13階段 (文春文庫 た 65-2)

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  • / ISBN・EAN: 9784167801809

感想・レビュー・書評

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  • 高野和明の長篇ミステリ作品『13階段』を読みました。
    久し振りに日本の作家のミステリを読みたくなったんですよね。

    -----story-------------
    江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリー登場!
    前科持ち青年・三上は、刑務官・南郷と記憶の無い死刑囚の冤罪をはらす調査をするが、処刑まで時間はわずか。無実の命を救えるか?

    犯行時刻の記憶を失った死刑囚。
    その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。
    だが手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。
    処刑までに残された時間はわずかしかない。
    2人は、無実の男の命を救うことができるのか。
    江戸川乱歩賞史上に燦然と輝く傑作長編。
    『十年ぶりの後書き』収録。解説・友清哲
    -----------------------

    2001年(平成13年)に刊行された高野和明のデビュー作… 死刑制度を扱ったミステリで第47回江戸川乱歩賞を満場一致で受賞した作品です。

     ■序章
     ■第一章 社会復帰
     ■第二章 事件
     ■第三章 調査
     ■第四章 過去
     ■第五章 証拠
     ■第六章 被告人を死刑に処す
     ■終章 二人がやったこと
     ■解説・友清哲
     ■十年ぶりの後書き 岡本喜八監督の思い出 ――『13階段』の技術について

    仮釈放した服役囚・三上純一に、定年間近の刑務官・南郷正二がとある仕事を持ちかける… それは10年前に起こった殺人事件の再調査であり、犯人とされる死刑囚・樹原亮の冤罪を晴らせば多額の報酬が貰えるというものであった、、、

    民事賠償で家族が困窮を窮めていた三上はその話を受ける… 事件は10年前、千葉県中湊郡で起こり、ベテランの保護司夫婦が惨殺されたというものであった。

    犯人とされる樹原亮は、事件現場近くでバイク事故を起こし意識を失っていたところを発見され、状況証拠によって犯人とされ死刑判決を受けていた… ところが、樹原自身はバイク事故の影響で「階段を上っていた」というおぼろげなこと以外、事件前後のことを思い出せなくなっていた、、、

    死刑執行まであと約3ヶ月… 樹原の言う「階段」をヒントに三上と南郷は中湊郡で調査を始める。

    やがて、三上と事件の意外な共通点が浮かび上がってくる…… 不可能とも思える仕事を引き受けた2人の男に待ち受けていた運命とは――手に汗握る展開と、胸を打つ驚愕の結末、、、

    現代社会の罪と罰を問い、圧倒的なサスペンスで読書界を震撼させた江戸川乱歩賞受賞作。


    いやぁ、面白かったー デビュー作とは思えないクオリティの高さに驚きましたね、、、

    死刑制度を含めた刑の重みや刑務所の機能、死刑を執行する刑務官の苦悩、被害者家族の苦悩、加害者の家族への中傷や境遇、賠償金による生活苦、裁判というシステムが孕む矛盾、犯罪者の更生 等々、重たいテーマを浮き彫りにしつつ、それでも、一気に読ませる魅力を持った作品でした。

    10年前に起こった冤罪の可能性がある事件の真相を解く… 真犯人は誰なのか? その動機は? 証拠はどこに隠されたのか? 死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶は? そして、多額の報酬まで出して真相を解くことを依頼した人物の目的は? この事件に三上純一はどう関わっているのか? 新事実が判明することにより、次への興味が沸くというミステリ的展開の方も大きな魅力、、、

    クライマックスの複数の敵と対峙するシーンは手に汗しながら読んじゃいましたねー そして、三上純一の過去が明らかになるエンディングも印象的… 巧いなー 素晴らしい作品でした。


    以下、登場人物です。

    三上純一
     2年前に傷害致死事件を起こし松山刑務所に服役していた青年。出身は東京。
     仮釈放後、南郷と共に10年前の殺人事件の真相を追う。
     2年前まで父の工場で働いていたが、工作機械の展示場で出会った佐村恭介を殺害したことで生活が一変する。
     10年前、共に未成年の木下友里と中湊郡へ家出し、補導された過去を持つ。
     時期と地理的には樹原が起こしたとされる殺人事件と符合している。

    南郷正二
     松山の刑務官。階級は看守長。いかつい顔をしているが、実直で人情に厚く、頭も切れる。
     杉浦弁護士から樹原亮の事件調査依頼を受け、近々仮出所予定の三上を助手に迎える。
     退任間近であり、調査の報酬は退任後に開きたいパン屋の原資にしようと考えている。
     東京に双子の兄がいる。

    佐村光男
     2年前三上に殺害された恭介の父。中湊郡で工務店を営む。
     息子を殺した三上が傷害致死、懲役3年6ヶ月という比較的軽い判決を受けたことに納得がいかない。

    佐村恭介
     2年前三上に殺害された青年。父・光男の工務店で働いていた。三上とは同い年。

    樹原亮
     死刑囚。10年前、自身の保護司であった宇津木耕平とその妻を殺害した容疑で死刑判決を受ける。
     事件発生直後に現場近くでバイク事故を起こし、それが逮捕のきっかけとなっている。
     だが、その事故によって前後の記憶を喪失しており、自分が宇津木夫婦を殺害したのかどうか覚えておらず、
     自分が起こしたかどうかもわからない罪で裁かれることを恐れている。

    宇津木耕平
     10年前、樹原が起こしたとされる殺人事件の被害者。
     長年、保護司を務めてきたベテランで人格者として周囲からの評判は高かった。
     犯人とされる樹原の記憶が曖昧なため、殺害された動機も不明である。

    木下友里
     三上の元恋人で10年前に三上と中湊郡へ家出し補導された少女。
     精神を病んでおり、何度か自殺未遂を起こしている。

    安藤紀夫
     ホテル「陽光」のオーナー。地元の名士。
     10年前、保護観察中の樹原を雇用していた人物で、彼の身を案じている。
     樹原の冤罪調査を依頼した匿名の支援者とは安藤ではないかと南郷は推測している。

    室戸英彦
     宇津木夫妻に保護観察を受けていた男。
     無期懲役で14年間の服役生活を送った。
     刑務所生活が身に染み、布団をきっちり畳むなど、今でも同じ生活スタイルでいる。

    杉浦弁護士
     弁護士。南郷に冤罪の調査を依頼する。

  • 「記憶を無くした死刑囚の冤罪を晴らす」という目的のために、刑務執行官と罪人である青年が奔走する物語。さまざまな伏線を回収しながら進んでいく中で、物語の真相に気づかされていく感覚が面白かった。先日読んだミステリー?「星を継ぐもの」と合わせて、その醍醐味を感じることができたと思う。生意気なことをいうが、作家になってすぐの作品だからか設定等にやや強引な面を感じた。しかしそれを加味しても面白い作品であることに変わりはなく、一度は読むに値する本だろう。
    死刑制度について考える方が読んでみても面白いと思う。死刑制度について普段からよく考えていた私にとっても、その是非について再考する良い機会となった。

  • すごく面白かった。
    前から読みたかった本で、やっと読めた。
    死刑制度に対して深く考えさせられた。
    もし、自分があらぬ罪で死刑囚となってしまったらどうしようか。もし、我が子を殺されたら同じように、殺したいくらいの憎悪が湧くのだろうか。そんなことを考えながら読んだ。
    少しずつ犯人像が見え始めたところからは、読む手が止まらない。素晴らしい本です。

  • 第47回江戸川乱歩賞。
    一人の死刑囚の冤罪を証明すべく元刑務官が奔走する社会派ミステリー。
    調査状況に応じて二転三転する真犯人像だけでなく、刑罰・更生・被害者・加害者について思考する場面を重層的に読者に提示し続ける構成が本当に見事。
    「死神は、午前九時にやって来る。」
    この冒頭の一文のカッコよさはどうだろう!先を読まずにはいられない。

  • "死刑制度について、
    人間の本質について、
    善悪について、
    正義とは何か?
    様々なテーマを投げかけられながら、エンターテインメント小説になっている。
    人間が人間を裁く以上、えん罪は避けられない。
    この可能性もあるし、人を死に追いやった人物を死によって裁くことは、突き詰めると人を殺すことになる。
    私は死刑制度は廃止するべきものだと考えているが、この小説を読んだ人は、どんな思いで読んだのだろう。"

  • 高野さんの小説の凄さが濃縮されてた

  • 知らない世界をのぞくことができるのが、読書の楽しみのひとつだけど、またひとつ、今まで全く考えることのなかった世界を見ることができた。
    ひとつひとつ明らかになっていく事実にいちいち驚きながら、一気に最後まで読み終えた。

  • ストーリー的にはやたらと登場人物が多い印象です。それでいてそれほど意味を持たない人物も多く、この人は誰だっけ…と混乱しました。
    結末には特に驚きも救いもないので、読後感はあまり良くなかったかもしれません。
    ただし、死刑について深く知ることができたので、とても勉強になりました。

  • 重い内容ながらも後半になればなるほど読む手が止まらなかった。
    読後も余韻が残る位、深く考えさせられた。
    視点も所謂、神の目線で綴られているため、状況が理解しやすかった。
    こちらがデビュー作とは凄い!
    2人の主人公のことが気になって仕方がなくなりました。

  • 無実の死刑囚を助けるため元刑務官と元受刑者が事件を調べる話。高かった期待値を軽々超える面白さ!事件の真相に見え隠れする不穏な情報、全てがどう転がるのか先が見えなさすぎてめちゃくちゃ気になる。何より死刑執行方法がリアルすぎて刑務官の仕事の厳しさを知る。

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著者プロフィール

1964年生まれ。2001年に『13階段』で第47回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。著書に『幽霊人命救助隊』、『夢のカルテ』(阪上仁志との共著)など。2011年、『ジェノサイド』で第2回山田風太郎賞を受賞。自著のドラマ化『6時間後に君は死ぬ』では脚本・監督も務めた。

「2012年 『グレイヴディッガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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