- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784408537160
感想・レビュー・書評
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第158回(2017年下半期)直木賞候補作品。
今は老人施設で夢と現実のはざまで生きているような、「ハツ」こと佐倉波津子。そんな彼女の元に、赤いリボンで結ばれた、薄くて黒い髪箱が届けられる。それは、昭和13年に発売された雑誌「乙女の友」の付録であった。戦前・戦中と出版社で乙女たちにむけて雑誌を作り続けた人たちの想いとは。。。
戦争によって世の中の物資状況や言論に対する抑圧の中、最大限にいいものを読者に送る気持ちがよく伝わってきた。純司と共に有賀を見送るシーンは悲しいが、音符に託した想いはよかった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
命を掛けて創った「乙女の友」が、戦前戦後を通して、全国の友の心の支えになったはず。どんな状況でも文化の力はなくしてはいけない。恋愛模様も丁寧に描かれており、とても儚く、もどかしく、それがまた美しい。
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戦前、戦中、戦後、雑誌「乙女の友」の出版に向き合った人々の物語。ラストの有賀の波津子へのメッセージに泣けました。
読んでよかった、読んでいて幸せな気持ちでいました。 -
好きなことを追いかける主人公がひたむきで、つらい現実にも負けず応援したくなる小説でした。時代の交差描写が私は苦手なんですが、最後の最後に主人公が報われたなぁと感じました。私には珍しい戦争時代の話でしたが、最後まで面白かったです。頑張る主人公が好き。伊吹さんの小説を初めて読み、他の本も読みたいと感じた一冊でした。
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その昔、少女たちの心をときめかせる雑誌があった。
その名も『乙女の友』
読者へ最良の物を届けるべく、たとえ戦時下であっても
熱い思いで雑誌を作り続けた
編集者たちの物語です。
レースやリボン、繊細な刺繍にビロードの服、
女の子が大好きなものがたくさん散りばめられた
美しい挿絵と付録に、キラキラと目を輝かせる少女たちの姿が目に浮かぶようでした。
そんなささやかだけれど、宝物ようなものたちまで
容赦なく奪っていった戦争とは
一体なんだったのだろう。
美しい物に心をときめかせると
人は戦うことができなくなるというのか・・・
それならば、この世の中にもっともっと
美しい物、繊細で優雅なものたちが溢れればいい。
そして人と戦う気力など消えて無くなってしまえばいい。
自由に本を読み、自由に想像の翼を広げられる時代のありがたさを改めて感じました。 -
朝ドラを見ているような気持ちになりながら読んだ。
理想の雑誌を作れずもどかしい思いをした時代もあっただろうにそんな中でもなんとか日々の生活に彩りを添えようと奮起した人々の情熱に感動した。
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笑いあり涙あり、でも背景に差別や貧困、戦争もあり。はっちゃんの一生懸命が夢を現実のものにしていく様子や、困難な状況から皆で雑誌を創っていく様に胸があつくなりました。戦争という非情な現実が辛いし、そのせいで大切な人たちとの別れが来るのが切なく、涙が出そうになりました。鼻水は出ました。乙女の友、フローラ・ゲーム、素敵なんだろうなー。
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胸が苦しい。
戦争とは。友とは。生きるとは。仲間とは。思いやりとは。仕事とは。恋とは。愛とは。
楽しくて辛くて苦しい。
あらゆる気持ちを抱えて、それでも、主人公がまっすぐで、最後に前向きな気持ちになれて、本当に良かった。
言葉にできない思いを抱えて召集された人がいて、言葉にできない思いを抱えて見送った人がいて、何も言えずに殺された人がいて、何も知らされず待っている人がいて、それが世界中に今もいて、戦争は、本当に、絶対にだめ。