- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101240589
感想・レビュー・書評
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十二国記シリーズ
スピンオフ、短編4作
王が斃れ、あるいは道を失った国の荒廃、官民の苦悩などが描かれている。
夜明け前がいちばん暗いよね。うん
どの国も平穏が来るといいな
でもね、やっぱり本編が読みたいのです
王と麒麟の話。 早くーーー!!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小野不由美さん、2013年発表の小説、十二国記シリーズの短編集。4篇の短編からなる十二国記の物語りなのですが、長編での主役格の人たちは第一篇の最後に陽子がちらっと出るだけです。それぞれにとても完成度の高い作品ですが、青少年向け啓蒙の書といった趣きが強く、私のような大人が読むと少々辟易とするようなところがあります。
第一篇は表題作「丕緒の鳥」、宮廷での儀式の中で行われる、クレー射撃のような(銃ではなく弓を使うのですが)見せ物に関する物語り。この催しのためだけに宮廷に職人集団が抱えられており、管理する専門の役人がいる、という税金の無駄使いとしか言いようの無い世界の物語りで、職人がこの催しの中にいかにして民の思いを込めるかと思い悩む話なんですが・・・。
最後の場面が美しいからまあいいか、と思える作品。
第二篇「落照の獄」は殺人鬼を死刑にするかどうかを役人たちが延々議論すると言う物語り。かつて王が死刑を廃止した国で、しかし残虐非道な殺人鬼が捕らえられ、死刑に処すべしとの世論が沸騰、下級の役所でも死刑が支持され、王は判断を役人に丸投げ・・・。
近年の日本での死刑を廻る議論をそっくりそのまま再現してるだけのような何だか芸の無い作品と感じます。最後の場面が、まあ深読み出来なくはないですが・・・。
第三篇「青条の蘭」は荒廃した国で山毛欅に奇病が発生、周囲の無理解の中、何とか対策をと苦闘する下級役人たちの物語り。途中、エコロジーの基本中の基本について懇切丁寧に語られ辟易します。最後は善意のリレーのような物語りになり、何だか拍子抜けします。まあこういうのもありでしょう。
第四篇「風信」はこれまたエコロジーの教科書的物語り。荒廃した国で親兄弟を殺され逃亡した少女が農民のために暦を作っている役所に拾われ、そこでの生活の中で癒されて行くと言う話。この最後の物語りが一番良かったです。 -
シリーズのファンの方には物足りないだろうけれど、小説としては本編よりも素晴らしい作品だと私は思う。
特に『青条の蘭』、人々がわけもわからず希望を繋いでいくシーンは涙なしには読めない。 -
表題作を含む短篇集。
十二国記シリーズ最新作、「長編じゃないのかー」と残念に思いつつ買いましたが、やっぱり良いですね。最近小説を読まなくなっていたけれど、夢中になって読みました。 -
難しい。
それぞれが国の有り様を示している。
各国各様の事情に即した色々な問題がある。
でも、もっと王の即位の物語が読みたかった。 -
十二国それぞれの国で暮らす民の話。
王と麒麟の話を読みたいと思って開くと肩すかしを食らいます。
しかし設定はものすごくファンタジーなのに、出てくる人達のリアルさは流石。
死刑について考えてしまうとは。 -
2年前に新刊で買ったのに半分しか読めてなくて、やっと全部読み終わった。
他の十二国記に比べて地味だし満足感は少ないけれど、大好きなシリーズ。
5年振りに再読。
4篇の市井の民の物語。やっぱり地味だけど、そこがいいのかも。
表題作以外はほぼ記憶に残ってないが、今読むと「青条の蘭」が印象深い。民の一筋の希望を、リレーして途切れそうになるけどギリギリ繋いでいく物語。 -
私にとっては「乗り過ごしに注意」な一冊です。
真摯に生きる無名の人々の物語。その思いが届くこともあれば、届かぬままで割り切れない気持ちになることもある。どちらにしろ前に進むしかありません。
一番好きなのは「丕緒の鳥」、簫蘭の「(楽しいことが)そこにしかないんじゃなくて、そこだけにあるの。」という言葉が印象的です。ラストの2ページは読むたびにじんわりときます。丕緒の心の変化の落ち着いた先、そして陽子のこれからの闘いを思うと、色鮮やかに目に浮かぶ情景にもため息がでます。
一番頭と気持ちをかき回されたのが「落照の獄」、一人の犯罪者の死刑の是非を巡るひとびとの心の動きがずっしりきます。これを読んでジョン・グリシャム氏の「自白」を思い出し、再読中です。 -
とても世俗的な内容に感じた。十二国記の世界は好きなので、世界に住まう民のお話はそれはそれで面白いし、このシリーズの根幹をなす部分だとは思う。
でも同時に、やっぱり王と麒麟が主役として織り成す物語が読みたい、という気持ちにもなった。新作長編はよ! -
十二国記短編集。面白いんやけど、長編の方が好きかなーという感じ。
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十二国記の短編集。市井に生きる人々の物語。
辛い場面もあるけれど、最後は幸福な余韻に包まれて終るのが良い。いつもの長編と比べても引けを取らないほど、好きな短編集です。
個人的には青条の蘭で舞台となっている国を想像をしながら読み、首都の名前が出てきた時にとても興奮した。標仲が道中で出会った人の中に、尚隆がいるような気がして…少し気になる。 -
十二国記シリーズ、久々の短編集。
丕緒は祝い事や賓客があった時などの祭礼に際し、弓を射る儀式の的にする陶鵲を誂えることを職務としている。この度、慶に新しい王が立った。その式典の為の陶鵲の用意を依頼される。しかし、丕緒はどうしても、陶鵲を造ることができずにいた……。(「丕緒の鳥」)
他、落照の獄、青条の蘭、風信の計四編。
王や麒麟たちは出てこない、徹底的に民の話。丕緒の造る陶鵲の描写が美しくて、ため息。
落照の獄は大量殺人を犯した罪人を裁くことになった司計(日本でいう最高裁の裁判官みたいな立場かな?)の話。死刑が廃止になって久しい柳の国の末期の話で、ここで死刑を復活してしまっていいのか?と思い悩む話。犯人はほんとどうしようもない。非常に重く読み応えのあるはなし。まあ読んでる最中は早く清花リリースしちゃえよ!と憤ってしまったが、それもまた要らないものを切り捨ててしまえばいいのか、と問われている気分になる。
青条の蘭は山を犯す疫病を食い止めようと必死で薬を探し、それを王に届けようとする小役人の話。この苗がただ一つの希望、そのことを役人にも民にも理解してもらえずひたすら走る標仲。ちゃんと王に届いたのだろうか、その結末は明らかにされていないところがいい。標仲の必死さに気付いて手を差し伸べてくれる人がいたところにうるっときた。
風信は、予王の女を排除せよというおふれのせいで家族を殺された少女が主人公。逃げに逃げて暦を作る人々のところで厄介になることになるが、そこの住人が余りにも浮世離れしていて呆れてしまうのだが……。という話。ほんとにしみじみ、予王はどうしようもない。
どの話も、最終的にハッピーエンドかは明らかになっていない。死刑を復活させて本当によかったのか、希望の種は届き、疫病は止まったのか、新王が立ったことで、本当に何もかも良くなっていくのか。
本編の方でも陽子は迷い悩みまくりで、陽子が全て救えるわけではない。国がどうなっていくのかはわからない。それでも陽子はこういう、王の在不在に揺れる人々の希望になる存在になっていってくれたらいいなという思いが強くなった短編集だった。読めてよかった。
どうせこの雪なので十二国記シリーズ読み直すかのう。 -
数年ぶりの新刊。
今回はいつもの主人公たちである王や麒麟はあまり登場しない。
国管のピラミッドの中でも底辺のあたりにいる人たちの話。
それも、王がいなかったりと時代も辛い時期。
それぞれが、自分たちの役割に気づき力を尽くそうとする。
十二国記の世界の復習にもなった。
本編の新刊が出るのが待ち遠しい。 -
4つの話からなる短編集。国のため、民のために、懸命に職務を果たそうとする人々の物語。登場人物たちの必死さに心打たれる一方、「これでいいのか?」という、焦りや無力感も伝わってくる。それでも、国を動かせるかどうかはともかく、一生懸命さは、だれかに伝わるものなんだなぁと感動した。伝わるまでの道のりが、あまりに長く、遠いものではあるけれど。そして、わずかな「光」がさしたとき、さらに多くの人々の心を動かすのだろう。
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十二国記ファンのための短編集、であるとは感じた。
だけどもその根底には、あらゆる境遇に置かれていても日々を生き、自身のなすべきことは何かを悩む人々がいる。
王のための民ではなく、民のための王、民なくしては王たりえない。
民は様々な艱難辛苦があろうとも生きている、仙にとってみればたかたが60余年の人生を。
このことを徹頭徹尾訴えかけてくるものだから、今日の政治とは何ぞや、と思ってさえしまう。
もちろん王や仙も、ほとんどは元は民であり、だからこそ何が出来るのか、何をなすべきなのかをひたむきに考え生きていく。
ファンタジーでありつつ、自分を重ね合わせることの出来る稀有な小説だと思う。
短編集をきっかけに、十二国記の世界にぜひ足を踏み入れてもらいたい。
シリーズを通して読み、考えてからこそ、この短編集はより深く響くものであると思う。 -
十二国記シリーズの最新刊です。長いブランクを経て刊行された本書。長編ではなく、短編・中編ばかりなので物足りなさが残るかもしれません。けれども、主人公陽子が苦労して王の務めを果たそうとしているその影で、民も苦悩している・・・。そして共に歩み出そうとしている「丕諸の鳥」は今後のシリーズの続刊を期待させてくれます。早く長編が読みたいなー・・・。
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「十二国記」の新作ですが今回は、王ではなく、国を支える役人の仕事と民の生活に焦点を当てた外伝的短編集。傾きかけた国で、国のため、民のため、自らの職務や役割を全うする男たちの話。現代社会に通じる社会的で重たいテーマを見事に十二国記の世界に投影させ、もともと重厚な設定の十二国記の世界にさらに奥行きを与えています。
本シリーズを読んでいない人にもぜひ読んでみてほしい短編集ですね。
『丕緒の鳥』
祭礼用の鳥型の的を作る役職の男の話。射儀と作品を通して何かを伝えられるのか、何のためにどんな作品を作るのか、悩みながらも新王即位のために作品を作る男。何かを表現できる技術があるからこその悩みだなぁ。
『落照の獄』
死刑制度の是非に真っ向から挑んだ作品。非常に重い。情と理のせめぎ合い。法律の仕事をする旦那とその妻の考え方の違いがリアル。一番心に残った作品。傑作。
『青条の蘭』
一途に山を救おうとする男たち。その想いは何かを変えられるのか。今回、最も展開のある話だったので、短編であるのがもったいない気分に。
『風信』
暦をつくる役職の男たち。世間知らずと言われようが、現実を見ていないと言われようが、できることをやるしかない。それが自分たちにしかできないことで、自分たちがやりたいことであるならば尚更。 -
待望の十二国記最新刊。どこの本屋にも積んであったので、いつでも読めると思うと手に取る機会を逃していた。長期出張のお供として購入。
「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」の4つの短編が収録されている。どの話も流石のクオリティだが、一番好きなのは「青条の蘭」。権力もない下級役人等、国を救うために命を賭け、名もない人々も協力し大きな物事をなすというこの感じがすごく好き。「風信」も良い。卵が野木になるという十二国記ならでは設定や世界の過酷さを静かに伝えながら、それでも希望を忘れない。これだけでは物足りないので、早く長編新作が読みたい。