エデン

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103052524

感想・レビュー・書評

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  • スティグマータのために再読。何度読んでも面白い。
    敢えてケチを付けるとすればドニとニコラの確執をもう少し深く掘り下げても良かったかも…

  •  時々、誰かに薦めたくなるような作品に出会う。この『エデン』も間違いなくその一つだ、この物語りを堪能するためには、前作である『サクリファイス』を読んでおくことが欠かせないが、それだけの価値がある。

     前作である『サクリファイス』は、私にとって「物語の不自然さ」が気になった。それに対して『エデン』は、非常にリアリティがあり『サクリファイス』を超えた傑作だと思う。

     正に『サクリファイス』というアシストの陰からトップに躍り出てマイヨ・ジョーヌを手に入れてしまったエースのようだった。

     人間の強さと弱さ、醜さと美しさを描きだし、世界の光と闇を感じさせる。前作同様、チカの成長譚とも思える淡々とした展開が、終盤になって急展開!伏線を流し読みした私の予想を超えた事件が起こり、ニコラの心を追込む。そう、この物語りも、チカの一人称で語られるが、本当の主役はニコラなのかもしれない。

     彼は、才能に恵まれただけの完全無欠のヒーローではなかった、生き残るために、夢をかなえるために、ドニを利用し、狡猾に這い上がって来たのだった。しかし、運命はニコラの良心に試練を与え、ニコラは苛まれ、ドニに告白してしまう。

     私たちの人生も、実は自分自身の力によってもたらされたものではない。両親や兄弟の犠牲の陰から躍り出て得たものに違いない。私達も、チカやニコラほどではないにせよ、夢をかなえるために、自分自身が気が済むように生きるために、誰かを犠牲にして生きている。

     私たちは、誰かを犠牲にして生きている…また、誰かの犠牲になっている…でも、それは、この世に生まれてきた以上、絶対に避けられないことでだ。だからこそ、チカのように犠牲になってくれた人の思いを裏切らないように生きたいし、犠牲になることを自分の自己実現に繋げたいと思った。

  • 「スティグマータ」を読むにあたって、再読。
    随所に見られる、あの人の、面影。
    美しく、残酷な、呪い。
    重い足枷なのに、時に羽のように軽く背中を押してくれるなんて幸福でせつなくて泣ける。
    ミッコとニコラ、ふたりともとてもいいキャラクターで「スティグマータ」ではどういう関係になっているのかとても楽しみ。

  • 2016/9/18読了

  •  フランスではツール・ド・フランスの間は、ニュースで連日報道される国民的な関心ごとです。以前、シャンゼリゼでそのゴールを見たときは、お祭騒ぎだったのを覚えています。

     ツール・ド・フランスを舞台にした人間ドラマがこの小説で描かれています。たった1人の日本人選手の白石誓が、パート・ピカルディというチームのアシストとして参加し、3週間3000キロを自転車で走破しなければなりません。

     やっと手に入れたこのポジションなのに、このチームのスポンサーが撤退し、来年はチーム解散が決まったという状況からレースに臨むことからドラマが動き始めます。チーム内メンバーの裏切り、競り合う者同士の友情。自転車競技ならではの駆け引きなど読んでいて自転車ロードレースの面白さがわかります。

     そして今ロシアのドーピング問題と同じように、このロードレースの中でもドーピングによる暗い影が起こります。

     あなたもこの本を読んで白石誓とツール・ド・フランスに参加した気分を味わいませんか。きっと最後は読んだ者しか味わえないエデンが待っています。

    図書館スタッフ(東生駒):ミラベル・ジャム

    ----------
    帝塚山大学図書館OPAC
    https://lib.tezukayama-u.ac.jp/opac/volume/564007

  • サクリファイスに続いて。おもしろい。

  • 地味だし、エースになれるほどの素質もないし、努力家でクリーンで義理堅いのが取り柄の人物を主人公にして輝かせられるって、近藤さん、或いはマンガじゃない、小説ならでは。勝利を譲ってもらったのを気付けなかったって、やっぱりそれだけの才能ってことなんだね。本場なのに勝てないフランスって、テニスでのアンディ・マリー登場以前のウィンブルドンの英国みたいなものか。

  • ロードレースのお話し、その2。今回はツールドフランスが舞台。その1の「サクリファイス」よりぐっとドラマとして面白くなってる。これ、BSプレミアムとかでドラマ化したらいんでない?

  • サクリファイスがなかなか良かったので、続けて読了。
    ミステリーとして読んでしまうと物足りないと思いますが、ロードレースの中の選手の青春物語という位置づけで面白いと思います。
    相変わらず文体も簡潔で読みやすいですが、逆に読みやすすぎて文体が物足りない感じもありますね。

  • サクリファイスは日本、今度はツール・ド・フランス。今作もいいな。まるで自分も走っている感じ。いっぱしのロードレース通になったような誤解を持って読了。また感動した!

  • サクリファイスの続編となっている今作。
    前作より謎要素は薄め。
    ツールに出場するレーサーの悲喜交々が描かれていて、レースシーンは臨場感があってのめり込んでしまいました。
    幕間では移籍の話、自転車レース業界を覆うドーピング疑惑が展開されます。
    作品の雰囲気としては主人公の性格もあってか、結構暗め。
    走った、勝った負けたの単純な世界じゃない感じです。
    あと途中で出てくる女性キャラが意味あったのかなーって感じなぐらい存在感が薄かったです。

  • (2010より転載)
    『サクリファイス』の続編。ヨーロッパ編です。
    まったく詳しくないロードレースでも、「ツール・ド・フランス」という大会を知らない人は少ないでしょう。
    知らない世界を魅力的に伝えてくれる作品は、良いものですね。
    2010.4.5~4.8読了

  • 自転車ロードレースが題材。
    「サクリファイス」の続編、3年後。
    主人公はスポンサーが下りることになったチームに所属。
    消滅を間近にしたチームでのツール・ド・フランス。
    チームがバラバラになっていく中で、自分はあくまでチームのエースのサポートをするのが正しい、自分はあの人ではではないのだ、と決断する。
    自転車競技って、お金かかるんだ~。

  • フランス北部のアミアンを拠点とするロードレースチーム、パート・ピカルディに所属した白石誓。2年の契約はまだ1年半残っていたがスポンサー撤退のため解散を言い渡された。このチームで走る最後のツール・ド・フランスで、エースのミッコをアシストしたいが他の選手がちぐはぐ。その訳は−

    ◆前作で「紳士のスポーツ」ロードレースの、チームを越えた協力と駆け引きを初めて知ったけど、自転車を移動の手段にはしない国ではそういうことになるのね。スポーツって、突き詰めるとやっぱりツール(道具の高級さ)といいコーチとの出逢い、使用できる練習場所、それらは本人の資質と努力とは無関係な経済力と運。運も実力のうちとは言うけど、速さ、高さ、強さ、難しさ、美しさを競う競技において「体ひとつ」で何の道具も使わない競技なんてないものね。どの国の、どの家庭に産まれたか、その運からもう勝負が始まってるということか…。チカは 次はどこで走るのかな。

  • ロードレースは協力、駆け引き、裏切りと
    他のスポーツには見受けられない
    人間的な展開が続きます。
    そのあたりがうまく描かれていました。

  • 面白かった

  • 前作のサクリファイスに続き、ロードレースの世界に引き込まれた。公式なルール以外にも暗黙の了解のような紳士協定があることや、チームとしての戦い方など、これまで知らない世界がおもしろかった。

  • 団体競技だけど時に個人競技。
    個人競技だけど時に団体競技。

    スポーツってがむしゃらにやるだけではないんだなぁ。。

  • 『サクリファイス』の続編。

  • 自転車のロードレース中に繰り広げられるソフトなミステリー。サクリファイスの続編。
    舞台はツール・ド・フランス。自転車を知らない人でも楽しめるように解説が多い。半分はロードレースの紹介じゃないかと思うくらい。
    サクサク読み進められて楽しめる。今年のツールがそろそろ始まるが、初めてちゃんと見たいと思うようになった。
    自転車好きとミステリー好きにオススメです。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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