#塚森裕太がログアウトしたら

著者 :
  • 幻冬舎
3.79
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344036901

作品紹介・あらすじ

「俺は、同性愛者です」
高3のバスケ部エースがSNSでカミングアウト。彼の衝動は思わぬ波紋を広げ……。   
ドラマ「腐女子、うっかりゲイに告る」の原作者、待望の最新作。


「登場するすべてのひとの気持ちが胸に迫って、読みながら必死に声援を送りました。たぶん誰もが、この小説のなかに「自分」の姿を見いだせるはずです。」三浦しをん氏推薦!
高3のバスケ部エース・塚森裕太は自分がゲイだとInstagramでカミングアウト。それがバズって有名に。
このカミングアウトが、同じ学校の隠れゲイの少年、娘がレズビアンではないかと疑う男性教師、塚森を追いかけるファンのJK、塚森を崇拝しているバスケ部の後輩へと変化をもたらしていく。そして塚森自身にも変化が表れ…。
作り上げてきた「自分」からログアウトしたら、「本当の自分」になれると思っていた――痛みと希望が胸を刺す青春群像劇。

感想・レビュー・書評

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  • 高校3年生、皆からの人気者でバスケ部キャプテンの塚森裕太が、同性愛者であることをカミングアウト。家族、友人、先生などの関係者それぞれの目線で描かれていて、色々な立場の心情に共感できる作品。

    カミングアウトして周りに認めてもらい、塚森裕太ときうアカウントをログアウトすれば本当の自分を見つけられると思っていたけれど、実際は違った。自分自身が自分を認められなければ変わらないことに気づいた。本当の自分とは何なのか?

    後輩から言われた、産まれる前に同性愛者だと分かっていたら堕されていただろうという酷い言葉により両親を信じられなくなったり、知らず知らずのうちに塚森裕太というキャラを演じている自分、親友を性的な目で見てしまう自分に気付いていくうちに、本当の自分が嫌いになっていく。。

    もがきながら出した答えは、自分の中の嫌な部分も、キラキラした人気者の塚森裕太も、全部、自分だということ。
    中盤から苦しい場面が続きますが、それぞれの登場人物が自分と向き合って一歩踏み出したラストが爽やかで好印象でした。

  • つらいなぁ、つらいよ、本当につらいよねぇ。
    「自分」というアカウントからログアウトするのって、二つの意味があって。
    別アカにログインすることで「自分」の中の「自分として認めたくない部分」を消化できるなら、それはいい意味のログアウト。
    だけどログアウトした「自分」が本当の自分でないという認識であったら。ログインした別アカがたんなる抜け殻であるなら。それはどこにも本当のログ場所がないということになる。つらい。

    容姿端麗、スポーツ万能、人格的にも申し分ない「塚森裕太」という自分。
    だけどそれは本当の自分じゃない。そこに自分の芯になっているものがないから。自分の芯。それは「ゲイ」であること。

    高校生の、ほんの17歳の少年が自分をゲイであると認識すること、それを受け入れること。その困難さを思う。
    順番に語られる、塚森裕太の周りにいる5人のそれぞれの思いと現実。カミングアウトから始まる同じ時間と出来事をそれぞれの目から語られる。同じ出来事がそれぞれの目を通して一点に集約していく。重ねられるにしたがって濃く、細かく、見えてくる。塚森裕太の持つ、深く暗く大きな悩み。
    完璧であること、それを隠れ蓑に自分の本質から目をそらしていた今まで。カミングアウトしても「塚森裕太」ならそれを軽く乗り越えられる、何と言っても完璧な塚森裕太なのだから。
    そんなガラスのようなプライドとぎりぎりの自尊心。守れるのか、乗り越えられるのか。読むのがつらい、つらい。

    最後の本人の章。涙が止まらない。必死でもがく塚森裕太を心から抱きしめたいと思った。よくやったと頭をくしゃくしゃとなぜてやりたい。
    そして、一番語りたかったことを語らずに描く。うまいねぇ。
    梅澤先生、あなたのおかげです。ありがとう。

  • 〇SNSや仮面 のうそ臭さが、5人とそのまわりの人たちの裸の叫びを強く浮かびあがらせる。
    本作ではカミングアウトでしたが、みんなそれぞれの大切なことでぶつかり合ったり、誤解しあったり、壊れてしまったり、思い合ったりしているんだよねと。
    〇2章で、知識だけだと傷付けてしまうのだなとあらためて。頭でっかちになりがちなのだけど。
    〇YAだけど、際どい場面があるので学校に置くなら高校くらいからか。
    読後感よい青春もの。

    プロローグ
    中学1年のときに自分が同性愛者だと気付いた。優等生の仮面が息苦しくなってきた。
    僕というアカウントからログアウトしたら、何があらわれるだろう

    1:同族、清水瑛斗
    学校の人気者、塚森裕太がインスタでカミングアウトした。あいつがカミングアウトできたのは“塚森裕太”だからだ。ふざけるな、“ゲイ”をカミングアウトできる人間ばかりじゃない

    2:教育者、小山田貴文
    娘がレズビアンらしい。私は教師だ。セクシャルマイノリティの子どもたちと向かい合う研修は受けてきたが、実際は真剣に考えてこなかった。それが半年前。塚森裕太のカミングアウトして、もう一度どうしたらいいのだろうと途方にくれた。

    3:ファン、内藤まゆ
    私は世界で1番の塚森先輩のファンだ。インスタを見て驚いたけど、うん、私は塚森先輩のファンであって恋人志望じゃない。でも、なんでかな喉が痛いの。

    4:後輩、武井進
    塚森先輩はおれのバスケの神さまだった。気さくで、優しくて、後輩思いで、バスケにストイックだ。コートの外でどんな人間でも、コートの中で神さまならば問題ない。そう思っていた。

    5:当事者、塚森裕太
    俺は変わりたかった。“塚森裕太”をログアウトしたら“俺”になれると思っていた。だけど、“塚森裕太”にゲイとう要素が付け加えられただけだった。
    試合なのに、皆が“塚森裕太”を観にきたのに、体が動かないんだ。

  • 誰の視点もとても心に突き刺さるのですが、一番印象深いのは、塚森のカミングアウトを受け入れられない武井視点。読んでいて思ったのは、当然世の中にはLGBTを受け入れられない人もいるだろうけど、それってそんなに悪いことなのかな、ということ。何で受け入れられないの?と思っても、その気持ちをその人に押し付けるのは違うな、と。もちろん逆も然り。LGBT関係なく、性格とか容姿とかでも生理的に受け付けない人だっているくらいですし、その辺は自由なんだろうなあとぼんやり思いました。
    そして梅澤先生については、ああそうだったのか、とこれまでの梅澤先生とのやり取りが腑に落ちて、涙腺が崩壊。全くの想定外だったので不意打ちにやられました…。最後、ボーナストラック的に梅澤先生視点が読んでみたかったです。

  • バスケ部のエースで成績優秀。
    誰からも愛される少年が
    自身の性的嗜好をカミングアウトする話が
    本人も含め周りの様々な人の視点から描かれる。

    生徒から借りなければ
    (面白かったんで読んでください!って子がたまにいる。)
    絶対出会わなかった本。

    複数人からの視点から
    同じシーンが描かれる。
    この時彼女はこう思ってたのかとか
    だから彼はこんな行動に出たのかとか
    徐々に広がってくるカラクリ。
    何度も同じシーンが出てくるのは
    少し飽きちゃったけど
    いろんな人の気持ちが丁寧に描かれていた。

    主人公がアイデンティティの葛藤をするシーンが良かった。
    他者評価と自己評価の乖離。
    言葉に出来ない感情。
    自分も若い時期にはあったのかもしれない。
    本当の自分と周りに見せている自分。
    これが一緒じゃない時期(人)は
    なかなか生きづらい。

    塚森裕太の性的嗜好のカミングアウトを通して
    本人や彼と近しい人たちの
    自己が揺らいたり、確立したりしていく。
    高校生の話なだけに
    少し若々しい感じもあったけど
    感想を書いていたら
    なかなか深い本だったなと
    思い直してきた笑

    初めて出会う作家さんだったけど
    今後も注目してみたい作家さんでした。

  • 「彼女が好きなのはホモであって僕ではない」がとても良かったので、浅原ナオトさんの本を読んでみたかった。
    バスケ部のヒーロー塚森裕太が、友達2人にカミングアウトした時の反応があっさりしていて、受け入れてもらえて、これはSNSでみんなにもカミングアウトできる。しよう。と思い、まずインスタで、報告。
    それをみた周りの人がそれぞれもやもやする。
    同じ学校の学年は違う男子目線。(同性愛者)
    自分の娘が同性愛者かもと気づいて何もできない父親目線。(同じ高校の先生)
    塚森裕太を推している後輩の女子目線。
    バスケ部の後輩目線。(ゲイを嫌悪し厳しい気持ち)
    それぞれの気持ちがとても良くわかり、LGBTについての当事者の気持ちを学べる。
    悟志目線の章もほしい。
    アウティング→他人の性的指向を無許可で別の人間に暴露すること。セクシャルマイノリティと関わる上で絶対にやっちゃいけないこと。
    ずっと『塚森裕太』って名前のアカウントにログインして生きてる気分で、そこからログアウトしたかった。だからカミングアウトをした。
    クラスメイトや、人と会話する時はログイン状態。
    ひとりの時は、ログアウトできるが、
    みんなが注目している時など、廊下を歩いているだけなのに、ログアウトできない。
    重大なシステムエラーを引き起こす可能性あり。
    ラスト、悟志に伝えることができて良かった。泣ける。

  • 同性愛者であるというのは、頭がいいとか、足が速いとか、そういう特徴と変わらない。

    人と人は放っておいたら離れるものなんだ。
    だから繋がりたい人とは、必死になって繋がらなくちゃならない。

    好きな人のこと、分からないから分かりたいって思うし、分かろうとするんでしょ。

    家族から、友人から、世界中から認められたって、お前がお前を認めていないなら、何の意味もない。
    大事なのはお前だ。
    お前が、お前自身をどう捉えているかだ。

  • イケメン人気者高校生バスケ部塚森裕太のInstagramでのゲイカミングアウトに関して同じ学校の同族、教師、ファン、バスケ部後輩、当事者を主にした章からなる。どの登場人物も自分を模索して探している。その状況を自分のアカウントにログインしている状態と表しているのがとても腑に落ちた。

  • 高3のバスケ部エースである塚森裕太がSNSで「俺は、同性愛者です」とカミングアウトしたことに影響を受けた本人を含む5人の人間の物語。
    何かしらもがいていた登場人物たちが皆ふとしたことがきっかけで悟りを開いたような感じになり、ちょっとうまくまとまりすぎな気はしたが、自分と向き合うということについて考えさせてくれる良作であった。

  • 「ログアウト」という表現になるほどなと思った。色んな立場からの描かれ方がされているので、色んな考え方から読める。でも皆、一生懸命で真面目だ。
    2021/4/21

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著者プロフィール

小説投稿サイト「カクヨム」に2016年10月より『彼女が好きなのはホモであって僕ではない』を投稿開始。2018年同作で書籍デビュー。同作は2019年に『腐女子、うっかりゲイに告る。』のタイトルでドラマ化され、話題となる。他著作に『御徒町カグヤナイツ』(KADOKAWA)、『今夜、もし僕が死ななければ』(新潮社)、『#塚森祐太がログアウトしたら』(幻冬舎)などがある。

「2023年 『100日後に別れる僕と彼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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