気になる部分 (白水Uブックス 1087)

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  • 白水社
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  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784560720875

感想・レビュー・書評

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  • 上にあげた『いちばんここに似合う人』を翻訳された岸本佐知子さんの初エッセイ集。

    岸本さんのエッセイが激烈に好きです。大好きだからこそ本当は誰にも教えずに、ひっそりと自分だけの楽しみにしていたい!でも、「スッゲー面白いんだよ!読んでくれよ!後悔させないってば!」とも言いたい…!

    私には数学心がない、ということについて書いてあるエッセイを一部抜粋。
    たとえば「ある人が、くだもの屋さんで20円のリンゴを7こ買おうとしたら、10円たりませんでした。その人はいくら持っていたでしょうか」というような問題があったとすると、私はその“ある人”のことがひどく気の毒になりはじめるのである。この人はもしかして貧乏なのだろうか。家にお金がなかったのだろうか。リンゴが7個買えないとわかった時に“ある人”が受けたであろう衝撃と悲しみは、いかばかりであろうか…。どうかすると、同情が淡い恋心に変わってしまうことさえあり、(“ある人”ったら、うふふ…)などと思いを馳せているうちに、「はい、鉛筆おいてー」という先生の声が響きわたってしまうのだった。

    こういった、シツコイくらいに妄想を重ねるところ、(おこがましいけど)自分に似てると思ってしまうんです。
    そして、高校時代の数学のテストにおける結びの一番では、数々の数式操作の果て0=0という回答を導き出し…

    この答えが間違っているなどと、誰に断言できるだろう。万物は無から出て無に還る。国破れて山河あり。色即是空。是空色即。溶けて流れりゃみな同じ。これは究極の真実ではないか。数学などというちっぽけな次元を超えた、宇宙の真理を私は見たのだ。

    活字が生み出すユーモアの力ってすごい!
    試し読みができるので、ぜひこちらもご覧ください。
    http://www.hakusuisha.co.jp/essay/2012/01/31/1022.html

  • 最高に面白かった!
    残念な人の残念な話ほど楽しめるものはない。

    ほむほむや安住紳一郎を連想する。

  • これだけ面白いと、翻訳作品をちゃんと読みたくなる。つか、翻訳のほうが本業やし!

  • HONZの東えりかさんがラジオで岸本さんのエッセイをベタ褒めされてたので、まずはこちらから。
    一人で読んでて良かった。何度もぷふぷふ吹き出してしまった。
    翻訳文学に苦手意識があり、なんじゃかんじゃゆうて余り読めておらず、そういえば翻訳家から入ってみようとしていたのだった。
    好きなエッセイスト→好きな翻訳家とシフトできようか。
    読もうニコルソン・ベイカー!ミルハウザー!などなど!

  • 「遠い町から来た話」Shaun Tan

    「とにかく散歩いたしましょう」小川洋子
    の2冊から、到達した。

    スゴイ!
    のっけから笑わせてくれる。
    質の高い、岸本ワールド。
    直前に読了した別作家の2作品がダメダメだったので、
    余計に際立つ!

    こういった人物を次々に輩出したサントリー恐るべしですね。

  • この人のことが大好きです。
    熱烈に、友達になりたいです。

  • 著者の岸本さんは翻訳家、プロフィールを見ると同世代。この人の「気になるもの」の数々は、私のそれとも結構一致していて、「忘れてたけど、そうそう!」といろんなことが思い出された。辞書を引いていると、なんとなくよく目が合うというか、互いに顔見知りといった単語ができてくる、というのもよくわかる。岸本さんは「リーダーズ英和辞典」だが、私の場合は集英社国語辞典の「フズリナ」がそれで、新古生代に繁栄した有孔虫化石動物なのだが、あんまりよく出会うので、辞書に載っている絵を手帳に描き写してしまったほどだ。眠りにつくための一人尻取りで「る」とか「ず」で始まる単語に詰まり、語彙の強化に努めたりするのも、可笑しいけど、わかる。学生時代、山でよく尻取りをした。喫茶店とか人名とかテーマを決めるのだが、「る」に当たった友達が、苦し紛れに「ルドルフ殿下!」と叫んだのが忘れられない。ダバダ~♪

  • 2012 12/18

  • 岸本さんの名前を知ったのは、同時期に複数方面からニコルソン・ベイカーの「中二階」がいかに面白いかを聞かされた時、訳者の名前が彼女であった。この本はまだ読んでいないけど。
    その後しばらくして、岸本さんのエッセイがいかに面白いかを綴った小川洋子さんの新聞コラムを目にして、ぜひ読んでみたいと思った。
    読み始めたらあまりにも笑って幸せになれるので、ちびちびと惜しみつつ読んでいたのだけれど、読み進むにつれて、笑いの向こうにある何かしら孤独のようなものを感じて、笑いながらもちょっとさびしくなってしまった。まあ、私が変なのかもしれない。

  • 確かこちらが先に出版されたエッセイ集。「ねにもつタイプ」よりはストレートなので、即笑い。久しぶりに本を読んで抱腹絶倒した。
    しかし、この本。公共の場や夜中に読んではいけないね。一人ニマニマしておかしな人と思われたり、夜中に笑い転げていたら近所迷惑だから。
    自分の反省をこめて、TOPを考えて読むべし。

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著者プロフィール

岸本 佐知子(きしもと・さちこ):上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家。主な訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、リディア・デイヴィス『話の終わり』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』、ショーン・タン『セミ』、アリ・スミス『五月 その他の短篇』。編訳書に『変愛小説集』、『楽しい夜』、『コドモノセカイ』など。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞)、『なんらかの事情』、『死ぬまでに行きたい海』など。

「2023年 『ひみつのしつもん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

岸本佐知子の作品

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