凡人として生きるということ (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 849
レビュー : 134
  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980891

感想・レビュー・書評

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  •  先日読んだ『他力本願』とほぼ同時期に刊行された、“押井流人生論”の書。
     『他力本願』は押井ファンでない人が読んでもあまり意味のない本だが、こちらはもう少し一般向け。押井作品に触れたことがない人が読んでも、「へえ、わりといいこと言うじゃん」と思えるだろう。

     「若さに価値などない」「無償の友情など存在しない」というふうに、世に浸透して常識となった「幻想」に冷水を浴びせかける箇所が随所にあって、そこが痛快。
     
     とはいえ、世の中を斜めに見るニヒリズムの書というわけではない。「王様は裸だ」と喝破したうえで、「では、裸の王様はどのように身を処すべきか?」を熱く語る書なのである。

     世の99%以上の人は凡人であり、あなたも私も凡人でしかない。しかし、凡人には凡人なりの幸福で自由な生き方がある。「若さには無限の可能性がある」といったタテマエを捨て去ったうえで、ほんとうに自由な生き方、無限ならぬ「有限の可能性」を切り開くコツを、押井は説いている。

      どちらかといえば若者に向けて発せられたメッセージが多い本で、私のようなオジサンが読むと鼻白んでしまうくだりも多い。
     しかし若者が読めば、心に刺さって行動の起爆剤となる言葉がたくさんあると思う。

  • 面白い

  • かなり強引な説明が多々みうけられるものの、現代日本の本質的な問題をよく顕在化させていると思う。ロリコンというのは文明という文脈の中で初めて語られうるようになったものだという話がおもしろかった。『ロリータ』が出版され商品としてのロリータコンプレックスが出現した。幼い女のアニメ絵なども人の欲望を顕在化し商品化し文化(高尚かどうかは別にして)として遺伝してきたものだという。こうやって商品化された語られなかった欲望が価値の多様化を生んでいる原因でもあり、一種の文明の弊害でもあるのだ。
    自由についての考え方が、森博嗣にとてもよくにていた。※『自由をつくる自在に生きる』を参照。 好きなときに寝れるとかご飯が食べれるとかそういったことが自由ではない。自分のやるべき使命を自分の思い通りに完成されることが自由なのだという考え方だ。熟練という言葉に置き換えるとわかりやすいかもしれない。うまくいかなかった技が、うまくできるようになる・自分の意思に従って機能するといったことが自由である。
    みせかけの自由をもとめた者は不自由そのものだろう。
    また、コミュニティの重要性を説いている点も特筆に価する。誰も社会でひとりでは生きていけない。また真の喜びは結局は仕事・恋愛に集約されることになる。なぜなら人間はアプリオリに社会的動物なのであるから・・・・。

  • 自由な凡人でありたい。

    すべての言葉に同意するわけではないが、損得勘定、嫉妬、オヤジらしさなんかを意識しながら、決して自分の思い通りにならない中で、自在に生きていければと思う。

    閉塞している自分に対して、この本も少しだけではあるが、前進するなにかをもたらしてくれたようです。

  • 日本を代表するアニメ監督の一人である著者が、「自由で平凡な人生」について語っています。

    著者みずから本書で述べているように、著者は表現者であって評論家ではありません。それゆえ本書から読みとるべきなのは、理想的な社会を実現するためのロード・マップなどではなく、ひとりの優れた表現者が自分の足で歩きながら紡いできた思索の軌跡でなければなりません。

    たとえば著者は、自分の好きなことをする「自由」と、他者に付きあわされる「不自由」との混淆のなかに身を置いて、そこで「自由」とはなにかを問いなおそうとしています。また、性における本能と文化との混淆を見つめて、それに適切なことばを与えることが表現者の仕事だと述べています。そういえば、著者の代表作の一つ『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』は、リアリティと仮想空間との混淆をテーマとした作品でした。著者はこのようなハイブリディティを手放しで礼賛するのではなく、それをしっかりと見つめ、その本質をつかみとって表現へもたらそうと格闘をつづけます。

    それこそが、「考える」ことであり「生きる」ことなのだ、というのが、本書のメイン・テーマだというのは、強引にすぎるでしょうか。「若さこそ価値がある」「友情は無欲なものだ」といった手垢にまみれたことばに対する著者の批判は、こうした考えから出てきているのだと思われます。

    もっとも、個人的にこの人の作品のファンだということもあって、こちらの読み込みがいささか強引になっていることは否定しません。

  • 10年以上前の本だけど、特に古臭さは感じない。自由とは動機があって初めて得られるものだ、というくだりは割と納得感がある。なんとも残酷だ。

  • 押井哲学を大いに語った本

    目次
    <blockquote>第1章 オヤジ論―オヤジになることは愉しい
    第2章 自由論―不自由は愉しい
    第3章 勝敗論―「勝負」は諦めたときに負けが決まる
    第4章 セックスと文明論―性欲が強い人は子育てがうまい
    第5章 コミュニケーション論―引きこもってもいいじゃないか
    第6章 オタク論―アキハバラが経済を動かす
    第7章 格差論―いい加減に生きよう
    </blockquote>
    うん、読んでから時間が経ちすぎた。
    感想がいたく書きづらいです……。

    読み飽きてきたってのもあるのかもしれないなぁ……
    あとは忘れてる。やっぱり感想は読み終わって直ぐにかかなきゃだめだ。うん。

    さて、とりあえずさらっと読み返して感想を。
    この本では押井さんが感じた七つの点に関して、あれこれと述べているだけの本です。
    ただ、それぞれが現代社会でよく言われる問題とか、普通の人の考え方のおかしさをテーマに出してきているので、読む際に変わった視点で見ることができる。ま、そんなとこでしょうか。
    世の中の欺瞞って奴を出してますね。そこから発展している話です。

    しかし、これが正解なのかと言うと、これは彼にとっての答えであって、正解ではないでしょうね。
    大事なものは、若さでなく経験で、何かを抱える不自由が自由で、諦めずにがんばっていけと。
    これが前半戦。
    セックスと文明論で映画人としての面から語り、人付き合いをばっさり簡単に割り切り、
    夢の終わりとオタクの気概をぶちまける。
    まあ、自分の考えを別に置いておくと、それなりには面白い考え方だなぁと思った。

    最後に格差。これは引用しておきたかったな。
    <blockquote>この問題の本質はどこにあるのかというとそれは、「格差論の根底にあるのは、人間の嫉妬である」ということだ。巷で盛んに議論されている格差への警鐘を通じて透けて見えるのは、根源的でプリミティブなねたみの心なのである。そして、ねたみほど強力な感情はない。</blockquote>
    妬みほど恐ろしい感情は無いと思う。それを見出したのはすごいなって思うよ。でもどこかで誰もが感じてるチリチリしたもんだったりするし、それ自体はそれほど凄いものでもない。

    だから、一つだけ自分が言えるとすれば、やっぱり世の中に何が起こってるのかを知ろうとしている人が少ないのかもしれないな、こう、<u>表現することを知っている人</u>だからこそ、そこを曖昧にせず突っ切って考えられるのかもしれないな……って思ったわけです。
    こういう考え方は、普段の生活の中で埋没してしまって、みんな忘れてる。
    だから、本を読むと「はっ」とさせられる。そういうありがたい本なんだと思いますよ。

  • 作者の押井守氏は世間に蔓延するデマ(Demagogie)の正体を暴き、騙された人生を生きないように警鐘を鳴らしている。
    「損得勘定で動く自分を責めてはいけない。しょせん人間は損得でしか動けないものだ。無償の友情とか、そんな幻想に振り回されてはいけない。映画やドラマ、アニメや漫画の虚構の世界では美しい友情のオンパレードだ」

  • 押井守にしては読みやすい文章。 
    「若さにはかけがえのない価値がある」はデマであると切り捨て、「人間は自由であるべき」は欺瞞だと断言し、「勝負を続ければ、負けないシステムが身につくと」励まし、「小さな命に対する本能的な保護欲を再獲得せよ」と蒙を啓く。 
    ・仕事というフィルターは、人間関係にある種の抑制をもたらしてくれる。人付き合いのヘタな人でも、仕事の現場の方が上手く人と付き合えるものだ。
    ・これからの現代ニッポンを生き抜くうえで、問題になるのは「人生の選択を保留していないか」「社会と関わりを保っているか」の二点である。 
    ・「社会は95%の凡人に支えられる」徹底した民主主義を敷くくらいなら、優秀な5%の人間によって支配される社会の方が、どれだけマシか分からない。 それで上手くいかなかったら、今度は95%の方が5%の首をすげ替えればいいのだ。

  •  奇才、押井氏の著としては少々物足りず。似たような話題が多いこともあるのか、大人しめの印象。ただ、勝敗論とオタク礼賛?論には深く共感。その通り!

著者プロフィール

押井 守(おしい まもる)
1951年生まれ。東京都出身。東京学芸大学教育学部美術教育学科卒。
映画監督・演出家。
タツノコプロダクションに入社、テレビアニメ「一発貫太くん」で演出家デビュー。
その後、スタジオぴえろに移籍し、「うる星やつら」ほか、数々の作品に参加。後にフリーとなる。
日米英で同時公開された劇場版アニメ『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(95)はジェームズ・キャメロン監督やウォシャウスキー兄弟ほか海外の著名監督に大きな影響を与えた。また、『紅い眼鏡』以降は、『アヴァロン』など多数の実写映画作品にも意欲的に挑戦を続けている。主な監督作品『機動警察パトレイバー』『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』など。

「2019年 『セラフィム 2億6661万3336の翼 《増補復刻版》』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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