気になる部分 (白水Uブックス 1087)

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560720875

感想・レビュー・書評

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  • 「数学心のない人というのは、言ってみれば1+1=2という数学における大前提を、心のどこかで信じていないような人のことである」
    「私には、ロールシャッハ・テストの絵がどれも「骨盤」に見えるのだが、異常だろうか」
    「私の結論を言えば、福袋は人間の理性を狂わせる」
    「電車における兵法」
    「国際きのこ会館」
    「私には"会社センス"がなかった。それも絶望的に」
    「昔から、どうでもいい「部分」ばかりが気になった」
    「枕の中に日本兵がいるのが少し嫌だった」
    「もっぱら聞いていたのは、自分の頭の中の音だった」
    「それ以来、あの素敵な脳の音は聞かれなくなった」
    「そしてその予感は、悲しいことに、おおむねは当たっていたのである」
    「私はつねに何かを心配している」
    「自分は誰だろう」

    ユニークな着眼点で世界への違和感を表明する、全四章から成るユーモラスなエッセイ集。

    Ⅰ.考えてしまう
    Ⅱ.ひとりあそび
    Ⅲ.軽い妄想癖
    Ⅳ.翻訳家の生活と意見

  • お布団の中でけらけら第三回戦。一番好きかもしれない。

  • 三冊のうちで、一番好きかも知れない。ビザールな(奇妙な)本に挙げられているものが私も特に好きだ。
    最近読もうとした(最後まで読んでないけど)藤枝静雄、昔から読んできた筒井康隆(特に虚人たち)それに吉田知子、村田喜代子、それに、それに、奥泉光が(嬉)怖さがドッペルゲンガーのそれだ、と書いてある。私が好きなのもそのあたりか、裸で書割の窓に向かってサックスを吹くカフカかぶれの男など。なんとも言えず奇妙で面白い。
    後、笙野 頼子(残念ながら未読、Wikiでは緊密な文体で鬱屈した観念・心理表現と澄明な幻想描写の融和を試行した、とある、読まねば)そして、川上弘美さんと酒を飲む夢。

    言葉に拘って想像があらぬほうに飛んでいく話は、相変わらず突き抜けている。


    * おかしな童謡編、「コガネムシンの子供に水あめをなめさせる」「山から小僧が下りてきた」短すぎるし何で小僧か。(私はこの小僧は冬将軍の孫で冬の前触れに偵察に来たのだと思っていた)

    * 「根掘り 葉掘り」の「葉掘り」ってなんだ。

    * 「おおよその見当がつけられない」
    (私もこの先300Mで右折、と言われても車で走っていてみなさんは距離が分かるの?と思っていたら 今度の車は3.2.1と色が変わっていく。1になれば鼻の先で曲がるのだ。それでもタイミングが合わないことがあり信号を通過する)

    * 「気になる部分」子供の頃社会見学でも、気になる部分にだけ目が行った。大人になって社長のほくろに気をとられた。

    * 「透明人間」子どもの頃は自分の存在が希薄だったそうだ。
    (最近読みたてなのに原典は忘れたが、透明人間は網膜も透明なので、盲目ではないかという疑問、なるほどと記憶)

    * 「サルマタケ」はどう訳すか。辞書にもない、まして逆に「サルマタケ」を英訳する人はどうするのだろうと煩悶する。

    ---つね日ごろ英語で書かれた文章と向き合って、言語のちがいと文化の違いと言う薄いヴェール越しに、なんとかそこに表現されているものを感覚としてとらえようと四苦八苦しているせいなのだろうか。仕事と関係なく日本語の本を読んでいても、いつの間にか”もし自分が日本語以外の言葉を母国語としている翻訳者で今読んでいるこの文章を訳すとしたら”という視点で読んでいる自分に気づくのである。(略)頭の中で邪念の小人たちが勝手に苦悩し出してうるさいことこの上ない。---

    * 数年前のアンケートあなたの夫になる男性にい一番望むものは、日本では「優しさ」アメリカの女性は「ユーモアのセンス」だったそうだ。


    そんなこんなで興味深い話題が満載、一部を引いてみたが、こんなものだけではなく、こどものころの思い出、経験した不思議な出来事、いまでも折にふれて感じているあれこれが、私にも思い当たることが多くて一気に読んでしまえた。

  • ⭐️108個

    とにかく岸本さんの感性が大好き
    ツボが似ているのかわかるわかると思いながら読んだ
    あまりに好きすぎて毎日バッグに入れて持ち歩いた

  • 再読。ニコルソン・ベイカーを読みたくさせられる(ちなみに読んだことはない)。彼女が翻訳する作家と同じように、彼女の世界も十分にヘンテコリンだ。夢日記や妄想を描いているようでもあり、現実的でもあり。彼女が本格的に「小説」に手を染めることを私は願って止まない。きっと内田百閒や、彼女がエッセイで触れている川上弘美のような作品が出来上がると思うのだ。彼女のような人物を雇っていた会社の度量に感服すると同時に、彼女は翻訳家になるべくしてなった一子相伝の才能の持ち主だったのだなと思わされた。『ねにもつタイプ』も読みたい

  • 翻訳家としての苦労が伺えるエッセイも楽しめました。岸本さんの一九九九年のベストは面白そうだな。

  • 2006-05-00

  • とても変わった人。変わりすぎていて羨ましい。
    言葉とはこれほど美しいのか、と驚く。

  • 奇妙な味。でも度々共感。

  • 著者の本業は、翻訳だそうです。
    現実に体験したことを書きながら、いつのまにか現実が彼女の思考の中や空想へ飛び込んでいて、読んでいてとても面白い!他の作品も読みたいと思いました。

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著者プロフィール

岸本 佐知子(きしもと・さちこ):上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家。主な訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、リディア・デイヴィス『話の終わり』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』、ショーン・タン『セミ』、アリ・スミス『五月 その他の短篇』。編訳書に『変愛小説集』、『楽しい夜』、『コドモノセカイ』など。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞)、『なんらかの事情』、『死ぬまでに行きたい海』など。

「2023年 『ひみつのしつもん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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