少女 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514834

感想・レビュー・書評

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  • 因果応報。
    この作品に横たわるテーマはそれだ。
    本作では故意であろうと無意識であろうと、相手の人生を少なからず歪ませた人間はシンプルな因果により苦しめられることになる。
    一人は作品の盗作をしたことで。
    また一人は痴漢をしたことで。
    他の登場人物達も因果応報に苛まれる。

    だからこそ、遺書を遺した少女は自らの死を選ばざるを得なかった。
    本作はその描写を最後に、物語を締め括っている。
    だが、この作品の恐ろしい所は、
    残された人々はこれからどうなるのだろうか。
    そう考えてしまうところにある。

    世界から退場した少女の視点からは、世界のその後は語られない。
    因果応報をテーマにした作品世界のその後に、読者は想像を巡らせる。巡らせてしまう。
    本作の登場人物達は因果により、どのような人生を送るのか。


    湊かなえ先生の作品はやはり心に残る素敵な作品でした。

  • 点と点でつながっていた人間関係が線になり、
    最終的に「因果応報」の円になる作品。

    そして、
    由紀と敦子
    紫織とセイラ
    タッチーと昇

    という3種類の親友同士が出てきますが、
    それぞれ美しい友情もあれば、自己陶酔に利用していると思われる場面もあったりと
    素晴らしいだけではない、人間のクセのある友情がいくつも見れて面白かった。

  • 2022.4.18.読了…なのだが、単語本が出た時に読んでいた…ことは覚えていたのに、設定全く間違って記憶していた。私の記憶では主人公由紀と敦子は、「死ぬ瞬間を見てみたい」と思って、一緒に行動していたのに実際は違った。

    ということで、由紀と敦子は小学校1年生で通い始めた剣道教師で一緒になり、中学、高校と同じ学校で過ごした友達。由紀は小学校5年生の時に手の甲に大怪我をし、握力が3になってしまい剣道ができなくなってしまう。敦子はそのまま剣道を続け中学3年生には強豪校に推薦してもらえるまでになるが、大会の大将戦で捻挫をし、そのまま引退せざるを得なくなる。

    同じ公立の女子高校に通いだした二人の前にある日、友人の自殺を目撃したという転校生紫織が現れる。紫織はその時の描写を半ば恍惚としながら二人に語る。なにか、死を見たことを自慢されたように由紀と敦子はそれぞれ感じ、やはりそれぞれの心の中で、死ぬ瞬間をてみたいという願望を持ってしまう。そして、死を見に、その年の夏休み由紀は病院へ、敦子は老人ホームへボランティアに赴く。二人は全く別行動のはずだったが、ある人物を通して二人は手繰り寄せられていく。

    湊かなえさんらしく、伏線がいろいろなところに張り巡らされており、そして、後で知ったのだが、いろいろな仕掛けがあり、最後、それらが、どのように回収されていくのかが本当に楽しみで、これは以前読んだ時同様、また、あっという間に読み終えた。

    湊かなえさんの本は最後の最後まで読まないとダメということを思い知らされるどんでん返しの連続でスリル満点!面白かった。その面白さに関して、現実離れしているとか人間関係がそう都合よくいくわけがないとか思ってしまうと一気に面白くなくなってしまう。

    そこで今回のもう一つの収穫は文庫版の解説である。

    解説のなかで「ごくまれに、こういう登場人物どうしの複雑なつながりをありえないと言って批判する人がいるのだけれど、それこそがフィクションの魅力なのだ、と小声で反論しておきたい」という文章に目からウロコの思いだった。そうなのだ、そう考えればいっぱい楽しめる作品があるのだ。ともすれば現実感がない…とか、こんなことありえない…とか言って作品を低評価してしまうがこのように考えれば、フィクションだからこそできるのだと考えれば、心から楽しめるのだ。

    「現実感」という呪縛から離れなければならない!その視点を持った途端、偶然読み終わった日ある荒唐無稽なドラマを見ても楽しめたし、これからも、いろいろな作品を読んだり見たりした後楽しめるだろう。貴重な解説を読んだと思う。

    小説の内容に☆四つ、そして解説にプラス☆一つ!で、☆五つにしたいと思った。

  • 五章まで読み終えたとき、「これって本当に湊かなえ?」と思いました。
    多少どろっとしたものはありつつ、友情の話、爽やかでめでたし。これで終わり?あと数ページで何があるの?とも思いました。

    ところが、さすが湊かなえ。イヤミスの女王。
    爽やかに終わるわけがなかった。
    伏線回収もバッチリ。ゾッとしました。

    最初から読み直したい。

  • もう、さすが港さんとしか言いようがないくらい本作も人間の闇が出てますね。
    ネタバレ無しに感想を書くのが非常に難しい、と思うぐらい全ての伏線がキレイに回収されます。
    予想できた伏線も何個かあるんですが、「リバース」同様、「へっへっへ、どうせこうなるんだろ、わかっちゃったよ」と読者に優越感を与えておいて更に上からぶっこんでくるスタイルはおそれいりました。
    よく出てくる「因果応報」ってのがひとつのテーマなんでしょうね、とだけ言っときます。

    作中のおっさんらへんの年齢なのですが、率直に思ったのが「やっぱり女って怖い」ということ。
    特に高校生ぐらいの女の子の、心変わりの早さ、自分にとってどうでもいいと思う相手への無慈悲さ、謎の被害妄想と視野の狭さ。
    学生の頃から嫌悪感があった、そういう女の子の闇側の特徴を的確に描いてます。

    つくづく男に生まれてよかったと思いますわ。
    冤罪は勘弁ですが。

  • 最後の1文まで読んでやっと話が繋がった感じ。
    伏線回収は面白かったけど、現実にはあまり起こりえない内容で個人的には感情移入しにくかったかも。

  • 「子どもなんてみんな、試験官で作ればいい。選ばれた人間の卵子と精子で、優秀な人間だけを作ればいい。」

    「自殺は敗北宣言だ。そんな恥ずかしいこと、絶対にするもんか。」

    「犯罪をおかした少年は、未来を守るために実名を公表されないのに、バカ親が犯罪をおかすと、たとえ未成年の子どもがいても実名が公表される。罪のない犯罪者の子どもを守る、という法律はないのだろうか。」

    紫織の遺書が好きです。強く心に響く言葉もあれば、子どもらしさを感じる言葉もあって、とても印象的でした。自分の青春時代を思い浮かべながら読むとおもしろいと思います。

  • 敦子と由紀が互いを理解し合い話が完結かと思いきや、衝撃のラストに本当にびっくりしました。
    正に作中に何度も出てきた『 因果』がテーマなのだと感じました。

  • テンポよく読めてかなり面白かったです。
    まさに最後は因果応報ですね。
    学校掲示板は一昔前の時代ですね。
    イヤミス?の部類らしいですが、読み終わって嫌な感じはしませんでした

  • とにかくいろいろ考えさせられる小説。伏線たっぷりで2回読んでやっと全貌が見えた感じ。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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