ネコババのいる町で (文春文庫 た 32-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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本棚登録 : 78
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167172039

作品紹介・あらすじ

聞くことはできるが話すことのできない帰国子女の少女期から結婚までの間に見たさまざまな人間模様を描く芥川賞受賞の表題作を始め、気鋭の女流が描く清新な短篇全三作。(藤田昌司)

感想・レビュー・書評

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  • ちょっとしたことで人生が大きく変わる。
    まして親から離れたり、離婚などあれば尚更だ。
    人はそれぞれ固有の原理に基づき生きている。
    出会い、別れでお互いに影響しあっているのだ。
    3つの短編がそのことを如実に表していた。
    芥川賞受賞の本作はそのことをしっかりしたストーリーの中で表現し、心に残る一冊となった。

  • 母親に荷物のように放り出され、失語症になるほどのダメージ受ける。
    けれどそれを悲劇的に嘆き続けるでもなく、かといって肩を怒らせて突き進むでもなく、
    そのまま日常の中に取り込みつつ成長してゆく。
    まだ小さくてそうするしかなかったかな。

    戸惑う祖母や叔母の繕わない言葉は、時に辛辣である意味正直。
    そんなふたりと、気づかぬうちに徐々に築かれてきたのであろうつながりが最期のシーンからもじんわり。

    全体に落ち着いた文章で、先に向かう余韻を感じながら読み終えました。

    他2編。
    「神の落とし子」ではちょっとした仕草の色っぽい表現が印象的。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ちょっとイメージとは違ってました」
      おばあさん猫じゃなくて、慣用句のネコババですよね。と思ったけど「主人公にとっては大切な場所」、、、場所...
      「ちょっとイメージとは違ってました」
      おばあさん猫じゃなくて、慣用句のネコババですよね。と思ったけど「主人公にとっては大切な場所」、、、場所かぁ~何だろう。。。
      2012/07/03
    • pponさん
      nyancomaruさん
      どこまで言っていいのかなぁ。。。
      猫を飼っている隣のオバさんです。
      …言っちゃった!(笑)
      nyancomaruさん
      どこまで言っていいのかなぁ。。。
      猫を飼っている隣のオバさんです。
      …言っちゃった!(笑)
      2012/07/04
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「…言っちゃった!(笑) 」
      ありがとうございます。興味倍増です!!
      「…言っちゃった!(笑) 」
      ありがとうございます。興味倍増です!!
      2012/07/04
  • 芥川賞をとったので純文学として認識されているようだが、一般小説かな。

    実家の遺産、妻、仕事、全てを失った亥一郎は、競艇場までの道の掃除で、なんとか日々を生きながらえている。ある日掃除をしていると、目の前に高校生くらいの子供を連れた女性が。それは、幼馴染で、一度は結婚した弓子であった。弓子は、小さい頃から亥一郎の実家に入り浸り、父の会社に就職、副社長であった亥一郎と結婚したのだが…(『神の落し子』。

    芥川賞の表題作以外の情報があまりなさそうなので、一番面白かった2作目を紹介する。大河ドラマだね。

    表題作は大森の祖母、叔母、祖母の妹の住む昔ながらの家に、母親の勝手で送り込まれる少女の話。偶然にも、なんか直前に読んだ本と、住所が若干違うだけで似たような設定だ。育ての親となる祖母や叔母が意地悪なのかと思いきや、がさつなだけで親切なあたりも本当に似ている。

    もう一つは、離婚した妻を近所で見かける話。3作とも、書き出しの段階から過去の記憶に戻るという話であるが、やっぱり一番面白いのは、2本目の『神の落し子』である。あとの作品も記憶に残るタイプではなるものの、琴線に触れるというところまでいかない。

    全体に文章の息継ぎがうまく出来ていなくて
    "〇〇は「□□」と言い、✕✕は「△△」と答え、〇〇が「☆☆」と言って、✕✕は「…"
    と1ページ以上に渡ってマルのない文章が続いたり、"〇〇はXXをした。こうこうそうあって、XXをしたのだ" というような妙な反復がある文章は、古いブンガクを踏襲しているのか、そういう読みにくいゲージツをやられているのか、若干疑問に残る。良い文章とは思えなかった。

    また、全体に登場人物を突き放し、好きになりにくい設定にしているのは、この作者の性格なのであろう。だったら、もっと悪い人なんかが出てきても良かったと思う。だいたいみんないい人なのがなあ。

    悪くない。でも、薦めるかって言われると、微妙。

  • 面白くてささーっと読んでしまった。
    タイトルと芥川賞ってのを見ただけの知らない作家のジャケ買い本。
    ネコババも神の落とし子も、クズい女が周囲を振り回す話で、読むのがつらいくらい気が滅入る。最後の話の直美は何考えてるのかよく分からんかったけど。
    ネコババはまだ平和やったけど、神の落とし子は本当に読むのが辛かった。どろどろしてて気持ち悪いし。不憫なおっさんの話が好きなもんだからめいっぱい楽しんでしまったけど。

  • 三篇ともキーパーソンとなる女性に振り回されている。
    表題作の、子供目線の視点がリアルで良かった。断片的に覚えている誰かの特徴や発言、経験不足で漠然としている考え方、なのにどこか現実的なところなどが自分の幼少期の捉え方とシンクロする部分がありハッとした。

  • 「ネコババ・・・」は、産みの母親が外国人と再婚をしたため、日本へ一人帰国させられた少女の話である。一時的に失語症になるが、隣の家で猫と共に生活をするネコババの家に遊びに行く事で、普通の暮らしが出来るようになる。

    「神の落し子」は、妻に裏切られた男が、金持ちから貧乏になってしまう話である。

    「リリスの長い髪」は、数年の結婚生活の後、妻が急に別れを告げ離婚となり、その後、再婚をしてはみたものの前妻との思い出が忘れられない男の話である。

  • 1989年度文学界新人賞と芥川賞の受賞作。この年の候補作には荻野アンナや小川洋子も名を連ねている。彼女たちのその後の活躍に比べると、瀧澤美恵子はやや影が薄くなったか。もっとも、受賞当時すでに50歳になっていた。ここに収録された3つの作品は、いずれも地味ながら文学の味わいはある。選考委員達の玄人好みという感じもするが。どれもが、輝かしい人生からは限りなく遠いのだ。

  • ロサンジェルスの母親の元から荷物の様に祖母と叔母の住む日本に送り届けられた恵理子。1度目は3歳の時、日本語が全くわからず5歳の時にまたアメリカに戻るが2ヶ月後にまた日本へ送られ、その時失語症にかかる。猫を沢山飼っているので「ネコババ」という仇名の隣家で言葉を取り戻した少女時代の記憶『ネコババのいる町で』、1人の女に人生を狂わされた世間知らずのお坊ちゃまの人生を描いた『神の落とし子』、別れた妻を偶然見かけた男のその前妻との生活を振り返る『リリスの長い髪』の3篇を収録。どの作品も現在から過去を回想した物語。

  • ネコは時間に影響されず、手前勝手に奔放なまま生きている。
    それを人間は軽蔑するのだけれど、実は人間自身、嘲笑を受ける手前勝手な生き物なのだ。
    ネコは人間たちのさもおかしい心情の変化や態度を、いつも静かな眼で見ている。

  • 2009年3月の課題書。

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