集のほうが、私は肌に合うようです★

  • 『オペラ座の怪人』『黄色い部屋の謎』で知られるガストン・ルルーの怪奇小説短篇集。『船乗りが自分の体験した恐怖体験を語る』という設定の連作と、単発の短篇が収録されている。
    『恐怖夜話』と銘打たれているが、基本的には最後に合理的な解決がなされるミステリ的構造を持っており、大衆小説で名を成しただけあってどれも上手い。
    恐怖というよりは老女の切ない運命を描いた『金の斧』、アメリカン・ホラーを思わせるサイコな『胸像たちの晩餐』、全8編中最もミステリ寄りな『ノトランプ』、ちょっとした悪戯心が皮肉な結末を迎える『蠟人形館』……と、1冊の短篇集でこれだけ印象に残る作品が多いのはちょっと記憶にない。

  • なかなかおどろおどろしい短編が8編。
    内、連作5編。

    短文で煽ってくる描写で、臨場感アップ。
    ブラックユーモアのオチもあり。

    単に怪奇と言うよりも、伏線の入ったミステリーなど、時代感と併せて楽しめた。

  • 陰惨で不気味な物語をミステリ仕立てにして、合理的解釈をつけてはいるものの(1話除く)、怪談よりは奇談、奇譚といったところか。残酷趣味というか時代がかってはいるが、英米の古典怪奇小説とは違うフレンチ風恐怖小説のテイスト。

    詳しくはこちらに。
    http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09

  • 「オペラ座の怪人」の作者として知られるガストン・ルルーの怪奇小説を集めた短編集。
    主に、過去に恐怖体験をした者が友人に向けてその体験を語る、という形で物語は構成されていて、確かに語り口は恐怖感をあおるものではあるけど、どこか聞き手に対する信頼を感じさせるものがあり、ただただ怖いだけではないところが面白かったです。
    単純に恐怖を描くだけでは、きっと退屈なものになってしまう。

    芸術的だと感じる作品でした。

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著者プロフィール

Gaston Leroux(1868-1927)
パリ生まれ。「最後の連載小説家」と称されるベル・エポック期の人気作家。大学卒業後弁護士となるが、まもなくジャーナリストに転身。1894年、《ル・マタン》紙に入社し司法記者となり、のちにこの日刊紙の名物記者となる。評判を呼んだ『黄色い部屋の謎』(1907年)を発表した年にル・マタン社を辞し、小説家として独り立ちする。〈ルールタビーユ〉〈シェリ=ビビ〉シリーズの他、『オペラ座の怪人』(1910年)、『バラオー』(1911年)等のヒット作がある。その作品の多くは、演劇、映画、ミュージカル、BDなど、多岐にわたって翻案されている。

「2022年 『シェリ=ビビの最初の冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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