同志少女よ、敵を撃て [Kindle]

著者 :
  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 復讐を誓う女性狙撃手の物語
    全く戦争用語とか分からずネットで調べたり
    戦争に詳しい旦那さんに教えて貰いながら
    なんとか 読み終えました(ヘトヘト)
    フィクションとは思えないぐらい戦争の事をリアルに表現されていて ウクライナの戦争とリンクしてしまいます。
    1日でも早く平和になることを お祈りします。

  • 舞台は第2次世界大戦。平和に暮らし鹿を撃って暮らすロシア人少女セラフィマは生まれた村をドイツ軍に襲われ、母を失い、凌辱される直前で、ロシア軍に命を救われる。そして、イリーナと出会い、厳しい問いを受ける。「生きるか、殺すか。」
    「殺す」と答えたセラフィマは母を殺された仇を打つため狙撃兵訓練学校に通うことになる。

    訓練学校で出会ったカザフ生まれの天才少女アヤ、子供を戦争で失い29歳にして目指す(通称ママ)、モスクワの狙撃大会で優勝した凄腕で実は貴族の出のピュアなシャルロッタ、ウクライナ・コサックのルーツを持つ物静かなオリガ、彼女は実はNKVDの監視員であり、秘密警察とも呼ばれる、スパイ監視部隊だった。
    実在の英雄リュドミラ・パブリュチェンコの盟友イリーナは厳しくも若きスナイパーたちを導く名教官。彼女の厳しい指導を受け、わずか4名が、卒業する。セラフィマは「女性を守るために戦う」誓いを立てる。

    予定を繰り上げ訓練学校を卒業し、実践に配属された初戦は圧倒的不利なスターリングラード。行軍中に思わぬ敵襲を受け、動揺する仲間、そして相手を葬り続けるも、基本を忘れた天才アヤ。アパートに籠っての戦い、セラフィマの仇であるイェーガーと愛し合ったサンドラと出会う。
    圧倒的不利な戦いとなったケーニヒスベルクの戦いでイェーガーを見つけ、復讐に向かう。
    そして勝利のあとで、改めて気づいた、セラフィマにとっての”敵”とは。

    「お前たちは何のために戦う?」 イリーナの問いに、セラフィマとは異なる解を持った看護士ターニャ。セラフィマは数えきれない人を殺めながら、常に銃を持つ理由を問われる。
    集中するときに民謡”カチューシャ”を口ずさみ撃つセラフィマはとても魅力的。「殺す」と誓った相手であるイリーナとの感情。戦争の、軍隊の中で、女性という圧倒的マイノリティでありながら、少しずつ戦争に狂いかけ、それでも本来の”戦い”を見失わなかった。
    イリーナやリュドミラ・パブリュチェンコ、そして訓練学校の仲間たちとのシスターフッドの物語としてもよかった。戦争物としては読後感が良すぎるかもしれない。10年後に読んだら感想が変わるだろうか?うまく言えないけれど、読んでよかった作品だった。

  • アニメっぽい表紙とかあらゆる方面からの大絶賛とかから予想していたよりずっと、なんというか、硬派で深い作品だった。もちろん、戦闘場面のアクションサスペンス的なおもしろさとか、兵士のリアルな感情がわかる気がする、とかもあったけど、それ以上にさまざまな新しい知識とか考えに触れることができた気がして、読んでよかった。

    実際にあった戦闘での作戦や経過、結末などが細かく書かれているところは、そういうものをあまり読んだことがなかったので、読みやすいとはいえなかったけれど、「戦記」ってこういう感じなのかもと新鮮というとなんだけど興味深かった。そもそも第二次世界大戦中の「独ソ戦」についてほとんど知らず、検索して、それが、史上最大規模の地上戦、最多の死者数を出した最も悲惨といわれる戦争、と知ったり。
    あと、ひとくちに兵士といっても、歩兵と狙撃兵では精神性に大きな違いがある、とかのエピソードも興味深かったし、ソ連という国についても、狙撃兵になった若い女性たちの出自から、ソ連とひとくちにいってもさまざままに歴史ある民族や地域が組み込まれた国なのだ、とあらためて思ったり。

    そして、ドイツ側でもソ連側でも、制圧した側が生き残った敵側の女性を凌辱する、戦時性犯罪についても考えさせられた。全体的に、戦闘よりもむしろ、「戦闘のあと」に興味を引かれたかも。戦時性犯罪も、戦闘のあとの問題だし。勝利して復讐を果たした狙撃兵は戦いが終わったあとはなにを目的にどう生きるのか?っていうことで、女性狙撃兵たちがそれぞれ戦後どうしたかっていうエピローグがよかった。
    この著者で、戦争のあとの話、戦争のトラウマとかそういう話をこの先もっと読みたいとか思った。

  • 復讐するために生きてきたつもりだったけど、むしろ生かされていた。とセラフィマがハッとさせられるところが今作のハイライト。

    ラスト1/3に入ってからあっという間だったし、怒涛の展開だった。セラフィマ含めロシア軍側からの視点だから何とも言えないけど、WWⅡから今までソ連のやり方は変わってなくて。必要とあらば情報は操作するし、独善的だし。昨今のウクライナ情勢はいくらニュースに興味がない自分でも見てしまう内容だから否応もなくそういう視点でも読んでた。

    アメリカンスナイパーみた時も衝撃的だったけど、戦地から戻ってきてすぐ亡くなっちゃうんだよね。狙撃兵に求められることをセラフィマが聞いた時、愛する人を見つけるか、趣味を見つけるかと言われたのが印象的。何も残らないんだよな、戦争。

    最終的にはセラフィマもイリーナもママもシャルロッタもそれを見つけることができてよかった。

    自らに対して普遍的な信念を持っているか否か。

  • ソ連では女性が100万人も従軍していたとは知らなかった。成長の過程が丁寧に描かれていた。また読み直そう。

  • 登場人物たちがとても魅力的。「ソ連」から見た第二次世界大戦は、日本人として、戦争を別の角度から見ることができ、勉強になった。「エピローグ」が特に印象的でした。

  • 泣けるしかっこいいし、主人公達が成長していくところはとてもよかった。数々の修羅場を乗り越え、絶望し、戦い抜く、最後まで練りに練られた話は、今年読んだ中で一番かも。戦争とはどんな人をも狂わせるもの。戦争が終わったからといって幼馴染と結婚してハッピーエンドなんてそんなに甘いものではない。一生背負って生きていかなくちゃいけない。
    今自分の身近で戦争がないのは幸せである一方、今世の中で起こっていることを考えると胸が痛む。
    この本を読んでロシアの見方は変わったが、ウクライナとかドイツとか自分がいかに知らないかを思い知らされた。

  • 第二次大戦、ソ連に侵攻したナチスに皆殺しにされた村の生き残り、セラフィマは狙撃手となって戦場を渡り歩き、ついに自分がなぜ戦うのかに気づく。

    昨年出版されて話題となっているこの本、スナイパーものが好きな僕としては楽しく読めました。早川書房ということもあって、どちらかというと最初から少しラノベっぽい、いわゆる型にはまったお話、という印象がしていましたし、まあ最後までそんな感じで雑に言えば上出来なエンタメ、という路線ではありますが、そこに入り込んでくるスラヴ周辺の入り組んだ民族感情をすくい取ってわかりやすく表現しているのがとても勉強になりました。今だからこそ、でしょうが、興味深い部分です。
    さて、ウクライナ戦争の最中に読んでいる、ということもあって、虐殺や戦場の描写というのは非常に堪えるものがあります。そしてナチスとソ連の関係がもうまさに逆転しているところも、ひどく皮肉で寓話的に感じたりします。作者の逢瀬さんは、のちのインタビューで、まさかこんな戦争が起きるとは思いもしなかったと心を痛めてましたが、今の戦争に至る大祖国戦争の一端を割としっかりと捉えた小説になっていて、そこが評価のポイントなんだろうな、と思います。
    ということで、ソ連の女性狙撃兵といえば映画「スターリングラード」とか「ロシアン・スナイパー」あたりと一緒にお楽しみください。
    小説も最後の方になってくると、ああ、これはもしかしたら「戦争は女の顔をしていない」のオマージュ的な意味も(ちょっと強めに)入っているのかな、と思ったらそのままスヴェトラーナが出てきたり、伝説のスナイパーであるリュドミラ・パブリシェンコは終始重要な役割を演じたりと、ジェンダー的な視点を意識させながら、なかなか楽しませてくれます。特にリューダの人物造形なんかは(自伝が出てることもありますが)「ロシアンスナイパー」とよく解釈が合っていて感心しました。戦争は敵味方区別なく人を狂気に陥れる、というメッセージも、ステレオタイプながらしっかり抑えられていたと思います。
    ただ、まあ、ストーリーの大筋とラストについては、なんだこれは。と思うところがないでもありませんでした(そのあたりは意図的だったのでしょうが)。

  • 面白かった、と言ってはいけないほど過酷な戦争を描いた作品。

    作者はこの作品でデビューしたとのこと。
    沢山の文献を読み作り上げた今作のように、次回作もきっと私たちを魅了してくれることだろう。今から楽しみにしています。

  • 第二次世界大戦中の独ソ戦に従軍したソ連赤軍の女狙撃兵の物語。

    500ページ弱の小説を数日で読み終えました。戦争の血生臭い描写だらけなのに、読むのをやめることができない魅力のある小説でした。

    普通に生活していた少女の村にドイツ軍が現れ、村人を惨殺。唯一救出された少女セラフィマが主人公。ドイツ軍に村人、母親を殺され、死ぬか狙撃兵になるかを選ばせた赤軍の女兵士にも恨みを持ちつつ、厳しい兵士教育を受け、実践に配備されていく主人公。そこには、戦争のヒリヒリする緊張感。

    実際の独ソ戦の戦闘の記録も解説されていて、(主人公は架空の人物ではあるにしても)架空の物語ではない舞台の中で物語が進んでいく。

    そして、最後の章は圧巻。
    そこまでに積み重なっていったたくさんの死とたくさんの経験を一気にぎゅっとまとめて織り上がるストーリーにハラハラドキドキさせられました。


    読みながら考えていたのは、ロシアの女性ジャーナリスト・スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチさんが書いた本「戦争は女の顔をしていない」みたいだな、と。(実はちゃんと読んだことはなくて、コミカライズされたものしか読んでないけど…)。

    そして、2022年の時点で読んでいる私が、もちろん思い出すのは、ロシアのウクライナ侵攻。
    ロシア軍が撤退した後の村の惨状が、第二次世界大戦と同じじゃないか、と。そして、この物語では「侵攻してきたドイツ軍」に対抗するソ連赤軍の話なのだけれど、そのまま「侵攻してきたロシア軍」に対抗するウクライナ軍の話ではないか、と。

    物語の中でも、こんな悲惨な戦争は今後ないだろう、的なことが書かれていた気がするけれど、それがなんで今起こっているのか…、と。



    コミック化されたものしか読んでいない「戦争は女の顔をしていない」も、ちゃんと読もうかと思いました(もちろん日本語訳を、ですよ!)



    この本は図書館で借りました。

    そして、この本を読み終わった今日、次の予約の本が受け取り可能になったという知らせ。それは、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチさんの「亜鉛の少年たち」。
    タイミングが良すぎる…。ちょっと辛いかも…。

    (図書館の予約って、順番が回ってくるタイミングが自分で選べないからね。だけど、それ故に、読もうというモチベーションを与えてくれるとも言えるんですけどね。辛そうなものは図書館で予約するといい)

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著者プロフィール

逢坂冬馬(あいさか・とうま)
1985年生まれ。35歳。埼玉県在住。『同志少女よ、敵を撃て』にて第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞。

逢坂冬馬の作品

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