蛇にピアス

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087746839

感想・レビュー・書評

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  • なんだ、この小説。意味わかんないのに、全く感情移入できないのに、一気読みしてしまった。こんなに休憩無しにノンストップで読んだのは初めてかもしれない。本の厚さもあるだろうけど、全く引っ掛かることなく、すらすらと読めてしまった。
    感情移入できないし、共感もほぼできないのに、なぜか彼らを受け入れてしまえた。これは、自分にも彼らと同じ、共感できる部分が少なからずあるからだろうか。こんなに狂った人々と共通している部分があるなんて、にわかに信じがたいけれど、よくわからないまま受け入れるという、ある種の矛盾した解釈をしている。

    こんな人たちに比べれば、自分の周りにいる人たちは、ひどくまともだと思える。「ひどく」まとも、なのは、「まともであることが正義ではない。正しいのではない」と思えたから。この人たちも人間だし、私たちと同じような身体の造りで生きている。主人公に至っては、特別な環境で生きてきたわけでもないのだろう。それでも、今まで自分が生きてきた世界とはかけ離れた世界観で生きている。一本隣の道を歩いていたら、自分もそんな世界観に囲まれて生きていたかもしれないと思う。いや、一本どころでは済まないか。

    思わず作者がどんな身なりをしているのか、気になって調べてしまった。髪は染めてるけど、特別身体を弄っているような様子はない。「鈍い痛みと鋭い痛みが交互にやってくる」なんて表現、自分が体験せずに降ってくるものだろうか。きっと、多くの人に取材をしていくなかで、こんなおもしろい表現をする人に出逢えたのだろう。素敵な出会いだ。こうした見た目の人々に話を聞きに行くということ事態が、勇敢で、ユニークだ。人々へのリスペクトすら感じられる。本当の意味で、「見た目で人を判断していない」人なのだろう。純粋に人に対する関心が高い人だとわかる。

    2人の男の登場人物も、なかなかに際立っている。この三人であるからこそ、この物語になったし、もしこの三人でなければ、全く違うストーリーになっていたのではないかと。この三人だからこそ、1つの物語として成り立っているのではないかと。
    シバさんが、アマを殺すなんて展開も全く予想できなかった。事実なのかはわからない、という締め方もこれなら納得してしまう。まさしく、この3人だからこその結末だ。

    自分はあまり無気力になったことがないけれど、こういう瞬間もやってくるかもしれない。そのときには、この小説を思い出すだろうが、決して読み返してはいけない気がする。いわゆる、世間一般に言われる「良くない方向」にいってしまいそうな気がするから。

    でも、この作品が芥川賞に選ばれるとは、ちょっとびっくり。もっと堅苦しい文体が受ける賞だと思っていた。確かに、文に魅せられてしまった感は否めないが、少し芥川賞自体のイメージも変わった。

    世界は自分が知らない世界の集合体なのだ、と教えてくれる作品だ。
    「凄いものを読んでしまった」感はあるのに、その凄さを全く表現できない、面白さを感じられる。

  • 昔芥川賞受賞時に読んだものを思い出し登録。描写が過激でわりと苦手で、同時受賞の綿矢りさは今も好きでずっとほぼ買ってるくらい好きだけど、金原ひとみは何となく苦手。お父様の翻訳本は好きなんだけど。

  • 読了後の余韻に浸っています。
    すごく好きな作品です。

  • いつか読んだ

    読んだ後すごく後味悪かった
    でも嫌いじゃない

  • 「現実味がない。今自分が考えていることも、見ている情景も、人差し指と中指で挟んでいるタバコも、全く現実味がない。私はほかのどこかにいて、どこかから自分の姿を見ているような気がした。何も信じられない。何も感じられない。私が生きていることを実感出来るのは、痛みを感じている時だけだ」という表現がとても刺さった。
    アングラな世界には縁がないけれど、そこで懸命に生きる同世代のルイに、そしてその先にいる金原ひとみさんに、自分と同じようなものを感じたとともに、こんな小説が書いてみたいなぁ、と思った。

  • 何が言いたいのかと言われるとよくわからないけど、みたことのない世界を覗いているゾクゾク感があってページ数が少ないこともあり一瞬で読み終えてしまった。
    完全体でこれ以上でもこれ以下でもない感じ。完成されてるなと思った。

  • 文章化不可能なものを渦状に書きなぐったようなデビュー作。いや、書きなぐるというほど無自覚でもなく、アドリブの向かう先を偶然に委ねた感じでもないか。
    .
    金原ひとみの作品を続けざまに読んだが、視線の上下運動がない作風がいいなあと。女性の一人称の形式のまま、神的目線が挟まれるわけでもなく、蟻的目線が挟まれるわけではなく、ひたすら一人称女性が藻搔き苦しむ。
    .
    明日もなく、大きな場面移動もなく、ブンガク的な自意識の七転八倒があるわけではなく、祈りもなく、打開もない。人生そんなものだという安直な喝破があるわけではもちろん、ない。
    .
    それでも、めくるめく愉楽があり、胸の空白を埋めてくる何かがある。太宰的な風味とも言えるのかも。今後も読む。

  • 芥川賞作品
    読書入門には丁度良いのではないか。
    好きな人は好き。世界観が嫌いな人は受け付けないかなぁ。

  • よくわからなかった。私にはまだ早かった

  • とにかく、痛い本だった。

    舌をスネイクタンにするのってあんな方法なんだね。
    そこまでしてやりたい気持ちがわからん・・・

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2004年にデビュー作『蛇にピアス』で芥川賞を受賞。著書に『AMEBIC』『マザーズ』『アンソーシャルディスタンス』『ミーツ・ザ・ワールド』『デクリネゾン』等。

「2023年 『腹を空かせた勇者ども』 で使われていた紹介文から引用しています。」

金原ひとみの作品

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