さんだらぼっち (文春文庫 う 11-5 髪結い伊三次捕物余話)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167640057

感想・レビュー・書評

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  • 髪結い伊三次捕物余話シリーズ4です。今作も良いですね。お文が懐妊します。中身は、廻り髪結い伊三次の女房になったお文は、「さんだらぼっち」と呼ばれる木戸番の店で、ある父娘と知り合いになる。再会を約束したお文だったが、その父娘に悲劇が起こる・・・。表題作「さんだらぼっち」を含む5編を収録。

  •  一日仕事して、お文と差し向かいで飯を喰い、湯屋に行き、お文を抱いて眠りに就く。何んということもない毎日である。おおかたの江戸の人々の暮しでもある。これがつまりは倖せなのだ。宇江佐真理「さんだらぼっち」、髪結い伊三次捕物余話№4、2005.2発行。鬼の通る道、爪紅、さんだらぼっち、ほがらほがらと照る陽射し、時雨てよ の連作5話。伊三次とお文は、茅場町の裏店から佐内町の仕舞屋(一軒家)に。次は廻り髪結いから床を構えることができるか・・・。

  • 前巻で火事で家を失い.深川を去ることになったお文。 良いきっかけではなかったが、なかなか結婚に踏み切れずにいた二人が、それがきっかけとなり、芸者は辞めて、伊三次と一緒に暮らすことになる。これで、伊三次が自分の店を構えるのは、 また少し先になってしまうかもしれないが、それでも慎ましくも幸せな日が続くのだろう、と淡い期待をするも、、、
    今回もまた色々と起こる。今回は特に、悲しい話が続いた。それも、伊三次とお文たち当人や身近な人に関わる事件が続いたので、より感情移入してしまった。
    それにしても、 最後のおみつの発言には、まるで自分がお文になったようにショックだった。 おやす (おみつの姑) の発言などから察するに、おみつは起きたことだけでなく周りの反応など二重に傷付いているのだろう。そんな時には、被害妄想が沸き上がったりもするのだろう。 それにしても、だ。
    何だか、最初の印象が悪かったおこなの方が好印象になってきてしまったな……

  • やるせない表題作
    おみつも気の毒

  • 目次
    ・鬼の通る道
    ・爪紅
    ・さんだらぼっち
    ・ほがらほがらと照る陽射し
    ・時雨てよ

    家を焼け出されたお文は芸者をやめて、伊三次の女房になる。
    が、今まで女中を雇って家のことをやってもらっていたお文には、家事は難しいばかり。
    見かねた長屋のおかみさんたちがあれやこれやと面倒を見てくれていたうちはよかったが、子どもをめぐるいくつかの事件が重なって、お文は近所とトラブルを起こし家を飛び出してしまう。
    やれやれ、なかなか落ち着かない二人である。

    それにしても、ずっとお文の家で身の回りの世話をしていたおみつは、あんなにお文を慕っていたのに、いくら流産して気が高ぶっていたとはいえ、あんなひどい事をいうとは。
    私も信頼していた人から、陰で裏切られていたことを聞かされてすごくつらかったことがあるから、お文がショックを受けたことが身につまされてしょうがない。

    実はこのシリーズは、人の心の暗い部分を明らかにする作品が多くて、実は読後感の重い話が多いのだなあと今さらながら気がついた。

    とはいえ、すりの直次郎が足を洗ったり、伊三次に弟子が出来たり子どもが出来たり、世界はどんどん変化を続ける。

  • しみじみと読む。編のおしまいが鮮やかで、ふっと息をつく。

  • だんだんと面白くなってきた、登場人物の性格づけに慣れてきたからかもしれない。

  • 前巻で火付けの火事で深川から伊三次の家に越してなし崩しに夫婦になった二人。また、引っ越すことに、ついでにひょんなことから弟子まで取ることに。

    「さんだらぼっち」の語源もわかりお勉強になった。

  • 髪結い伊三次シリーズ、その4。
    お文の住まいが放火で焼け落ちた事をきっかけに、ようやく伊三次とお文は夫婦となり、長屋で暮らし始めたところから始まる。


    物語が長くなるにつれて、ふたりのまわりの人々、お文の家で女中をしていたおみつや、不破の息子龍之介、掏摸の直次郎など、物語を彩る深川の人々も様々に成長し、変化していく。

    伊三次も、これまではお文のことや、不破の手先として働くことに引け目を感じては悶々としたりしていたが、そのあたりのことを消化して、男っぷりが上がっている感じ。
    その主役よりもさらに、お文がイイねぇ!気っ風の良さに加えて、意外なところで小娘のように純ないじらしさが、一際魅力的だった。

  • 今回は悲しい話しが多かった。それでも悲しさの次に繋がる景色が見える。環境の変化が生み出すものは、幸不幸問わず明日に向いている。宇江佐真理は上手いな。

  • 2018/1/5
    2018年最初の1冊はこれ。
    悲しい話が多かったけどその悲しさや切なさも大切に感じた。
    お文とおみつはどうなるのかねぇ。
    すごく悲しいことがあって心に余裕がないとき、ついおみつみたいなこと言っちゃうもの。
    おみつはこの時ホンマにどん底やったから、こんな物言いもやむを得ないよね。本心じゃないよね。
    後悔したんだと思うんだけど、どうなのかな。
    お文もつらかったね。
    二人のこれからが気になる。

  • 2017.12.27.読了

    このシリーズも久しぶり。

    人情あふれていて、好き

  • なかなか悲しい話でした。けれど、お文さん、元気な子どもが生まれてほしいなぁ。

  • この巻もとても良かったです。
    伊三次と夫婦になり長屋暮らしとなったお文。まあまあうまくやっていたのですが、近所と子どもの夜泣きをめぐって騒動をおこし、長屋を出ていってしまいました。気が強いけれど情も深いお文。そんなお文のことを大切に思っている伊三次。解説にもありましたが、夫婦の絆がちゃんと出来ているようで嬉しいです。そしてお文に新しい命が宿ったようです。おみつにはつらいことがありましたが、きっと乗り越えていけるでしょう。おみつが放った言葉は尋常でない時の言葉なので後で悔やむと思いますが、その言葉を聞いてしまったお文はショックだったでしょう。そういう登場人物たちのありのままの人間らしい言動がこの物語の余韻を深く響かせるのでしょうね。
    次の巻もとても楽しみです。

  • 2016.5.22
    人の心の機微、江戸情緒
    好きな展開、

  • いろいろ事情はあったにしろ、
    やっぱり長屋住まいは長く続かなかったか、お文さん。
    しかし、またお座敷に出るようになるとは、驚いた。

    子どもや赤ん坊がらみの出来事は、嫌なものだ。
    子どもができたお文さん、流産してしまったおみつと
    仲直りできると良いのだが。

    惚れた女と一緒になるために、
    無理やり人指し指の先を切り落とした直次郎は
    伊三次の嘘で追い払われたが、
    良くも悪くもまた登場する気がする。

  • 【本の内容】
    芸者をやめたお文は、伊三次の長屋で念願の女房暮らしを始めるが、どこか気持ちが心許ない。

    そんな時、顔見知りの子供が犠牲になるむごい事件が起きて―。

    掏摸の直次郎は足を洗い、伊三次には弟子が出来る。

    そしてお文の中にも新しい命が。

    江戸の季節とともに人の生活も遷り変わる、人気捕物帖シリーズ第四弾。

    [ 目次 ]


    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 母より女。可哀想すぎる。

  • 「ほがらほがらと照る陽射し」はいつもよりも、せっぱつまった切なさがあった。
    次巻を読んで、ホッとした。

  • 髪結い伊三次シリーズは『幻の声』『紫紺のつばめ』『さらば深川』と、この後の『黒く塗れ』『君を乗せる舟』『雨を見たか』まで読破。

  • シリーズ第4段
    やっと一緒になれた伊三次とお文。だけれど、そう簡単には事は運ばず…。
    今回は一段と切ない終わり方の話が多かったような気がする。
    親しみがもてるキャラクターも増えてきただけにより切なくなる。
    だからこそ、次回が気になるなぁ。

  • L 4 髪結い伊三次捕物余話
    鬼の通る道
    不破のむすこ龍之介が中心

    爪紅
    伊三次とお喜和の昔

    さんだらぼっち
    武家の父娘
    お文激昂 伊三次の塒生活も板についてきていたのに残念

    ほがらほがらと照る日射し
    日本橋で芸者を始めるお文
    直次郎とお喜和の娘お佐和

    時雨てよ
    佐内町へ引っ越し
    扇屋九兵衛
    お文の懐妊

  • 伊三次とお文を取り巻く人々の話がだんだん複雑になり、人生簡単に話が進まないものだと実感させる。ふたりの行く末を心配するあまり、どんどん先が読みたくなる、究極の時代物かも。

  • 「鬼の-」ではお互いの考えを信頼できた2人だったのに、なぜ、夜泣きする子を折檻する母とけんかになるお文の心持ちを計ろうとしないのか。男は甘えものだということか。
    現代日本の幼女誘拐殺人犯を髣髴させる「爪紅」。時代が変わってもオタクはいるのか。メイドカフェこわい。
    あんなにほしかった子供があまり出来てほしくない時にできちゃった。親って勝手。まぁ、江戸時代にバースコントロールはなかったのだから、まさに授かり物でどうしようもないけれど。出来て嬉しかったおみつちゃんのところは流れちゃうし。でも、あんなやさぐれ者だった弥八が心の大きいいい男になって若いっていいわ。直次郎もがんばれ。

  • 第四弾
    相も変わらず、登場人物の織りなす人生模様
    今回はお文に子供ができるまで、途中に色々な出来事が進行する。
    事件そのものは大した事件でなくても、それぞれの人々にとっては重要か

  • お文は激しい気性だなあ・・・と再認識させられたこの巻。でも、折檻された子供を前におんどりゃああ!って気持ちも、後に引けない気持ちも良く分かる。今回の離れ離れは前と違って、読者もちょっとだけ安心して見てられるのが、2人の関係性を丁寧に積み上げて来た著者の力量かな。直次郎もなんだか切ないよね。良い方向にいきかけたのに・・・。ここには人生がつまってる。そんな一冊。

  • 人気の「髪結い伊三次捕物余話」4作目。
    流れるような文体で、時代色たっぷりなのに、わかりやすい。

    前作でお文の家が火事になって焼け出され、やっと夫婦になった伊三次とお文。
    深川芸者の文吉として鳴らしたお文に長屋暮らしは無理があったが、お文のほうも、すぐ引っ越したいとは言わなかった。
    長屋のおかみさん連中は皆よってたかって、炊事の面倒まで見てくれたのだ。
    ところが、思いがけない事件の余波で、お文は長屋を飛び出すことに…
    これっきりになってしまう仲ではないけれど、ここは自分の居場所でなかったと道に立ち尽くすお文の心情が哀しい。

    伊三次が手伝いをしている奉行所の不破が「お文に無理をさせたんじゃないか」というのは優しいですね。
    伊三次もくわしく事情を知って反省し、ようやく家を構えることにする。

    「鬼の通る道」は不破の一人息子、龍之介が論語を習いに私塾に通うようになる。
    当時、素読吟味は侍の大事な教養で、試験もあり、不破の妻いなみが受けさせたがったのだ。
    伊三次がいなみのことをいつも褒めるので少し悋気したこともあるお文だったが、いなみと知り合うようになって、深く納得しているお文。
    しかし、どちらかというと剣術の方が得意な龍之介は熱を出してしまう…?

    「さんだらぼっち」とは、米俵の両端に当てる藁の蓋のこと。
    桟俵法師がなまったもの。
    大切なお米を入れる物だから、使い終わった後にも拝む物を乗せるのに使ったりする。
    木戸番の夫婦が、疱瘡が流行ったときに、このさんだらぼっちを家の棚に載せて拝んでいたのが外から丸見えで、夫婦に懐いて通う子供達がこの店のことをさんだらぼっちと言うようになり、挨拶するにも使ったのだ。
    木戸番では木戸の開け閉てや夜回りの他に、日用品も置いて売っていて、お文も馴染みになる。

    お文の女中だったおこなはお文の家が焼けて居場所をなくし、水茶屋へ勤めに出ている。
    正吉がおこなに気があって通ってくるので、正吉の親や番頭が心配して釘を刺しに来る。
    正吉もいささかぼんやりした若者なので、世間を知るようにと岡っ引きの増蔵親方の所に見習いに来ているのだったが。少し大きな米搗き屋の一人息子なのだ。
    おこなは、もともと水商売でそこの主人と結婚したこともある女だから、かたぎの店の女主人に迎えられることはまずあり得ない…

    湯屋に嫁いだもう一人の女中おみつは、妊娠。幸せになっていると思われたが?

    所帯を持ったものの、波乱の続く時期になっていたんですね。

  • 髪結い伊三次シリーズの4作目。「さんだらぼっち」って、こういうモノだったのか。ふーむ。このシリーズは、各話が決してハッピーエンドでは終わらずに、なんとも寂しく切ないまんまで終わってしまったりします。読んでると「えぇ〜、コレでいいのかぁ?」と思ったりしますが、これがまたこのシリーズの妙味なのではないでしょうか。いやはや、なんともいいシリーズだなぁ。

  • 髪結い伊三次捕物余話 第四弾

  • 小説には二通りある。「われを忘れる小説」と「身につまされる小説」である、という解説の言葉に納得した。
    自分にとってこの小説は後者だ。例えば、流産したおみつが「姉さんはいい気味だと思ってるかもしれない」というシーン。流産したことはないけど、落ち込んでいる時には、皆が悪意をもって、自分を哂っているように考えてしまう気持ちはすごーくよく分かる。
    だから登場人物たちの先行きが気になって、続きを読んでしまうんだな。

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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