新装版 ぼくと、ぼくらの夏 (文春文庫) (文春文庫 ひ 7-5)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167531058

感想・レビュー・書評

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  • サントリーミステリー大賞読者賞受賞作にして、氏のデビュー作。

    後の氏の代表作、柚木草平シリーズに繋がるエッセンスに満ち溢れた作品。

    昭和の御世を描いたとは思えない位、色褪せない青春ミステリの一大傑作です。

    開高健氏絶賛の妙味、御堪能あれ。

  •  主人公は高校2年生。
     夏休みのある日、同級生が自殺したと知らされる。主人公は、同級生の女の子と一緒にそのなぞを追う。
     ……どっかで見た話だなww
     って、「風少女」に「林檎の木の道」じゃん。ま、同じような設定の話といえばそれまでなんだが、でも面白いのよ。微妙に色合いが違う。そして、その色合いの違いをしっかりかきわけている。
     やっぱ、面白いよ、樋口有介。

     今回の主人公は、両親が離婚して、刑事をしている父親と古い大きな家で二人暮らしをしている。食事の支度したり、洗濯したり、父親の面倒みたりで、とてもまめまめしいのだ。そして、樋口有介の主人公の定番、クール。感情がないといわれたりしてるけど、きちんと抑制がきいているし、客観的になれる子なのだ。
     将来、いいオジサンになるよww
     ヒロインは、親が極道やってる気の強い子。主人公とは対照的に、感情豊かな子。これがなかなか鮮やかな子で、よい。
     
     ストーリーは、わりとお決まりに○○がでてきて、多分○○なんだろうなと思ったらそこに着地する…。
     でも、この小説に凝ったトリックなんて不必要なのだ。高2の夏という、なんともやるせないうんざりするような時間を切り抜いて見せてくれたということが、すばらしいのだから。

     読後がさわやかでとってもよかったです。

     *1988年第6回サントリーミステリー大賞読者賞受賞

  • キュンと青春時代を思い出すような恋の駆け引きを絡めた青春小説+ミステリーに隠された数々の伏線。恋愛と謎解き、2つのドキドキを味わえる作品。

  • (メモ:中等部2年のときに読了。)

  • 樋口有介、1988年デビュー作で、第6回サントリーミステリー大賞の読者賞作。
    青春ミステリーの傑作なんであるが、同じ高校の主人公、ヒロインの日常会話や描写の方が面白い。
    二人の諸設定がけっこうひねっていて、実は会話も行動もほんとに高校生かよ?と突っ込みたくなるところも多い(ラストの犯人を追い詰める、将棋でいう詰み状態に持っていくところとか)が、ヒロインの酒井麻子がとても魅力的に描かれているのでどうでもよくなる。
    この作品は発表後間もない1990年に映画化されて、ヒロインを和久井映見が演じているが、原作となんかだいぶ違ったというか違う話になっちゃたように記憶している。
    まぁ、これはこれでいいとして、酒井麻子は高校生離れしたスーパーモデル級の顔とスタイルの持ち主でないとダメなのである。
    でなければ主人公が振り回される意味も弱いものになるし、モデルばりの容姿にみあったわがまま身勝手に反発することで得るエネルギーが、主人公と物語を動かすからである。
    そして最後にちょっと素直になるからものすごく魅力的になる。
    物語の後半から、ヒロインは美しい外見に包まれている内面のかわいらしさ(主人公からすればいとおしさといったところか)が現れてくる。
    たぶんデビュー作で創造された重要なキャラクターのはずである。
    現在誰がこのヒロインを演じられるか?
    う〜ム、思いつくのは「1リットルの涙」の頃の沢尻エリカくらいか。
    今となっては不可能だがね。

  •  オンナが泣くとき、オトコに求めてるものそれは?
     なぐさめじゃない。説得じゃない。説教なんかじゃモチロンない。もぉわかってないなぁ世の中のダンシ。
     
     オンナにとっての涙はデトックス。途中で止めたりしなくてOK。黙ってまずはハンカチ貸して。背中撫でて。ぜーんぶ、出し切らせて。まとめに甘ったるいセリフでいいんだって。

     離婚した父親と暮らす主人公は、高校生にしてこのロジックがわかってる。
     どうも本人は計算でやっているのではなくむしろ、ちょっと冷淡というか照れ臭くて軽口でごまかしちゃうだけの結果オーライ野郎なの? って気もするが。

     離婚した母親ともうまく折り合いを付けつつ、文句を言いながらも父親の世話を焼きながら家事を完璧にこなしてしまうあたり、なにやら理想的なお婿さん候補として私たちの前に現れるのが、主人公のシュン。
     フレドリック・ブラウンの探偵小説を読み、コットンクラブを観る(実際にはストーリー中、彼はこの映画を観ることは出来ないのだが)、ブラックコーヒーを飲むおしゃれな高校生。ところが同級生が自殺したことを警官である父親に聞かされ、クラスの女子と行きがかり上その事件に巻き込まれ…
     軽口のオンパレード。酒脱な会話。じれったい恋人同士。さくさく軽めの爽やかな会話のテンポ。
     
     若者にはほとんど無限の可能性があるが、その可能性そのものには限界があるのだよ。必要以上にがんばろう、受け止めよう、俺しかできない! と背負いこんでギリギリ限界まで常に背伸びしてはいかんわけ。そのへんの緩さ加減の使いわけが実に絶妙。ギリギリの絶叫野郎よりもゆとりのあるオトコにオンナが惹かれるのは当然至極。

     どうも父親が、失恋した女性の未練をこそっとその名前に忍ばせたのではないかという春一(シュンイチ)は、その父親の思いさえも軽やかに、蹴飛ばしてマイペース。

  •  高校二年の夏休みのある日。
     同級生の女の子が死んだ。
     彼女はあまり目立たなかった。
     なぜ彼女は死んだのか。

    20年近く経っても色褪せない青春ミステリーです。
    鮮やかな装丁とタイトルに惹かれて買ってみました。

    ミステリーとしては普通の部類に入るのかもしれないけど。
    恋愛小説としても青春小説としても楽しめます。

    妙に大人びた高校生がとても瑞々しくて魅力的でした。
    高校時代に読んでいたら、ありえないと一蹴していたかも。

    これが処女作というのだからとても驚きました。
    ちょっとした会話の掛け合いが少女漫画っぽくて笑えます。

    刑事の息子とやくざの娘というのが昭和っぽいですが。
    あとは携帯電話じゃなくて固定電話が出てくるところなんかも。

    話の内容としては結構重いはずなんですけどね。
    テンポも良くてさくさく読み進められました。

    最後があっさりしすぎていたような気もするけど。
    これはこれで良かったのかもしれないですね。

  • 青春恋愛と殺人ミステリーを混ぜ合わせ、しかもハードボイルドな小説。なんとも形容しがたい作品だ。

    刑事の父親を持つ主人公と、ヤクザの父親を持つヒロイン。彼らを取り巻くのは学校の先生だったり、同級生だったり。そんな2人の高校生が同級生の殺人事件を捜査。

    ケータイのない時代、高校生たちの恋愛はこんなにもさわやかだった。どことなく背伸びしているような会話は読んでいる側が恥ずかしくなるような初々しさ。そして、殺人事件解決のために、大人の社会へ平気で飛び込んでいく無鉄砲さ。これこそが当時の若者だったっけ。

  • 文章のリズムが良くて、夢中で読んでしまった。こんなに面白いミステリがあることを知らなかったなんて。。。書店めぐりがまた楽しみになった。

  • 会話を独特に続けて書く所は軽さがでていていい。
    シュンとその親父の出来た息子と駄目親父も味がある。
    でも出来すぎの息子なとこは好きじゃ無い。
    元彼女はクラス一美人でそれを素っ気無く振ったり自分は経験豊富だなどと豪語する辺りは勝手にやってろと言いたくなる
    。奇妙な繋がりを持つ麻子と、教師を巻き込んで事件へと発展してゆくテンポはいいのだが最後にまとめてみちゃいました。
    って終わり方があまり好きではない…かも。いきなりぽいっと真相語っちゃったって感じなので。

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著者プロフィール

1950年、群馬県生まれ。業界紙記者などを経て、88年『ぼくと、ぼくらの夏』で第6回サントリーミステリー大賞読者賞を受賞しデビュー。『風少女』で第103回直木賞候補。著書に『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の思惑』、「船宿たき川捕り物暦」シリーズの『変わり朝顔』『初めての梅』(以上、祥伝社文庫刊)など。2021年10月、逝去。

「2023年 『礼儀正しい空き巣の死 警部補卯月枝衣子の策略』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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