ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain

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  • Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065209004

作品紹介・あらすじ

EU離脱、広がる格差と分断、そしてコロナ禍……。政治、経済、思想、アート、映画、テレビ番組、王室、英語、パブ…など英国社会のさまざまな断片から、激動と混沌の現在を描く、時事エッセイ集。

〈目次〉
君は「生理貧困、ミー・トゥー!」と言えるか
#芸術がウザくなるとき
ブレグジットとUKコメディ
英国英語はしちめんどくさい
エモジがエモくなさすぎて
シェイクスピア・イン・エモジ
パブvs.フードホール抗争に見る地べたの社会学
緊縮の時代のフェミニズム
モナキー・イン・ザ・UK―ーMonarchy in the UK
『Brexit: The Uncivil War』 に見るエビデンスと言葉の仁義なき戦い
Who Dunnit ?  マルクスの墓を壊したやつは誰だ
『負債論』と反緊縮――グレーバーが「経済サドマドキズム」と呼んだもの
グレーバーの考察――労働者階級の「思いやり」が緊縮マインドを育てる
「UKミュージック」なるものの終焉
英国ワーキングクラス映画の巨匠が復活――ケン・ローチとシェーン・メドウズ
多様性はリアルでトリッキーでちょっとハードーーLGBT教育のもう一つの側面
「数字音痴」の弊害――英メディアが常に予想を外す理由
『さらば青春の光』とEU離脱
ブレグジットと英国王室の危険な関係(ちょっとしょぼいけど)
後戻りができないほどの後退
闇落ちしなかったジョーカーーー『ポバティー・サファリ』のロキについて
「言(ことば)」とレゲインーー『プリズン・サークル』が照らす闇
閉じて開いて――ブレグジット・ブリテンの次の10年
ザ・コロナパニックーーわたしを英国嫌いにさせないでくれ
コロナの沙汰も金しだい
ロックダウンのポリティクスーー右やら左やら階級やら
そしてまた振り出しへ
あなたがニュー・ディールですって? 隔世の感にファックも出ない

感想・レビュー・書評

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  • ブレイディみかこ「日英でパートナーをどう呼ぶ? わたしが配偶者を〈連合い〉と表現する理由」〈転がる珠玉のように〉|話題|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/4865

    ブレイディみかこの未来を決めた、アイルランドで出会ったおばちゃんの言葉 | ananニュース – マガジンハウス
    https://ananweb.jp/news/392114/

    ブレイディみかこさんから新刊『ブロークン・ブリテンに聞け』を恵贈いただいた - YAMDAS現更新履歴
    https://yamdas.hatenablog.com/entry/20201109/listen-to-broken-britain

    『ブロークン・ブリテンに聞け Listen to Broken Britain 』(ブレイディ みかこ)|講談社BOOK倶楽部
    https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000344825

  • 「ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー」がとてもよかったので、これも読んでみたら、いやいや期待以上に面白かった!英国社会の「今」が、肌感覚で伝わってくる。と同時に、ここ日本でも当てはまるなあということがいろいろあって、考えさせられた。いくつかをあげてみる。

    ・ネット上では「左翼」や「リベラル」がどんどん侮蔑や嘲笑の対象になっていて、しかもそういう意見を表明する人というのは、従来の枠組みで言えば反体制側に与するのが自然なように思える立場にあることが多いように思う。これには様々な要因があるだろうが、なるほどこういうこともその一つだろうと思えるところが次々出てくる。

    <つまり、主流派の考え方に疑問を投げかけ、体制に反逆するアウトサイダーだったはずのレフトが、いまや主流派そのものというか、ふつうに学校で教えていることを主張するのにいまだパンク気取りで奇抜な方法を用いているから「クール」どころか「むかつく」と言われてしまうのである。>
    <女性差別的な絵を美術館の壁から撤去するというゲリラ的な行為>も<エリート校の壁からヌード絵画を外す厳格な校長先生みたいに見えて人々の怒りを買うのだ>と。

    また、あるコメディアンの発言が引用されている。
    <左派には、高みからモラルを振りかざして尊大になりがちな人がいると思う。多くの左翼の人々は、自分は左派だからという理由だけで自動的に偏見がなくて、寛容な人間なんだと思い込む。それは本当に幼稚で嘘くさい政治的価値観の解釈だ。左派の人の中にも、レイシストやホモフォビックな人はたくさんいるよ> 本当にそうだ。胸に手を当ててよーく考えよう。

    <ひと昔前までは、「抵抗」や「叛逆」が左翼やリベラルのテーマだったが、現代ではそれが「道徳」にスライドしていると言われて久しい。多様性や包摂などのリベラルな概念がメインストリームになるにつれ、「こんなことを言うのは危うい」「こんなことをするのはダメ」と他者の過ちを指摘し、正しさを説くことがその存在意義に変わってきたからだ。> 私は、倫理的であることがリベラルの本質的な美質だと思っているが、「常に自分たちは正しい」とか言いがちであることも確かで、そりゃ反感を買うよね。

    そう!そうだよと膝を叩いたのが「緊縮の時代のフェミニズム」の章。
    <ある種の懲罰性を持つフェミニズムは、緊縮の時代の女性たちをさらに生きにくくしているのではないか。元セックスワーカーだったという職員の言葉が印象に残っている。「いま必要なのは、イデオロギーじゃなくて、シスターフッドだよね」>
    私は自分をフェミニストだと思っているが、筋金入りのお姉様方の前ではなんとなく「スミマセン。中途半端で」とうなだれるような気持ちになる。「そんな生き方ではダメよ」と言われそうだもの。「懲罰性」という言葉に納得。

    ・EU離脱をめぐる混沌とした状況が繰り返し述べられている。「物事をよくわかっていない単純な愛国者が、愚かにも離脱に投票した」という文脈の論を結構見かけたが、筆者は(当然ながら)そうした見方には立たない。
    <EU離脱は文化闘争などではない。重要なのは労働者階級の価値観ではなく、生活水準なのだ。こういう考え方はあまりロマンティックではないかもしれない。が、食えないところにまず必要なのはロマンではない。>

    ・英国では、フードバンクにそのまま寄付できるようにパッケージされた商品が、スーパーの棚に普通に並べられているそうだ。一見すごくいいことのようだけど、よく考えればやっぱりおかしい。貧困を扱った映画を作ったケン・ローチ監督が、その映画をきっかけに貧困者支援団体を助成する基金が立ち上げられたときに出した声明に曰く。
    <ひとつだけ付け加えたいのは、ともかくチャリティーは一時的であるべきだということ。ともすると、チャリティーというものは不公正を隠してしまいがちだが、むしろ不公正の是正こそが最終目的であることを忘れてはならない> その通りだ。

    ・身近な話として面白かったのが「エモジ」の話題。日本の絵文字が英国でもエモジとして定着しているとは知らなかった。イギリス人ってそういうことはしなさそうなイメージがある。著者の友人が「エモジ入りのテキストを受け取ると、エモジなしで返事できなくなる」と言っているが、私もまったく同じだ。反対に絵文字を使わない人には「幼稚だなあ」と思われそうで使えない。「エモジという忖度カルチャー」という言葉には大いに心当たりがあるなあ。

  • 英語区在住の著者が2018~2020年にかけて日本の月刊誌に連載していた、英国の現代事情についてのエッセイをまとめた本。
    ブレクジットや新型コロナウイルスで閉塞した社会状況、疲弊した人々の模様を自身の体験や、あるいはTVや映画等のメディアから、著者独自の鋭い視点で描き出している。

    ちょっと面白かったのは、2018年時点でイギリスでも日本の「エモジ(絵文字)」が人々の間に浸透していたというところ。著者自身は、英国人は絶対こんなものは使わないだろうと思っていたのに、「携帯でSMSメッセージが送られてくるときは、必ずエモジがついてくる。」とのこと。加えて、本文によると、英国のSMSユーザーの80%以上がエモジを使っているとのこと。

    これについて、著者の「エモジというのは、剥き出しの感情をぶつけて他社を困惑させてないように、感情のエッジを除去するものとして使われているのだろうか。」という考察には妙に納得。日本発祥の文化が、まさか英国でもこんなに浸透しているとは、ちょっと不思議な気分がした。

  • 同時期にイギリスにいたので、うんうん。だよねー。と読めました。ブレイディみかこさん、やっぱ文章が面白い

  • 【2018年~2020年】のイギリスの時事をエッセイにしている内容です。
    右翼、左翼、フェミニズム、ブラックライブマター、英国王室、、などなど
    もちろん、EU離脱問題もイギリス内部からよく観察されていてます。
    色々な差別問題が揺り戻しているのを実感しているのですが
    特に印象に残ったのは「差別されている側はケアする側だ」という内容で、これはデビット・グレーバーの著作の中の話なのですが、ブレイディさんの言葉で解説されている部分がとても印象的でした。

  • 2018-2020年ごろまでの英国をつづったエッセー。こうしてみると、本当にこの短い期間にヘンリー王子が結婚から離脱までしたかと思うとブレクジットでコロナで、と出来事の目まぐるしさにびっくりする。

    他の本にも共通するテーマとして
    -左派右派の混線
    (今やレフトの主張が体勢側から教えられる内容にまでなっている)
    -社会の分断は文化ではなく経済
    (階級とか思想で今の世相は一刀両断できない)
    -そんな緊縮財政が生み出した経済格差もブレクジットの一因
    あたりが挙げられるだろうか。

    加えて今回読んでいて面白いと思った論点は
    -財政SM(なぜか緊縮財政の被害を受ける労働階級こそが、なぜか為政者の立場になって財源を心配する「思いやり」が緊縮財政を進めてしまう。また働かざるもの食うべからず的な思想は強者の弱者いじめにつながる)
    -政治ジャーナリストの書きたがる人物対立に隠れて、おふざけキャラ(トランプ、ジョンソン)が躍進する
    あたりか。

    著者自身は自分を無識者と謙遜しているけれど、市井の人として肌で感じた英国を描くに留まらない。そこに英国音楽や映画のネタがうまく組み込まれている上に、関連のニュース記事や書物、世論調査に基づいた情報も随所に散りばめられていて、それはそれはうまくまとまっていて本を読む手が止まらない。きっとこういうごった煮で英国政治を語ったりする姿勢を叩く人がいるのだろうが、英国/欧州政治をしっかりフォローできていない身にとって、社会全体のうねりのようなものをこんなに上手に伝えてくれる人はなかなかいない。次作も楽しみ。

  • 「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」が息子の中学生活を中心に書かれているのに対し、こちらはみかこさんが日々の生活の中で感じたことが中心。連載期間のEU離脱問題から、さまざまなイギリス事情に対して感じるみかこさんの鋭い感覚。

    このEU離脱問題はイギリスの社会状況の変化をみせつけることになったようだ。左派、右派という思想のくくりも違ってきている。また60年代70年代は「既成概念に反抗する若者」という図式があった。それは強固な父権だったり、資本だったりしたのだが、いまは学校でLGBT教育が進み、こうあるべき、と学校で教えられる世の中になっている。「怒りの若者」の矛先が無くなった、あるいは変化した、など鋭い考察に覚醒する。


    「群像」連載2018.3月号~20209月号、

    2020.10.26第1刷 図書館

  • これまでイギリスの社会や政治、文化に馴染みがなかったけれど、未知の話題がどれも面白かった。
    この著者の本を読むのは初めてだけれど、ざっくばらんな語り口でユニークな例えが盛り込まれていたから、私でも分かりやすく楽しめたのかも。
    UKコメディとコロナ禍の社会における職種の価値観の逆転の話題が特に興味深かった。

  • 決して豊かではない労働者層から見るイギリスを切り取り続ける著者の最新作。

    2018年から2020年までのイギリスは、わたしが知っているイギリスよりずっと不安定でイライラしていた。

    大きな理由は、ブレグジットとコロナ。
    それにしても、すごい時代を生きてる。

    イギリスのブレグジットに対する彼らの見解は前著『ワイルドサイドをほっつき歩け』でも読んでいたが、あらためて、イギリスで「左右」「上下」「開閉」「貧富」の差がどんどん開いているなとピリピリ感じた。その点ではとても日本と近く、まるで他人事ではなかった。

  • これまで以上にどっしり深刻な雰囲気。

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著者プロフィール

ブレイディ みかこ:ライター、コラムニスト。1965年福岡市生まれ。音楽好きが高じて渡英、96年からブライトン在住。著書に『花の命はノー・フューチャー DELUXE EDITION』『ジンセイハ、オンガクデアル──LIFE IS MUSIC』『オンガクハ、セイジデアル──MUSIC IS POLITICS』(ちくま文庫)、『いまモリッシーを聴くということ』(Pヴァイン)、『子どもたちの階級闘争』(みすず書房)、『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫)、『他者の靴を履く』(文藝春秋)、『ヨーロッパ・コーリング・リターンズ』(岩波現代文庫)、『両手にトカレフ』(ポプラ社)、『リスペクト――R・E・S・P・E・C・T』(筑摩書房)など多数。

「2023年 『ワイルドサイドをほっつき歩け』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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