抱擁、あるいはライスには塩を 上 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087451504

作品紹介・あらすじ

東京・神谷町の洋館に三世代で暮らす柳島家。子供たちを学校にやらないという教育方針だが、四人の子供のうち、二人が父か母が違うなど、様々な事情を抱えていた。風変わりな一族の愛と秘密を描く傑作長編。

感想・レビュー・書評

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  • 三世代、百年にわたる、大きなお邸に住む柳島家の歴史。
    4人の兄弟姉妹たちは学校に通わず、家庭で厳しく教育を受けてきたが、ある日突然父の提案で学校へ行くことに。
    何とも変わった家族である。外国のおとぎ話のようにも思える。
    物語に身をまかせる心地よさがたまらなくいい。
    なめらかな文章、読み応えのすごさに圧倒される。
    下巻が楽しみ。

  • 高貴なお家や、高貴さというものについて考えた。
    (ちょうど漫画の「はいからさんが通る」を同時期に読んでいて、お屋敷とか名家とかが描かれていた)

    家族はすごく個人的なもので、興味深い。柳島家はすごく変で、かわいらしい。

  • 神谷町に三世代で棲む柳島家には変わった教育方針があり、それは大学入学までは学校に通わせないというもの。子どもたちは家庭教師の元で勉強をし、それ以外の時間は思い思いに家で過ごす。そんな浮世離れした一族だが、世代を経るにつれて少しずつ変化が訪れる──。

    柳島家を何世代にも渡って自分の目で見てきたかのような江國さんの筆致力。章ごとにひとりひとりにスポットライトが当たり、現在と過去を行き来しながら物語は進んでいく。世間に馴染めず元の住まいに戻ってくる柳島家の人たちは、人間らしいというよりはどこか動物的な、帰巣本能に従っているように感じた。まるでここでしか生きられないよう育てられているかのように。百合の元義家族のほうがおかしいことは誰の目にも明らかであるのに、世間との交わりを絶ってきた百合自身にはそれが分からないことにはなんだかやるせない気持ちになった。閉じられた世界で生きることの幸福と絶望が上巻では描かれてる。

    本を閉じても、図書室の空気、食堂室の鳩のステンドグラスをすぐそばで感じている。これから彼らはどうなるのだろう。下巻も楽しみ。

  • 神谷町に住むお金持ち一族の話し。

    その家族で決められている独特なルールと
    世間一般との常識的ルールの差に戸惑ったり、憧れたりする親と子と兄弟姉妹の話。

    読みやすかったし、お金持ちの気分にならる。

    下巻も楽しみです。

  • 三世代にわたる物語。最初は「はぁ?」て感じで失敗したかと思ったけど、読み進めるうちに引き込まれました。 一般的な価値観から言えば変わった家族なんだろうけど、お互いを思いあって結びついていて、こんな家族いいな、と思う。

  • 「なんでも好きなことをすればいい、ただし僕の手のひらの上で」


    駅まで送ってしまうと、帰り道が危ないという理由で、岸部さんは決まって私をアパートまで送ると言いだす。抗議しても無駄で、事実私たちは――おそろしく馬鹿馬鹿しいことだが――夜道を何往復もしたことがある。話し足りなくて、あるいは、別れがたくて。最近では、駅から一度ひき返し、半分まで来たところで互いに手を打つことになっている。きょうはそれを省いた。時間をかければかけるだけ、淋しくなるからだ。

  • まいど、一瞬主人公がわからなくなるところから始まる。
    語り部が一人じゃないのは読みづらさはあるけど、とても楽しく感じる。

  • 自分の中で感情とか状況の把握とか迷いない判断とかを整理整頓できない人ほど芸術が必要なのだ。そうやって外の世界を吸収したり発信したりするやり方で世の中との接点を作る。
    んじゃないかなあと思いました。

    ある一族の世代を超えた物語。といえばガルシアマルケスで桜庭一樹で。全然興味なかったけど読んでみようかなあ。
    江國香織さんの書いた本の中でも私は好きなものと嫌いなものがはっきり分かれるけどこの本は好き。
    基本的にエッセイが一番好きで小説、短編集は苦手だったけど(きらきらひかる、は特別で大好きでものすごく泣いてしまう)、好きな本リストに一冊加えられました。

    異質なものを排除しようとする動き、そうされることに対する過剰反応はもうほとんど暴力で読んでいて辛かったけど、その分幸せな家族の風景の描写が際立って心が暖かくなりました。冬に読む本だな。

  • 東京・神谷町の広壮な洋館に三世代十人で暮す柳島家。子供たちは学校に通わず、家で家庭教師に勉強を習うという生活を送っていたのに、急に4人兄妹(女、男、女、男)のうち3人が親の命令で学校に通うことになるのが第一章です。

    ちょっと風変わりな大家族の物語。語り手は主にこの家族の誰か、ですが時々その家族にかかわっている他人の目で語られることもあります。一人称の上、語り手は名乗らないし、時系列で話が並んでいるわけじゃないので、最初は戸惑いました。誰の話か、わからないんだもの。
    でも、巻頭にある家族の紹介を読んで、何話か読んでいると自然にわかるようになりました。
    確かに変わった家庭の話ですが、派手な話はあまりないので好みが分かれると思います。

  • 時代遅れの教養ある家族のお話。
    その教育指針や人生への態度は、世間一般に許容されるものでは決してないが、こちらの方が実は正しいのではないかと思わせられる。

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著者プロフィール

1964年、東京都生まれ。1987年「草之丞の話」で毎日新聞主催「小さな童話」大賞を受賞。2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2010年「真昼なのに昏い部屋」で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年に「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2023年 『去年の雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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