君たちに明日はない (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101329710

感想・レビュー・書評

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  •  リストラ請負会社に勤める村上真介の視点で描く「解雇される側」と「解雇する側」の物語。チャラい主人公のように描かれるが、キャラの抑えどころはしっかりしているので、読んでいくうちに親しみが湧いてくる。女性の「強い」部分を「キツイ」ととらず「魅力的」ととらえるありきたりでない設定が面白い。初めてこの作家さんの本を読んだが、結構いいと思った。

  • 重苦しくなく、軽すぎず、ちょっといい話。

    【内容】
    タイトルが秀逸だけど、タイトル負けの作品ではない。
    リストラとか首切りとか題材はネガティブだが、
    重苦しくなく、軽すぎず、ちょっといい話、といった感じ。

    【良いところ】
    リストラされる側の人物描写がとてもおもしろい。
    「自分がこの立場だったらどうだろう?」とつい考えてしまう。
    机蹴っ飛ばして捨てゼリフ、ってイメージだが、
    実際はヘンに理解あるヅラしてすごすご帰るだけなんだろうなぁ。

    【悪いところ】
    恋愛部分はそんなに多く割く必要はないかな。

  • リストラ請負人・・そんな仕事って本当にあるのだろうか。

    何だかリアリティありすぎ。

    非常に面白い小説なのだが、これを平気で読める人は順風満帆なサラリーマンなのだろう。

    オレのような「おちゃらけサラリーマン」には反面ぞっとする内容だ・・。



    様々な企業の様々なリストラを主人公は引き受けていく。

    ある銀行のケースでは、対象者の中に高校の同級生がいるのだ。

    相手の立場に立った視点で考えると、こりゃあツラいもんがあるだろうなあ。



    そういえば、高校時代の同級生の一人が「転職コンサルタント」の仕事をしている。

    彼の会社がうちの会社と契約したら、まさにこの話同様じゃん(笑)



    一部、過激な性描写があったが、あれは要らんなー。

  • 主人公の仕事は実質「首切り屋」。働いてる人を調査し、話し合うことで自主退職に追い込む。正直大抵の小説では敵キャラだろう。だが、この作品ではそのキャラが主人公となって、いろいろな人たちとドラマを紡ぎながら生活していく。話し合い相手と恋に落ち、同級生と出会いそれでもなお仕事をこなしていく。印象的だった事は、主人公はこの仕事に誇りこそ持っているけれど、人の首を切ると言う仕事を楽しんでいるわけではないと言うことだ。誠心誠意面接担当者と向き合い、話を深めていくからこそ、読者は心を動かされるのだろう。

  • 2007年刊。退職召喚のアウトソースを生業とする30代男性主人公。なにやら、いけ好かない主人公かな…と思いつつ読み進めていくと印象が大きく変わって行くように書かれていて面白い。仕事的にかなり心気臭く泥臭い、殺伐とした内容だなぁと思いつつ読み進めるが、様々な登場人物の置かれた上記・視点で描く事で泥沼にハマらずに読める。生身の人間臭さプンプンなので、それが苦手な人には勧められない。それこそ共感・間接体験の面白さがある!と感じる人にはお勧め。私は中間なので「4」としました。

  • クビ切り面接官のお話かと書いてあったので人事や法律のお話かなと思ったけど、働く人への応援小説でした!
    個性豊かな人物がたくさん出てきて、ワクワクします。
    人生の半分以上を占める『労働』とうまく向き合うきっかけになりそうな小説!

  • 歴史小説の作家として知った作者の現代小説を読んでみた。少し前の時代背景だが、テンポよく読みやすい。全てが繋がってる訳ではない短編なのかな?シリーズモノみたいなので次も読んでみるかな。

  • 3
    会社の首切りを宣告する委託業者
    相手を納得させるため物凄く労力を要する仕事だと思った
    調べに調べ、いざその場になり伝え、終わっても相手からの恨み、報復があるかもしれない
    最悪そんな事が起こりうる可能性があるから意識はしてないとはいえ大変だなと思うし、自分だったら耐えられないかも
    本の中でも主人公の気持ちが描かれていて、自分が感じてるのとは違うのかもしれないが気持ちが強くないと続けていくのは難しいと思った
    主人公の前職、考え方も面白いなと思った
    言葉が気障っぽいのがちょっと受け入れにくかったが、この主人公のキャラならマッチはしてたのかなとは思う

  • こんなリストラ首斬りに特化した会社って、きっとどこかにあると思う。今のような細分化された社会では、見事な隙間産業だ。 でも首斬り専門にするって、メンタルを保ち続けることは一般人には難しいはず。それを冷静にこなし続けられる真介は、かなりな猛者なんだろう。
    もっともバイクライダーに情熱を上げた経験がある、という設定はエスカレーター人生とは違う、野生味を感じさせるものだ。一度でも本気で何かに賭けたことのある人生って、天国も見ただろうし地獄も見ている分、深さもあるのだろうか。

    物語として展開も面白く、こんな風に世の中を見られるのか、と感心した。これならドラマ化もあるのではないか。何人かそれぞれの会社員人生を自分目線で体感できる、楽しい小説だったり

  • とても読みやすくておもしろい。
    首を切っていく仕事をしている人の話で、いろんなエピソードの中で「仕事とは」というテーマを何度も考えさせられるものでもあった。
    どこかのエピソードで「知的背景(チテキハイケイ)」という言葉が出てくるが、なんとなく人間関係において言語化できていなかった価値観がここで言語化された。
    夫の好きなシリーズで、今回再読してみたら、夫の思考の原点がここだったんだな、と感じる点が多くて個人的にはそういった再発見もできた良書。

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著者プロフィール

1966年長崎県生まれ。筑波大学卒業。2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞。04年『ワイルド・ソウル』で、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞の史上初となる3冠受賞。その後も05年『君たちに明日はない』で山本周五郎賞、16年『室町無頼』で「本屋が選ぶ時代小説大賞」を受賞。その他の著書に『ヒート アイランド』『ギャングスター・レッスン』『サウダージ』『クレイジーヘヴン』『ゆりかごで眠れ』『真夏の島に咲く花は』『光秀の定理』などがある。

「2020年 『信長の原理 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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