文庫版 陰摩羅鬼の瑕 (講談社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (1226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062754996

感想・レビュー・書評

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  • あなたにとって生きているということはどんな意味を持つのですか?

    前半は久しぶりに関くん語り多めで、応援するのが辛くなりましたが、途中からは珍しく大活躍。伊庭さんの存在もとてもよかったな...

    夏に起こった事件、鳥が出てくる、関口くんが深く関わっている、とても不思議な事件、と、「姑獲鳥の夏」との共通点をたくさん感じながら読みました。姑獲鳥の時は何度も読まないと理解できないところがあったのに、今回は早い段階で真相がみえてきました。

    繰り返される哲学的なお話はすべて伏線へと繋がっていて、すとんと納得できるけど、哀しく切ないお話でした。

  • ことの真相は京極ファンなら、かなり早い段階でたどり着くのではないか。かなりあからさまな、読者を騙してやろうという意志の余り感じられない書きぶりなので、むしろ甲羅を経たミステリファンの方が、レッド・ヘリングを疑って明後日の方角に進んでしまうかも知れない。☆シリーズの初期作、例えば『姑獲鳥の夏』なんかはこのトリックを成立させるためには、この分量がどうしても必要というような説得力があったが、本作には感じない。正直、半分かもっと短くできるだろう。水増しと言えば言えなくもないのだが、このふわりとした感じがよいという読者は間違いなくいるはず。ただ文庫で読みむとさすがに重たい。☆終盤の展開には思わず落涙。

  • 「瑕」を分かった状態で読んだので、途中辛すぎて読み進められなくなるなど。

  •  京極夏彦さんの作品。例にもよって、分厚い。京極さんのミステリーの中で、多分初めて真相を300ページくらいで予期できた作品です。
     内容自体は相変わらず面白く、京極堂が出てきて語り初めると、楽しさはピークに達します。

  • 鵺の碑を読む前に、2つ前のお話を再読
    読んだのがかなり前だったので、
    忘れていた内容も多くじっくり楽しく読めました。

    このシリーズは毎回、関口を心配しながら読んでしまいます。
    前巻でついに行くところまで行ってしまったので
    ハラハラしていたのですが、不安定なところはあるものの
    少しずつ回復してるかな?最後は雪絵さんとお買い物に出かけていたし
    鵺の碑でもまた心配しながら読み進めそうです。
    そして益田の人選が酷すぎる・・・・・。
    榎木津と関口って不安しかない人選でよく行かせたなぁ(笑

    子供が生まれ「死」について言葉で教えるのって本当に難しいことを実感しました。
    自分の子なので飼っていたクワガタが死んだとき直接的に教えましたが、
    私の言葉だけでは理解できなかったと思います。
    やっぱり外的刺激は大事です。
    伯爵は立場上、周りにいる大人が全員尊敬語でお話しします。
    山形さんとか使用人に尋ねたとしても、
    ぼかした言い回しになってしまうのかなと思いました。
    唯一しっかり教えなきゃいけない父親は、研究に没頭しているし。
    知識欲を満たしてくれるのが「文字」だけってかなしいです。
    ただ、もう少し死や家族について
    きちんと理解できる本はあったんじゃないかなぁと思いますが
    儒学に精通した頭の良い高等遊民は、あれこれと難しく考えてしまい
    答え合わせが出来ない環境だからしょうがないのかな。


    横溝正史の登場に関口がテンション上がっていましたが
    読んでいて私も上がりました。
    とても人当たりが良く、優しい穏やかな方だったらしいので
    病んでいる関口に、のんびりと話をする様子がイメージできました。

    後巷説百物語「五位の光」は狂骨の夢と陰摩羅鬼の瑕につながっています。
    又市さんが蒔いた種を京極堂が摘みとって行くのは胸熱です。

    次は邪魅の雫読みます!

  • せつない一冊。

    今作は前作が派手派手超長編だっただけに、地味目というかスタートから盛り上がりには欠けた。

    でも湖畔に佇む洋館「鳥の城」を舞台に婚礼の晩、死す花嫁の謎を解く展開は雰囲気から好み。

    関口さんと大御所作家とのシーンは書楼弔堂っぽくて好き。
    榎木津さんは叫んでばかりながらもやっぱり癒し。

    5人目の花嫁の死は阻止できるのか…犯人は薄々わかってしまうけれど、京極堂の憑物落としが一気にしんみり、せつなさを運ぶ。

    取り巻く世界、普通か否かのその違いの要因に胸打たれ、ミステリとしてはシンプルながらも忘れられない巻。

  • 途中で展開が読めてきたものの、畳み掛ける最後が切なすぎる。関口は相変わらず弱すぎる。

  • 何て救いのない、悲しい事件なんだろう。
    読み終わってすぐだからか未だにやるせない気持ちが凄い。

    この話に悪人なんて誰もいない。
    そりゃ多少はそういう部分がある人もいるのだろうけれど、でも根っからの悪人とか凶悪な殺人者なんてものはどこにもいない。
    それなのに繰り返し起きる事件。
    「誰も嘘を言ってない」ことがこんな悲しい結末を引き起こすなんて読み始めた時は想像がつかなかった。

    いや、確かにあったんです、話しが進んでいくにつれ「ん?何か変じゃないこれ???」と思う箇所はちらほらあったんです。
    でもまさか真相が明かされた時にこんな気持ちになってしまうなんて……。
    自分の中の常識とか先入観とか、そういうものが揺らぐ感覚が凄かった。
    これここまで大きくなくても生きていればみんな何かしら経験があることだと思うから余計にこう、くるものがある。

    京極堂の語りを読みながら「もうやめてあげようよ」と思ったのはこれが初めてだったなぁ。
    もういいじゃん、呪いとか祟りとかでいいじゃんって。
    京極堂は絶対にそれを許してはくれないんだけど、でも願わずにはいられなかった。
    せめて、せめてあの人が帰ってきた時に本当の家族というものを、世界というものを知れるようにしてあげて欲しいな、時間がかかってもあの人達には待っていてあげて欲しいなと思う。

    それにしても最後の最後、エピローグのような場面で木場修がいうあのセリフはたまたまなのか狙っているのか……。
    彼も忘れられないのかなぁ、やっぱ忘れられないんだろうなぁ。

  • 今回の特徴は「じらす」こと。作中で経過する時間もとても短い。
    前作は凄い色々なことが起こっているが核がつかめなくて全貌が見えない、という話だったが、今回は対照的にとてもすっきりしたストーリーラインがある。
    前作が取り敢えずの総まとめだとすれば、今作は新章スタート、姑獲鳥の夏Part2的でもあるし、作中でも姑獲鳥についての論考が改めて開示されている。謎も「そのことに気づけば」的なものでその辺でも姑獲鳥を意識させられたり。

    本筋とは関係ないが、怪異と鳥の関係に関する部分を読みながら、2023年の宮崎駿作品が何故「遣い」に鷺を選んだのかなど考えたりもした。

  • これは犯人(犯人かなあ)とかトリック(トリックでもないか…)とかを割と序盤に「こういうことだよね?」って薄々はっきりわかりながら、憑き物落としをどきどきしながら見守る読み方でいいんですよね?
    あまりにもそのまんまやんけ!な流れだったから逆に不安になってしまったけど、ものすごく楽しく読めた。
    「そうはならんやろ」とも思ったけど、「なっとるやろがい!」ってものすごい説得力で押し切られたのも気持ち良かったのでよし。
    出版当時に読んだらもっと新鮮な気持ちで「そうなの!?」ってびっくりできたのかな。
    何しろ読みやすくて楽しくて情景が目に浮かぶし、出てくる人もみんな魅力的で読んでいて心が弾みました。目よりも本を持つ腕が疲れた。読書には体力が必要だ。

    あ!木田元さんの解説がとっても良かったです。
    あと、最初の方に出てくる超有名作家さんが素敵すぎて好きになっちゃうもうなった。

  • あの夏こと姑獲鳥の夏をパワーアップしたようなお話でした。悲しい悲しい事件です。薫子、生きていてほしかったです。。。あらすじだけ知ってしまうとバカミスですがさすが京極夏彦、深く納得してしまいます。
    とはいえ儒教の講釈のところはしんどかったです。

  • 伯爵に嫁いだ花嫁が嫁いだ翌朝に殺されてしまう事件が4回続いて全ての事件は犯人わからず迷宮入り今回5回目の婚礼を行おうとしてる伯爵が助けを求めたのは私も大好き名探偵榎木津礼二郎!

    奇跡的な偶然が重なり合わないと4回連続で犯人への手がかり無しとかありえへんはずやのに…犯人は誰?5回目の犯行は防げるの!?というか京極堂さんはいつ出てくるの??って読み進めてたら1200ページくらいペロリと読めてしまいました!!

    百鬼夜行シリーズはレンガ本揃いで長編やのに毎回面白すぎて一気読みしてしまう!!すごいページ数を過ごしてるからなんかでてくるキャラクターにもう知り合いのおっちゃんくらいの親しみを覚えてる。

  • 「死」という概念を間違っている男の犯す殺人。「過失致死」になったという結末が面白い。謎解きとしては単純ですぐ分かる。

  • 【2022年61冊目】
    1回読んだら忘れない結末、それがこの話です。再読でしたが、細部は忘れていたので、憑き物を落とした先のことを思いながら読むと、像を結んでいなかった事象を理解できてしまったりして、うわわと思ったり。

    普通、当たり前、常識を大きく歪められること必死です。

  • ちゃんと覚えてない

  • ミステリーではあるものの、犯人あてやトリックが中心ではなく、なぜ殺したのかという動機が中心になっており、その部分が京極さんらしく伝奇的に説明されています。ホラーは苦手ですが、鳥の剥製が出た時点で悪い予感はしており、予想していたので、あまり怖くなかったです。林羅山と排仏主義の話とか興味深かったです。関口君のネガティブキャラも面白かった。レギュラー登場人物が個性的で面白かったので、他のシリーズも読みたいと思いました。

  • 百鬼夜行シリーズらしく事件前の話が長い長い。そこが面白い。ミステリーとしては、今までで一番呆気ない完結だったと思う。姑獲鳥の夏を彷彿とさせる。
    しかし、叙述トリックとしてはやはりあれだけ「答え」をばら撒いておきながら、やっぱり言われるまで気付けなかった。凄い。
    その「答え」である死についてはトリックの範疇をはみ出している。自分の生活する上での常識が、読んでいる瞬間だけは揺さぶられるような感覚になるから百鬼夜行シリーズは好き。

  • 気持ちが悪い話。
    今回は会話や一人称視点の章からトリックというか犯人とネタは読者にはすぐわかる。
    だからこそ犯人の思想のずれが気持ち悪く、モヤモヤして、早く解決してくれ!と一気に読んでしまった。
    関口くんは前回あれだったし、今回も不安定ではあったが、警護のときはなかなか考えて動いててよかった。真相にも自力でたどり着いたようで語り手として再起できたかな。

  • 再読。初読の際も犯人は分かってしまうので、ミステリーというよりも「死」についての哲学的な要素が強い。
    そんなことある?というトリックだけど、文章としてとても面白い。異類婚姻譚の説明が個人的に興味深かった。

  • 再読。物語の鍵となる部分だけは覚えていたが、それにつながる伏線は思いの外に多数出ており楽しめた。
    儒教と儒学の関係性、林羅山が果たした功績についての蘊蓄は面白い。日本古来の伝統と当たり前に信じている習俗の中には、江戸期以降に定着したものも多い。

著者プロフィール

1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。

「2023年 『遠巷説百物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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