- Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
- / ISBN・EAN: 9784087442946
作品紹介・あらすじ
ホテルには奇跡があふれている。恋愛、親子、職場……豪華作家陣による全編書下ろしアンソロジー。さあ、あなたも一緒に旅しよう。
感想・レビュー・書評
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大沢在昌、桜木紫乃、下村敦史、真藤順丈、東山彰良、平山夢明、柚月裕子『短編ホテル』集英社文庫。
ホテルを舞台にした7人の作家による書き下ろし短編のアンソロジー。
桜木紫乃の『青い本』と柚月裕子の『サンセールホテル』、平岡夢明の『蝸牛ホテル』は流石だと感心した面白い短編だった。大沢在昌の『錦上ホテル』は及第点。下村敦史『聖夜に』、東山彰良『ドン・ロドリゴと首なしお化け』、真藤順丈『グレート・ナンバーズ』の3作は期待外れだった。
桜木紫乃『青い本』。僅か3年間だけ親子関係にあった女性二人の暖かい心の交流を描いた秀作である。ある日、45歳で漫画家のアシスタントで生計を立てる美弥子の元に3年間だけ母親だった絵本作家の高城好子からメールが入る。北海道の温泉宿で二泊三日の時間を一緒に過ごしたいと言うのだ。高級温泉宿で二人で優雅な時間を過ごす中で、自らの死期が近いことを知った好子は美弥子へある依頼をする。その依頼に真摯に応えようとする美弥子。それは……
大沢在昌『錦上ホテル』。楽屋落ちのような出だしに不安を覚えた。冒頭の映文社は集英社を連想させるし、書き下ろし短編アンソロジーというのは本書のことだし、売れっ子美人作家の桜井志穂は桜木紫乃だろう。ところが、読み進むうちにミステリーの要素が浮き彫りになり、面白い展開になっていく。
下村敦史『聖夜に』。あれよ、あれよといううちに物語は進み、読み終えてみれば余り心に残る物が無いという出来としては普通の短編。フィリピンで出会った日本人に騙され、売春婦となった22歳のマリカ・サントスはたまたま客として訪れた日本人の優しさに惹かれ、日本へと向かう。クリスマスの日にヴィクトリアン・ホテルで起きるささやかな奇跡……
東山彰良『ドン・ロドリゴと首なしお化け』。メキシコの療養所に身を寄せる元殺し屋のドン・ロドリゴ。ある日、ロドリゴは介護士のダビッドにかつてロドリゴが暮らしていたという取り壊し予定のホテル・ランゴスタに同行して欲しいと頼む。ライトなホラー短編という感じだろうか。これだけの舞台を用意したのだから、もう少しストーリーにうねりがあっても良いように思う。
真藤順丈『グレート・ナンバーズ』。今一つ状況が入って来ないサスペンス。99階建てのタワーホテルで繰り広げられる殺人劇。ホテルのコンシェルジェが臨月の高級娼婦の命を狙う。
柚月裕子『サンセールホテル』。新人のホテルマンが難しい客のトラブルに巻き込まれるというストーリー。流石は柚月裕子と言うべき短編で、爽快感と感動以外に嫌な気持ちは一切残らない。ある時、デラックススイートに宿泊する水野という女性からホテルにクレームが入る。
平岡夢明『蝸牛ホテル』。このアンソロジーの中では最も奇妙でホラーなストーリー。ここまで徹底的なやってくれれば満足。職を失い、支払われるはずもない未払いの給料に困窮するノマは偶然、蝸牛ホテルでの仕事を得る。誰も客の居ない奇妙なホテル……
本体価格800円
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web集英社文庫2021年7〜9月配信の桜木紫乃:青い絵本、大沢在昌:錦上ホテル、下村敦史:聖夜に、東山彰良:ドン・ロドリゴと首なしお化け、真藤順丈:グレート・ナンバーズ、柚月裕子:サンセールホテル、平山夢明:蝸牛ホテルhôteldeescargot、の7つのホテルをテーマにした短編を加筆修正して2021年9月集英社文庫から刊行。多彩さには拍手。蝸牛ホテルのアイデアが面白く、楽しめた。他、特にホテルを舞台にしなくても成立する話もあるし、振るわない話もあり、玉石混交に感じた。
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最近アンソロジー好きです。
好きな作家さんの作品があって
初めての作家さんとの出会いもあります。
平山夢明『hôtel de escargot』は意味がわかりませんでした。
でも今、他の方のレビューを開いて
この作品が良かったという感想をみつけました。
そういうのを楽しめるのも良いですね。
二年以上「ホテル」というところに行っていないので
懐かしい気持ちになれたもの良かったです。 -
【収録作品】「青い絵本」 桜木紫乃/「錦上ホテル」 大沢在昌/「聖夜に」 下村敦史/「ドン・ロドリゴと首なしお化け」 東山彰良/「グレート・ナンバーズ」 真藤順丈/「サンセールホテル」 柚月裕子/「蝸牛ホテル」 平山夢明
いくつかご紹介。
「青い絵本」絵本作家の義母とイラストレーターの娘。静かで温かい話。
「錦上ホテル」新人作家を世に出す敏腕編集者の退職を祝うパーティ。一人だけ連絡が取れない仲間がいた。自由業に付きまとう不安は払拭できないがゆえの手向けか。
「聖夜に」ヴィクトリアン・ホテルが舞台。客の言葉を信じて売春宿から逃げてきた女と追ってきたヒモ。ホテルマンの機転が楽しい。
「サンセールホテル」新人ホテルマンが経験したクレームの裏には生々しい話があった。素直なホテルの話。 -
読んだことがある作家さんは柚月さんお一人。
想像していたのは、現実にありそうな悲喜こもごもの心温まる物語。
…なんですが、実際はちょいホラーだったりゾクッとしたり不穏な雰囲気が漂う作品がいくつも。
残念ながら全体的に私の好みには合いませんでした。
楽しんで読めたのは以下
*「青い絵本」桜木紫乃
*「錦上ホテル」大沢在昌
*「サンセールホテル」柚月祐子 -
ホテルを舞台にしたアンソロジー。
桜木紫乃先生の『青い絵本』が1番良かったです。たくさんの青と共に、家族のあり方や関係性もそれぞれなんだなぁと感じました。最後はホロッと泣けました。もう1度読み直したいと思いました。
東山彰良先生の『ドン·ロドリゴと首なしお化け』、柚月裕子先生の『サンセールホテル』も面白かったです。平山夢明先生の『蝸牛ホテル』は、平山先生らしい世界観で1番怖かったです。
テイストの異なる作品ばかりですごく楽しめました。おすすめの短編集です。 -
アンソロジーは自分好みの作家さん探しができるから時々手を出す。だいたい初読み作家さんは自分より若い方が多いので感覚が異なることも多い。今回の7作品中3作品は全く理解できないものもあり読了までがしんどいものもあった、いずれも初読み作家さんだった。世代の差はやはり越えられないものがあるのだろうか?暫くは新しい作家さん探しよりも積読になっている旧作を読むことにしようかと思った。
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1つ目の、桜木紫乃さんの「青い絵本」があまりにも良くて、私は大好きな短編となりました。美しくて、じんわり悲しくて、涙を滲ませながら読み終えて、一旦本を閉じ、その切なさにため息が出ました。
短編ってすごいなあって思う。この一作を読むだけで、一冊を手に取った甲斐がある…って思っちゃった。
しかし、それぞれの作家さんの色濃く、どれも面白かった!でも、どれとは言わないけど、先が読めて当たったのも1つ。
それにしても、やっぱり、真藤さんと平山さんの世界観は普通じゃない。特にラストの平山さんは、こお〜〜わっ。
今回は「青い絵本」から好きだったところを少しだけ。(ネタバレしない程度に)
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年をとるということは、言葉を得るということでもあるのだろう。たいがいのことは、言葉で納得できるし、言葉になる。だからーー言葉にしないことも覚えたのだった。
人の心の在処など深追いしたこともない美弥子だったはずが、どうしたことか。
あなたは しっているのだ
こころと こころの
まじりあう こうふくなしゅんかんを
心の棚は便利な場所で、美弥子を苦しめもしないし、救いもしない。ただ便利な場所として視界の斜め上にあった。棚上げが便利なのではなく、目の前にある「やらねばならぬこと」が生きる救いなのだ。
黙るしかない会話というのがある。
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今回、図書館で借りた文庫だけど、この作品、桜木紫乃さんのどこかの短編集に収録されないのかしらん? -
7人の作家によるホテル短編集。
柚月裕子が入っているので買ってみた。
やはり、柚月裕子の「サンセールホテル」が面白かった。なんとなくマスカレードホテルに似ている。
桜木紫乃の「青い絵本」も母と娘のいい話だった。 -
アンソロジーにありがちな、読める話と読めない話が織り交ざる。書店で並んでいて気になっていたけれど、図書館で借りて正解。
『青い絵本』は最後にほろりと涙が出た。
『錦上ホテル』の思い出もいいな。