エデン

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103052524

感想・レビュー・書評

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  •  この作品でも 白石の徹底したアシストぶりには驚かされますが、今回は目前にある‘自己の勝利’に迷う白石もいて、それがとても魅力的に感じました。そしてあちこちで‘日本’や‘日本人’を意識するところや若い選手の将来を頼もしく感じたり、恐ろしく感じたり疑ってみたり、彼の心がさまざまに揺れる度にどんどん引き込まれていきました。
     彼が怪我をしないか、プレッシャーに潰れてしまわないか心配しながらだったけど、最後まで一気読みでした。レースでの駆け引きの様子や選手同士の会話などを読むと、やっぱりワクワクします。
     読み終わった時は、共にレースを走り終わったようなすっきりした気分でした。

  • ロードレースの爽快さ過酷さ、面白さが詰まってます。
    そしてロードレースが生み出すミステリー。
    すごいロードレースのこと知ってるようだけど、全く知らないのです。ですが面白い!!
    ツールドフランス見ようと思ったら、こないだ終わってしまった。来年こそはツールみたい。そしてそのころにもう一度この本を読みたい。

  • 前作と比較すると、ミステリー感は少なめ?前作も、ミステリーと感じないまま読んで、最後にびっくり思い出したって感じでしたが、今作は思い出さないまま読了といった感じ。ツールの空気感を想像したりしながら読み進めていって、いい感じに入り込めます。やっぱり面白い!

  • 前作「サクリファイス」は未読です。ツール・ド・フランスに興味があったので。土地の空気感やキャラたちは魅力的。話の展開はもっと熱いのを期待してたのであっさりで拍子抜け。
    白石に必死さがないからな。
    序盤の二章までが面白かった。つまりレースがはじまる前までですね。チームのために走るか、自分のエースのために走るか、自分のために走るか。
    いろんな思惑やしがらみがあって、いろんなものを背負って走るという辺りが、決して爽やかではないんだな。でも白石の語り口があっさりだからあんまり感情移入もなく、さらっと読める。

  • サクリファイスの続編。チカがヨーロッパに渡り2年半、ついにツール・ド・フランスに出場するが…
    “彼”の名前は一切出てこないけれど、自分ひとりのチカラでここにいるのではないという思いは至る場面で書かれている。チカはそれをこう表現している。『美しくて、ひどく陰惨な呪い』と…

  • 「サクリファイス」の続編。個人的には前作の方がミステリーとして面白かったと思いますが、今回もロードレース×青春小説として楽しめます。馴染みのない特殊な職業、ロードレース選手アシスト役の静かな視線を通じて、様々な人間模様が描かれます。
    まだまだ続きがありそうで、楽しみ。追いかけていきたいシリーズです。

  • サクリファイスが良かったので。
    続編なので、どうだろうとちょっと不安だったが、これはこれでいいんじゃないかと。

    衝撃は前回よりは劣るけど、主人公チカの「アシスト」として徹する姿がいい。ロードレース独特のルールもしっくりくる。でも、アシストとして活躍することもあるが、自分自身の保身のことも考えてしまうところの葛藤が人間らしくていい。

    「サクリファイス」を読んでいないとちょっと「?」な部分もあるので、先に読むことをオススメ。

    ラストは一応ハッピーエンドかな。まだ続きがありそう・・・

  • ストイックなロードバイク競技の世界を描いた小説の続編。

    前作の「サクリファイス」はミステリー漂う物語でしたが、
    今回はフランスに拠点を置きロードバイクのイロハや競技を詳しく描いている。

    自転車競技の青春小説。
    そして前作を読んでいなくても1つの独立作品として読める配慮も感じる。
    前作と共通して言えるのは合法薬品(ドラッグ)を伏線に引きながらの人物たちの心の葛藤や背景を描いた物語構成。
    栄光と挫折という厳しく紳士的なスポーツであるロードバイクの世界観には惹きこまれる。

    そしてスポーツ選手特有の爽やかでありながらストイックにプラスして謙虚な心を持つ主人公のチカ。
    他の登場人物たちも個性ある魅力的な人物たちばかりで物語に色を添えている。

    ストイックでありながら選手の葛藤や栄光を感じることができる青春小説。

  • 面白かったけど、
    前作が秀逸だっただけに。

    前作のほうが、謎、スリル感あり。

  • 自転車レースにまつわる諸々が丁寧に書かれていて、面白い。
    アシストという役割は、やっぱり理解するのが難しいものの一つだと思う。
    今年のローランみたいに、マイヨジョーヌと、自身のステージ賞とのバランスのこともある。

    とりわけ今年はフランス人のツールでの位置付けがよく話題になってた。物語中にもあったみたいに、フランス人とそうでない選手の区別はあるのだと思う。チームプレゼンテーションでの、コンタドールへのブーイングは、やっぱり理解できないものだったし。

  • 『サクリファイス』の続編。
    世界に羽ばたいた白石が、今度はツール・ド・フランスに挑む。
    特殊な一面を持つ、自転車ロードレースを描いた作品。
    変わらず地道な白石がいた。
    ニコラにまつわる謎で興味を引きつつ、しっかりと自転車競技の世界を描いたスポーツ小説。
    http://koroppy.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/post-de2c.html

  • 2008年の「サクリファイス」の続編。
    ヨーロッパに渡って、フランスのプロチームに加わっている自転車ロードレースの選手・白石誓(ちかう)。
    最初はスペインのチームにいたが、やや格上のパート・ピカルディにはいることが出来て、トップ選手のミッコ・コルホネンとも相性が良かった。
    日本人は一人だけ、というかほとんど東洋人でも一人だけという世界。
    チームに入って半年、上手くいっているようでしたが、突然スポンサーが降り、今シーズンが終わればチーム解散が決定してしまう。
    トップ選手は移籍先に苦労はないが、誓はどうなるかわからない。
    チームとして悔いを残さないようにしたい気持ちと、個人として何か実績を見せなければ生き残れないという思いが交錯します。

    フランスで行われる大きな試合ツール・ド・フランス。
    フランス人にトップ選手がいないために、若手のジュリアンが期待されていました。
    駆け引きには熟練がいるため、若い選手が上に行くことは考えにくいのですが。
    気さくなジュリアンに声を掛けられて親しくなる誓。無邪気に見えると有望株は実は孤独でもあるかも知れない。
    ほとんどは試合の様子が語られていきますが、後半には事件も。

    「サクリファイス」を読んでない人はそちらをお先に読むことをオススメします。事情は全然説明されていないので。
    サクリファイスの過去を背負ったまま、先へ進んでいく一途な誓を読めます。

  • 白石誓はスペインのチーム、サントス・カンタンで2年走り、その後フランスのチーム、パート・ピカルディへ移っていた。
    しかし移籍して半年後、チームはスポンサーの撤退により解散することになるという。
    自分クラスの成績では次の移籍先を見つけるのは難しい・・・。
    そんな状態で迎えたツール・ド・フランス。
    当然、チームのエースであるミッコをアシストするはずが、チーム存続のために他チームのエースのアシストするよう要請されるチカ。
    そしてチカのとった決断は・・・。

    『サクリファイス』の続編です。
    今回はミステリ要素は薄く、ロードレースどっぷりです。
    それでも大満足。

    そもそも『サクリファイス』初読のときは、衝撃を受けましたがそこまで評価を高くしてはいませんでした。
    それが時が経つにつれじわじわと拡がってきて・・・。
    気がつけば、ここ数年で読んだ本の中でも特に忘れられない作品になっていました。
    当然この2月に文庫になった際には即購入し、再読しました。
    そして満を持して読んだ『エデン』。

    チカの変わってなさにあらためて感激。
    -その呪いこそがぼくの自転車を後ろから押してくれるのだ。
    チカにかかっている「超弩級」の呪い。
    自転車に乗り続ける限り、そして多分降りる時も、降りてからも解けないんだろうなぁ・・・。
    というか、解けてほしくない。

    外伝の短編をぼちぼち追いかけているので、そのうちそれらもまとめて出版されるのかな。
    まだまだ読み続けたい作品です。

  • ●あらすじ●
    『サクリファイス』から3年。
    フランスのロードレースチーム、パート・ピカルディに所属する白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていました。彼の役割は、アシスト。エースを勝たせるために走るのです。しかし、アシストという存在は、アシストを忠実にこなしているだけでは、次の契約に結びつかないのでした。その上、ピカルディは存続の危機にさらされ、誓はそれにまつわる駆け引きに巻き込まれることに…。

    ●感想●
    わたくし大絶賛の『サクリファイス』続編です。
    『サクリファイス』終盤の「おぉ、おぉ、おぉぉぉぉ!」という疾走感溢れる面白さではなく、静かに深い、別の面白さがありました。
    特に、話の鍵をにぎる、フランス人選手のニコラ。『サクリファイス』の石尾さんと同じエースだとは思えないほど、キャラが正反対です。走り続けるためには、何かを『犠牲』にしなくてはいけないのは、石尾さんもニコラもおなじです。ただ、「何のため」なのかが人それぞれなんでしょう。
    言葉も文化も違う場所で走る誓の心境も、なるほどと思いました。
    この本を買ったとき、実は今年のツール・ド・フランスに出場する日本人選手たちがニュースになっていたんです。
    なにやら感慨深いものがありました。

  • サクリファイス第2弾!サスペンス性はなくなったけど、アシストに徹する主人公が美しい。本当に好きな小説です。第3弾もありそうな予感・・・。

  • スペインのチームを経て、フランスのパート・ピカルディの一員として、ツール・ド・フランスに出場することになったチカこと白石誓(ちかう)。昨年のレースで総合5位になったエースのミッコのアシストを務めるといく重要な責務をもって…。
     しかし、監督に誘われた食事の席で、スポンサーの撤退とそれに伴うチーム解散を告げられ、チカは愕然とする。契約をあと1年半も残し、どうしたらいいのか―。
     そんな中、監督とチームに不穏な空気が…。チーム存続のために、ライバルチームのアシストをするように頼まれたチカは…

     お待ちかね、『サクリファイス』の続編です(Aちゃん、貸してくれてありがとうね)。今回はヨーロッパのチームで、アシストとしてますます磨きぬかれたチカが、あの「ツール・ド・フランス」で、敵味方、様々な選手や監督やらにもまれ、彼らの思惑の中で、苦悩し、成長していく物語です。
     しかし、3週間も走り続けるなんて、なんて過酷なレースなんでしょう。プロの厳しさ、過酷さを改めて痛感しました。

     後半、前回とはまた違った展開ですが、う~ん、そう来るか…。
     
     何があろうが、爽やかなラスト。チカの、周りはいつもいい風が吹いていますね~。
     

  • サクリファイスは結構前に読んだので内容は忘れてしまっていたけどこれはこれだけで十分な魅力たっぷり。

    確かにミステリー要素は少なめ。
    でもスポーツ小説として読めばチカの心が切ないくらいに伝わってきた。

    日本人の考え方なのかチカの性格なのか分からないけど私はチカの考え方生き方に惹かれるなぁ。

    華やかな選手の陰にはチカのような選手もたくさんいるんだろう。
    それが本人が望んことであればチカのように『エデン』と呼べるのかもしれないけど望まずに仕方なくと言う選手にとってはそんなすばらしい場所ではないだろうけど。



    もうちょっとチカのその後が読みたかったなぁ。

  • えぇえぇ、はいはい、一気読みでしたよ。薄い本だったので、徹夜にはならかなったけど、夜中2時まで掛かった。面白かったですね。『サクリファイス』の内容をあまり覚えてはいなかったので、ちょっととまどうこともありましたが、概ね良い読書でした。最近すぐに☆5つにしてしまう傾向にあるのですが、面白いんだから、まあいいぢゃないですか。ヨーロッパにおける自転車のロードレースはホントにいろんな要素が絡まりあっていて、見てい奥が深いのだろうなぁ、と思いました。ただ、ヨーロッパにだって1万円くらいで買える自転車はありますぜ。ずいぶん前だけど、オランダに仕事で長期滞在したときに、朝車で通勤するとき、学生達の通学自転車の群れには苦労しましたもの。あれは絶対「通学自転車」。何十万もするロード・バイクのわけねぇーじゃん!

  • 「サクリファイス」続編ですが、直接のつながりや前作のネタばらしはありません。でも主人公の心情に深く影響してくる部分はかなりあると思うので、「サクリファイス」を読んでからのほうがお薦めだと思います。
    ロードレースの物語。今回はミステリ部分もあまりなく、まったくのスポーツ小説という気がしました。過酷な世界、でも素晴らしい世界。前作も思ったけれど、自分だけが勝てればいい、というスポーツではないんですね。それが不思議なような気がしますが。自らのポリシーを貫くチカはかっこいいなあ。

  • 「サクリファイス」の続編というだけで否が応にも期待感は高まるわけですが、それでこれ…。単なる「ツール・ド・フランス物語」じゃないですか。ハードル高いのはわかるけど、そこに挑戦するのがプロってもんやないかと思うわけです。

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著者プロフィール

1969年大阪府生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。1993年『凍える島』で「鮎川哲也賞」を受賞し、デビュー。2008年『サクリファイス』で、「大藪春彦賞」を受賞。「ビストロ・パ・マル」シリーズをはじめ、『おはようおかえり』『たまごの旅人』『夜の向こうの蛹たち』『ときどき旅に出るカフェ』『スーツケースの半分は』『岩窟姫』『三つの名を持つ犬』『ホテル・カイザリン』等、多数発表する。

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