- Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101201429
作品紹介・あらすじ
「一日コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますかね?」ストレスに耐えかね前職を去った私のふざけた質問に、職安の相談員は、ありますとメガネをキラリと光らせる。隠しカメラを使った小説家の監視、巡回バスのニッチなアナウンス原稿づくり、そして ……。社会という宇宙で心震わすマニアックな仕事を巡りつつ自分の居場所を探す、共感と感動のお仕事小説。芸術選奨新人賞受賞。
感想・レビュー・書評
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前職で10年以上まじめに仕事を続けた結果、燃え尽き辞めてしまった30代半ばの女性が主人公。当面のつなぎとして異なる5つの仕事を経て、自分と仕事との距離感と価値観を取り戻していく物語。
書店で見つけ、表題名に同調し、衝動買いに至った。
「みはりのしごと」「バスのアナウンスのしごと」「おかきの袋のしごと」「路地を訪ねるしごと」「大きな森の小屋での簡単なしごと」など、しごとの着眼点がユーモラス。
初著者作品だったが、言葉選びのセンス、放つタイミング、時に刺さる散りばめられたパワーワードがグイグイと私のツボを貫いてくる。兎角シュールなのである。
私は通読時に登場人物の台詞によって心を揺さぶられることが多いのだが、本作品は【地の文】にこそ共感できるポイントが綴られている。
よって、読み飛ばせない読み飛ばしたくないという感情が働いて、隅々まで隈なく読み耽る読書に至ったのは、初体験だったのかもしれない。
楽しい仕事を選んだつもりでも結果しんどい。
なぜならば…の先に、読者それぞれの答えがあろう作品であった。
そして私は、私なりの答えを見つけ受け取った。
きっと私は、ずっとしんどいであろう。
私は生涯、きっとそちらを選び続けるのであろう。
それで良かろう。それが良かろうもん。詳細をみるコメント1件をすべて表示 -
著者初読み。コラムなどで筋が通った面白いこと言う人だなぁと思ってたら本書もそうだった。「マニアックな仕事を巡りつつ自分の居場所を探すお仕事小説」とあるが、本当にありそうな不思議な仕事やいろんな人、謎解きもどきも出てきてずっと楽しく読んだ。
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私も伊坂幸太郎さんに似たものを感じました!「とにかく家に…」も読もうと思ったので、共感ばかりです。私も伊坂幸太郎さんに似たものを感じました!「とにかく家に…」も読もうと思ったので、共感ばかりです。2023/04/26
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ちいこさん
おはようございます!
コメントありがとうございます^^
ここに同じことを感じられた方がいらっしゃって嬉しいです!
津村さんは...ちいこさん
おはようございます!
コメントありがとうございます^^
ここに同じことを感じられた方がいらっしゃって嬉しいです!
津村さんは、エッセイを読んで以降、なかなか触れられていないのと、伊坂さんの作品も最近は読んでないんです…
ちいこさんにコメントいただいて、久々に触れたくなってきました~
ありがとうございました!
また是非、遊びにいらしてくださいね!2023/04/27
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何となく仕事で行き詰まってた時に目にした本だったので手に取ってみました。
ストレスに耐えかねた主人公が、職安で紹介された、ちょっとマニアックな仕事を転々とする物語です。
どんな人でも信じた仕事から逃げ出したくなって、そこからずり落ちてしまうことがあるのかもしれない。
自分の居場所を見つけられることができる仕事。なかなか見つけられないと感じる。
ただ祈り全力を尽くすだけだ。どうかうまくいきますように。 -
とても面白かった。
もしかしたら、雇い主はそこまで期待していなかったのではないだろうか。
でも、どうせやるなら面白いほうがいい。
とことん楽しんでいるような気がする。
「おかきの袋のしごと」:
そうかもしれない。食べながら読込んでしまうことはないでしょうか。
あるある。
でも、ただ書けばいいわけではなくて、万人に安心して読んでもらって、それでいて、うんうん、って言ってもらえるような、そして、つぎはなにかな~、というような期待感。そんなものを持ってもらえる、自分にしかできない作品を仕上げていく。
フジッコさんでしたっけ?吹き出し付きのイラストが作られてしまったところは笑った。退路を塞がれてしまったというか。でもちゃんと仕事をこなすところ。いいですね。
「大きな森の小屋での簡単なしごと」:
うちの近くの大きな森と対比させながら読みました。
大きさも似ているかもしれない。とても1日では回り切れない森なのだけれど、そこで発見していく。
はんのき、調べてみました。
でもよくわからない。あれを食べるの?
うーん、きっとうちの森にもあるのだけれど、白樺にも似ていますね。もう少し調べてみます。 -
働いてお金を稼ぐって甘くない。
自分の代わりはいくらでもいるけど自分にしか出来ないこともあるんじゃないか。
ん〜、おもしろ、、、かったけどー。ちょっと中だるみ。次の展開が気になってページを捲る手が止まらないって事はなく、時間かかった。 -
出版社の若手社員が書いた帯文言に惹かれて購入。
恵まれた職場、向いている仕事なのに、ふとしたことで働き続けることへの躊躇に襲われて仕事を転々とする主人公に、つい自分を投影してしまった。同じような感想を持った方もいたようでした。
多くのエピソードで、「楽な仕事のはずなのに、ついのめり込んで、要らぬ苦労を背負い込みがち」「それに喜びを感じることもあるし、背負った苦労に潰されることもある」という点が共通しているように思いましたが、共感する読者も少なくないのでは。
そうはいっても向き合っていくしかないよね、仕事ってそういうものだよね、と腑に落ちつつ、「しんどくなったらすぐ仕事を変える」という選択がどこか羨ましくも感じます。 -
津村さん初読 文庫の表紙裏の写真がちょっと尖ってって良いね。
長く勤めた前職をバーンアウトした後、安定所で働けそうな仕事を紹介してもらい、お試し転職を繰り返している、36歳、独身女性。
自身にとってストレスが少ない仕事を探して、試行錯誤。仕事に対して真面目なんですね。契約した仕事には、きちんと向き合ってしまう。続けていけそうなんだけど、妥協できそうにない所には、妥協しないで次にいく。
世の中こんな仕事が!といのも、多々ありますから良いんじゃないですか。たやすい仕事は無いけれど、納得できるものはあるかもしれない。
ラストを主人公が受け入れる長い職業体験のようでしたね。職種からのバーンアウトか、職場からのバーンアウトかの把握は重要かも。
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働きすぎで疲弊してしまい、長年勤めた職場を退職した女性が
ハローワークから紹介された仕事を一つずつ経験していくお話です。
その仕事内容は少し独特なものばかりで、
みはりのしごと
バスのアナウンスのしごと
おかきの袋のしごと
路地を訪ねるしごと
大きな森の小屋での簡単なしごと
の5つです。
一見、どの仕事もめっちゃ楽そうやん…と思うのですが、なんだかんだで(時には奇怪な現象が起きたりして)苦労する羽目になってしまいます。
やっぱり、タイトルのとおり
「この世にたやすい仕事はない」のでしょうね。。。
お金を稼いで、自分の力で生きていくって大変ですよねぇ。しんどいですよねぇ。
けれど、折々の良い出会いや新しい発見などを活力にして、何とか前に進んでいかなくちゃ。
皆、もがきながら頑張っているんだなぁ…と思わせてくれる作品です。
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前職で燃え尽き症候群に陥った主人公が職を転々とするお話し。
最初のうちは黙々と淡々と誠実に仕事をこなしていくのだが、慣れてくると段々それでは飽き足らなくなってしまう。「このままの状態でコツコツと仕事を続けた方が幸せなんじゃ」と思うのだが、次第に余計なことをしたり、過度な情熱を注ぎ込んだりしてしまうので「これではバーンアウトした最初の仕事の二の舞じゃ」と読んでるこちらが心配になる。しかし、転職するたびにこの傾向は強くなり、、、
津村記久子お得意のお仕事小説。
主人公は仕事と愛憎関係に陥る人だ。このタイプの人にとって、この世にたやすい仕事はないのだろう。
せめて毒でも吐いて発散して欲しいのだが、今回はシニカルな発言も控えめ。津村さんの少しナナメから見たような醒めた視線が好きなのだが、ちょっと残念だ。