単純な脳、複雑な「私」 (ブルーバックス)

著者 :
  • 講談社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062578301

感想・レビュー・書評

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  • 2009年に刊行された、単純な脳、複雑な「私」がブルーバックスシリーズで復活。著者は、東京大学教授で脳研究者の池谷さん。

    脳に関する本は結構読んできたけど、一番詳しく、驚きも一番、興味の湧き具合も一番、理解も一番進んだけど、脳についてさらにわからなくなった、よくわからない本だったというのが読み終えての素直な感想。

    脳と心と体の関係、無意識のすごさ、脳は完璧ではなくズレを利用して働く、自由ってなんだ?目に見えているもの、感覚として感じているもの、何か全てがよくわからなくなった。

    脳の中で起きていることは、単なる化学反応で、化学式で簡単に表すこともできる。脳の特定の部分を刺激すれば、何かをしたくなったり、動きをコントロールすることもできる。だとすると、心も体も脳が全てなのか?

    他の生物のDNAを使って、見えないものを見たり、感じられないものを感じたりできる。だとすると普段見えているこの世界って一体なんなんだ?って思えたり、現時点ではよくまとめきれない。

  • とくに心に残ったところは、同じ労働をしても、報酬の金額が少ない人のほうがその労働に対して「楽しかった」という感想を持つそうだというところ。ボランティアでの満足感へのヒントだとも思いました。一方で、高給取りなんかが傲慢だったりするイメージがありますが、仕事に楽しさを感じてないからなんでしょうか。「金のためだししょうがねー」と。仕事は金のためなのはもちろん(だと僕は思う)。でも、楽しいにこしたことはない。そのあたりのちょうどいい賃金の金額ってあるんだろうけど、個人差があるだろうなぁと思いました。格差の下の人たちが、少ない賃金でも楽しさを感じてしまったら、それは豊かな社会なのだろうか、それとも、かわいそうな社会なのだろうか。また、ブラック企業で働く人がそこを離れないのにも、このような脳の習性・心理が働いているのだろうかと思えました。それは間違った脳科学・心理学の活用の仕方だと思う。

  • 大学で計算機科学の知見に触れることが多い私にとって、脳の持つ“ゆらぎ”や“可塑性”といった性質は非常に興味深かったです。分かりやすいだけでなく、より深く学ぶためのモチベーションを与えてくれる本であると思います。

  • 池谷氏が高校生相手に行った特別講義をまとめたもの。「脳とは何か」を説明しながら、認識論などさまざまな論点について触れていきます。
    やはり何度読んでも衝撃的なのは、「体を動かそう」と思って動かす、のではなく、実際に体を動かす数秒前に脳から指令が出ている、というくだり。ゴルフのパッティングなど、その時点でうまくいくか失敗するかまでわかる、と。脳のニューロンがどのように情報を伝えるかというメカニズムもすごい。単純な法則にのっとって情報が伝達されますがそれを俯瞰できるようしゅみゅレーションすると整然とした反応が現れる。ここがタイトルの由来で、「脳がやっていることそのものは単純だが反応は複雑に見える」。知的な興奮を呼ぶ一書。

  • 後半難しくて一部読み飛ばしてしまったけど、面白かったです。

    「自分を使い回しながら進化した脳」とは、それまでにある用途で存在した機能を別の用途に使い回すことで進化してきた、ということ。

    「脳は世界をただ写しとって見るのではなくて、思い込みで解釈する」
    このことは文学や哲学や心理学などのあらゆる分野で言われてきましたが、正にそういう風にできていた。
    「人は見たいものしか見ない」という解釈でしたが、「脳が解釈したようにしか人は物を見られない」ということで、自分に不都合なものを排除してしまう可能性を鑑みると結局「人は見たいものしか見ない」に落ち着くわけですね。
    しかしながら、逆に見てしまったものに対してのストレスから逃れる為に、心の方が変化してしまう場合もあり、これもまた、それまでに経験したことを踏まえての変化になるのでしょう。

    手続き記憶に関しては全ての分野の学習や習得にとって、「コツコツ努力すること」の正しさを科学的に証明しています。

    恋愛感情に関しては「思い込み」であるとの身も蓋もない話でありましたが、ふられたり浮気されたりした方には何よりの薬でしょう。
    より広めることで楽になれる人は増えますが、少子化には拍車がかかるかもしれません。

  • 高校生に向けて行われた講義ということで、非常にわかりやすく語られている。しかも、興味深い話題が満載である。池谷さんの本は何を読んでも面白い。しかし、わかりやすいとは書いたものの、最終日の「ゆらぎと創発」あたりはかなり厳しい内容になっている。それに付き合っていた高校生が偉いと思う。個人的にはサブリミナル効果の実験の話に最も興味がわいた。本人の意識にも上らない短時間「がんばれ」というメッセージを流してから、「にぎれ」という指示をすると、「がんばれ」がないときよりも有意に力が強くなるという。これは無意識に訴えかけるのがいいのか、それともゆっくりメッセージを出して、「がんばれ」ということばを意識させてもふつうに力は強くなるのか、そのあたりも知りたい。それから、脳内のゆらぎのために、プロゴルファーでも常にパットを正確に決められるわけではないという件も面白かった。さらに、意識的にアルファ波が出せるという話。具体的な方法は何も書かれていないが、どうするのだろう。質問したいことがらもいっぱい見つかる本でした。

  • 脳科学がご専門の先生が、高校生に脳の働きなどについてわかりやすく話している本。
    前半の講義部分で、脳のちょっといい加減なところを面白いと思ったり。後半は、高校生数人を相手に、もうちょっと複雑な話を。先生の話が興味深いのはもちろんだけど、高校生の時にするどい質問が面白かった。私は高校生のとき、こんなに感性が豊かではなかったと思う・・・

  • 【目的】 最先端の脳科学の研究をもとに、「心」の動きについてどのようなことが言えるかを明らかにする。

    【収穫】 普段は考えもしなかった脳の作り出す現象について、多くの初めてのことを知ることができ、自分の心を少し客観的に捉えられるようになった。

    【概要】 本書は、著者が母校の高校で行った「脳と心」に関する全校生徒向けの講義、および少人数向けの集中講義の内容をまとめたものである。講義では、日常的な事例を使いながら、最先端の脳科学理論を紹介する。以下は取り扱う事例の一部。
    ・「好きになる」とはどういう作用か
    ・なぜ他者の心、感情を理解できるのか
    ・直感はどのように生まれるのか
    ・生物の定義とは何か
    ・記憶の役割とは何か
    ・自由の条件とは
    ・脳の「ゆらぎ」とは何で、何の役に立っているか

    【感想】 色々なところで評判がよく、著名なビジネスマンも薦めていたため読んでみた。普段自分の意識に上らないような部分でも、脳の影響が働いていることをわかりやすく解説しており、非常に面白い。400ページ超の分量だが、高校生との対話形式で書かれているため読みやすい。たまにテレビでやっているような脳特集などより、はるかに多く有益な情報が得られると感じた。

  • 世界一受けたい授業。池谷先生が母校の好奇心旺盛な生徒に最先端の学問を分かりやすく説明してくれる贅沢な時間。「脳科学」って名前だけ聞くと流行りのコンテンツのようだけれども、世間にはばかるゆるくて軽い本とは違い、おそらくこれまでの研究の経験に裏打ちされた説得力よ。難解な内容にもかかわらず、先生の語り口は優しく目の前の生徒と上手くコミュニケーションを取る雰囲気も会話の流れから感じられる。すごく高度なことを噛み砕いて高校生にも理解できるレベルに落としこんで思考を促すという話術がおみごと。
    よくある数多くの脳や潜在意識に関する自己啓発の本なども、もとネタとしてはここからなんだなあと腑に落ちる箇所もあり。
    人間の動作は考えて脳に指令を出して行動しているわけではなく、先にすべて脳が決定していて、そもそも自由意志なんて無いという事実は人を愕然とさせるかもしれないが、意識を書き換えることをコントロールできるようになれば自分が見ている世界は思い通りになるのであれば、これは人間が生きやすくなる指標となるかもしれないよ。
    池谷先生の暖かく優しい聡明さがそこから生まれているのだとしたら、これらを知ることによって人間はもっと幸せになれるのではないか。

  • 脳について目からウロコな内容がいっぱい。人間って凄い。最後の次元の話が面白い。

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著者プロフィール

監修:池谷裕二
脳研究者。東京大学大学院薬学系研究科薬学専攻医療薬学講座教授。薬学博士。一般向け書籍の累計発売部数100万部超え。

「2023年 『3ステップ ジグソー知育パズル どうぶつ だいずかん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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