政と源

著者 :
  • 集英社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784087806854

感想・レビュー・書評

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  • ダメンズころがしの三浦しをん、今度のダメンズは後期高齢者、下町すみだに住む 国政と源二郎。
    これが章ごとの挿絵が少女マンガ調で面食らう。

    初出は集英社のCobalt というライトノベル系の雑誌らしい。読者層はティーン女子およびそのOG層.....
    うぅむ、そこにジジイふたりをぶつけてくるとは......

    戦災孤児になった源二郎はつまみ職人になって生き抜いてきた。かけおち同然で結婚した恋女房には先立たれて天涯孤独だが、若い弟子をとって生き生きと暮らしている、ように国政には見える。
    その国政は、源二郎ほどには戦争の被害に合わず、大学を出て銀行につとめ妻子も得て穏やかに暮らしてきた、つもりだったのに妻に出て行かれて独り身をかこっている。

    戦争という歴史の記述でしかなくなったものに人生をひっかきまわされるさまを描きたかったのか?モノはなくても精神的に明るかった昭和の空気を描きたかったのか?なんでもいいけど、まぁじいさんたち可笑しいです。

    源二郎の弟子のたのまれ仲人を引き受けさせられた国政が苦肉の作で毎日妻にはがきを送る。
    これがいい。

    やっぱり爺さんが読んだ方が参考になるかもしれない。

  • つまみ簪がなんだかわからず思わずググってしまった。73歳の老人2人組が主人公なのに、少女漫画風の挿絵と源二郎の強烈な個性のためか、とても若々しい感じがする不思議な作品でした。墨田区には確かに水路が多いけれど、こんな風に舟を自転車や車のように使った生活があったなんて、思いもしなかった。とっても風情があるし、そんなところに視点を落とした三浦しおんに脱帽。面白かった。

  • しをんさん、すごい!だって、老人の話ですよ。老人の心境や細かな感情を、ここまで描けるなんて、ほんとにすごいです。これは読む人の年代によって読後が違ってくると思いますが、若い人にはピンとこないかもしれない。
    それでも、いつかこのすごさがわかったら、それはちょっと哀しいかもしれません。
    若者たちも出てきますが、良い味だしてます。お仕事に打ち込む姿を描くのも、はやはりしをんさんならでは。

  • リタイア後、或いは伴侶を亡くした後、持つべきものは、長年の友と住み慣れた町なのだと思いました。それと、かわいい若者達に刺激をもらって、まだまだ人生これからだという本でした。
    おじさん?おじいさん?達が主役という高齢化社会にぴったりの本。
    作者のレパートリーの広さに脱帽です。

  • 堅物の爺と職人気質ながらも飄々とした爺の2人のじじいの物語。ザックリ言ってしまえばそんなかんじですが、基本的なやり取りはコミカルで、過去と違う今の違いとか、過去の本人たちのストーリーとか。
    少し皮肉を交えたりだとか。
    年をとったからこそ素直になれないところもあり国政が不器用ながらも信頼しているところが印象的でした。
    そのうち映像にでもなりそうな、わかりやすいストーリーでした。

  • 元銀行マンでお堅い政と、幼馴染みでつまみ簪職人で、自由奔放の源。墨田区にすむジジイ二人。リタイアし、死を身近に感じるようになった世代の気持ちの変化と変わらぬ友情と。いい空気感。源の弟子の徹平ちゃんと、彼女のマミちゃんもいいキャラ。

  • 「うちの親父、イチブジョージョー企業でばりばり働いてるんす」
    徹平が言うと、どこかから水漏れしている企業のように聞こえる。






    「なにごとに関しても、『堅実』なんてことはありえねえよ。ゴールも正解もないからいいんじゃねえか」
    「そうかな」
    「そうさ」
    源二郎は、桜色の羽二重が風になびくのを見やった。「だから生きるんだろ」





    *・*・*・*・

    いやーーーーー、良かった!!!
    まほろ、なあなあに続く名作第三弾!!!!あ、でもほかにいいのいっぱいあるか。とにかくよかった!
    笑うところもたくさんで。老人の寂しさと子どもっぽさ。生きるって。
    幼馴染ってやっぱりいい。それと、下町。いいなあいいなあ

  • 国政の請い文というか恋文が堪らない……。

  • 人前で読むと笑いをこらえるのが大変なのでやめた方がいい。幼なじみの愛情、結婚前のカップルの愛情、師弟の愛情、熟年夫婦の愛情がたくさん。堅物な政が嫁に宛てた手紙が泣けたな

  • 東京墨田区の下町に暮らす政こと国政。
    元銀行員である政はひたすら真面目に
    家庭を振り返ることなく働き続け
    70歳になったある日、妻が出て行った。

    つまみ簪の職人で子供の頃からの幼馴染
    源こと源二郎は政から見れば破天荒な暮らしをし
    ハチャメチャなのに頭は良くないが人の良い弟子と
    賑やかに暮らしている。
    それが政には羨ましくもあり…

    とにかく「何故、BLっぽい(失敬)
    挿絵が入っているんだ…」と
    気になって仕方なかったですが
    読み終わって最後を見て納得。
    これ、コバルトで連載されていたのですね…!
    このじいちゃんばっかり出てくる話を
    少女小説雑誌で連載していたというのがすごい…!

    三匹のおっさんのようにじいちゃんが活躍するというより
    政が幼馴染の源二郎へのコンプレックスというか
    自分にないものを沢山もっている姿に嫉妬したり卑屈になったり。ほぼ正反対ともいえる二人なのに、
    お互いに信頼しあい、長い時を共に過ごしてきた。
    源への僻みで喧嘩した後もそれがきっかけで
    自分のことを振り返ったり…

    出て行った妻のことも自分は必死に働いてきた、
    何も悪くないと言い張っていたのに
    一緒に仲人をしてもらうためとはいえ
    一生懸命葉書を書き続けているうちに
    自分の気持ちにきちんと向き合えるようになり。

    ただ、途中、一人でしんみり過ごす夜とか
    一日がすごく長いとか妙にリアルな描写に
    可哀相になってきてしまって…
    最後、後味のいい終わり方で本当に良かった…

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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