ローマ人の物語〈10〉ユリウス・カエサル ルビコン以前(下) (新潮文庫)
- 新潮社 (2004年8月30日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101181608
感想・レビュー・書評
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「賽は投げられた!」―紀元前49年1月12日のことだった。ユリウス・カエサルは、ついにルビコンを越えたのである。ここを越えることは、すなわちローマにとって国賊となることを誰よりも知りつつ。この場面では、塩野ローマ史の特質が遺憾なく発揮される。ただ1人、カエサルから離反してティレニア海側から密かに国境を越えたラビエヌスをここで描くことがそれだ。表面的にはけっしてそうではないのだが、実はカエサルにとってきわめて内的なドラマが、そこに静かに描かれるのである。まさに歴史家ではない、文筆家塩野七生の面目躍如である。
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カエサルのガリア戦役6年目から7年目のガリアの将来を完全に決定付けることになったアレシアの戦いの完勝、そして8年目の戦後処理。さらにその後のローマでの反カエサル陣営の先鋭化とその政治的攻防について。その帰結がついにルビコン渡河となった。ガリア戦役の推移についても、ローマでの政争も同じ戦いとして興味がそがれる場面は一瞬もない。元老院の寡頭制から帝政への一大転換期の夜明け前。
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「進もう、神々の待つところへ、われわれを侮辱した敵の待つところへ、賽は投げられた!」
この終わりは次を読まざるを得ない。
戦記は当然ドラマチックだが、ルビコンを渡る直前の政治的駆引きもそれ以上にドラマチック。
ルビコン以前が終わったらガリア戦記の予定だったが、これは予定を変更してルビコン以後に進もうか悩む。
ローマ人の工兵能力、凄まじいなぁ。 -
賽は投げられた!
カエサルの言葉だとは知らなかったです。
カエサルは暗殺された、ぐらいしか知らなかったので、微妙なイメージでした。
が、この物語を読んで私の今までのイメージは歪んでたのがわかりました(笑) -
紀元前60年~前49年1月(カエサル40歳~50歳)
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ガリア戦役もヴェルジンジェトリクスを破って終わりを迎えるこの巻。
アレシアの攻防戦でのローマ軍陣地のつくりは、紀元前のものとはとても思えないものである。
アレシア城内の敵と、それの援軍を同時に迎え撃つための考えであるが、並の人間には考え付かないものである。
創造をはるかに超えるカエサルの行動は、何度見てもわくわくさせられるものである。
そしていよいよカエサルがローマへ向かう。
「犀は投げられた」。 有名な言葉である。
三頭政治の二頭が戦うことになるとは寂しい限りである。
そして、ラビエヌスの離脱。
その離脱の状況が最後に書かれているが、しんみりしてしまった。
さぁ、いよいよ次巻はカエサル対ローマである。
楽しみだ。 -
クラッススが死んだ。率いる4万の部隊はあっという間に消滅。総司令官がダメだと昔なら全滅になりかねないところが怖い。ダメな指揮官の下に就くことになったら、やっぱりとっとと逃げるしかないだろうな。一方、カエサル。アレシア攻防戦で5万にも足らない兵で、内側・外側からの34万の敵を撃破。読みに迷いが生じないところがすごい。有能な総司令官であれば数の違いは問題にはならないのだろうな。そして、三頭政治の最後の一頭、ポンペイウス。いよいよ元老院派へ。塩野七生が、虚栄心と野心で説明しているのが興味深い。ついに「元老院最後勧告」が提出される。カエサルはルビコンを前に迷う。「賽は投げられた!」そして、ラビエヌスは去る。盛り上がりまくり!