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感想・レビュー・書評
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復讐を誓う女性狙撃手の物語
全く戦争用語とか分からずネットで調べたり
戦争に詳しい旦那さんに教えて貰いながら
なんとか 読み終えました(ヘトヘト)
フィクションとは思えないぐらい戦争の事をリアルに表現されていて ウクライナの戦争とリンクしてしまいます。
1日でも早く平和になることを お祈りします。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アニメっぽい表紙とかあらゆる方面からの大絶賛とかから予想していたよりずっと、なんというか、硬派で深い作品だった。もちろん、戦闘場面のアクションサスペンス的なおもしろさとか、兵士のリアルな感情がわかる気がする、とかもあったけど、それ以上にさまざまな新しい知識とか考えに触れることができた気がして、読んでよかった。
実際にあった戦闘での作戦や経過、結末などが細かく書かれているところは、そういうものをあまり読んだことがなかったので、読みやすいとはいえなかったけれど、「戦記」ってこういう感じなのかもと新鮮というとなんだけど興味深かった。そもそも第二次世界大戦中の「独ソ戦」についてほとんど知らず、検索して、それが、史上最大規模の地上戦、最多の死者数を出した最も悲惨といわれる戦争、と知ったり。
あと、ひとくちに兵士といっても、歩兵と狙撃兵では精神性に大きな違いがある、とかのエピソードも興味深かったし、ソ連という国についても、狙撃兵になった若い女性たちの出自から、ソ連とひとくちにいってもさまざままに歴史ある民族や地域が組み込まれた国なのだ、とあらためて思ったり。
そして、ドイツ側でもソ連側でも、制圧した側が生き残った敵側の女性を凌辱する、戦時性犯罪についても考えさせられた。全体的に、戦闘よりもむしろ、「戦闘のあと」に興味を引かれたかも。戦時性犯罪も、戦闘のあとの問題だし。勝利して復讐を果たした狙撃兵は戦いが終わったあとはなにを目的にどう生きるのか?っていうことで、女性狙撃兵たちがそれぞれ戦後どうしたかっていうエピローグがよかった。
この著者で、戦争のあとの話、戦争のトラウマとかそういう話をこの先もっと読みたいとか思った。 -
ソ連では女性が100万人も従軍していたとは知らなかった。成長の過程が丁寧に描かれていた。また読み直そう。
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登場人物たちがとても魅力的。「ソ連」から見た第二次世界大戦は、日本人として、戦争を別の角度から見ることができ、勉強になった。「エピローグ」が特に印象的でした。
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第二次大戦、ソ連に侵攻したナチスに皆殺しにされた村の生き残り、セラフィマは狙撃手となって戦場を渡り歩き、ついに自分がなぜ戦うのかに気づく。
昨年出版されて話題となっているこの本、スナイパーものが好きな僕としては楽しく読めました。早川書房ということもあって、どちらかというと最初から少しラノベっぽい、いわゆる型にはまったお話、という印象がしていましたし、まあ最後までそんな感じで雑に言えば上出来なエンタメ、という路線ではありますが、そこに入り込んでくるスラヴ周辺の入り組んだ民族感情をすくい取ってわかりやすく表現しているのがとても勉強になりました。今だからこそ、でしょうが、興味深い部分です。
さて、ウクライナ戦争の最中に読んでいる、ということもあって、虐殺や戦場の描写というのは非常に堪えるものがあります。そしてナチスとソ連の関係がもうまさに逆転しているところも、ひどく皮肉で寓話的に感じたりします。作者の逢瀬さんは、のちのインタビューで、まさかこんな戦争が起きるとは思いもしなかったと心を痛めてましたが、今の戦争に至る大祖国戦争の一端を割としっかりと捉えた小説になっていて、そこが評価のポイントなんだろうな、と思います。
ということで、ソ連の女性狙撃兵といえば映画「スターリングラード」とか「ロシアン・スナイパー」あたりと一緒にお楽しみください。
小説も最後の方になってくると、ああ、これはもしかしたら「戦争は女の顔をしていない」のオマージュ的な意味も(ちょっと強めに)入っているのかな、と思ったらそのままスヴェトラーナが出てきたり、伝説のスナイパーであるリュドミラ・パブリシェンコは終始重要な役割を演じたりと、ジェンダー的な視点を意識させながら、なかなか楽しませてくれます。特にリューダの人物造形なんかは(自伝が出てることもありますが)「ロシアンスナイパー」とよく解釈が合っていて感心しました。戦争は敵味方区別なく人を狂気に陥れる、というメッセージも、ステレオタイプながらしっかり抑えられていたと思います。
ただ、まあ、ストーリーの大筋とラストについては、なんだこれは。と思うところがないでもありませんでした(そのあたりは意図的だったのでしょうが)。 -
面白かった、と言ってはいけないほど過酷な戦争を描いた作品。
作者はこの作品でデビューしたとのこと。
沢山の文献を読み作り上げた今作のように、次回作もきっと私たちを魅了してくれることだろう。今から楽しみにしています。 -
第二次世界大戦中の独ソ戦に従軍したソ連赤軍の女狙撃兵の物語。
500ページ弱の小説を数日で読み終えました。戦争の血生臭い描写だらけなのに、読むのをやめることができない魅力のある小説でした。
普通に生活していた少女の村にドイツ軍が現れ、村人を惨殺。唯一救出された少女セラフィマが主人公。ドイツ軍に村人、母親を殺され、死ぬか狙撃兵になるかを選ばせた赤軍の女兵士にも恨みを持ちつつ、厳しい兵士教育を受け、実践に配備されていく主人公。そこには、戦争のヒリヒリする緊張感。
実際の独ソ戦の戦闘の記録も解説されていて、(主人公は架空の人物ではあるにしても)架空の物語ではない舞台の中で物語が進んでいく。
そして、最後の章は圧巻。
そこまでに積み重なっていったたくさんの死とたくさんの経験を一気にぎゅっとまとめて織り上がるストーリーにハラハラドキドキさせられました。
読みながら考えていたのは、ロシアの女性ジャーナリスト・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチさんが書いた本「戦争は女の顔をしていない」みたいだな、と。(実はちゃんと読んだことはなくて、コミカライズされたものしか読んでないけど…)。
そして、2022年の時点で読んでいる私が、もちろん思い出すのは、ロシアのウクライナ侵攻。
ロシア軍が撤退した後の村の惨状が、第二次世界大戦と同じじゃないか、と。そして、この物語では「侵攻してきたドイツ軍」に対抗するソ連赤軍の話なのだけれど、そのまま「侵攻してきたロシア軍」に対抗するウクライナ軍の話ではないか、と。
物語の中でも、こんな悲惨な戦争は今後ないだろう、的なことが書かれていた気がするけれど、それがなんで今起こっているのか…、と。
コミック化されたものしか読んでいない「戦争は女の顔をしていない」も、ちゃんと読もうかと思いました(もちろん日本語訳を、ですよ!)
この本は図書館で借りました。
そして、この本を読み終わった今日、次の予約の本が受け取り可能になったという知らせ。それは、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチさんの「亜鉛の少年たち」。
タイミングが良すぎる…。ちょっと辛いかも…。
(図書館の予約って、順番が回ってくるタイミングが自分で選べないからね。だけど、それ故に、読もうというモチベーションを与えてくれるとも言えるんですけどね。辛そうなものは図書館で予約するといい)