- Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
- / ISBN・EAN: 9784798101521
感想・レビュー・書評
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職場で読む必要があったので、ずーっと積読状態だったものを
読んでみた。
感想としては、「よく思いついたなこんなこと」という
率直な著者への賛辞がまず出てきた。
著者はどうやってキャズム理論を編み出したのだろう。
ハイテク商品が世に出ては消えていき、生き残るものはごくわずか。
そんな状況でひとつひとつのプロダクト(アプリケーション、プラットフォーム)の
マーケティングがいかになされていたかを観察し、導き出したのだろうか。
それとも、著者が語るような
「自分がどういう商品については飛びつきやすくて、どういうものには
とんと近づかない」
というような感覚から演繹的に作ったのだろうか。
いずれにせよ、スゴいなーと思う。
さて。
本書のコアを図1枚で抜き出せと言われたら、
p.226にあるマトリックスを私は挙げたい。
「競争力を高めるポジショニング」と題された
横軸がスペシャリスト←→ジェネラリスト、
縦軸が(上)支持派←→(下)慎重派、となっていて、
左下かがテクノロジー・マニア(テクノロジー)、
左上に矢印が伸びてビジョナリー(製品)、
右下に向かって実利主義者(市場)、
上にあがって保守派(企業)となっている。
どうして、かの有名な正規分布(をキャズムでぶったぎった図)ではなくて
こちらなのか?
それは、このマトリックスのほうがキャズムの本質をとらえていると
思うからである。
このキャズム理論、あまりに有名になりすぎて、
どうもネットを観ていたり、あるいは会社で話を聞いたりすると、
ある商品のヒットの(あるいは失敗の)経過をすべて強引に
キャズムで説明しようとしている人が多いのが気にかかるのだ。
著者のムーアはたぶん、万能の理論としてキャズムを考えた
わけではない。
本書で一番最初に述べられているように(p.12)、
人々の行動様式に変化をもたらす「不連続のイノベーション」をおこす
製品やサービスのマーケティングを考えるときには、キャズムを越える
ことが必要だというわけで、それがハイテクな新技術によく見られる、
という話なのである。
だから、なんでもかんでも、新商品の普及をキャズムで説明しようと
するのはおかしいわけだ。
例の正規分布の図だと、「ポジショニングの転換」が見えなくなって
しまっているから、こういう誤用が乱発されているのだと思われる。
その点、マトリックスのほうだと売り手と買い手の姿がよく見えるので
誤解は生じにくいだろう。
というわけなので、多分キャズムで説明のつくマーケティング・プロセスは
かなり限定される。
しかし、その限定されるけれどぴったり来るようなシチュエーションにおいては、
本書の概念を理解しているか、あいまいか、まるで知らないか、では
ビジネスとしての成功確率はまるで変わってくることは請け合いだろう。
p.122 ドキュメンタム社の文書管理アプリケーションの話にて(成功例):
「実をいうと、彼らは本書『キャズム』の初版を読み、それを参考にして
市場開発プランを立てていたのだ。彼らは、自分たちがキャズムの中に
いることを自覚していた。そして、そのキャズムから抜け出すためには
まず、橋頭堡となるマーケットセグメントを決めなくてはならないと
いうことも知っていた。」
そう、こういうことだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
キャズム(chasm)とは、「深い裂け目、亀裂」の意味。ムーアは、少数の進歩派によって構成される初期市場と、一般的な利用者からなる主流市場との間にはキャズムがあると指摘。多くのハイテク製品が初期市場では成功するにもかかわらず、一般市場への浸透に失敗することを、キャズムに陥ると表現している。
この失敗は一言で言えば、顧客の購買心理を適切に把握していないためである。初期市場を構成するイノベーター、ビジョナリーと、初期多数派市場を占める実利主義者とは、その購買心理がまったく異なる。
例えば、初期市場に受け入れられるハイテク製品の場合、それが斬新で未来を変革するパワーを秘めているならば、イノベーターやビジョナリーは、少々使い勝手が悪くても利用する。一方、初期多数派の実利主義者は、生産性の向上やコスト削減など実利的な面を重視する。
こういった点を考慮できていない場合、ハイテク製品はキャズムを超えることができず、失敗に終わることになる。 -
キャズムという言葉を知った日からおよそ2年。やっとこさ手に取り読み終わった。(レビューはあとで書こ・・・)
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長くなりすぎるので割愛
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キャズムを越えるというのは、「自分がしたいことをする」から「自分がしなければならないことをする」に変わること。と感じた。 #book
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最初は面白かったのだが、途中から古さを感じてしまった。
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新規製品や新規事業の根底にある、マーケティングの定義と意味を学習できた。
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超有名な「キャズム理論」。
MBAの授業では必ず登場する普遍的な概念。
ハイテク製品を成功に導くマーケティングの基本として広く知られている。 -
まだキャズム理論自体を学んだことが無い方は、ライフサイクル・イノベーションから読まれることをお勧めする。
製品ライフサイクルの全体像という意味ではライフサイクル・イノベーションのほうが分かりやすいと思うので。
ただ、ハイテク製品がどのような売れ方をし、メインストリームに残るかどうかにたった一つの溝(キャズム)で説明をしたこの理論は、ハイテク製品マーケティングにひとつの新たな視点を与えたことは間違いがない。
原書は1991年にアメリカで書かれた。この時期も非常に重要なタイミングであったと思う。
インターネットの世界にビックバンをもたらしたのは、1995年のWindows95の発売であった。
Windows95を江戸幕府にたとえるならば、その前にOSの群雄割拠時代があった。IBMが主導を取ったO/S2やDOS/V・ Windows3.1・UNIX系OS各種またPC自体も新しいもので、独自規格がうようよし、パソコンを乗り換えたら全てのソフトウェアも乗り換えなくてはならないという今では考えられない時代である。
そうした戦国時代を勝ち超えたのがWindow95であった。
徳川家康がそうであったように、Windows95も他のプロダクト(武将)たちと比べて完璧に優れていたとはいえない点が多い。ともすれば、欠点のほうが目立つこともあったが、天下を取った。
何故、優れたプロダクト(武将)が破れ、そうでないプロダクトが天下を取ったのか?
運やタイミングだけでない何かが、実際には存在している。それに答えを出していたのが、このキャズム理論である。この理論がすごいのが、キャズムの越え方まで示している点である。
天下布武を実現するためには、天下の仕組みを知らなくてはならない。その仕組みの中の最大の難所(所謂、箱根)を示したキャズム理論はマーケティングにかかわる方以外にも是非学んで欲しいと思う。