人を助けるとはどういうことか――本当の「協力関係」をつくる7つの原則

  • 英治出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784862760609

感想・レビュー・書評

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  • 支援とは信頼のやり取り

    効果的な支援の原則
    ・支援する側もされる側も用意ができている
    ・支援関係が公平なものだとみなされている
    - 支援を必要とする側が「一段低い位置」にいることを忘れさせることが必要
    - まず「控えめな問いかけ」によってお互いの無知を取り除き、立場上の格差を縮める
    - どうすれば最高の支援ができるか必ず尋ねるべき
    - クライアントは、なにが役に立ち、なにが役に立たないかというフィードバックをする機会を探すべき
    ・支援者が以下三つから適切な支援の形を選択し、その役割を果たしている
    - 具体的知識やサービスを与える専門家
    - 診断し、処方箋を与える医師
    - クライアント参加によって信頼関係を築き、情報をもらうプロセスコンサルタント
    ・言動すべてが人間関係の将来を決定付ける介入だと認識する
    ・効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる
    ・問題のオーナーはクライアントだと認識する
    ・すべての答えを得ることはできない

  • # 書評☆4 人を助けるとはどういうことか | 支援関係の失敗の原因はワン・アップとワン・ダウンの不均衡の放置

    ## 概要
    何回かチームで作業することがあり,メンバーの協力をほとんど得ることができず,よい協力関係を築くためにはどうすればいいか悩んでいて読んだ本の1冊だ。

    経営学の組織行動論の分野の権威である著者による,協力関係を築くための原則について書かれている。

    サブタイトルに「本当の協力関係をつくる7つの原則」と書かれている。この7の原則は第9章にまとめられている。残りの章は,具体例を元にこれらの原則を導き出すためのプロセスがまとめられているように感じた。

    この本を読んで一番印象に残ったのは,支援関係で発生する「ワン・アップ」と「ワン・ダウン」の関係から平等な関係に戻し,信頼関係を築くことが重要だということだ。

    まず,支援の依頼者と支援者は,依頼者が下手であり支援者は上手の立場に自然となる。依頼者にとっては,支援者頼みになってしまい,問題を自分で考えないということにもなり,支援者は独りよがりな支援になりがちだ。この依頼者と支援者の立場は質問者と回答者という立場にもそのまま当てはまる。一般的には質問者の立場が低く,回答者の立場が高いからだ。

    信頼関係が築けなければ,素晴らしい意見を出しても受け入れられない。

    そこで,本書では質問を通して依頼者や支援者と必要な情報を交換して,信頼関係を築くことが,協力関係を成功させる上で重要な点とのことだ。

    例えば,道を尋ねられたとき,即座に回答せずに目的地はどこかという問いをこちらから一度投げかける。そうすることで,よりよい回答ができる。質問に対して質問で返すというので,マナー的にどうなのかという疑問は感じたが,本質的なところに迫るには必要なことなのだろうと感じた。

    質問の仕方としては大きく4種類存在する。

    1. 純粋な問いかけ
    2. 診断的な問いかけ
    3. 対決的な問いかけ
    4. プロセス指向型の問いかけ

    この中では特に1.. 純粋な問いかけが重要だ。相手の感情を刺激せず,何があったのか,どうしたのか,どうしたいのかなど淡々と質問する。これにより,不足していた必要な情報を得,また質問により依頼者の立場を高める。これにより信頼関係を構築する。様子を見ながら,残りの質問を行っていく。

    その保管も成果を上げるチームワークの作り方など,組織におけるリーダーや幹部にはぜひとも押さえてほしい項目が具体的に書かれていた。

    ## 参考
    > ### p. 048: 信頼の要素
    > 要するに、信頼には社会経済から由来する二つの要素がある。他人を信じるとは、次の二つを意味する。
    >
    > 1. その人間との関係の中で、自分がどんな価値を主張しても、理解され、受け入れてもらえること
    > 2. 相手が自分を利用したり、打ち明けた情報を自分の不利になるように用いたりしないと思うこと

    信頼とはどういうことかがわかった。

    > ### p. 069: ワン・アップとワン・ダウン
    > 要するに、そもそもどんな支援関係も対等な状態にはない。クライアントは一段低い位置 (ワン・アップ) にいるため、力が弱く、支援者は一段高い位置 (ワン・アップ) にいるため、強力である。支援のプロセスで物事がうまくいかなくなる原因の大半は、当初から存在するこの不均衡を認めず、対処しないせいだ。

    これは無意識の内に感じていたが,確かにそうだ。誰かに何かを依頼すると,なんとなくこちらが下手になり,あちらが上手になる。これを放置してしまうことが問題だということに気付かされた。


    ### p. 120: 問いかけの形を選択する
    > 問いかけとは、具体的な行動と同じような態度である。これがどう運ぶかは、実際の状況にかなり左右される。しかし、問いかけの方法が異なれば、結果も異なったものとなる。そこで、支援者を目指す人はどのような問いかけをするかをきちんと選択しなければならない。プロセス.コンサルタントの役割をする支援者でも、その役割をどう演じるかの選択肢がある。次の基本的な四種類に分けて問いかけを考えると、非常に有益だろう。
    >
    > 1. 純粋な問いかけ - クライアントの話だけに集中するもの
    > 2. 診断的な問いかけ - 感情や、原因分析、行動の代替案を引き出すもの
    > 3. 対決的な問いかけ - 現状について支援者自身の見解をもたらすもの
    > 4. プロセス指向型の問いかけ - クライアントに支援者との即座の相互関係に専念させるもの

    支援においては問いかけが極めて重要な役割を果たす。その問いかけの種類と内容,タイミングなどがかなり詳しく書いてあった。ひとまず純粋な問いかけを意識して,信頼関係が構築できてきたら残りの問いかけを行うようなイメージでやれば,よさそうだ。

    > ### p. 179: 成果をあげるチームワークの作り方
    > どんな支援の状況でも、始めのうち、リーダーはプロセス・コンサルタントとして機能しなければならない。そしてメンバーが次の問題について安心感が得られるような状況を作り出すべきである。
    >
    > 1. 私はどんな人間になればいいのか。このグループでの私の役割は何か。
    > 2. このグループで、私はどれくらいのコントロール、あるいは影響を及ぼすことになる か 。
    > 3. このグループで、私は自分の目標、あるいは要求を果たすことができるか。
    > 4. このグループで、人々はどれくらい親しくなるだろうか。

    よいチームワークを構築する上で重要な観点がまとまっていた。

    > ### p. 193: フィードバックという支援
    > まずフィードバックを有益なものとするため、支援関係に不可欠だとして本書で定義された、相互関係のいくつかの基本ルールに従わねばならない。
    > ___
    > そうしたフィードバックは次のような条件で、最良の状態で働くだろう。
    >
    > 強要されるのではなく、自ら求めたもので、具体的かつ明確であり、共通の目標に適合していて、評価的なものというよりは説明的なものである場合、ということだ。

    チームワークの構築の中でも重要なフィードバックの条件が参考になった。

    > ### p. 229: 支援関係における7つの原則とコツ
    > 1. 与える側も受け入れる側も用意ができているときに、効果的な支援が生じる。
    > 2. 支援関係が公平なものだとみなされたとき、効果的な支援が産まれる。
    > 3. 支援者が適切な支援の役割を果たしているとき、支援は効果的に行われる。
    > 4. あなたの言動の全てが、人間関係の将来を決定づける介入である。
    > 5. 効果的な支援は純粋な問いかけとともに始まる。
    > 6. 問題を抱えている当事者はクライアントである。
    > 7. すべての答えを得ることはできない。

    支援関係における原則とコツがまとまっていた。

    ## 結論
    支援関係を構築する上で重要な情報がまとまっており,よい本だった。理論だけではなく,具体的な事例も豊富に書かれており,実践的だった。

    特に,ワン・アップ,ワン・ダウンと質問に関する話がよかった。チームリーダーや幹部となる人には是非呼んでいただきたい。

    この手の本だと,ある程度権力のある人にしか実践できなくて意味がないものが多い。しかし,この本の内容は日常生活にも十分活用できる内容となっている。そこがよかった。今後の日々の生活でも謙虚な質問を軸に心がけようと思った。


    本書における問いかけ (控えめな問いかけ,謙虚に問いかける) は重要な項目であり,この部分だけを取り扱った「[問いかける技術](https://senooken.jp/blog/2019/02/26/)」もこの本の続編的位置づけで出版されている。この本や著者のシャイン先生に興味を持たれたら読むとよいかもしれない。

    パーマリンク: https://senooken.jp/blog/2019/02/25/

  • もう一度読む。

  • 支援についての考察。
    キャリアコンサルタントの勉強中もよく言われたけど、相手の話をよく聞いて、困っていること、助けを求めていることは何か、そもそも支援は必要なのか確かめることが大事なのだ。
    言っていることにすぐ反応するんじゃなくて、何でそう言ったのかな?って視点を持つこと。
    また、何かを達成したい、やってもらいたい時は強制するのではなく、(できていない・やらない)妨げになっているものは何かという視点も重要。
    さらには目の前のクライエントだけではなく、その先への影響についても考える必要がある。

  • 最初は翻訳のせいもあり、極めて読みにくく感じたが、先に読んだ知人の'第3章を過ぎたところから面白くなるよ'という言葉を信じて何とか読み進めたところ、確かにその通りだった。

    この本のポイントは、第3章「成功する支援関係」に書かれている簡単な原理、「支援を求める立場は、心理的に一段低い位置(ワンダウン)に置かれ、支援を求められる立場は、逆に高い位置(ワンアップ)に立つ」ということだと感じた。一見簡単なことのようだが、この心理的な'あや'の部分をあえて言葉にして意識することが、スムーズに支援を進めていく上で極めて重要だという。

    特に、支援を求める側はワンダウンの状態に置かれやすく、いったんそうなってしまうと、心理的な抵抗が生じて素直に支援を受け入れられなくなる。支援する側はこれを避けるべく、「控えめな問いかけ」(第5章のタイトル)からスタートして、相手がワンダウンの位置に落ちないように注意を払うことが大切だ。第7章「チームワークの本質」には、この原理が最もはっきりと表れていると感じた。

    著者は、成果を上げるチームの本質を、'各メンバーが自分の役割を適切に果たすことによって、ほかのメンバーを助けている'、'メンバーたちは互いに、またチーム全体として支援し合う。誰もがクライアントであり、誰もが支援者である'と述べている。これは即ち、チームのメンバー同士が互いに支援し合う=相互に依存し合う関係を築くことにより、ワンアップとワンダウンが相殺されて、心理的に壁のないバランスが取れた状態になるということではないだろうか。チームリーダーの仕事は、このような'相互依存するチームワークのための環境を作り出すこと'である(第8章)。

    かなり皮相的な部分にこだわりすぎた気がしないでもないが、この「ワンアップとワンダウンの心理的なバランス」というポイントを意識しながら読むことにより、全体の流れを掴むことができたように思う。仕事や生活の上で、支援したりされたりする機会はいくらでもある。学んだ内容を意識して実行していこうと思う。

  • 「支援をする・される」という所に焦点を当てている本。訳本でもあり読み進めるのが少し大変ですが、支援を意識することがある人は読んでおいたほうが良いかも。
    私たちの職業は診断・治療をするという立場で仕事として支援をしているけども、日常に当てはめた場合はまず「プロセス・コンサルタント」という立場で純粋な質問をし続け、一段下になったクライアントを同じ立場に戻してあげることが大事なのですね(仕事の上でもそうかも)。そして、親切な押し売りはありがちだけど、効果を生まないということ。

  • 図書館
    挫折

  • 実は、支援を求められる立場であるだけでワン・アップ(一段高い位置)で強力であり、クライアントはワン・ダウンで無力あるということ。クライアントの立場の低さをさらに助長しないように、支援者の側が注意深くふるまうことを意識すべきこと。

    具体的で親しみやすさを心がけたこの本の作りこそがまさに、我々読者への支援であり、支援というもののあり方を示している。

    [more]<blockquote>P049 他人を信じるとは、次の二つを意味する。
    1.その人間との関係の中で、自分がどんな価値を主張しても、理解され、受け入れてもらえること
    2.相手が自分を利用したり、打ち明けた情報を自分の不利になるように用いたりしないと思うこと

    P060 いつ、どのように支援を与えるか、他人からの支援をいつ、どのように受けるかを知っていると、人間関係はさらに生産的で喜ばしいものとなるだろう。つまり支援とは、あらゆる社会的行動の根底に存在する交換という日常的なプロセスであると同時に、ときには通常の流れを邪魔して、とりわけ気配りをもって扱わねばならない、特別なプロセスでもあるのだ。

    P066 「治療する(Treat)」という言葉には、不平等という意味があるのだ。

    P078 支援者はクライアントが本当の問題を打ち明けたと思いこむことが多い。そして、クライアントには提供された解決策をやり通すだけのスキルも能力もあると思いこんでしまう。

    P081 状況を合理的に評価することと、クライアントが何を言おうと支えになることとの間には、微妙な差がある。本能的に力を貸せば、罠に陥る羽目になりかねない。

    P086 私が何度となく経験したこのような特別な内容の問題には、依存または反依存への自身の反応が含まれている。私は反依存型のクライアントのほうがうまく関わることができる。依存心の強いクライアントの話を聞いたり、答えてやったりすることは難しい。【中略】支援者は自分の感情の性質を自覚するべきだし、支援者とクライアントとの関係の中には成り立たないものもあることを覚悟していなければならない。【中略】このようなジレンマから抜け出す一つの方法は、依存心の強いクライアントにこういうことだ。「あなたを助けられる自信はありません。あなたはもっと積極的に、自分で解決策を見つけるべきだと思うからです」

    P087 どんな支援が行われる状況でも、始めのうちは人間関係のバランスが悪いため、クライアントも支援者も、不均衡から生じる罠に陥りやすい。

    P116 クライアントと支援者の社会的地位を最もうまく釣り合わせるコミュニケーションのプロセスは、何か価値あるものを支援者がクライアントに与えることだ。はじめのうち、一段低い位置にいるのはクライアントのほうである。【中略】支援を与え、寛大な態度で、自信を強めさせるようにこのダイナミクスに取り組むのは支援者の役目である。最初の介入は、私が『控え目な問いかけ』と呼ぶものでなければならない。

    P193 支援者はクライアントが目指している目標が何かを、はっきりと知らねばならない。そのため、フィードバックを申し出る前に、控えめな質問をすべきである。

    P195 一般的にフィードバックは、求められたものでない場合は有益と言えない。【中略】同僚や上司、友人や配偶者が一方的に助言やフィードバックを与えようと決めてしまうと、その意図を誤解される可能性があるだけでなく、相手は感情を害したり、侮辱されたと感じたりするだろう。【中略】業績評価システムの大半は、自発性や野心、コミュニケーション・スキル、社交術、分析技術といった、抽象的な内容を扱っている。【中略】有益なフィードバックにするつもりなら、行動を再検討する中で行わねばならない。

    P212 重要なのは、新たにリーダーになった者は、引き受ける予定のグループならびに部門の規範や伝統、プラクティカルドリフト(実践するうちに出てくるズレ)という点を理解するまで、どんな変化も起こせないということだ。

    P228 リーダーシップの重大な側面は、支援を受け入れる能力と、組織の他の人間に支援を与える能力である。なぜなら、組織とはサブカルチャーの集まりであり、行動の変革がなされるべきグループの文化を理解するまで何一つ変わらないということを、常にリーダーは受け入れなければならないからだ。

    P230 支援とはありふれているが、複雑なプロセスだ。それは態度であり、行動であり、スキルであり、社会生活に不可欠な要素でもある。</blockquote>

  • エドガー本第2弾。まだ手が出ないで積読状態。

  • 相手が必要としていないことを与えても無駄。
    相手の話をちゃんと聞かずにすぐに診断してはならない、まずは相手の話を聞き出し、相手の望む形で支援する。

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著者プロフィール

エドガー・ヘンリー・シャイン Edgar Henry Schein
アメリカの心理学者。 MITスローン経営学大学院名誉教授。陸軍の研究所で洗脳研究を行った後マサチューセッツ工科大学(MIT)に移り、組織開発、キャリア開発、組織文化の分野の発展に貢献した。著名な著書に『組織文化とリーダーシップ』『プロセス・コンサルテーション―援助関係を築くこと』『キャリア・マネジメント』(すべて白桃書房)などがある。

「2022年 『エドガー・H・シャイン「マイ・ラーニング・ジャーニー ズ」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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