骨董屋探偵の事件簿 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488165031

作品紹介・あらすじ

絶世の美女を伴い犯行現場に赴けば、事件の真相が手に取るように判る。怪しい骨董屋モリス・クロウの人となりに魅せられた語り手が綴った十編。クラシックファン待望の完訳成る。

感想・レビュー・書評

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  • 娘だという美女を連れた冴えない老人の探偵譚。

    タイトルに偽りありで骨董屋のあれこれはほとんど出てこない。
    むしろミイラとか古代エジプトとかそちら方面に話が広がっていた。
    サイコメトラー探偵を許せるかどうかがこの短編集を読む際のポイントだと思う。
    現場に残った思念を念写して…って、見方によっては卑怯なので。
    でもまあ、古典として悪くなかったよ。

  • オカルト趣味の時代ならではか。

  • 人の思念を科学的に読み取り、死ぬ瞬間の心象風景を頭の中に再現できるよう訓練したという骨董屋探偵モリス・クロウ。そしてクレオパトラかと思わせるブルネットの美女、娘のイシスと共に謎を解く10の物語。モリスは時に現場で眠ることで思念を再現する。だからこの短編集の原題はドリームデテクティブという。人の記憶が見える薔薇十字探偵社の榎木津ばりのサイコメトラーなのだ。とはいえその推理は合理的にしっかりしている。フーマンチューを書いたサックスローマーだけにベストはオカルト話の「イシスのヴェール」だろうか。気品溢れるイシスの魅力がたまらなく素敵。

  • メンジーズ博物館で起こった殺人事件をきっかけに、「わたし」ことサールズは、犯行現場で眠ると犯人や被害者の残した思念を映像として夢に見ることができると豪語する奇妙な老人モリス・クロウと知り合いになる。クロウの伝記作家となったサールズは、手柄をあげたいグリムズビー警部補とクロウのあいだを取り持ち、クロウの娘イシスと共にさまざまな怪事件の現場に同行する。


    原題はThe Dream Detective。でも言うほど現場で寝てない。クロウはテムズ川沿いの浸水すれすれの路地で骨董屋を営んでおり、事件もいわくつきの美術品が絡んでいないと話に乗ってこない。大した収入があるとも思えないのに、娘のイシスは常にパリの最先端ファッションを着こなしている。本書一番の謎は事件よりもこのクロウ父娘そのもの。
    だからこの二人が謎を作り出してターゲットを引っ掛ける側に回る「アヌビスの陶片」が面白い。読者はすぐゼダ博士がクロウだと気づくが、彼がこんなにも易々と話をでっち上げ、目的のために手段を選ばない男なんだったら、他の事件で見せる探偵然とした態度はなんなんだろうと思うわけである。
    同じく、クロウがまんまと犯人の上をいく「頭のないミイラ」は、本作のなかで一番面白かった。第一被害者を装った真犯人という本筋のトリックはシンプルだが、この話では語り手のサールズが遂に骨董屋の奥の居住スペースまで足を踏み入れ、おびただしい蔵書とミイラを所有し、犯人と同じ企てを実行したことのある〈狂人〉クロウの姿が浮かび上がる。オカルトと骨董趣味とモリス・クロウという探偵の特異性が引き立てあった一本だと思う。
    チェーザレ・ボルジアがチェローニに作らせた古代ギリシア風の竪琴、アヌビス崇拝の秘儀に使われる壺のかけら、ファラオの愛妾の墓から発掘された腰帯、殺人という究極の行為に捧げられた呪いのピアノ曲、古代エジプトの神官のミイラ頭部に隠された魔術書など、登場する〈美術品〉も魅力的。イシス信仰のことは度々出てくるが、娘のイシスを連れて夢見で事件を解決するクロウもまた神官なのだろうか。

  • 『ギリシアの間の悲劇』
    博物館で発見された夜警の遺体。割れたガラスケース、傷だらけの上に首をおられた被害者。密室の博物館。夜中に聞こえてきた琴の音。再び起こった事件現場で目撃された白い女。

    『アヌビスの陶片』
    アヌビスの描かれた壺の破片を手に入れたヘイルズオーエン。壺を発見したシェラトン教授から非合法に手にいれたヘイルズオーエン。破片を狙うゼダ教授。ヘイルズオーエンの部屋のとなりに引っ越してきたゼダ教授。ヘイルズオーエンの目撃した腕。荒らされた部屋。壺の破片を組合せ行われた儀式の最中に破片を盗み出した謎の女。

    『十字軍の斧』
    十字軍の斧で頭を割られた状態で発見されたユダヤ人のハイデルバーガー。屋敷の元の持ち主クレスピー卿の行方不明の息子ローランド。容疑のかかったクレスピー卿の元執事ライダー。

    『象牙の彫像』
    象牙の彫像を依頼されたパクストン。完成した彫像を友人のサールズ、コラム館長を招いて披露した晩に盗まれてしまう。立ち番をしていた警察官。事件の前にパクストンの家の裏にある医師の家に駆け込んだ夫婦。

    『ブルー・ラージャ』
    国王に献上されるブルー・ラージャと呼ばれる宝石。そのブルー・ラージャが盗まれると警告を送ったクロウ。ブルー・ラージャの所有者代理のチェンジ氏との取引の場に響き渡った悲鳴。悲鳴に気をとられ窓に集まった一同。消えたブルー・ラージャ。クロウが心象写真に写したオウムとピーナッツ。

    『囁くポプラ』
    幽霊の 囁き声が聞こえる屋敷を借りてしまったハウフマン氏。直前に3人組の強盗団を逮捕するために腕を負傷しているハウフマン氏。ハウフマン氏を訪ねてきた友人の銃撃事件。

    『ト短調の和音』
    自宅で絞殺されたパイク・ウェブリー。現場でクロウが感じた音楽。サールズの友人の開いたパーティで知り合った音楽家スコボロフ。ホテルでの会話中にイシスの忘れたコート。

    『頭のないミイラ』
    ペディグリュー氏が所有するミイラの首が切断される事件から連続する事件。クロウの店に所蔵するミイラの首も切断される。コラム館長の博物館のミイラを囮に罠を仕掛けるクロウ。

    『グレンジ館の呪い』
    グレンジ館を相続したリーランド卿。従兄弟のクレメント、サールズ、クロウ親子とともにグレンジ館の呪いをとこうとする。いつもの捜査中に何者かに襲われるクロウ。クロウが発見した隠し部屋。箱の中身。

    『イシスのヴェール』
    エジプトの神イシスを呼び出す秘術をしるした記録を手に入れたプレアリー。イシスを呼び出すための儀式を行うが。

  • 主人公は、骨董屋の怪しい主人モリス・クロウと、助手の
    超絶美形の娘なんだけど、捜査?方法がユニーク。
    犯罪現場で眠る事で、そこに残る思念を夢として視る。
    しかも枕持参である。
    犯人を逮捕するのはムロン、警察の仕事である。
    グリムズビー警部補も、モリス・クロウの不思議な力を
    信頼しているおかげで、出世してるというすごさ。
    短編集なんだけど、骨董屋というくらいだから、
    骨董に関わる物やら幽霊屋敷なんかも出てきて、怪しい気配ムンムン。
    語り手:サールズがモリス・クロウの解決した事件を
    記録しているって設定になってます。結構楽しめました。

  • 『クイーンの定員』にも入ったオカルト探偵モリス・クロウの短編集。
    クロウの捜査手法は事件現場で眠って夢の中で手がかりを見るという怪しげなもので、扱う事件は自分が興味を惹かれた館や美術品にまつわる不可能犯罪系が多い。クロウ自身も謎めいた怪しい老人なので萌え〜というわけにはいかないが、絶世の美女である娘がいたり、いつも(なんだかんだ言い訳しながら)額にバーベナの香水を吹きかけたりして、キャラが立っているので印象深い。
    ちょっと異色の探偵だが、トリックはわりと普通で雰囲気はクラシックな本格。なかなか楽しめた。

  • 2013/06/19読了

  • 『怪人フー・マンチュー』の著者として知られるサックス・ローマーの短編集。
    著者はオカルトに造詣が深かったようで、その知識が作中に反映されている。今風に言えばホラーミステリといったところだろうか。
    『頭のないミイラ』『グレンジ館の呪い』『イシスのヴェール』が面白かった。

  • 2013年6月13日読了。

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著者プロフィール

1883-1959。イギリスの作家。本名アーサー・ヘンリー・サースフィールド・ワール。バーミンガム生まれ。銀行業界から新聞業界に転じ、作家となる。ロンドン在住中に中国人街に親しみ、のちの作品に影響を及ぼした。フー・マンチュー・シリーズが代表作だが、他にも邦訳は『骨董屋探偵の事件簿』(創元推理文庫)、『魔女王の血脈』(ナイトランド叢書)などがある。

「2019年 『世界名作探偵小説選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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