彼方の友へ

著者 :
  • 実業之日本社
4.30
  • (292)
  • (229)
  • (80)
  • (12)
  • (2)
本棚登録 : 1758
感想 : 270
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537160

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 時代に翻弄されながらも「友へ、最上のものを」届けようとする雑誌編集者。主筆がかっこいい。熱い思いに、胸の中がふつふつとしてくる。読み終えてすぐ、人に興奮を伝えたくなる。
    一方的な憧れから、二人の思いが重なっていくのが追えなかった。あと、書籍の天面(?)の裁断が不揃いなのは仕様ですか?

    2021/08/05 ↑天アンカットを知らない馬鹿な私でした。

  • 戦争の足音が忍び寄る中でも懸命に、読み手の「友」の少女達に向けて雑誌を作り続けた人達の物語。

    少女雑誌を読んで、その文章に憧れ美しい絵に夢を見る。そんなささやかな自由さえ満足に叶わず、規制されていく世の中。
    やるせなさや、どうにもならない歯痒さを感じながらも物語の中に終始流れるのは人々の希望と、願い、そして祈り。

    思いが届きますように。
    どうか無事で帰ってきますように。

    どこかでその雑誌を心から待っている人達に。
    戦地へ赴く大切な人達に。
    どうかどうか届きますように。

    読んでいてそんな切実な思いが伝わってきて、何度も涙が出そうになった。

    「ディア波津子、シンシアリテイ、ユアズ」の有賀の言葉には、やられた。
    胸がいっぱいになる。最後の最後にそれはずるいよ。
    波津子の秘めた思いは、確かに彼に届いてたんだ。
    出来れば再会して、電話口で言った「ずっと伝えられずにいたこと」のその先を聞きたかったけど。
    でもそう思ってしまうのは野暮なんだろうな。
    最短の恋文。これ以上に彼の思いを伝える言葉は、きっと存在しないから。

  • ここにレビューを書こうと思うだけで涙が出る。
    間違いなく今年いや近年でも一番良かった作品。
    小さい頃「なかよし」「りぼん」の付録や切抜きをきれいなクッキー缶に大事にしまってた。女の子だもの。きれいでかわいいもの大好き。

    「友よ、最上のものを」
    このことばは一生大切なことばになると思う。
    わたしの大切な友にこの本を贈ろう。

  • これまでの伊吹有喜さんの著作もとても好きですが、それらとは一線を画す現時点での代表作だと思います。著者のご経験が、またとない題材に巡り合い、最高の形で昇華し、この物語に結実したのでしょう。映像や音が浮かぶよう、 軽やかなのに力強い! ワクワクと読み進みました♪ 伊吹ファンにはぜひ! 少女雑誌ファン、少女漫画ファンだった方にもぜひぜひ!

  • 想いを伝えるということ、想いを込めてブレることなく継続していくということ。そこには自らの意志だけでは動かせない事案を手を取り合って支えていく仲間がいるということでもある。

    『乙女の友』その名の通り、全国の少女たちに夢や憧れを発信している雑誌。幼馴染みからこっそりと手渡される試し刷りの付録のカードはいつだってハツの傍らにあった。「フローラ・ゲーム」なるカードセットは物語の中でも関わるひとびとを動かしている。
    ハツ(波津子)が恋してやまない『乙女の友』の編集部で働き始めた昭和12年から20年の終戦まで、波津子が体験したひとつひとつに一喜一憂する。
    思春期の羞恥心、卑下、自己嫌悪。一方で若さからの突っ走りや突然の行動にオトナを唖然とさせたり。仄かな想いだって、ある。

    初めは邪険にしていた有賀主筆は波津子を一人前の編集者に育てあげ、去って行った。遠い遠いところへ。

    有賀主筆が担げる「友へ、最上のものを」。戦時下でモノもなく華美さを責められる少女たちへ、僅かばかりでも出来得る限りの心の豊かさはちゃんと「友」へ届いていたはず。だからこその美しき付録の数々が生まれていたのだから。


    戦争は大事にしていたものことを奪っていった。
    でも遺るものも、ある。
    ひとが生きている、生きていこうと決めた時から、もう次の世界が始まっている。
    懸命に遺してきたから時代は変わっても見劣りしない。

    この1冊を誰に手渡そうか。
    お気に入りの包装紙かな、それとも手作りのカバーをつけようかな。

  • 戦前から全国の少女たちの憧れだった「乙女の友」、その編集部で働くことになった貧しい少女のシンデレラ・ストーリイ。

    簡単に言ってしまえばそうなのだけれど、でもこの小説はそれだけでは終わらない。
    物語の柱に、戦中の統制の厳しさにも屈せず「最上のものを」求めて雑誌作りを続ける人たちの信念があるからだ。美や夢は人の生きる糧である、という信念。その揺るぎなさは、どんな花やリボンよりも美しい。

  • 戦中の混乱の中で少女雑誌を作る人々のお話。途中までの展開はハツの素直な性格であるけれど猪突猛進で突き進む様を面白く読んでいたのだけれどだんだんと失速、後半は切ないがちょっとだけなぁと

  • 一つの朝ドラを見終わった気分。
    切なく、苦しく、美しく、清々しい。
    心がギュッとなる。
    一気読み。

  • 昭和10年代後半、少女向け雑誌を作る雑誌社で働く女性のお話。時代が進み使える紙やインク、題材、言葉が限られて行く中でもがく主人公。戦後は喪失感の中で同じように友へ最上のものを届けようと奮闘する姿に泣いた。読む側だけでなく作る側もその雑誌が心の拠り所になっていたんだろうなあ。
    今同じような状況が世界のどこかであるということの恐怖。そういう思いをする人がいなくなるのが1番だけど心の拠り所になるものがあることを祈って。

  • 少し元気を貰えます。ありがとう。
    泣いているのは、あなたが悲しい人だから。泣き止まないのは、それでもそんなあなたが好きだから。さすが、美蘭先生です。

全270件中 101 - 110件を表示

著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊吹有喜の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村山 早紀
原田 マハ
西 加奈子
瀬尾まいこ
西 加奈子
凪良 ゆう
西 加奈子
三浦 しをん
辻村 深月
伊坂 幸太郎
柚月 裕子
米澤 穂信
小野寺 史宜
瀬尾 まいこ
柚木 麻子
伊坂 幸太郎
伊吹 有喜
恩田 陸
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×