- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120057281
感想・レビュー・書評
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家庭裁判所に送られてきた少年を預かる補導委託の引受を決めた南部鉄器職人の小原孝雄。親方でもある父の考えが分からず、突然のことに戸惑う息子の悟。工房で共に働き、自宅で同居することとなった春斗少年が、孝雄や父を尊敬する工房の職人の健司、不定期アルバイトの八重樫、妹の由美などの周り人々と関わりあいながら、心の苦しみを乗り越えて行く様に、父に対して壁を作っていた悟の心にも少しずつ変化が訪れる。
まったりと読み進み、まあいろいろ良かったね!めでたしめでたし..という結論に達する読了感。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人の生き方に関わるいろいろな役割があることを知りました。
すべてがうまくいくわけではないと思いますが、他者を思いやる気持ちは人の心を動かすのだと感じました。
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久しぶりに柚月裕子作品の真骨頂を堪能。ストーリが美し過ぎるところはあるが、柚月氏の流麗な文章にとても合致していてあまり気にならない。もう少しミステリー要素も欲しいところだが、新聞連載なのでこのあたりが適当か。
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後半から涙が止まらず、一気読みした。
孝雄と悟、春斗と達也・緑、それぞれの親子の葛藤や愛情など、不器用ながらも大切な人を大切に想うがゆえにすれ違う気持ちの描写が手に取るようにわかり、情景も浮かびやすかった。
自分と両親との関係や、自分の祖父母と両親との関係と重ね合わせて読む部分も多く、涙なしでは読めない一冊だった。
登場人物が皆とても心温かいので、読了後はあたたかい気持ちになれた。
虐待や毒親、親ガチャといったワードをよく目にするようになった現代に合ったストーリー。
子育てとは何か、親が子どもに幸せになってほしいと思う気持ち、でもその幸せとは何か、子どもの目にうつる親の姿、様々なことを考えさせられた。
幸せとはなんだろう、自分はこれからどう人生を歩んでいきたいんだろう、そんなことを考えたときや、これから子育てをする人、子育て中の人、親との関係に悩んでいる人、どんな人にでも心に響く何かがある一冊だと思う。
そして、身近な人だからこそ、自分の気持ちはしっかり伝えないと伝わらない、そう改めて気付かされたので、家族や大切な人には感謝や愛情を日々伝えていきたいと感じた。 -
補導委託って制度、知らなかったなぁ。
全部さらけ出して話し合えば何でも解決するってわけではないけど…お互いを思うあまりのすれ違いほど悲しいものはないよねぇ。
歩み寄るためにも、思いを言葉にして伝えることは、とても大切なことだと思うな。
いちいち言葉にしなくても気持ちが伝わる愛情や信頼関係は素敵だと思うし、報われなくても寡黙でいる美しさもわからんではないけど、己の美意識は横においてでも、相手のために、思いを込めた言葉を発する努力はするべきだと思うのよね。
小説を読むことは、そんな言葉にならなかったいろいろに思いを馳せさせてくれる…と思う。
このところずっと、人は何の為に生きるのか…的なことを考えているんだけど、そんなことを考えてる余裕があるのは幸せってことなんだろうなと思ったり…。 -
南部鉄器職人の父と葛藤のある悟は、自分の子供にも愛情のない父親が問題少年の補導委託を引き受けた事に納得いかなかった。
やがて受け入れる事になった少年春斗の親子関係を通し、自分と親との関係を見つめ直していく。
近すぎてよく見えない、老眼のような親子関係。
言い得て妙です。
子供への愛情は時によって親の価値観で歪められてしまう事がある。親子の間だけでは治せないその歪みを、補導委託という仕組みで多くの人が関わる事で、少年とその家族を救っていく事が出来るのであろう。