- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488530013
感想・レビュー・書評
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『オペラ座の怪人』の著者による怪談集。8つの話はいずれも解釈の余地があり、恐怖のポイントに気づくとゾッとするような仕掛けになっている。作者の時代を反映した未開・未知の恐怖ではなく、人間関係や根源的な恐怖感に訴えかけてくる内容であるのはリアルで特徴的かもしれない。1話だけ怖さの方向性が異なる話が混ざっているのは、箸休め的なことなのだろうか。
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『オペラ座の怪人』や『黄色い部屋の謎』などの原作者であるフランスの第一級のストーリーテラー ガストン・ルルーの短編集。
収められている8篇は、文字通り短編で短いものではあるが、1篇1篇読み応えがあり、長編にみられるガストン・ルルーのエキスを濃縮したような趣の作品群である。
5篇は老船乗りたちが集まって茶席を囲み、各自が奇談怪談を語り合うという形式をとっているが、内容はそれぞれ独立しており、他3篇もふくめ、ルルーの次々と繰り出す幻想的な恐怖の罠の糸にがんじがらめに巻かれてしまう。
ジュネーブの名門の家に生まれた女性は、エヴィアンである青年と知り合い結婚する。ふたりは愛し合っており、幸せな毎日を送っていたが、青年の父が亡くなり、家業を継ぐため実家のシュヴァルツヴァルトに戻った。
夫は実家に帰ってから、不審な行動をとるようになり、妻はあるとき、小屋で血にまみれた衣服と斧を見つける。
夫を殺人者だと思った妻は恐怖に身が凍り、地元で起きた殺人事件に夫が関与していると訴えたが、実は夫は死刑執行人だった。そうとはしらずに結婚し、夫が自殺したあとも過去を断切れることができず黒衣装を纏う女性の話を回想風に描いた『金の斧』
片腕の船長が片腕を失った戦慄の理由とは?『胸像たちの晩餐』
コルシカの復讐談から材をとった斬首されても死ななかったこの世のものとは思えないほど美しい女性は首にビロード飾りの首飾りをしていた。なぜなら、それをはずせば首が落ちてしまうから。『ビロードの首飾りの女』
かわいく愛らしい娘オランプ。彼女が年頃になると結婚の申し込みが殺到した。オランプは申込者に順位をつけ一位の相手と結婚したが、夫はすぐに死に、二位の相手と結婚するがまた死別。次々と夫が死んでいく新妻のオランプ。『ノトランプ』(われらのオランプ)
など、ルルーの巧みな戦慄のストーリー8篇。
訳者は飯島宏さん。 -
ガストン・ルルーって「オペラ座の怪人」の作者なのか〜!w
あ…無知ですみません(^◇^;)
有名過ぎて、作者を気にした事がなかったよwww
そして、この本は古典って感じで、怖くはなかった、かな……(^◇^;))))) -
正直云えば、歴史に残る名作とされている『黄色い部屋の謎』よりも数倍面白かった。短編であるが故、贅肉が削ぎ落とされ、主題が明確だったからだ(尤も、登場人物達の芝居がかった台詞回しは相変わらずだが…)。
各短編共、それぞれ持ち味があり、個性豊かなのだが、好みで選ぶとすれば「金の斧」と「蝋人形館」の2編。
前者は結末が結構意外で現代ならば絶対に書けないオチだから。
後者は、身震いするような蝋人形の描写と、皮肉なラストを賞して。 -
『オペラ座の怪人』『黄色い部屋の謎』で知られるガストン・ルルーの怪奇小説短篇集。『船乗りが自分の体験した恐怖体験を語る』という設定の連作と、単発の短篇が収録されている。
『恐怖夜話』と銘打たれているが、基本的には最後に合理的な解決がなされるミステリ的構造を持っており、大衆小説で名を成しただけあってどれも上手い。
恐怖というよりは老女の切ない運命を描いた『金の斧』、アメリカン・ホラーを思わせるサイコな『胸像たちの晩餐』、全8編中最もミステリ寄りな『ノトランプ』、ちょっとした悪戯心が皮肉な結末を迎える『蠟人形館』……と、1冊の短篇集でこれだけ印象に残る作品が多いのはちょっと記憶にない。 -
なかなかおどろおどろしい短編が8編。
内、連作5編。
短文で煽ってくる描写で、臨場感アップ。
ブラックユーモアのオチもあり。
単に怪奇と言うよりも、伏線の入ったミステリーなど、時代感と併せて楽しめた。 -
陰惨で不気味な物語をミステリ仕立てにして、合理的解釈をつけてはいるものの(1話除く)、怪談よりは奇談、奇譚といったところか。残酷趣味というか時代がかってはいるが、英米の古典怪奇小説とは違うフレンチ風恐怖小説のテイスト。
詳しくはこちらに。
http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09 -
「オペラ座の怪人」の作者として知られるガストン・ルルーの怪奇小説を集めた短編集。
主に、過去に恐怖体験をした者が友人に向けてその体験を語る、という形で物語は構成されていて、確かに語り口は恐怖感をあおるものではあるけど、どこか聞き手に対する信頼を感じさせるものがあり、ただただ怖いだけではないところが面白かったです。
単純に恐怖を描くだけでは、きっと退屈なものになってしまう。
芸術的だと感じる作品でした。