群像短篇名作選 1946~1969 (講談社文芸文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784062903721

作品紹介・あらすじ

1946年10月号を創刊号とし、2016年10月号で創刊70年を迎えた文芸誌「群像」。
創刊70周年記念に永久保存版と銘打って発売された号には戦後を代表する短篇として54作品が収録され大きな話題を呼び、即完売となった。このたびそれを文庫三分冊とし、さらに多くの読者にお届けいたします。第一弾は敗戦直後から60年安保、高度成長期にいたる時期の18篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 庄野潤三『プールサイド小景』読みたさに手に取りました。
    私が初めて庄野潤三を知ったのは、老夫婦(庄野ご夫妻)の日常を綴った『うさぎのミミリー』でした。その日常は、特別なことが頻繁に起こるわけではないし、おしゃれな写真とか載ってるわけでもないのに、どんな丁寧な暮らしかたや、おしゃれな毎日を紹介している本よりも、こんなふうに暮らせたらいいなと思える、幸せってこういう毎日なんだろうなぁと思えるものでした。
    その記憶がずっと残ったまま今回『プールサイド情景』を読んだので、その内容に少し戸惑いました。
    端から見れば、絵に描いたような幸せな家族。でも、実際には夫婦の間には計り知れないほどの距離があって……
    どきりとします。
    夫婦の日常『うさぎのミミリー』の方が、現実の夫婦の形なはずなのに、何故かこの小説の方にリアリティを感じてしまう自分がいます。
    夫の犯した罪によって、普段の暮らしがあっけないほど簡単に崩れてしまうことに妻は驚きます。
    同時に、長年夫婦としてともに暮らしてきた時間が愚かでたよりないものだったことに気づきます。夫婦という形の儚さ、そして自分は何をしてきたのだろうかと。やっと今、初めて夫の顔から夫の心の淵を見つめたのではないでしょうか。遊び好きだけど仕事に精を出す夫、そのまやかしに隠された本来の姿。
    妻は自分に憤ります。夫が安らぎを他に求めている間、自分はいったい何をしてきたのだろうか。それでも、夫に心のうちを見せずに、淡々と過ごす妻。そして、淡々と過ごす夫。
    そうやって、今夜も変わらず夕食の支度をしながら、妻の時間は過ぎていきます。
    時代は変わり、夫婦の形も以前と同じように考えるのはナンセンスなのでしょうけど、でも、夫婦としての心の内までは、まだそこまで変わっていないように思えます。夫婦だからこその距離、儚さに打ちのめされながらも、それでも夫が自分のところに帰ってきてくれさえいればそれでいい。
    そう思う妻の姿が、ありありと目に浮かぶのですから。

    この短篇名作選は、復興から高度成長に至る時期のものです。この時期の物語って、全然読んでないなぁ。

  • 倉橋由美子「囚人」
    ヤバイ→気持ち悪い→何これ、もう無理、理解できない
    からの、いつのまにか流れるような綺麗な文章に一言一句追いかけながら、その状態が当たり前になっていく感覚の恐ろしさ。
    異常をそういうものなのだと受け入れる恐ろしさ。
    さて、禿鷹はくびり殺されたが、女との爛れた毎日はいったいいつまで続くのだろう。
    閉じ込められた箱の中で、異常が日常となり、箱の中が世界となる。
    繰り返される以上で単調な毎日が続いていく永遠の恐ろしさを感じる。

  • 文芸誌『群像』に掲載された短篇を年代順に集めたアンソロジー。
    1946〜1969年という時代性か、戦争、戦後をテーマにしたものが多かった。その中で異彩を放っているのは矢張り森茉莉である。いきなり三島由紀夫に太宰治を持って来る構成もけっこう凄い。倉橋由美子、河野多惠子が収録されているのは個人的に嬉しかった。しかも倉橋由美子の収録作が『囚人』とは。

  • 3冊の単行本になる前の分厚い1冊の雑誌を3年ほどかけてやっと読み終えた。
    一通り読んで面白かった人の作品は改めて読もうと思ったのだが、ここに至るまでにかなりの体力を要した。

    この文庫に載っている作品で改めて読みたい作家は
    島尾敏雄
    深沢七郎

  • 今のところ「プールサイド小景」のみ読んだ。

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著者プロフィール

本名平岡公威。東京四谷生まれ。学習院中等科在学中、〈三島由紀夫〉のペンネームで「花ざかりの森」を書き、早熟の才をうたわれる。東大法科を経て大蔵省に入るが、まもなく退職。『仮面の告白』によって文壇の地位を確立。以後、『愛の渇き』『金閣寺』『潮騒』『憂国』『豊饒の海』など、次々話題作を発表、たえずジャーナリズムの渦中にあった。ちくま文庫に『三島由紀夫レター教室』『命売ります』『肉体の学校』『反貞女大学』『恋の都』『私の遍歴時代』『文化防衛論』『三島由紀夫の美学講座』などがある。

「1998年 『命売ります』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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