風に立つ (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.85
  • (70)
  • (143)
  • (90)
  • (13)
  • (1)
本棚登録 : 2000
感想 : 119
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120057281

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 星3つにしてしまってますが、小数点をつけれるとしたら星3.5という感じ。自分の中で星4つに近い、良作でした。補導委託という少年更生の仕組みと、南部鉄器の職人の気質、そして親子や家族のあり方などを上手く絡めて一つの物語に昇華させているのが秀逸だった。若干、設定がおあつらえ向きすぎる感は否めなかったのと、終盤で父の過去が明らかになる際、その過去がこういう物語によくある感じの、予定調和的だったのが残念ではあったけど、総じて楽しく読めました!

  • 南部鉄器の職人・孝雄は口数が少なく、息子の悟は親としての孝雄を認めず育ってきた。その拗らせぶりはどうかと思うが、しっかり者の妹・由美やとにかく孝雄を慕う同じ工房で働く健司ら周りの人に助けられてやってこれたんだなというのが伝わる。家族に黙って孝雄が引き受けた補導委託でやってきた少年・春人との生活を通して見えてくる孝雄の想いと過去。人それぞれに考える幸せの形には違いがあり、どれが正解ということはないだろうけれど、親も子供もしっかり話をして、子供の考えも尊重しながら親は自分の人生経験を基に助言しつつ、常に親は子供の味方でいてあげることが大事なんだと教えられた。私も、まだ小さい自分の子供にいろんな話をしながら、聞きながら味方でいられる親でありたいと思う。

  • メチャクチャ良かったです。

    "補導委託"と言う馴染みのない制度とヒューマンドラマ、そして少年の闇の謎を上手く組み合わせて極上のフィクションに仕上げるその筆力。さすがでした。

  • 補導委託として非行少年を引き受けることになった南部鉄器の工房「清嘉」。親方であり父である孝雄が勝手に決めてしまったことに息子の悟は戸惑い、そして反感を抱く。険悪ではないもののどこかしら距離のある親子関係を抱え、さらに非行少年を引き受けることに何の意味があるのか。そして実際に少年がやってきてから、彼らの生活は一変した。不安さを抱えながらも、心温まる物語です。
    思ったほど物騒な物語にならなかったのは、登場する人たちが基本的に善人ばかりなのでしょうね。非行少年とはいえ、春斗はいわゆる「不良」ではないし、彼の家庭環境も劣悪なものではないし。春斗を受け入れる「清嘉」の面々も実に温かくて楽しくて、あまりにきれいな物語すぎるのでは、と思ったのですが。
    だからこそつらい面もあるのだなあ、というのがやりきれませんでした。春斗の両親は春斗を愛しているし、本心から春斗のことを考えて接している。彼らの親心は全然間違っていないんですよね。なのにその状況が春斗にとって苦痛でしかない、というすれ違いがあまりに悲しいし、苦しい。いったいどうすれば救われるのか、終盤は目が離せませんでした。

  • 柚月さんの作品と思わなければ、もう少し素直に「ヨカッタ」と思えたかもしれない。
    悟も春斗も、今の感覚からするとなんか子供な気がして… 少し気持ちが入っていかなかったかな?

  • 口下手で不器用な親子の物語。チャグチャグ馬っこ見てみたくなりました。

  • 最初は分かり合えなかった孝雄と悟、そして春斗と達也次第に打ち解けていく…孝雄の過去が明らかになり本当の想いがわかった時、感動がグッと込み上げてきた

  •  問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度――補導委託の引受を突然申し出た父・孝雄と戸惑う悟。岩手・盛岡の南部鉄器工房を舞台にした、再生の物語。
     ハードボイルド系著者の新たな境地って感じで、とても良かった。

  • 南部鉄器の小さな工房を営んでいる父と息子。ある日父が「補導委託」の受け入れ先となることを決めた。少年犯罪を通し家族の在り方を描いていく。一言一言が否応なく心に沁みこんでくる。親はいつでも子供が心配で子供の生きたいようにと願いながら、自分の気持ちを押し付けてしまうこともあるし、それは生活に余裕がある故かもしれない。日本自体が貧しくて誰もが何かの犠牲になっていた古い時代、生きることで精一杯で子供のことを構う余裕もなかっただろう。時代は変わり、悩みも変わっていくけれど、人の心の根底は変わらずにありたい。

  • 補導委託(問題を起こし家裁に送られてきた少年を一定期間預かる制度)の引受を突然申し出た父。
    何も話を聞いていなかった息子悟は、戸惑い、納得がいかないまま少年を迎え入れることに。
    しかし少年と同じ職場で暮らすうちに、悟の気持ちにも変化が。
    家族だからこそ、近い存在だからこそ、届かない想いと語られない過去。
    盛岡を舞台に、親子の関係、家族とは何かを考えさせる作品です。

全119件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚月裕子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×