人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則
- 英治出版 (2009年8月7日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784862760609
感想・レビュー・書評
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”エドガー・H・シャイン氏の本。原著タイトルは「HELPING How to Offer, Give, Receive Help」
<一言>
支援する/される関係の中に潜りこむ、優位/劣等の罠に陥らないようにするための一冊。
<読書メモ>
・人は面目を失いたくないものである。(中略)
われわれの自尊心の基盤となるのは、礼を言われることにより、要求していたものが受け入れられ、肯定されたと、絶えず認識することだ。(p.42)
★支援者になりそうな人に暗示しておきたいのは、社会経済と、われわれが暮らしている社会という劇場を意識することだ。(p.60)
※人はそれぞれの関係から何かを得ており、それが適正だと確信できるように。人生という日々のドラマの中で、人は自分の面目や他人の面目がつぶれないように役を演じている。(p.59)
★支援できる機会が得られるのは、大きな誘惑なのだ (p.67)
真の意味で助けにならないとわかっても、個人的な利益として認められる権力を行使したい誘惑に駆られるかもしれない。
★支援というものが、影響を与えることの一つの形だと考えるなら、自分が影響されてもかまわない場合しか、他人に影響を与えられないという原則はきわめて適切だろう。(p83)
・「あなたのすべてが自殺を願っているのですか。それとも、あなたのなかには自殺を望まない部分があるのでしょうか。ちょっとでいいでえすから、自殺を望んでいないあなたの部分と話させて下さい」(p.119)
・プロセス指向型の問いかけ (p.132)
クライアントと支援者との相互関係に視点を移す
「今の私たちの間にどんなことが起きていると思いますか」
「これまでのところ、私たちの会話の流れをどう思いますか」
「あなたの問題への対処について満足していますか」
「私たちはうまくいっているでしょうか」
「私の質問はあなたの助けになっていますか」
・フィードバックの4つの原則(p.195-197)
1.求められたものでない場合は有益と言えない
2.具体的で明確なものであるべき
3.共通の目標を分かち合うために実施する
4.評価的なものより、説明的なものの方が機能する
・こうしたすべてを成し遂げ、フィードバックを容易にする学習環境を作り出すため、控えめな(ハンブル)リーダーシップが求められる。(p205)
・重要なものは、新たにリーダーになった者は、引き受ける予定のグループならびに部門の規範や伝統、実践するうちに出てくるズレ(プラクティカル・ドリフト)という点を理解するまで、どんな変化も起こせないということだ。(p.212)
・組織の支援の際に、確実に守るべきこと(p.227)
1.組織のトップを関わらせること
2.支援関係を築く上でどの層も抜かしてはならない
●7つの原則とコツ
・原則1:与える側も受け入れる側も用意ができているとき、効果的な支援が生じる。
- コツ? 支援を申し出たり、与えたり、受け入れたりする前に、自分の感情と意図をよく調べること。
- コツ? 支援したいとか、支援されたいとかいう自分の欲求がよくわかるようになること。
- コツ? 支援しようという努力が快く受け入れられなくても、腹を立てないこと。
・原則2:支援関係が公平なものだと見なされたとき、効果的な支援が生まれる。
- コツ? 支援を求める人は気まずい思いをしているということを思い出そう。だからクライアントの本当の望みは何か
どうすれば最高の支援ができるかを必ず尋ねること。
- コツ? あなたがクライアントなら、何が役に立ち、何が役に立たないかというフィードバックを支援者に与える機会を探そう。
・原則3:支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。
- コツ? まずは調べてから、どんな支援の形が具体的に必要とされているかを推測すること。
- コツ? 支援する状況が続く中で、あなたの演じている役割がまだ役に立つものなのかどうか、定期的に調べること。
- コツ? あなたがクライアントなら、もはや助けられていないと感じたとき、恐れることなく支援者にフィードバックを与えよう。
・原則4:あなたの言動のすべてが、人間関係の将来を決定づける介入である。
- コツ? 支援者としての役割の中では、人間関係に与えそうな衝撃によって、自分の言動をすべて評価すること。
- コツ? あなたがクライアントなら、やはり自分のあらゆる行動がメッセージを伝えていることを自覚するべきだ。
- コツ? フィードバックを与えるときは、現実の姿の記述に留めるようにし、判断は最小限に抑えること。
- コツ? 不適切な励ましは最小限にすること。
- コツ? 不適切な修正は最小限にすること。
・原則5:効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる(p.244)
- コツ? 純粋な問いかけからつねに始めるべきである。
- コツ? 求められた支援がどれほどお馴染みのものに聞こえても、これまで一度も聞いたことがない、まったく新しい要求だとして考えよう。
・原則6:問題を抱えている当事者(オーナー)はクライアントである。
- コツ? 関係を築くまでは、クライアントの話の内容に関心を示しすぎないよう注意すること。
- コツ? あなたがすべて知っていると思う問題とどれほど似ているようでも、それは他人の問題であってあなたのものではないことを絶えず思い出そう。
#親行の【子供に問題を残す】に近い感覚!?
・原則7:すべての答えを得ることはできない。
- コツ? 支援の対象となる問題を分かち合うこと
★プロセス・コンサルテーション10の原則(p.286-287)
原則1:絶えず人の役に立とうと心がける。/Always try to be helpful.
原則2:今の自分が直面する現実からけっして遊離しないようにする。
/Always stay in touch with the current reality.
原則3:自分の無知を実感する。/Access your ignorance.
原則4:あなたがどんなことを行っても、それは介入、もしくはゆさぶりになる。
/Everything you do is intervention.
原則5:問題を自分の問題として当事者意識を持って受け止め、解決も自分なりの解決として編み出していくのは、あくまでクライアントだ。
/It is the client who owns the problem and solution.
原則6:流れに沿って進む。/Go with the flow.
原則7:タイミングがすごく大事。/Timing is crucial.
原則8:介入で対立が生じたときには、積極的に解決の機会を捉えよ。
/Be constructively opportunistic with confrontive intervention.
原則9:何もかもがデータだと心得よ。誤謬はいつも起こるし、誤謬は、学習の重要な源泉だ。
/Everything is data; Errors will always occure and are the prime source for learning.
原則10:どうしていいかわからなくなったら、問題を話し合おう。
/When in doubt, share the problem.” -
構成の問題か翻訳の問題か、
読みづらいと感じる場面が多かった。
プロセスコンサルタントという役割を提唱し、
状況の無知を取り除き、支援者とクライアントの格差を縮めることを重視する。
感覚として当たり前のように感じることを、
「支援学」として明文化することの難しさを感じた。
おそらく繰り返し読む必要がある種類の本に感じた。
1回だけでは、全体として腹に落ちるまでは至らず。 -
支援する=Helping
支援する方と支援される方の相互作用
7つの原則
支援を与える側も受ける側も用意ができている
支援関係が公平なものと見なされるとき
支援者が適切な支援の役割を果たすとき
言動の全てが人間関係の将来を決定づける介入
効果的な支援は純粋な問いかけと共に始まる=無知の知
問題を抱えている当事者は支援を受ける側
全ての答えを得ることはできない -
表題については、助けを求めるひと と 助けるひと との関係において、お互いの立ち位置と情報の格差を解消し、助けを求めるひとに主導権があるスタンスを崩さないよう、助けるひとは適切な役割を演じわけること かな。
助けるひとは、助けに応じるなかで自己顕示や権力、失望からくる攻撃性に呑まれがちなので、その気持ちの自制が必要。自分の意見や判断を提示しすぎず、少ない情報で答えを決めつけない。
関係を育み、情報を得ながら、タイミングをよくよく見計らって問いを使い分けるのが大事。
また、助けを求めるひとが主体的に行動できるよう、面目や感情を気遣う。マニピュレーターは罪悪感や恥辱感を動機に利用するけど、その逆かな。
助けを求めるひとの言いなりってわけでもなく、そのあたりはバランス。 -