ピエタとトランジ (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社
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感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784065295809

作品紹介・あらすじ

親友の名前はトランジで、私はピエタ。
人類最後の「名探偵と助手」だ。

芥川賞受賞第一作『おはなしして子ちゃん』に収録された衝撃作「ピエタとトランジ」が、長篇になって帰ってきた!
天才的な頭脳を持つ女子高生探偵トランジと、彼女の才能に惚れ込み助手に名乗り出たピエタ。
トランジは事件を誘発させる体質で、次から次に周囲で人が死んでいく。
あるとき、トランジに秘められた恐るべき事実が明らかになり、人類は滅亡に向かって――!?

芥川賞作家が送るスリル×サスペンス×友情の、超弩級ガールズ・エンターテイメント!

感想・レビュー・書評

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  • 一見髑髏、よく見ると少女二人が座る昔の挿絵風の表紙と同様に一筋縄ではないピエタとトランジの物語。〇〇事件と言いつつミステリーでもなくチープな百合風味のドタバタ喜劇かと思いきや、気がつくと世界の終わりまで伴走してた。読めて良かった。

    • 111108さん
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪

      やっぱり表紙いいですよね!私も書店で一目惚れして買いました。藤野可織さん...
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは。
      コメントありがとうございます♪

      やっぱり表紙いいですよね!私も書店で一目惚れして買いました。藤野可織さんは最近不思議エッセイ読んで楽しかったのですが、内容が私的にはあまり馴染みないものだったので「なんじゃコレ」と最初かなり戸惑いました。傍らに珈琲を。さんはいろんな物を読んでるので大丈夫かと思いますが‥。

      積読万歳〜私も実際のも心の積読もいっぱいありますよ。楽しみがいっぱいあるということですよね⁈この本もちょっと気分変えたい時に良いかと思います♪
      2022/11/05
    • マリモさん
      こんばんは!この装丁すごいですね。一見するとおっそろしげなのに、言われてよく見てみれば、無垢な少女たちが座っている…。興味そそられます!
      こんばんは!この装丁すごいですね。一見するとおっそろしげなのに、言われてよく見てみれば、無垢な少女たちが座っている…。興味そそられます!
      2022/11/06
    • 111108さん
      マリモさん、コメントありがとうございます♪
      そうなんですよ〜一見おそろしげ→無垢な少女たち→真ん中のは犬?微笑んでるけどあなたたちは何見てる...
      マリモさん、コメントありがとうございます♪
      そうなんですよ〜一見おそろしげ→無垢な少女たち→真ん中のは犬?微笑んでるけどあなたたちは何見てるの?‥と想像が不気味な方へ行ってしまうすごい表紙です!
      2022/11/06
  • 頭脳明晰なトランジは殺人事件を誘発する体質の持ち主で、周囲でどんどん人が死んでゆく。そんなトランジと、彼女の助手であり友人であるピエタのロマンシス小説。
    『おはなしして子ちゃん』に収録されていた『ピエタとトランジ』の続編であり完全版です。

    ずっと文庫化楽しみにしていたので、珍しく発売してすぐに読みました。
    短編集に収録されていた話はピエタとトランジが高校生の時初めて出会った時の話で、こちらはその後の2人、高校を卒業してから大学、就職などのライフイベントを経て、老人になるまでの人生を描いています。
    もちろんその間でも2人の周りでは人がどんどん死んでいき、高校の卒業時には全校生徒が半数以下になっていたり、大学の寮もほぼ全滅。2人の存在は世界の危機へと繋がっていきます。
    見ようによっては、とても綺麗な滅亡の形かもしれない。滅ぶのは世界ではなく、人間だけだから。
    そんな右を向いても左を向いても事件や事故が起こる世界の中、どこまでもどこまでも2人で駆け抜けてゆく、疾走感のあるロマンシス小説。
    とんでもない世界観なんですが、2人の関係性、互いが互いにとってどうしても必要な存在であるという姿にぐっときます。時を経ても変わらない関係・気持ちと変わっていく世界の対比も美しい。
    老人になった2人も出てきますが、それでも最強の「ガールズ小説」だと思います。

    ピエタもトランジも、森ちゃんという新しく出てきたキャラクターもそれぞれとても魅力的なのですが、私は特にピエタがとても好きで、最初の短編でピエタは若く可愛く奔放で、若さゆえにトランジとトランジの引き寄せる破滅に惹かれるようなイメージで描写されているのかと思っていたのですが、年をとってもどんな経験を積んでも変わることなく、どこまでも美しく自由で奔放で、「今までの人生で今が一番輝いてる!」と自信を持って言えるピエタがとても素敵でした。

    表紙がピンク色の背景のドクロの隠し絵というのも、甘さと不気味さがあって可愛いですよね! ちょっとラノベ感のあった単行本の表紙も良かったですけど、こちらの方がイメージに合ってる気がします。

  • 短篇集「おはなしして子ちゃん」に収録された「ピエタとトランジ」が帰ってきた!
    単行本版の書名は「ピエタとトランジ〈完全版〉」だが、文庫化に際して「ピエタとトランジ」と改題。
    「奇想の作家」として凄まじい短編ないし中編を続々発表してきた著者にとって、たぶん最長の作品ではないか。

    テーマや核心に関しては、ネット上の著者のインタビューや、山内マリコの「家父長制を殺しに来た」という書評(すごいタイトル)に言い尽くされていると思う。
    個人的には、読んでいる最中は気づかなかったが意外としっかりコナン・ドイル「シャーロック・ホームズ」シリーズをふんわり下敷きにしていることに驚いた(しっかり、ふんわり、って矛盾しているようだが、この作品においては両立しているのだ)。
    また、青山剛昌「名探偵コナン」ばりの殺人事件呼び起こし体質→黒沢清「キュア」→伊藤計劃「虐殺器官」→コーマック・マッカーシー「ザ・ロード」っぽく、章が切り替わるごとに年数が飛ぶごとに切り替わっていく疾走感が素敵だと感じた。
    探偵こそが悪を誘発するって「コナン」でよくネットミーム的に言われているが、よく考えてみたら結構昔から、むしろ本格系の作家や評論家が言ってきたことと重なるように思う。
    詳しくないのでふわっとした言い方しかできないが、小栗虫太郎「黒死館殺人事件」法水麟太郎や横溝正史の金田一耕助に関して、法月綸太郎あたりが言っていたような。
    とすると本作は本格ミステリを望む向きには適さないが、探偵論を望むコアな読み手の一部には刺さるのではないかと思う。

    てなことをくだくだしく書いてしまったが、素晴らしいバディもの。
    老いに、喪失に、退廃に対して、悲哀も込みで呵呵大笑で笑い飛ばしてしまう、元気の源にもなる、小説だ。

    全12章+エピローグ(?というか元の短編)
    1.メロンソーダ殺人事件
    2.女子寮連続殺人事件・前篇
    3.女子寮連続殺人事件・後篇
    4.男子大学生集団変死事件
    5.海辺の寒村全滅事件
    6.無差別大量死夢想事件
    7.夫惨殺未遂事件
    8.死を呼ぶババア探偵事件
    9.疑似家族強盗殺人事件
    10.傘寿記念殺人事件
    11.高齢者間痴情のもつれ殺人事件
    12.世界母子会襲来事件
    0.ピエタとトランジ

  • 探偵のように頭が切れるが、関わった人間がみんな死ぬか殺人犯になるかする特異体質のトランジ。その親友のピエタ。二人は周囲に巻き起こる事件を解決したり、わざと犯人を逃がしたりして異常な日々を楽しく過ごしていたが、ピエタがもう一人の友人をトランジに紹介したことで、徐々に世界の均衡が崩れはじめる。青春ミステリーみたいなポストアポカリプスSF。


    長く続く探偵シリーズものでよく言われる、「これって探偵自身が殺人事件を誘発する死神体質なんじゃないの」みたいなやつ。あれが実際一人の女の子に備わっていて、しかも他人に感染するという設定。だから高校時代に運命の出会いを果たした二人の青春ミステリーみたいに始まるんだけど、途中で感染爆発が起き、殺人が日常になったポストアポカリプスの終末世界をサバイブするババアたちの姿で終わる、少々アクロバティックなアンチミステリーである。
    そして、この小説はさまざまな〈女の苦しみ〉を描いた小説でもある。読んでいてちょっと鼻白むくらい、女性特有の社会的な悩みがでてきては犯罪の動機になったり被害に遭う理由になったりする。ネットニュースとSNSの議論を見ているみたいな気持ちになるのは著者も折り込み済みなのだろう。一つずつの事件は短く、重たくなる前にピエタのギャル口調でサクサクと斬られていく。だからと言って重たい現実から目を背けろと言っているわけでもない。
    トランジは一人の女の子であると同時に、既成の世界から拒絶された人間の象徴だ。「お前さえいなければ」「お前さえ黙っていれば」と抑え込まれ、それが当然と思われることに反抗する。ピエタはトランジと一緒に暮らす世界を諦めない。それはトランジを抑え込もうとするのと同じ力に、ピエタも反抗している一人だからだ。トランジを拒絶する世界を肯定することは、自分を偽って生きるということだからだ。
    いくつもの事件を通して、二人は世界が自分たちに押し付けてくるさまざまな〈意味〉を剥ぎ取っていく。そうして自分を解放していく。その作業は本来ミステリーとは相性が悪いはずだ。わからないものに意味を付与していくのが謎解きなのだから。現に二人が本当の意味で世界に受け入れられるのは、人々が謎解きを求めなくなってからだ。ピエタはトランジの推理力を誇るが、それはもう「ちょっとした特技」以上の何かではない。既成の価値観が壊れ、ミステリーが解体されると、死をもたらすアンチ・キリストだったトランジもなぜかその隣に居続けることができたピエタも、特別な意味を失ったただの人になれる。『マッド・マックス』+『地球の長い午後』みたいなポストアポカリプス世界が、二人にとっては約束の地だったという結末の清々しさ。
    なぜピエタだけがトランジの影響を受けず、トランジを看取ることができたんだろう。トランジに出会う前からピエタを名乗っていたからだろうか。答えはない。探偵がもし死神だったとしたら、その人を一人にしない助手ってものすごく大事な存在なのかもしれないと初めて思った。

    • 傍らに珈琲を。さん
      がとさん、初めまして!
      がとさんの感想を拝読して読みたくなりました。
      早速今日、入手してきました。

      深く読み込まれていて、文章もお上手で、...
      がとさん、初めまして!
      がとさんの感想を拝読して読みたくなりました。
      早速今日、入手してきました。

      深く読み込まれていて、文章もお上手で、素敵な感想文ですね。
      こんな風に文章が書けたら…と思いました。
      2022/11/05
  • 謎解き要素のない、ミステリィと言えばいいのでしょうか?究極の探偵と究極の探偵助手が出てきます。

  • 最高の二人だった……。誰もこの二人の仲を割くことはできないのだよ、と思うと泣ける。この感じなら、死後もずっと一緒にいるんじゃないかな。
    ピエタとトランジ、この二人のキャラクターが凄く光っていて、二人の関係性が最大の魅力。特殊な体質を持って生まれたトランジに、それに影響されない唯一の人ピエタ。二人とも一緒にいるのが楽しくて離れたくないけれど、決して恋愛対象ではないというのがポイントで、でも運命の人であることには変わりない。この体質について何か根拠があるのかと思ったが、最後までそれは分からないまま、名探偵でも解けない謎だった。他の全ては分かるのに、自分のことが分からない探偵というのも可愛い。
    まさか世界が終末に向かう展開になるとは思わなかったが、"「このままふたりで学校を全滅させちゃおうか」" をずっと続けてきただけなのだなぁと感慨深い。二人でいれば最強なんだなと思った。

  • す、すごい、世界観の本だった、、、
    な、なんかいも読みたくなる

    ミステリー?と分類するには
    あまりにも事件のことが書かれてなくて、
    事件のことは書かれてるんだけど、
    事件を解決するという道筋が書かれてなくて、
    ピエタとトランジの2人きりのストーリーと言われた方が、合点がいく。

    森ちゃん、ピエタが大好きで、執着してたんだろうなー、
    頭がいいからこそ、トランジの事件誘発体質が移っても、なにも思わないと思うから、
    番のような2人が羨ましくて、
    ピエタという絶対的な存在がいるトランジが羨ましくて、
    トランジのことが大好きなピエタにこっち向いて欲しくて、なんだろうなー。

    森ちゃんが、トランジに、ピエタを解放しろっていってからが、特に面白かった。

    実際トランジはピエタから離れて、
    ピエタは、産婦人科医にも晴れてなれたし、
    結婚もできたけど、
    結局トランジといる幸せには勝てなくて、
    ピエタのことをずっと見てたトランジが

    ピエタから離れたけど、結局私といるのが1番なんだよ、ふん。
    って言ってる気がして、よかったなーーー。

    死がふたりを分かつまでね。

  • 表紙や目次の装丁に一目惚れして購入

    関わる人皆が死んだり殺人を犯したりするようになってしまうトランジと
    その影響を最後まで受けなかったピエタ
    ピエタからドランジに向ける愛は真っすぐで、彼女がいない人生に意味がないと思っている
    トランジもそっけない様で、唯一いなくならないピエタのことを想っていて
    2人を百合と表現している所もあったけれど、親友、戦友、の方が私はしっくりくるかな

    ピエタには本名なんて必要ないから、ピエタ以外の名で呼ばれるときは黒く潰されている表現が好き
    本当に彼女の頭にもそう聞こえていたんだろうなぁって思える

  • トンデモ設定を活かしきれてて見事。
    女子高生2人の日常から始まったはずだったのに、気づけばすごい場所へ連れてかれてました!

  • 「……私の近くにいるとみんなろくな目に遭わないから」頭脳明晰な探偵トランジと親友で助手のピエタ。トランジは周りに殺人事件を誘発してしまう体質の持ち主(本人は望んでおらず手を出してもいない)であるゆえ、2人の行く先々で人が死んでいく。時を超え、国境を超え、デストピアを駆け抜けていく壮大な物語。『おはなしして子ちゃん』に収録されていた同名短編が独立して長編になったのが文庫化されたというので読んでみました。凄く面白かった。バタバタと人が死んでいく…という設定は本来私は好みでは無いのですが、ピエタとトランジの二人の関係性の魅力が輝いていてそちらの楽しさが勝っていました。いわゆる百合なんでしょうけど二人の間には性的関係が一切無いのがまた良いですね。
    私に絵を描く才能があれば二人のファンアートを描いてみたいところです。表紙の絵は帯を取ると髑髏になるのがすごいですね。

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著者プロフィール

藤野可織(ふじの・かおり)
1980年京都府生まれ。2006年「いやしい鳥」で文學界新人賞を受賞しデビュー。2013年「爪と目」で芥川龍之介賞、2014年『おはなしして子ちゃん』でフラウ文芸大賞を受賞。著書に『ファイナルガール』『ドレス』『ピエタとトランジ』『私は幽霊を見ない』など。

「2022年 『青木きららのちょっとした冒険』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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