- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101240589
感想・レビュー・書評
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こんなにも繊細で彩りが深いサイドストーリーがあるだろうか。
十二国記における主役である、王や麒麟が出てこない物語は味気ないのでは...と思いつつ読み始めればそれは全くの杞憂であった。
十二国記の世界は、ここにある民ひとりひとりによって成るものであり、民自身が主人公なのだ。
各話で登場する職業も世界を形成する大事な要素で、各話主人公たちが、各々の目的や思いで自分の仕事を全うする姿に胸を打たれながら読みを進めた。
王が崩御し、荒廃した国で暮らす民の思いや生活、彼らが生きる盧、山、道、川、木々や動物たちが十二国記の世界を紡いでいた。
いかに生きる世界を愛するか、自分に出来ることに真摯に向き合い全うするか。それが民(読者自身)が主人公として生きるということだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
『感想』
〇十二国記の世界にはいろいろな立場の人がいるのだろうが、本筋とかなり離れていて、入り込みにくかった。 -
短編集。「落照の獄」がいちばん好き、というより、全く世界の造りが違うけども悩みどころは同じなんだな、と。
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十二国記シリーズで、これまでに読んだのは、講談社X文庫。そう、中学生くらいを対象にしたストーリーでした。十代の登場人物の成長を描くことで、思春期の読者の心の発達を促す、的なストーリー展開。
この作品は、一般文芸として、新潮文庫で完全版として出ているもの。だからなのでしょう。大人向けです。王とかに麒麟とかそういう選ばれし人々の話ではなく、役人とか、村人とか、極々普通の人の生活やら仕事ぶりに焦点をあてた作品。
内容的には、お仕事ものなので、本来大人なら共感しうるものなんでしょうが、小難しくてなかなか入って行けませんでした…。漢字が多い、登場人物が多い、名前も役職も土地の名前も、何がなんだか分からなくなって流し読みです。
あ、私、40代のいい大人ですけど。
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2019年に待望の新刊が発売されたが、「そういや、コレ読んでなかったな」と、図書館で拝借。
本編が全然進んでいない・一部の国の話しか描かれていない状況なので、読み進めていくうちに「やっぱり本編が読みたいんだよ、私しゃ……」と改めて強く感じ、後半2話は、斜め読みすらする気も起きなかった。
でも、死刑制度が題材になっている「落照の獄」は読みごたえがあり、考えさせられた。
なので、あえて「評価なし」で。
もし今後、本編が進んだ際、再読すると楽しめるのかもしれない。 -
十二国記エピソード5の「丕緒の鳥」。4つの短編が収録されていました。
王の話でもなく、麒麟の話でもなく、民の物語。ヒーローの物語ではなく、ゲームで言えばNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の村人や兵士の目線にたった物語。
景王や泰麒や延王や延麒の、胸躍るファンタジー冒険物語の裏側に、自らの力では何もできない、その他大勢のNPCたちがいること、ただ必死に生きている民がいることに気付かされる。その民たちが感じている痛みや思いが、現実を生きる私達にメッセージを訴えかけているように感じられる。
それにしても、ヒーローファンタジーの世界観に、ここまで細かい設定が組み込まれていることに驚きます。民から見た世界、民から見た常識、民から見た政治。何という作り込み。これを読んでから、長編を読み返した時に、天上を支える小さな民たちの力があることを思い出せたなら、さらに厚みのある世界観になるでしょう。 -
一番好きな巻かもしれない。
とにかく一つ一つの話が素晴らしい。
それぞれの国民と官吏たちのもつ社会の幅、暮らしぶり、考えなど。より十二国記の世界ににふくらみを持たせるストーリー。
学生のころに読むのと、社会人になってから読むとのでは全然違う印象です。
特に私は公的な仕事に関わることになったのでめちゃくちゃ考えさせられることがありました。 -
十二国の世界でテクノクラートたち、それぞれの物語。
儀式のための飾り職人、裁判官、森林管理官、自然科学者。
象徴政治のありかた、死刑の是非、環境破壊、アカデミアの独立性。課題はどれも現代に通じるものだが、それぞれに素晴らしい想像力で濃密な細部で彩られていて、紛れもなく十二国の物語になっている。
蘭の話は、ジャック・ロンドンの『火を熾す』に似てる。 -
異世界ファンタジーなんだけど、死刑制度や治山に関すること、災厄の中一般庶民がどう生きるか何ができるのか等、現代日本にも通じる内容で、考えさせられる短編集。
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丕緒の鳥
序盤は初めて出たキャラクターなこともあって、展開が読めなくて、読みにくかった。
でも、最後の陽子の式典では綺麗な陶鵲ができて良かった。せつなくて綺麗そうだから実際に見てみたい。陽子には丕緒と蕭蘭が伝えたかったことが伝わったようで良かった。
蕭蘭が予王によって殺された可能性が高いのはほんと悲しい。
落照の獄
日本には死刑があるけど、本当に死刑ってするべきものなのか考えさせられる話だった。
死にたくて死刑になりたくて凶行に及ぶ人もいる。だからといって、死刑ではなく終身刑にしても税金でその犯罪者を養う必要がある。
本当に難しい。
青条の蘭
過去と現在と時系列が交差した構成になっている。
最後の多くを語らない書き方が幻想的で良かった。ずっとどこの国の話なんだろうと考えながら読んでた。
標仲の想いが伝わって、青条の蘭を民が代わる代わる運ぶ様に涙が出た。報われて良かった。 -
最新作へ向けてひたひたと読んでいる。シリーズにおいて5番目に位置する本書は、これまでの怒涛に展開する長編とは異なる短編集。陽子が即位した景国を言ってしまえば地味に、しかし震える描写でもって描いた『丕緒の鳥』。『落照の獄』ではひたすら暗鬱とした気分に沈み、しかしもう少し信じてみようと顔をあげられたのが『青条の蘭』。運命とはなんぞやと慟哭しても足りぬ悲しみがあった『風信』は、けれど春近しの小さな暖かさを灯す。名もなき男たちの在りように、勝手に希望や失望を感じた。次は『華胥の幽夢』。それを読めば、さあ辿りつく。
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長編は、完璧なハッピーエンドではなく、「すべてがうまく行くことはない。でも、頑張れば何か変えられる」ことを感じさせてくれるけど、短編は長編よりも少し「うまくいかない」感が強く、その分、描かれる光がより際立ってる気がする。
「青条の蘭」の、思いを繋ぐ最後の畳み掛けが心を揺さぶる。 -
yomyomに掲載されていた短編二編+描き下ろし短編二編。いわば「主役」の王たち 、麒麟たちの怒涛の物語、ではなく、王と普段触れ合うことのない役人や庶民たちの切実でぎりぎりとした短編でした。王がいない時代って怖い……。
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待ち焦がれている十二国記の続きじゃないからと数年積ん読しつづけてようやく手に取ったけど、もっと早くに読んでおけばよかった。タイトルにもなっている丕緒の鳥の話の作り込みが特に素晴らしく、砕け散る陶鵲の澄んだ音が聞こえてくるかのよう。
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待ちに待った十二国記!
誰もがそう思うシリーズ。
私はこのシリーズを,勝手に「人生のバイブル」と称している。
十二国記シリーズにしては,本作は珍しい視点で,短編四編すべてが「雲の下の人々」の話。しかも,一話目から四話目にかけて,だんだん雲海の上からかけ離れた人物が主人公となっていく。 -
今回は短編集。ちょっと暗い内容だったけど、その世界にすぐ入り込めた。
どの話も、ラストの余韻がよかった。 -
「希望」を信じて、男は覚悟する。慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうか―表題作ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。
「Bookデータベース」より
最後の解説にもある通り,ファンタジーでありながら,リアルな描写からファンタジーでないような感覚で読める4つの短編集.
どうしようもない現実に立ち向かう4編の中の主人公たちには「清廉」ということばがしっくりとくる.厳しい現実に向き合いながら,そこから前向きになれる要素を見つけることができることが救い. -
十二国記シリーズ
スピンオフ、短編4作
王が斃れ、あるいは道を失った国の荒廃、官民の苦悩などが描かれている。
夜明け前がいちばん暗いよね。うん
どの国も平穏が来るといいな
でもね、やっぱり本編が読みたいのです
王と麒麟の話。 早くーーー!!