インドカレー伝

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 84
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309224572

作品紹介・あらすじ

インドカレーは、いかにしてインドカレーになったか…大国列強からの侵略、占領によってもたらされた食をはじめとするさまざまな生活習慣。外国文化を融合した料理こそカレー料理なのだ。カレーの成り立ちから読み解く、知られざるインド食文化史。

感想・レビュー・書評

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  • インドに起きた様々な歴史的影響により、インドの食文化がどのように変遷してきたかを物語る書。

    著者がイギリス人のため、内容はイギリス人を始めとするヨーロッパ支配によってもたらされた変革がメインで、北インドのムガル帝国の侵略、その前に存在したイスラーム王朝 奴隷王朝に関する記述は控えめです。
    また、ムグライ料理のローガンジョシュに関する記述はありましたが、ケーララ州のビーフペッパーフライに関する記述はないなど、記載内容にむらがあります。
    よってタイトルには偽りがあり、インドカレーのすべてを伝える内容ではないと感じました。

    ただし、東インド会社設立以降の内容は細かく、カツレツやコルマに代表される、アングロ・インディアン達によるインド料理とイギリス料理の融合や、インドにチリや紅茶が持ち込まれた経緯、インドの列車販売の紅茶・コーヒーの戦い、なぜチャイを飲み終えたあとのカップをインド人は叩き割るのかに関する説明などもあり、大変興味深く読めました。
    これらは、知っている人には常識だと思うので、ちょっとかじりだした私にはうってつけの書でした。

    全10章からなり、各章は、イギリス人のある種の横柄さから生まれたチキンティッカマサラ、ポルトガルのゴア地方支配により誕生したヴィンダルーや、カレー、カツレツをテーマとした内容となっています。
    レシピも豊富に記載されており、読みながら作ってみたいとなったとき、そのレシピを参考に作ることも可能です。
    材料や調理器具を揃えるのに一苦労すると思いますが。

    最終章に日本に関しても、"カレーが国民的に重要な位置を占める国"として出てきます。
    我々日本人は、カレーをイギリス以上に独自の進化をさせてしまい、カースト制度、気候、外部からの食材の輸入により変わってきたという歴史を知ることもなく、その本来の芳香を意識せずに、何も考えず"カレー"として認識してしまっています。
    本書中には、日本に関して好意的に書いていますが、本書の内容はカレー好きと他称される日本人としては、少しは基礎知識レベルで知っているべき内容なのかもしれないと思いました。

  • インドカレーの歴史についていろいろ語ってくれる本。インドは昔からカレーだと思っていたが、実際はポルトガルとかイギリスとかが植民地支配に明け暮れた混沌のなかで生まれてきた料理ということを知って驚く。今ひとつ食い足りない感じがあるのは日本のカレーについての言及がないところ。

  •  16世紀初頭くらいから説き起こし、インド料理の成立と変遷、そして「カレー」が生まれるまでを物語る。レストランで現在食べられているインド料理(おもにムガール料理の影響が強い)が、どのようにペルシアや中央アジアの料理の影響を受けて成立したのかとか。また一方、イギリス人はどのようにインドのスパイスを取り入れたのかとか。なかなかたのしいディテールが味わえる。

    「料理」というのは、いちばんホンネが出やすいところだと思うんだよね。だから、この本はおとなしく皿の上だけにはおさまらない。彼の地ではムスリムなのか、ヒンズーなのか、どんなカーストに属するかによって、どう食べるのかも違ってくる。そういうのんも「料理」という鏡が赤裸々に映し出す。たとえばイギリス人がインド人を支配していたとき、召使いのインド人は決して主人と一緒にものは食べなかった。それは「礼儀正しいから」というよりも、イギリス人はアウト・カースト(カースト制度のさらに外にあるという最下級のカースト)だからして、いっしょにものを食べるというのは不浄の行為にあたるからなのだった。そんなことも、書いてあるよ。

     インド料理というのは、むかしから今のようなインド料理だったわけじゃない。ペルシアや中央アジアからの影響はもちろんだし、ポルトガル人がやってこなければ、トウガラシもじゃがいももトマトもインド料理には入ってこなかったわけだし。その中で、かなりの時間・空間にわたってインドを支配下に置いたイギリス人が、いっちばんインド料理への影響を及ぼすこと少なかったというのが興味深い。そして、イギリス人によるインド理解が「カレー」という形をとったというのもまた、頑固なイギリス人らしいというべきか。カレーはたしかに、インドの豊穣なスパイス文化の99.9%をとりこぼしているのだと思う。でも、それくらい薄まったからこそ、カレーは世界に拡がったのかもなぁ……。

     この本を読んでいるあいだじゅう、どうにもインド料理が食べたくなって困った。考えてみればオレの場合、寿司を食わない週はあれども、カレーを食べない週はない。インド料理は奥深く、この本1冊ではわかったふりもできないと思うが、インド料理を食べる楽しみが確実に増す1冊ではある。

  • インド料理は島国で大人気。CoCo壱番屋がまさかの登場。

  • てっきりカレーだけにフォーカスをあてた本なのかなと思いましたが、カレーに関連した飲食物についても書かれています。最初は読んでるのが辛かったです。横文字が多いのと人物が色々と登場してくるので「あれ、この人誰だっけ?」となることがしばしば。また、僕は世界史があまり詳しくないので、国の場所やら地域の場所やらを最初のほうについている地図でしょっちょう確認しながら読まなければならなかったので疲れました。「インドカレー伝」というタイトルにもかかわらず、個人的に一番読み応えがあったのは第8章の「チャイ~紅茶大作戦~」でした。インドで紅茶が飲まれているなんて本書を読むまで恥ずかしながら知らなかったので。インドっていうと香辛料のイメージがありますが、それを紅茶にまで入れるなんて本当どれだけ好きなんだ!とツッコみたくなるほどのインド人の香辛料好きが描かれています。それと、著者のリジー・コリンガムさんよく調べてるなーと思わせてくれたのが「CoCo壱番屋」と美味しんぼについて最後のほうで触れている点ですね。思わず笑ってしまいました。いやいや、日本人として嬉しいことなんですよ。最後に、この本を読んで関心をもったことは「カースト制度」についてです。低位のカーストの人とは一緒に食事をしないとか、日本で生まれ育った者としては理解できないところです。同じ人間であるはずなのに悲しいですよね。本書はカレーのルーツを紹介するだけでなく、差別や移民問題など、考えるべき問題も取り扱っているので、そういったことに興味がある方も読んでみてください。あ、一つ注文をつけるとしたら...。いろんな料理のレシピが紹介されてるんですけど、写真かなんか載せてくれればイメージしやすかったですね。いちいちネットで検索するのがめんどくさいというのも理由の一つですけど(笑)

  • イギリス人研究者が、インド料理と香辛料の歴史をつぶさに見つめた良著。カレーその他にまつわる大小のストーリーに、つい引き込まれる。マニアックなレシピ、王道のレシピ、多数。どんな味だろう?と味の想像力がかきたてられる。スパイスの香りが漂ってくるような1冊。これだけの研究を地道に完成させた著者に、拍手を送りたい。訳者にも。

  • 私たちが「カレー」といっているものは、「カレー」じゃないの?!インド人にとっての「カレー」について述べられた本。
    カレー好きの人には御薦めの一冊。

    <カレーとは>
    ヨーロッパ人がインドの食文化に押し付けた概念。インド人はそれぞれの料理を固有の名称で四ていた。
    日本のカレーは、イギリス人によって伝えられた。(アングロインディアン流のカレー)

    <インドの食べ物>
    原則はアーユルヴェーダ。主食の穀物に風味をよくし、独特な味を生み出す。6つの基本の味(辛・酸・甘・渋・苦)の絶妙なブレンドをつくるために香辛料を使用する。
    野菜料理では、塩に少し砂糖をいれて味を調え、黒コショウと体を冷やすヨーグルトを混ぜ合わせ、タマリンドを少々加えて単調な味のソースに刺激を与える。

  • 私の趣味の御本ですね、

    ミセス・リジーの脚下に跪きたくなる、
    凄まじい情報量と素晴らしい文章です。

    まるで惜しげ無くスパイスを香らせた、
    カレーのような御本。

    この御本を教科書にして歴史が教えられたなら、
    教える方も教えられる方も幸福でしょう。

    唯一無二の書物の一つなのですが、
    早めに手にいれておかないと、
    最近は絶版のサイクルが早い。

    本棚に置きたい刺激的な調味料、
    是非、買って下さい。

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著者プロフィール

ウォリック大学のアソシエイト・フェロー、ケンブリッジ大学ロイヤル・リテラリー・ファンド(王立文学財団)フェローを務める。著書に『インドカレー伝』、『戦争と飢餓』(いずれも小社刊)。

「2019年 『大英帝国は大食らい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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