ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫)
- 新潮社 (2004年8月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181608
感想・レビュー・書評
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筆が乗っているせいもあるんだと思うが、なかなか面白い。
あんまり知識がない当方でもついていけますし。
でもやっぱりカエサルという人物に逆に人間味を感じないと思うのは、当方が天邪鬼だからか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カエサル46歳から50歳までの物語。8年におよぶガリア戦役もついに終わる。一方、ローマでは三頭政治が崩れ、カエサルを危険視する元老院派が攻勢に出る。カエサル派ではマルクス・アントニウスが登場。でもなんといっても今巻ではラビエヌスが印象に残る。全然知らない人だったけど、こんな男のドラマがあったなんて。
そして40歳でローマの政治の表舞台に立ったカエサルは、50歳でルビコン川を渡る。 -
この下巻では、壮年期の前半のガリア戦役の6~8年まで収録されています。
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「進もう、神がみの待つところへ、われわれを侮辱した敵の待つところへ、賽は投げれた!」
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カバーの銀貨について
壮年前期 Virilitas (承前)
著者:塩野七生(1937-、北区、作家) -
ガリア戦役後半で、ヴェルチンジェトリックス率いるオーヴェルニュ族が中心となったガリア諸民族の総決起により、軍事的には最大の局面を迎える。
危機においてその人物の本質が浮き彫りになると考えると、この局面に対するカエサルの対応は、軍の総司令官としての彼の総合力を十分に発揮したものと言えると思う。
これまでもライン渡河やブリタニア遠征でも見られたが、カエサルは会戦の指揮においてのみ優れていたのではなく、現代でいう工兵の役割を十分に理解し、戦闘の前から考えられる限りの手を打って会戦に臨む。
そして、ひとたび会戦に入ると、臨機応変の指示を出すとともに最前線で軍団を鼓舞することで、兵力のもつ力を最大限に引き出している。
このようなカエサルの総合力が、内外合わせて30万強のガリア軍に対して5万の戦力で勝利を収めたアレシアの攻防戦を通じて、鮮やかに描かれている。
一方で、政治の面での最大の局面が、ガリア戦役を終えた彼に対して出された「元老院最終勧告」であろう。
元老院派がもはや三頭ではなく一頭として力を持ちすぎたカエサルを追い落とそうとしたこれらの攻防において、カエサルはガリアでの戦いとはまた違う、政治家としての本質を見せているように感じた。
軍事は状況把握に基づく決断と実行であり、その結果が全てといえる営為であるが、政治は結果が求められることも確かであるが、その過程における正当性も、結果に対する評価を大きく左右する。
カエサルにとっては多様性を持ったヨーロッパ世界の覇者となったローマをその姿に相応しい政体に変革することは、何としても成し遂げたい結果であっただろうが、同時にそれを法の支配(元老院の支配ではない)の中で達成するべきというのが根底にあった思いなのではないかと思う。
そうであるからこそ、圧倒的な軍事力を手中におさめ、民衆の支持も十分にありながら、スッラのようにクーデターまがいの形でローマ領内に軍を進めることにをよしとはせず、ガリア戦役の戦後処理と並行して数年間をかけて元老院での法律論争と政治的な駆け引きを続けたのだろう。
カエサルに最後の決断をさせたのは、元老院派が放った「元老院最終勧告」という政治的な矢であった。この、カエサルの意見では「元老院の越権行為」である勧告が出されて、ついに彼も実力の行使でしか局面が打開できない状況に至ったことを、(逡巡しながらではあったが)結論づけるに至ったのだろう。
そしてカエサルはルビコン川を渡る。
政治家としてのカエサルの本質を、ルビコンの前を丁寧に描くことで浮き彫りにした本巻の叙述は、カエサルほどの人物を深く知ることの面白さ、奥深さを十分に感じさせてくれ、読み応えがあった。 -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
カエサルのガリア戦記後半が書かれている。
前半とは異なり、ガリア側にも有力な指導者が登場し、ローマとガリアの最終決戦といった内容となっている。しかし、カエサルがガリアで戦っている間にローマの政治は刻一刻と変化し、最終的にはカエサルに大きな決断を強制することとなったわけだ。 -
ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫)
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内容 :
ガリアの諸部族の粘り強い抵抗に苦しみながらも、8年にわたる戦役を制し、ついにカエサルは悲願のガリア征服を成し遂げる。
しかしその間、パルティアではローマ軍が敗北し、軍を率いていたクラッススが死亡。
「三頭政治」の一角は崩れ、カエサル打倒を誓う「元老院派」はこの機に乗じてポンペイウスの取り込みを図る。
新秩序樹立のためのカエサルの壮絶なる孤高の戦いが再びはじまる。
著者 :
1937年東京生まれ。学習院大学文学部哲学科卒業。
「ルネサンスの女たち」でデビュー、70年以降イタリア在住。
著書に「海の都の物語」「わが友マキアヴェッリ」など。 -
先輩に薦められ手に取った作品。
教養として古代ローマ史を学びたい方の必読書です。
ハンニバルからカエサルまで一気に通読してしまったぐらい面白かったです。