- Amazon.co.jp ・本 (485ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101250236
作品紹介・あらすじ
伊坂幸太郎著の重力ピエロ、映画化もされ話題となりました。
兄弟に焦点あてたストーリーですが、弟は同じ母親から生まれたもののなんと、父親はレイプ犯。衝撃的な設定のストーリー。しかし重苦しさを感じさせずしかし兄弟や家族の絆もみられ、兄弟が事件について考えるなどミステリー要素もあります。どんどん引き込まれあっという間に読んでしまいますが結末も衝撃的です。最後まで驚かされます。
感想・レビュー・書評
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1.著者;伊坂氏は小説家。大学卒業後、システムエンジニアとして働きながら小説を書き、文学賞に応募。デビュー作「オーデュポンの祈り」で新潮ミステリー倶楽部賞受賞。その後、作家専業となる。「重力ピエロ」で世に認知され、「アヒルと鴨のコインロッカー」で吉川英治文学新人賞受賞。「ゴールデンスランバー」で山本周五郎賞受賞、「逆ソクラテス」で柴田錬三郎賞受賞。氏の著書は米・英・中国・韓国、等で翻訳刊行。
2.本書;兄弟と父母の4人家族には、過去に辛い出来事があった。弟(はる)は、亡き母がレイプされて出来た子という設定。過酷な境遇の中で、連続放火と火事を巡る事件が始まり犯人捜しする物語。家族4人の性格描写が見事で、味わい深く、ミステリーというよりも感動的な兄弟・家族愛に溢れた小説。本書は、大きな賞は取っていないが、直木賞・本屋大賞・・等の候補になりました。勲章なくとも読み応えある作品です。
3.個別感想(心に残った文章を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
(1)『父の病気とピカソ』より、「人生というのは川みたいなものだから、何をやっていようと流されていくんだ。・・安定とか不安定なんていうのは、大きな川の流れの中では些細な事なんだ」&『エンジン、円陣、猿人』より、「生きるって事はやっぱり、辛い事ばかりでさ、それでもその中でどうにか楽しみを見つけて乗り越えていくしかない」
●感想⇒人生の安定と不安定は、経済面と精神面があります。川の流れの中では些細な事と言っても、簡単に割り切れません。経済面は身の丈に見合った生活をするしかないでしょう。しかし、精神面はそうもいきません。人は、家庭・仕事・・等で言うに言われぬ悩みや辛さを経験します。重要なのは、対処法と思います。私の場合、次の二つで勇気付けられてきました。①師と仰ぐ作家の本を読む。②家族を思いやる看護師の話を思い出す。彼女は青森の中学を卒業し、都会に出て昼間に働きながら、高卒資格を取る為に、夜間高校で学びました。彼女だけがモンペ姿の通学です。ある時、男子生徒が「働いているのだから少しはオシャレしたら」とからかいました。彼女の返事は、「弟と妹を進学させる為に仕送りしているから無駄遣いしない」と。私はこの実話を聞いた途端、目頭が熱くなりました。世の中には、私よりもっと苦労している人がいると。辛い時でも、明日は来ます。そう考えて、前向きに熟慮し解決出来ると良いですね。信頼する人に相談すれば、答のヒントがあるかも。
(2)『エンジン、円陣、猿人』より、「人の一生は自転車レースと同じだと言い切る上司もいれば、人生をレストランでの食事に譬える同僚もいた。つまり、人生は必死にペダルを漕いで走る競争で、勝者と敗者が存在するのだという考え方と、フルコース料理のように楽しむもので、隣のテーブルの客と競う必要は何もないという構え方だ」
●感想⇒人生を“自転車レース”又は“フルコースの料理”のように過ごすかは、十人十色です。育ってきた環境や人生に対する考え方が違うからです。私は、ライフステージによって変えた方が良いと考えます。則ち、“人生の前半期は自転車レース、後半期はフルコース料理のように生きる”事が良いと。前半期は“世のため人のため”に貢献するのです。個々人が挑戦心を持って生きればこそ、活力ある社会になります。所で、勝者×敗者という言葉は好きではありません。本人も競争の結果、負けたとしても敗者と思わず、気持を切り替えて新たな挑戦をすれば良いのです。周りの人達も温かく見守る度量が欲しいですね。後半期は、やりたいことをやればよい。仕事、趣味、ボランティア・・選択肢は豊富です。但し、社会のお荷物にならないように「自分の事は自分でする」生き方が前提なので、健康に留意です。
(3)『銘柄』より、「人の外見は、ファッションの銘柄と同じだ・・ブランド品は高いけれど、その分品質は良い。その逆もある。とんでもない品物にブランド名をくっつけて、客を騙すこともできる。他人の外見も一緒でさ、人は目に見えるもので簡単に騙される。一番大事なものは目に見えない、という基本を忘れているんだ」
●感想⇒確かに、人は外見で騙され易いものです。ブランド品で着飾った人、高級車に乗って自慢する人、・・等、人の本質は分りません。ケースバイケースでしょう。例えば、一生を託す結婚相手には日頃の言動に注意です。二人でいる時と、家族に対する態度(家族に横柄・乱暴な言葉遣い)とが極端に違う人は如何なものでしょう。また、調子の良い事を言って、最後に金儲けの話をする人も要注意です。労せずに儲かる事は殆んどありません。何れにしろ、人間の本質を知ることは至難の業です。普段から人を見る眼を養う事が必要とは言うものの、“君子は危うきに近寄らず”が一番かも知れません。
4.まとめ;最初の数ページを読んで、私は驚きました。「母は、突然部屋に押し入ってきた男に襲われた。その時に妊娠したのが、春(語り手の弟)だ」の一行。産まれる子や家族の将来を考えた時に、残酷だが堕胎させるのが、一般的でしょう。それに反し、父親は、レイプ犯の子を宿した妻を励まし、出産させ我が子として大事に育てたのです。その後のストーリー展開はさぞかし、苦しみの連鎖に陥るのではと想像しました。意外にも、読後感はなんと兄弟愛・家族愛に溢れた小説との感です。父親の言葉「春は俺の子だよ。俺の次男で、お前の弟だ。俺たちは最強の家族だ」に救われます。前に、角田光代さんの「八日目の蝉」を読んだ時と同様の感動を貰いました。伊坂氏の本を読んだのは初めてですが、三島由紀夫や岡本太郎等の著名人の引用も効果的で、心に留まる作家の一人です。(以上) -
冒頭の一文がすごい、しゃれている。
そしてラストもそうくるのか。春がとても魅力的に描かれていた。爽やかで、純粋すぎる怖さ(一言では言い表せない)。見守る兄、泉水と素敵な両親。
犯人は早い段階で分かったが、話の肝はそこではない気がした。なぜ?そこまでの心理描写を求め、中盤から面白くなってきた。
重くて難しいテーマなのに、暗くならない独特の雰囲気は伊坂さんの特徴なのだとすごく伝わった作品でした。
遺伝子や芸術等専門分野の知識が、会話やストーリー展開に織り込まれていた(全部メモすれば勉強になったでしょう)。
また、犯罪者が受けるべき罪について考えさせられた。
染色体や、遺伝、血の繋がりであるとか、軽々と飛び越えた父。父の、そして男ばかりの家族の連帯感。
「遺伝子、関係ねぇ!」
これは最強の家族の物語。
これだけピュアな家族なのに、結果的に幸薄い感に胸を締め付けられそう。ラストの方、クエスチョンなところもあったけれど。全体の物語の流れとして、この空気感が好きだなと思いました。
楽しそうに生きてればな、地球の重力なんてなくなる。
「二人で遊んできたのか?」父親の口癖にほろりとくる。 -
まことさんセレクション。
正義は遺伝子を超えることができるか。
伊坂的勧善懲悪の心地よさ。
これははまってしまうとなかなか抜け出せない。
「重量ピエロ」についてもやられた!王道的な感じ。
気持ちよくしてくれるだろうという期待にしっかり応えてくれる。
ーふわりと飛ぶピエロに重力なんて関係ない
そんなふうに軽々と飛び越えたい課題を皆それぞれ抱えているもの。
勇気づけられる小説。
「サブマリン」と同じく、ローランド・カークが登場。-
たけさん。こんにちは。
また、読んでくださりありがとうございました。
この作品は、作品自体ももちろんよかったけれど、私は帯のキャッチ...たけさん。こんにちは。
また、読んでくださりありがとうございました。
この作品は、作品自体ももちろんよかったけれど、私は帯のキャッチコピー「小説、まだまだいけるじゃん」がなんとも印象的な作品でした。今、家の本棚をみたらページの全部茶色く変色したこの本が眠っていました。
『オーデュポンの祈り』といい、なんか古い作品ばかりお薦めしてしまってすいません。2020/10/03 -
まことさん、こんにちは!
コメントありがとうございます!
「小説、まだまだいけるじゃん」の帯コピーは知りませんでした。2003年の発行当時...まことさん、こんにちは!
コメントありがとうございます!
「小説、まだまだいけるじゃん」の帯コピーは知りませんでした。2003年の発行当時は、小説がそんだけ危機に瀕していた、ということなのでしょう。
伊坂さんの小説は、読後、「人生捨てたものじゃない」と思えるから好きです。十数年すると、本の紙の色は変色してしまうかもしれないけど、中身はじゅうぶん新しく輝きを放っています。2020/10/03
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『本当に深刻なことは、陽気に伝えるべきなんだよ。重いものを背負いながら、タップを踏むように…』
こういう考え方は好き!カッコ良いし、何があっても飄々と生きていきたい。
内容は、家族愛というほがらかな内容ではないけど、強い絆で結びついているのは感じさせる。
遺伝子レベルの繋がりではなく。
この結末で、幸せになれるのかは、神のみぞ知る。
ちなみに、
この家族、何か品があるというか、うちとは全然違う…(当たり前か^^;)
会話に「ガンジー」とか「クロマニョン人」とか、今まで一度も出た事ない…
「さとみロス」とかの芸能ネタか、「焼肉」「焼き鳥」などの低次元なヤツばっかり…関西なんで、オチはあるけど。
こんな会話が出来るとこは羨ましい! -
伊坂幸太郎さんの人気作品。
デビュー作品から順番に読むのがオススメです。
なぜなら前2作品の登場人物が再び登場するから!
好きな登場人物に再び会えるなんて驚いたけど嬉しかった。別作品のなかへ普通に溶け込んでいて構成力もすごい。
本作品は、過去に辛い被害にあった家族が前を向いて進むために葛藤と向き合っていく物語。
美人の母親、優しい父親、兄が大好きな弟、そして弟に振り回される主人公:兄。
みんな個性的で変わり者だけど、お互いを思い合うからこその行動や言葉に心が温かくなる。
遺伝子・血の繋がりによる親子の絆もあれば、血の繋がりはないけど関係なく愛情たっぷりの親子の絆だってある。何を大切に思うか。
登場人物それぞれの場面ごとの感情を想像しながら読み進めるといろんな気持ちが味わえるし、物語の展開も面白かった。
やっぱり伊坂幸太郎さんの言葉選びのセンスが好き。
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satokoさん、今晩は。ダイと言います。いいねサインして頂き、ありがとうございました。私は、伊坂さんの本(重力ピエロ)を初めて読みました。...satokoさん、今晩は。ダイと言います。いいねサインして頂き、ありがとうございました。私は、伊坂さんの本(重力ピエロ)を初めて読みました。読み出しは、今一かな?と思いましたが、好奇心をそそる一冊でした。satokoさんの本棚を時々拝見します。よろしくお願いします。2022/02/27
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ダイさん
こんにちは。
コメントありがとうございます。嬉しいです。こちらこそ、ダイさんの本棚参考にさせていただいてます。
ダイさんも『重...ダイさん
こんにちは。
コメントありがとうございます。嬉しいです。こちらこそ、ダイさんの本棚参考にさせていただいてます。
ダイさんも『重力ピエロ』読まれたんですね!私も最初は難しく感じました。
でも、伊坂さん作品は登場人物が魅力的なので他作品もつい手に取ってしまいます。2022/03/01 -
2022/03/01
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グラフィティアート、放火、凌辱、遺伝子。癌、探偵、兄弟、ガンジー。
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遺伝子の会社に勤める兄の泉水、らくがきを消す仕事をしている弟の春、癌で入院している父。
しかし春の出生には、つらい出来事が絡んでいた。
謎のグラフィティアート出現と連続放火の関連を示唆してきた弟に巻き込まれる形で、兄と父は事件の真相を考えはじめる。
しかし、その事件と遺伝子の知識までがリンクしはじめ、絡み合い、ひとつの地点に着地する。
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「フーガはユーガ」「アイネクライネナハトムジーク」「死神の精度」と読んできて、4作目に手にした伊坂幸太郎さんの作品がこちらの「重力ピエロ」でした。
正直なところ、もう少しコンパクトに話が進められたのではないか?という感が拭えませんでした。
それは、辻村深月さんの初期作品を読んだときも感じた印象であり、登場人物たちの抱えるしんどさはを余すところなく深く書かれているが故、作品としての歩みが遅くなってしまった感じでした。
「重力ピエロ」の発行年を見てみると、こちらも伊坂幸太郎さんの初期作品にあたるようで、ここから伸びていくと考えると、この小説の話運びは、まったく不思議ではありません。
それでも☆2つにしたのは、主人公の目的が途中で8割方、予測ができてしまったことと、途中出てくる黒崎、葛城の正体もわかってしまったためです。
弟と父の思惑こそ2割程度しか読めなかったものの、主人公・黒崎・葛城についての予測が当たってしまったため、真相に対する驚きが半減してしまいました。
文庫の裏表紙のあらすじには「謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とはー。」(引用)と書かれていますが、最後の事実を知って思うのは「圧倒的」な真実というよりは「クラシックが鳴るホールの中で、静かに近づいてきた大きな闇」といった感じでした。
その闇を、表から見るのか裏から見るのか、はたまたどこか違うところから見るかで、このお話の印象はひどく違ってきます。
どんな印象を抱くにせよ、世の中には白と黒のふたつで割りきれないものでほぼできていることだけは、誰しもがしみじみと感じるだろう、お話でした。 -
伊坂ワールド全開で良かった。
真実が明かされていくと、重い内容だが、互いに家族を思いやる気持ちが溢れていて好きな1冊。 -
安定の読みやすさで、ストレス無く読めました。シリアスで哀しいストーリーだけど、暖かい家族小説の面もあり、最後はうるっときてしまいました。
著者プロフィール
伊坂幸太郎の作品






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すばらしい。
できれば真似をしてみたい。
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