- Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
- / ISBN・EAN: 9784778315559
感想・レビュー・書評
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ーーー絶対に、死なれてはならない。ーーー
またとんでもない本が一冊この世に産声を上げた。
家族最後の日、と題された本書は、三人の家族との最後をそれぞれ記している。
母、義弟、そして夫の石田さんだ。
それぞれ何が「最後」なのかも形が全部違っている。
SNSをフォローしているので、あのときのツイートの裏面でこんなことを考えていたのか、こんなことが起きていたのか、と、彼女のその時の心情を思うと、とても、かなしくなったりした。
誰かに対して何かをおもうことについても、日々、日常生活で自分も誰かを無意識に傷つけたり傷つけられたりしているのだろう、といろんなことを考えさせられる。
表面上こうだったからって、人間の心情がそうとは限らない。そんなアタリマエのことをまっすぐに書いている。
石田さんのことで「どうしよう」と思っているのに、石田さんにメールしそうになったり、
お母さんに泣きつきたいとおもったり、TwitterやInstagramのフォロワー数だけが伸びていったり、よくないのにたくさんのいいねをもらったり、でもそこは書けなかったり、ほんとうにほんとうに、植本さんは文章で、写真で、生きる痕跡を残していく。
石田さんのネタで稼ごう!死ぬ前に一花咲かせよう!という発想など、笑けてしまう。
下の娘(えんちゃん)の「とにかくちからをあわせなきゃいけない」など。
石田さんの音楽仲間たちや、シッターをしてくれている仲間たちの話も、ただただありがたかったり、え、とおもったり。
生きているし、生きていく。
ヘビーだけど光がある。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「かなわない」で文章がすごく好きだと思った植本さんの新著。
旦那さんである石田さんが癌だということが分かり、この先どう頑張っても終わりようのない日々の始まりが少し書かれている。
前作との比較になるが、文章からはだいぶ落ち着いたんだな、ということがうかがえる。前は文章もすごく凶暴で乱暴で、怖かったのだ。感情をぶんぶん振り回し、子供のように泣く一子さん、怖かったけど好きだと思っていた。
読みながら「家族最後の日」の意味を考えた。それはあとがきで明かされているのだけれど、そうかあと納得できた。家族を二つ持つことの意味を、私はまだまだ理解出来ていなかった。
読んで心が不思議と落ち着いた。、 -
2017.2.21
「働けECD」、「かなわない」を通過してのこの「家族最後の日」。まあ凄い流れだなと思う。
一子さんは相変わらず自由で自分勝手な感じだが、
自由だ、と思った。石田さんの存在の上にある自由。いつもそうだったのだ。という文章にホッとした。 -
母親との確執、母親への強い嫌悪感、それらはたぶん、母親へ反抗することで自分を保ってきた部分もあるのではないかなぁ。憎しみの感情や反抗心は、実は母親から自立していないから…とも思えた。でも、甘えたい対象に拒否されたら、いくつになっても悲しいよなぁ。
末の娘が親指を立てながら、寂しくなったらグッドして!そうすれば私と繋がるから!とパパを励ます場面には泣いてしまった。ほんとに優しい子だな。お父さんが病気っていうだけで心細いだろうに。 -
植本一子のこともECDのことも知らないまま読み始めたのだけど、冒頭からすぐざわざわの嵐に飲み込まれてしまう。
母、夫の弟、夫の父、そして夫本人と、なぜ周りの人とこんなにも傷つけあいながら生きているんだ、この人は、と。
理解も共感もできないまま読んでいくと発覚する夫ECDの病気。思わず表紙を見直す。「最後の日」か。最期ではないな、よかった。が、全然よくなかった。なんだ、なぜすんなりと日々を過ごせないのだろうか。
もしも彼女が、丸い石が転がるようにすんなりと日々を過ごせる人ならば、彼女もECDも子どもたちも心穏やかに生きていけるだろうに。なぜだろう。わからないまま、わかりたくて読み続ける。けど最後まで読んでも私にはわからない。植本一子という女性のことも、余命宣告されたECDのことも。「あたりまえでしょ、他人のことなんてわかるわけないでしょ」とつっぱねられたまま、私も彼女たちは毎日を生きていくのだな。 -
『かなわない』よりも遥かに重い読後感。