逆転正義

著者 :
  • 幻冬舎
3.55
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本棚登録 : 1205
感想 : 104
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344041554

作品紹介・あらすじ

『同姓同名』が中国でベストセラー、TikTokで話題、中学生ビブリオバトルでチャンプ本に!どんでん返しの名手によるエンタメミステリ短編集。どんでん返された数が多ければ多いほど、あなたの頭は凝り固まってる!常識とか普通とか思い込みとか。まっさらにして読んでみてください。もくじ:「見て見ぬふり」教室のいじめ。みんな見て見ぬふりをするけれどーー「保護」コンビニの前で制服姿の彼女に出会った僕はーー「完黙」素人相手にクスリは売らない闇社会の男はーー「ストーカー」トイレで彼を殺した女の家に彼氏が現れてーー「罪の相続」俺の息子は殺される理由もなく殺されたーー「死は朝、はばたく」刑務所から出てきた男に絡む少年たちはーーSNSにも正義警察が蔓延る現代日本。「あなたはそんなに正しいの?」あなたの知らない自分に出会える目から鱗だらけのミステリ集。

感想・レビュー・書評

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  • 逆転劇に驚嘆! 様々な犯罪をテーマに現代の社会問題を浮き彫りにするミステリー短編集 #逆転正義

    いじめ、売春、覚せい剤など様々な犯罪をテーマに、正義とは何たるかを切り取ったミステリー短編集です。現代の社会風刺も皮肉たっぷりに描かれていて、読んでるとムラムラと腹が立ってくる。でもタイトルどおり逆転をしてくれるので、最後には爽快感を味合わせてくれる内容になってます。

    短編でプロットも工夫が多い作品ながらも、さすがは下村先生ですよ。細部まで丁寧に表現された筆致で読み物としても楽しく読めまる良い作品でした。

    〇見て見ぬふり
    学生のいじめ、それを見て見ぬふりをする教師の物語。
    まさに今、世間を騒がせているような問題。何をやってもいいけど、やりすぎるとどうなるか。一度きりの人生だから後悔のないような行動をしたいものです。

    〇保護
    雨が降る深夜のコンビニ、寒さに震える女性と保護する男性の物語。
    独身男性なら一度は想像してしまうシチュエーションで悶々としちゃう。シンプルながらもいい逆転劇で楽しい作品でした。ちなみに、知り合いがこのパターンで大変な目に合った。

    〇完黙
    違法な薬を販売している男の物語。
    主人公の気持ちを推し量ると胸が痛くなってくるお話でした…

    〇ストーカー
    血みどろの手を洗っている時に彼氏が訪問してくる…はやく帰ってよ!
    登場人物全員が自分勝手という、人間不信に陥ること請け合いな作品。こわいよっ

    〇罪の相続
    気が付くと拘束されてた男、理由を聞くと祖父からの恨みを買っているようで…
    思った以上の逆転劇で、さすがにこれは発想に至りませんでした。

    〇死は朝、羽ばたく【オススメ】
    刑務所から出てきた男に、若者たちが正義を盾に脅迫していく。
    実は重いテーマ性で、しかも展開も面白いイチオシの作品。「正義なんて考えたことないくせに」本書全部を包み込むような名言が切れ味鋭くて好き。

    ■きっと共感できる書評(今回は世間への説教)
    Aは正しい、Bは間違ってる。Xは得をして、Yは損をする。何でもかんでも〇×をはっきり決めようとする。世知辛い世の中とはよく言いますが、あまりにも心が狭すぎる。

    価値観を人に押し付けすぎる。人それぞれ十人十色、それが人間社会の魅力。世界に出れば、人種、宗教、言語、経済、生活習慣など様々な違いがあるから、それぞれの価値観や正義が生み出される。地球にいる70億人が、ひとつの考え方になるわけがないんです。

    正義を振りかざしたりせず、ちゃんと話し合い、互いに理解や尊重や妥協をすることができれば、人を傷つけるようなことをしないですむと思うのですが。

  • タイトル通り、正義感を題材にしたミステリー短編集。イジメ、ストーカー、未成年淫行、復讐、前科者など世間的に「悪」とみなされる行為や人がテーマとなっており、人々の正義感を問うような感覚があります。

    こうしたテーマはどうしても偏見を持ってしまいがちですが、事実が判明するにつれて、それこそ価値観が逆転する感覚はミステリー好きにはたまらないかもしれません。

    ただ、タイトル通り、どんでん返しものを期待して読んでしまったので、どうしても読んだ時の衝撃は薄れてしまったように感じました。

  • 図書館に早くから予約しておいたので、早目に借りられた。ありがたい。

    短編集なのに、伏線の張り方も回収の仕方もお見事。
    「完黙」と「ストーカー」は引っかからない部分もあったが、「保護」と「死は朝、羽ばたく」は真相がわかった時点で即、読み返した。
    お見事としか言いようがない。

    「死は〜」では、ある言葉(名詞ではない)の使い方に著者の頭の良さを痛感した。
    下村氏、決して嘘はついていないのだよなぁ。
    読者である私が日本人であるからこそ騙されてしまったように思う。
    ある言葉を読んでいる瞬間、無意識に自分の都合の良い意味合いの方を選択して解釈しているのだということに気付かされた。
    仮にこれを英語なり他の言語なりに翻訳したら、下村氏ご本人に翻訳してもらわないと通じないだろうな。

    そしてこの「死は〜」が内容的にも一番重厚で良かった。
    本当は星5にしたいところだが、「ストーカー」の中のあるシーンの描写がきつ過ぎたので星を減らした。

  • 正義は難しい。
    被害者と加害者、
    そうは言っても
    どうかすると逆の立場にもなってしまう。
    罪は罪だけれど、だからといって
    誰も彼もに断罪する資格はあるのか。
    日頃ネットで話題になっている炎上を見るにつけ、よく知りもせず調べもせず
    騒いでいる人達にうんざりしてしまう。

    「保護」
    「ストーカー」
    途中でくるりと景色が変わり驚かされた。
    どこでどんでん返しがくるのだろうと
    注意して読んでいるのに
    いつも作家さんの思うツボにはまる。
    でもそれが楽しい。

    「死は朝、羽ばたく」
    こちらも読みながら、えええ!となり
    同時に心に響いて、重い気持ちになった。
    罪を償うことの本当の覚悟を見せられた。

  • 6つのストーリーが収録された短編。
    ミステリー的などんでん返しというよりは、
    明らかにされた真実で目線、捉え方が一気に変わる
    現代の課題問題、正義とは、を問われるストーリー。
    最後の「死は朝、はばたく」のレベルが非常に高い。
    一つ一つの話を読め終えるたび、自分なら、と考えてしまう。
    是非読んでみてほしい作品。

    ※個人的に本の装丁が好き

  • どんでん返しの短編6話。
    すべてを結末の予想や深読みをせずに単純に素直に読みました。
    結果、すべての話で見事に騙されました。
    とても楽しかった。

  •  どんでん返し という作風には苦手意識がある。話の筋を基に積み上げた考えが、ひっくり返されることが悔しいからだ。下村先生はどんでん返しの名手なだけに恐る恐る読んだが、この作品は短編が功を奏して伏線がわかりやすかったので、楽しく読むことができた。
     特に1話目は、いじめが一様の事実だけでとらえられない切り口や、被害や加害、囃し、傍観者と様々な立場から描かれていたことがリアルで面白かった。

  • 短編6作はいずれも最初の思い込みが覆される設定となっている。社会の問題をえぐる目的もあるからか、暗くやり切れない内容が続く。そんな中で興味深かったのが2作目の「保護」だ。字面だけでは中年男と女子高生の交流としか思えないのだが、あるところでそれが『思いこみ』であると知らされる。でもやがて、それも勘違いだと分かる。登場人物の外見と話し方の描写から、読者は自分なりの映像を頭の中に結ぶ。固定観念というのは融通が利かないものなのだな、と思った次第。

    最初から「どんでん返しがある物語」として読むと、衝撃が少ない。予期していないからこその「どんでん返し」だ。すべてリアリティがあって、綿密な取材があってこその内容だろうが、ちょっと物足りないのが残念だった。


  • 見て見ぬふり
    保護
    完黙
    ストーカー
    罪の相続
    死は朝、羽ばたく

    何が正しいことなのか、
    どんなふうに行動すれば良いのか、
    思い悩んだ時に立ち止まり、
    考え直してみようと思わせてくれる物語たち。

    話を読んでいる途中ですら、
    いかに物事を一方向からしか見ていないのか、
    どれほど狭く偏った考えで暮らしているのか
    を思い知りました。

    悪とみなされた人に対してなら攻撃しても
    構わないという短絡的な考え。
    正当性を振り翳して誰かを攻撃することを
    正義と疑わない怖さ。

    これらを物語の中で改めて目の当たりに
    できてよかった。

  • ミスリードによる思い込みにより裏切られる結末。
    そんな短編集。
    読み進めていけば、当然裏読みもするのだが、少しずらしてくるところに著者のうまさを感じる。
    ACのCMで、「パイロットになりたい」と言った声が男性女性どちらに聞こえますか的な経験則によるバイアスを使った引っ掛けみたいな。
    CMに関して言えば、性別不明の子供の声にしか聞こえないのだけど。

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著者プロフィール

1981年、京都府生まれ。2014年に『闇に香る噓』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は「週刊文春ミステリーベスト10 2014年」国内部門2位、「このミステリーがすごい! 2015年版」国内編3位と高い評価を受ける。著書に『生還者』『難民調査官』『真実の檻』『失踪者』『告白の余白』『緑の窓口 樹木トラブル解決します』『サハラの薔薇』『法の雨』『黙過』『同姓同名』『ヴィクトリアン・ホテル』『悲願花』『白医』『刑事の慟哭』『アルテミスの涙』『絶声』『情熱の砂を踏む女』『コープス・ハント』『ロスト・スピーシーズ』などがある。

「2023年 『ガウディの遺言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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