彼方の友へ

著者 :
  • 実業之日本社
4.30
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感想 : 269
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784408537160

感想・レビュー・書評

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  • 戦争中の東京。出版社で「乙女の友」という雑誌づくりに関わるハツ。今よりはるかに女性が生きづらい時代。
    国旗に秘めた想いの暗号は伝わっていたのですね。長い年月を経て届いた相手からのやはり暗号。『でぃあ はつこ しんしありい ゆあず』最短の恋文。泣けました。
    知らなかっただけで、自分の祖母や曾祖母達もその時代を生きてきたんだなあなんてことも不謹慎かもしれませんが考えてしまいました。
    …伊吹さんはやはり良いですね。

  • この作家さんの作品は
    初めて読みました


    ちょっと昔の話は
    読むのが苦手なんですが
    知らぬ間に読み進めてしまっていました。


    戦争の時代の話はつらいですね
    必死にいろんな人が戦ってきたんですね


    ちょうど朝ドラも戦争中で
    勝手にリンクしながら読んでました



    星4か迷いましたが
    感情移入はできず、
    やはり3かなというところ。


    昔の話が苦手だからというのもあります。
    この方の現代の話も読んでみたいな

  • 老人施設で暮らすハツさん
    夢と現実の間で微睡む日々

    穏やかな人生の終盤を感じさせるけど
    やっぱり哀しい...

    そう思い
    少し躊躇しながら物語に入っていきました...

    想いを馳せるのは何十年も前のこと
    貧しくて憧れの雑誌を買えないハツ
    さまざまな出会いが彼女の人生を動かします

    長い長い時を経て...
    本当に胸いっぱいに...

  • 戦時中の厳しい時代を編集者として作家として戦った乙女の話。
    学もなく。
    後ろ盾もなく。
    慎ましいのに溢れる波津子の熱い情熱に心が打たれる。

    中原淳一を彷彿とさせる純司先生がストーリーに華やかさと実態を抱かせる。

    ラストのくだりは涙があふれる。
    本当に美しいお話。

  • 戦前戦後を生き抜いた1人の女性を軸とした話。ハツが編集社に入り、強く生きていく話だけれど、幼なじみのあの男の子や自転車に乗った少年にだってそれぞれ話がある。スポットを当てていないだけで、戦中はたくさんの切なさや悲しさ、やりきれなさを抱えてみんな生きていたのだろうな。自分が生きて帰って来れるかは分からないから、愛する人に愛してると言えないこと。自分を自由に表現できないこと。伊吹さんの本に出てくる人物は主人公にとって「いい人」ではなくても、悪人じゃない。それが人間くさくて本当に素敵だなあ。その人の中に様々な葛藤があって、痛いほど気持ちが伝わってくる。美蘭先生の切なさ。純司先生の気持ち。

    「僕が一番得意とするものは、暮らしのなかでも日々を愛で、大事な家族や友人たちと心愉しく過ごす術さ。」

    戦後に言ったこの純司先生の言葉はとても大事なことだな。大切に心に留める!

  • 彼方の友へ

    この本はきっと映画化もしくはドラマ化されると思う。まるで朝ドラを見ているかのような作品だった。
    戦前戦中を時代に翻弄されながらも、雑誌作りに情熱を注ぐ少女と彼女を取り巻く魅力的な大人たち。
    荒波の中で成長し、芽生える友情や愛情の物語。

    モノひとつ、言葉ひとつが今よりもずっと尊くて儚くて、そして濃い。
    人間の生死さえもガラスのように繊細で脆い時代。だからこそ生を謳歌する人々が気高く、眩しく見える。
    物質的、経済的豊かさを享受し、恋愛も友情もネットさえあればあらゆるところにアクセスして手に入る今、それでもなお満たされない何かがこの昭和という時代にあったように思う。

    伊吹有喜さんの作品は初めてだったけど、とにかく読みやすくて癖のない綺麗な文章だった。
    人物の描き方もとても丁寧で、声が頭の中で鮮明に再生されるようだった。
    恋愛や友情、戦争と希望、逆境と勇気、などなど喜怒哀楽と程よいエンタメ感で大満足の作品。
    寝る前1時間の読書が楽しみで夜が待ち遠しかった。
    個人的に2020年これまでの1番の作品だと思う。


    本は結局のところ善し悪しよりも好き嫌いによってしまうものだと思うけど、特にこの昭和を扱った小説(映画やドラマも)が好きなのは、やっぱり、戦争と平和、地獄と天国が共にあった時代だからだと思う。

    アカデミー賞をとった「パラサイト」をはじめ、韓国映画やドラマが最近特に人気もクオリティも高いけれど、そこには南北の問題や、貧富格差の問題が大きなテーマとしてあるからなのではと感じる。
    大きなテーマやコンセプトがあるとストーリーが重厚になって芝居にリアリティが生まれるのかもしれないと最近思うようになった。

    翻って日本のドラマや映画が、どこか芝居がかって、オーバーなリアクションだったり、演出がかった決め台詞があったりするのは、平和で変化の乏しい日本に今、そういう多くの人に通底する問題やテーマがなく、過剰演出によって補われているからかもしれない。
    ところが漫画やアニメなど、特にファンタジーの世界では、例えば進撃の巨人のように物語の世界に大きなテーマを組み込めるので、世界的な人気を誇るコンテンツになり得る、とも考えられる。

    抑圧や逆境の中にこそ感動的なドラマが生まれるのだとしたら、日本は今とても平和で、退屈だ。

  • こんな本に出会うために 本を読み続けている。
    素晴らしい本でした。

  • 悲恋は嫌いだ。だけど読んでしまう。
    美しい挿絵と美しい言葉達が 目の前に広がる。
    可憐、清楚、純粋、乙女 心をくすぐられるような少女、耽美な世界へ ぐいぐい引き込まれ 、私も彼方の「友」となる。

    少女の夢のような人生を追い、叶わぬ美しい恋模様にキュンキュンして、一気に読み進めてしまった。

    謎めいた部分の解明がなく、その部分はすっきりしないけれど

    丁寧に描かれた その時代の描写が 想像を掻き立てられて 素敵な風景を見させてもらった。

  • どんな状況におかれても、自分の好きなことにまっすぐに向かう姿勢が素敵だなと感じました。

    ハツさんくらい、熱い情熱をもって仕事したいなあ。

  • 伊吹有喜さん「彼方の友へ」読了。昭和の少女向け雑誌『乙女の友』を愛する佐倉の物語。卒寿を迎え施設で生活する佐倉が当時を回想しながら物語は語られる。17歳の歌好きな佐倉が雑誌『乙女の友』と、それを作る人々の交流を通し成長する姿がイキイキと描かれる。「友へ、最上のものを」。その言葉を胸に『乙女の友』を待つ“彼方の友へ”想いを届ける。。とても良かったです。昔の雑誌作りの風景が作家との関わりを交えながら書かれていて面白かった。後半は戦争に向かい厳しくなる雑誌作りの実態を改めて実感しました。佐倉を取り巻く人々の交流が楽しく、当時の女性の立場や想いを知ることが出来たのも良かった。最後の展開も良かった。オススメ♪

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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