職業としての小説家 (Switch library)
- スイッチパブリッシング (2015年9月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (313ページ)
- / ISBN・EAN: 9784884184438
感想・レビュー・書評
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小説に対する姿勢とか考えは、基本的には今まで繰り返し述べられていることと同じで、目新しい話はないのですが、でも、知らない事実もいっぱい書かれてあって、すごくおもしろかったです。
アメリカで出版されるようになり、名前を知られるようになった経緯として、ご本人が積極的に戦略的に活動された様子が書かれています。そうか、勝手に自動的に売れたわけじゃなかったんだ、と納得です。(もちろん本そのものが受け入れられる内容であった、というのが大前提ではありますが)
この本に書かれていた一読者からの「次もまた読みます」っていうメッセージ、私の心の中そのものです。私は初期のころの作品が好きで、中期以降のものは正直あんまり好きではありませんが、でも、彼の小説を読むといつも感じる人生に対する誠意みたいなものについては確固たる信頼があって、新作は必ず手にとってしまいます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小説は読むだけで、畏れ多くも書こうと思ったことはないので、小説の見方が新鮮だった。書く技術とか、一体どういった技術なのか不思議だった。一人称から三人称へと視点が広がることで出る物語の広がりとかなるほどなぁ。
元気がでないときに何度と読み返した。こんなに繰り返し、またいろんな作品を読んでいる作家は気づけば村上春樹さんだけです。感謝の気持ちです。
それにしてもキャラクターが勝手に動き出す、ってどういう感覚なんだろう?
2023.10.13 -
新作を読んでまだ読み残してる作品を探して本作に巡り合う。小説ではなくエッセイではあるが、村上春樹がよく分かる本であった。この著者を知って以後新作が出れば必ず読みたくなるのは、圧倒的なオリジナリティによるものだと気づいた。最近日本の作家も随分優れた作品を出すようになったが、何処かで読んだような気がするようなものが見られるようになり最近はちょっと辟易としていたが、村上春樹だけは完全オリジナルな気がする。海外で受賞する作家も増えてきたが、それは受動的なものであり村上春樹のような能動的なものでない。
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題名からすると
「生きていくために小説を書く」
のニュアンスがあるように思う。
しかし実際はその逆であると感じられる内容。
世の中に存在するもののほぼ全てにビジネス臭を感じる中、本物の追求が支持や富を呼ぶということを村上春樹がそれを証明してくれている。
お金や支持獲得のために自身の書く力を利用するのでなく、書く力がお金や支持を呼び寄せると。
学校が嫌いだと言ったり、賞についてとれないんじゃなくてとらないんだとでもいうような、すこし反抗的な面もある村上春樹だが、それが生涯一貫していること、ブレる気配すらないこと。そこにも一流を感じる。
村上春樹はなるべくして世界に名を馳せる人物となったのだな。 -
村上春樹の不思議な物語の構成がどのようにして生まれているのか詳しく語られていて面白かった。
日本文学らしくない文体だと思っていたが英語訳に直してから書き直すことによって独自の文体が生まれていたこと大きな驚きだった。
学校教育論やヒット作家としての地位を捨て海外進出した時の話が著者の芯の強さを物語っていて好感が持てた。 -
柴田元幸編集の "MONKEY" に連載した評論を一冊にまとめた本だが、村上春樹の自叙伝と言ってもいいだろう。なぜ人は小説を書くのか、なぜ村上春樹は小説を書くのか、書き続けるのか、日本文壇から否定され続けた男が全てを語った、と言っても過言ではないだろう。村上春樹が嫌いな全ての人に読んで欲しいし、物語が好きな全ての人に送りたい。
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2019年3月19日読了。村上春樹が「小説の書き方」や自分と小説の向き合い方、芥川賞に関する所感などを書き綴った本。世の中に対する軽いエッセイとは異なり、「小説」という氏が全力を傾けているであろう対象に関する考察であるためなかなか力の入った・生々しい独白を見ることができる。小説はとにかくたくさん読み・とにかく書き出して書き続けること、推敲して人に見せること、はスティーヴン・キングの本でも同じことを読んだ気がする、小説家に共通するスキルなのだろう…こういうことを飽きもせず・やり続けることには才能もいるのだろうし、自分の型とかそのためのトレーニングも必要になるものなのだろう。楽して・自己流でできる物事なんて、この世の中にないものなのかもしれないなあ。
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村上春樹を知り尽くしたい人にはおすすめの一冊。
村上さんは小説を書くという行為をどう捉えているのだろう?村上さんが定義する職業的文筆家とはどういう意味なのか?日本を飛び立ち外国で仕事していた理由とは?
村上さんに関わるあらゆる謎が明らかになること間違いなし。個人的には読み進めるうちに独特の村上節が受け入れられなくなってきて読了するまで時間がかかってしまいましたが…
本作を読んでから村上作品を読むとまた新たな発見があるかもしれません。 -
村上春樹の現時点での小説家論の集大成。どこかで読んだような記述が多々あるも、デビュー来、一貫してぶれていないことの証。村上春樹のエッセイ・言説が魅力的なのは、自らの経験で得たことしか語らず、率直に、言葉を「公正」に使うからだ。自ずと語られることは、煌めきはないが、滋味深くずどんと肝の据わったものになる。そして、小説・物語の可能性を心底信じているところが、読者として信頼できる。
一番、感銘(?)を受けたところ。「誰のために書くのか」という章で「『新しい本を読んでがっかりした。この本は好きではありません。しかし、次の本は絶対買います。頑張ってください』という趣旨の手紙を読者から貰うことがあります。こういう読者が僕は好きです。とてもありがたいと思います。そこには間違いなく『信頼の感覚』があるからです。そういう人のために僕は「次の本」をしっかり書かなくちゃなと思います」というところ。そうだ。自分も、村上春樹の新刊をけなしつつも、村上春樹の次作を期待し、誰よりも作家として信頼しているもの。
今のところ、村上春樹と羽生さんが同時代に生きていてよかった、その言説を追いかけたい(?)と思う対象である。 -
だいぶ前に読んだから、内容はあまり覚えていないけど、小説家になりたい人にはいいかも。小説家とか漫画家とか、ものを創る人たちは想像力がすごい。現実と想像をうまく折り合いをつかせるためにそういう仕事に就くことになるのかな、とも思います。