白い巨塔〈第5巻〉 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101104379

感想・レビュー・書評

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  • 平成24年10月12日読了。

  • 遂に最終巻。ということで、最終的な感想を。

    財前のような名誉欲の塊みたいな医者でも、医者を志し始めた頃の初心は、おそらく皆が「多くの患者を救える医者になりたい」であろう。
    だが、「ともだち100にんできるかな」と言いながらをピカピカのランドセルを背負った小学1年生が、クラスメイトに些細な悪戯を仕掛けるようになったり、毎日課される宿題に嫌気が差したりと、次第に薄汚れていくかように、財前もまた、大学病院という封建社会に身を置くうちに、初心を置き去りにして汚れていってしまったのではないか。
    一見すると、大学病院の権力闘争でのし上がっていった、強欲で汚い教授に見える財前も、もしかしたら環境による被害者なのかもしれない。

    ともすれば、大学病院の権力闘争とは何の関係もない我々にとっても、このような話はまるで他人事ではない。
    小さなコミュニティでも、大きなコミュニティでも、何らかの社会に常に属している我々。そこで様々な価値観と触れ合いながら、どれだけの人が己の初心を、正義感を、最期まで貫き通すことが出来るだろうか。
    そんなことを考えさせられる作品であった。

    最後に、山崎豊子の取材力に敬意を表しておく。

  • 読み始めたら止まらない。古さを感じさせない筆致の圧倒的な力量。間違いなく名作です。

  • 圧巻の全5巻。そのページ数ゆえ、最初の1ページをめくるのには躊躇いがあったが、一度ページを進めると途中で止める事ができず、あっと言う間に読んでしまった。
    まず、本作品を書いたのが、医学関係者ではなく、医療について素人の著者である事に驚きを隠せない。そして刊行が昭和40年、書かれたのが昭和30年代とはとても思えない。
    内容が現在の医療の内情とかけ離れていると信じたいが、本当に素晴らしい小説は時代を超えても色褪せないものとあらためて思ってしまう。

    物語は勧善懲悪的な顔を見せつつも、ひとりの人間が過ちを犯す原因は本人だけに責任があるわけではないと言う、警告も与えているように思える。
    また、最後に財前教授が見せる医学への姿勢に、罪を憎んで人を憎まずという言葉を思い出す。

    ☆5としたいところですが、同著者の『沈まぬ太陽』『大地の子』と比べてしまい結局4つとしました。

  • 財前の姿には痛ましさを感じます。里見の誠実さも目にしみました。

  • 完読できたのが、よかった。
    にしても、取材力がすごい。
    最後がズンとくる。

  • 後書きを読んで初めて知ったのですが、4巻5巻は続編だったのですね。

    もし、3巻までの話だったら
    やるせなさ過ぎる。。。

    財前、自分の死期が近くなってようやく
    患者側の気持ちが解ったなんて、何だかとっても皮肉です…。


    最期まで、財前は財前だったけれど
    やはり胸をうたれました。


    もしかしたら、周りにがんじがらめにされていた財前も
    被害者の一人なのかも知れませんね。

  • 大学病院での教授選に誤診その他のドロドロしたことには必ず汚いお金が動く‼ 今ではそんなことはないと断言できるのかな?(´・_・`)

  • 何百人もの癌患者を救ってきた財前が、自身も癌に蝕まれてゆく。

    裁判・選挙と自身の地位のための裏工作に納得いかないと思いながらも、財前の急逝には胸を痛め、もっと財前という男を見ていたかったと思った。この感情は里見が抱いているものと似ているかな。

    再読も読み手が止まらない面白さ。また何年か後に読み返したい作品。

  • 2011年12月21日読了。財前は学術会議会員に当選、佐々木商店は倒産、医局員柳原は良心の呵責に煩悶する中、弁護士たちが真相究明(あるいは糊塗)のために奔走し、2年以上続く誤診裁判の控訴審の判決が下り、そして・・・。読み始めたときは大学病院の権力闘争や暗部を露悪的に描いた小説なのかと思っていたが、「人間の尊厳を問う」的なあおり文句は伊達ではなかった。「目的の達成のために最短経路を迷いなく突き通そうとする」財前は、外科医としての能力が優秀すぎたのと、野心を実現させるためには実は「いいやつ」すぎたのだろうか、終盤で彼が見せる弱気がとても哀しい。癌は早期発見命、転移した後であれば化学療法で延命するしかないというのが当時の治療の限界であったようだが、現在の癌治療はどこまで進歩しており、大学病院はどこまで開かれた世界になっているのだろうか。

  • 全5巻の文庫版を購入したため、もともと『白い巨塔』は1~3巻までで完結しており、4、5巻は強い社会反響から書いた続編だったということを知りませんでした。

    たしかに3巻の終わりは救いがないように感じられました。

    正義が勝つとは限らない。これが現実。

    そうは言っても、小説なんだから、そんなことがまかり通ってはいけない!! という結びにして!!!!
    というのが、当時の読者の言う“小説の社会的責任”なのかな?

    わたしとしても、3巻の結末は悲しかったけれど、続編の結末は小説や連続ドラマの完結編らしい結びで、現実味が薄くなったなぁ、とそれはそれで残念でした。

    読者ってワガママね(笑)

    ハッピーエンドとリアリティーと、まとまりのよさを兼ね備えるなんて無理なのに。
    だいたいリアルでまとまりのよいことなんてないんだから。

    やっぱり3巻で完結に納得。

    今巻、柳原医師が初めて真実を証言したところは、「ぅよっしゃっ!!」と、かなり力んで読みました。
    彼の最後に選んだ道も出来すぎていて、ちょっと興ざめ。

    2巻ではかなり嫌な奴と思ったけれど、だんだんこんなふうにしか生きられなかった財前教授が可哀想に思えてきました。

  • 医者の不養生
    学閥

  • 言わずと知れた小説。今更ですが、読んでみました。
    ただの胃潰瘍なのに、ばんばんオペで摘っていくところに、時代を感じました。今なら良い薬があるのに。。
    「一人の人間の命の前には、どんないきさつも理由にならない」
    グッとくる台詞だなぁ。

  • 1〜5巻まとめて。
    1~3巻は、まさに財前が助教授から教授になり、国内外で認められ、と彼がのし上がっていく様が凄かった。医師会や大学のOBまで絡んで来ての教授選の攻防など、人間の権力や金に対する欲望や弱さが伝わるものだった。財前を悪と言いきってはしまえないけれども、患者のためを思い、正義を貫いた末大学を追われた里見助教授のことを考えると、正義は悪には打ち勝てないのだと思った。山崎豊子の本では比較的善・悪がはっきりしていると思う。善と悪と言うよりは、自分の信念を曲げず、人を貶しめたり、汚い手を使えない人間と、目的の達成のためには手段を選ばない人間と。でも決して手段を選ばない人間が非人情な人物であるわけではなく、そうした人間描写が面白い。特に白い巨塔の財前は、封建的な大学病院ではなく、柵のない環境ならば、違った人物であったのではないかと思う。

    4~5巻では、財前が控訴され、裁判に負け、また癌の専門医である彼自身が癌に侵され倒れる。あれほどに自身に満ち溢れていた財前が、過去に犯した医療ミスによって動揺したり、精神的に影響を受けるなどの姿もみられた。最終的に彼は癌で亡くなるが、完璧な勝者は存在しえないし、人生の中で勝ち続けることは難しいと思った。

    女性として一番愛しているのはケイ子で、人間として一番信頼しているのは里見だという一節には、なぜか涙が出てきた。

  • 熱心にみたドラマの印象が強すぎて、頭の中では常に、唐沢寿明と江口洋介をはじめとしたたくさんの出演者が動き回っていた。あれはおもしろかったなあ。

    ラスト間際の「自分が一番信頼している人間は里見で、」という部分が強烈。

    ドイツに行っている間が、一番財前がリラックスできた時だろう。
    学会での発表、高名な学者との会話、ドイツの研究所やホロコースト跡など様々な施設へ出かける中に、彼の飽くまでなき医学という学問への追究心が窺える。
    もし財前が飛び込んだ舞台が大学病院という、金や地位や名誉を求めて人々が暗躍する封建社会でなかったら、
    と考えたときに、財前の魅力がみえてくる。

    そういったものがなくなった時、自分が死の淵に立った時に、ようやく里見が一番信頼に足る人物としてあらわれてくるのだなあ、と思った。
    実際、最終章だけ読むと彼の黒い部分は全く感じ取れない。

    それにしてもドラマチックだ。山崎豊子の小説は、くたびれたシャツの柳原、髪に油気がない里見、そして海坊主財前又一、といいこれでもか、とキャラクターが際立っている。
    柳原「嘘だ!!」と最後の東教授の手術は泣ける。

    話知っていたせいか、あっという間でした。優雅にサイパンの白い砂浜で白い巨塔、いい思い出です

  • おもしろかったー。

    財前教授の誤診をめぐる控訴審と、財前教授が更なる権力を手にいれる学会選挙の結末が描かれた最終巻。結局のところ、いかに権謀術数に優れていても、神の手を持つ名医であっても、所詮は一人の人間。自らにかせられた運命には逆らえないということがよくわかった。


    山崎豊子rip

  • ドラマと並行して読み進めていたが、活字と映像の長所短所を再認識した。
     私には音響演出・視覚の影響の大きさは絶大であるが、登場人物の細やかな心理を推測するには、小説のほうが分かりやすく思えた

     山崎豊子氏は、大阪の空気、自然そして人間を小説で描きたかったそうだが、一方的な視点でなく社会の暗部、葛藤を生々しく描いており大変考えさせられた。

  • 最終巻。

    あっと驚くエンディング。財前五郎の運命やいかに・・・

  • 兎に角めっちゃくっちゃ面白かったです。
    超オススメ本です。
    ちょっと長いけど飽きさせないので安心して読み始めてみて下さい。

  • 臼杵などを舞台とした作品です。

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著者プロフィール

山崎 豊子(やまざき とよこ)
1924年1月2日 - 2013年9月29日
大阪府生まれの小説家。本名、杉本豊子(すぎもと とよこ)。 旧制女専を卒業後、毎日新聞社入社、学芸部で井上靖の薫陶を受けた。入社後に小説も書き、『暖簾』を刊行し作家デビュー。映画・ドラマ化され、大人気に。そして『花のれん』で第39回直木賞受賞し、新聞社を退職し専業作家となる。代表作に『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など。多くの作品が映画化・ドラマ化されており、2019年5月にも『白い巨塔』が岡田准一主演で連続TVドラマ化が決まった。

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