深い疵 (創元推理文庫)

  • 東京創元社
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  • Amazon.co.jp ・本 (521ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784488276058

感想・レビュー・書評

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  • ドイツの作家ネレ・ノイハウスの小説を読むのは2冊目です。この小説はふたりの警察官を主人公としたシリーズです。前回「白雪姫には死んでもらう」を先に読んでしまったのですが、この小説はその前のストーリーでした。しかし、事件の中身は全く違うので大勢に影響はないのですが、読んでいくうちに気がつきました。
    ドイツといえば、悪名高き独裁者ヒトラーがどうしても歴史上はずせない人物ですが、この小説でも第二次世界大戦でのユダヤ人の迫害から生き残ったとされる著名な人物が射殺されるというところから事件が幕を開けます。前の小説でも登場人物が多いと思いましたが、今回もある有名な実業家の老婦人一家が中心となって物語が展開されるため、一家とつながりの深い人々が次々に登場。関係を確かめるために、登場人物一覧表をしばしば活用しました。初めの殺人から次々と同じように殺されついに3人目の老婦人も射殺体で発見されます。初めに殺されたユダヤ人とされた92歳の老人の腕にはナチスの親衛隊の証拠の刺青があり、その関連が疑われます。この難事件を解決しようとする警部オリヴァーとその部下ピアのコンビの前にさらに関係する人物が連続で殺されていきます。巧妙に犯人を仕立てあげようとした事件を追ううちに、ピアたちはこの事件の裏には、やはり実業家夫人たちの、第二次世界大戦時代に隠された過去が深く関わっていることに気づいていきます・・・
    犯人の動機や過去が明らかになっても、最後まで気の抜けないストーリーです。その上、このシリーズでは警部たちの私的な部分や上司と部下であるこのコンビの機微もストーリーの合間に登場するので、それはそれで人間味あふれて楽しめる部分でした。

  • 2007年ドイツで起こった連続殺人の話。
    かつて強制収容所の生き残りのユダヤ人と思われてた老人が殺され、実はナチスの親衛隊員だったことが判明する。
    その後次々と殺人が起こり、被害者と関係のある人物として必ず一人の女性実業家ヴェーラ・カルテンゼーとその一族カルテンゼー一家が浮上してくる。

    結末は終盤にさしかかってくると予想がつくが、それまで一族の関係図を理解するのに時間がかかった。
    真相がわかったあとは、それなら連続殺人をしても仕方が無いと思ってしまうほどの動機である。題名の深い疵の意味が理解できる。

    ストーリーと結末は面白く読めたが、刑事二人組の様子が描かれたところがおもしろくない。プライベートの感情が仕事まで影響を及ぼし、刑事としてそれじゃダメだろうとがっかりさせられた。

  • これは!正直!面白かった!ぜひ!読んで!と、全部 感嘆符を付けて、周囲に勧めてまわりたい。ドイツの黒歴史がベースになったミステリーものでした。

    勝手な印象で、ミステリー小説は割と内容が薄いイメージを抱いていたのだけど、これは時間軸も大きく動く上に、登場人物も多岐にわたる。いつもの(これ誰だっけ…)状態は発生しつつも、それはいいから先に進もうと思わせる魅力がありました。

    ドラマ化してほしいな〜!これは!絶対!と思ってIMDb検索したら、オリバー&ピア シリーズの第1作『いけすかない女(Eine unbeliebte Frau)』と第4作『白雪姫には死んでもらう(Schneewittchen muss sterben)』はテレビ映画化しているようだ。やはり今作はちょっと映像化難しいのかなぁ。
    http://www.imdb.com/name/nm5506218/?ref_=fn_al_nm_1
    (ドラマの俳優さんの写真みたら、オリバーもピアもイメージと違った。。。)

    はやくシリーズ全5作の残り4作を読みたい!

  • 自分の出自がわからない苦悩は計り知れず、またその真実も想像の上をゆく。巧妙に偽っても長い時を経て過去が風化しても自分の行いのツケはくるのだと思い知らされ、負の歴史が重い影を落とす話だった。
    犯人の心の内、もう少し知りたかったな。
    先読みした『白雪姫には死んでもらう』もそうだったが、男女の思考や行動の特徴が明快で国境を越えてあるある~と頷いてしまう。

  • 前半はドイツ人名に悪戦苦闘しながらも、ページをめくる手は止まらず。後半は一気。久しぶりにいいミステリーを読んだ。

  • 全員怪しすぎるし

    疵が深すぎる!!

    しかし嫌いではないです。
    むしろ好きです。

    こういう濃さは大好物です!

  • 回送先:稲城市立第四図書館

    濃厚きわまりないミステリ。小説の一気読みが昨今ほとんどばくなった評者が久しぶりに一気読みした一冊(背景として、日本語環境での小説がえてして「陳腐」の一途を極めつつあるのがその最たる要因なのかもしれない)である。

    登場人物の複雑な絡み合い、「The Past Within Us(過去は死なない)」を地でいく歴史が織りなす大胆で、でも繊細な動機の形成――そのどれをとっても久しくお目にかかっていなかった「想い」の美しさに評者は惚れ惚れとしてしまうのである。

    おそらく本書の「二時間ドラマ化」は不可能であろう。というよりも、小説で無ければならない理由の数々が文中の繊細な言葉ひとつから見えてくるのであるから。

  • 良質の警察ミステリ。物語の方向性はシンプルなのだが、中身は濃くて、色んな要素が複雑に絡み合っている。根っこの深さに驚愕するなかれ。矢継ぎ早に出てくる人名と地名に混乱しないように。

    名門一家、隠された過去、ナチス──陰惨さを予想させるキーワードがベースになっているが、冒頭からの事件が派手に前進することで謎解きとのバランスが保たれおり、想像したような重苦しい雰囲気にはならない。

    中盤辺りですでに満腹なのに、そこから更に方向転換をして突っ走るスタミナに翻弄させられた。そして“疵”の意味でクラッシュする。小説と割り切っていても、あの時代だったらアリだったかもと、ナチを知らないだけに想像力だけ逞しくなり、そしてしばし凹む。作中のナチに対して、もう少しこってりしたアプローチがあるのかと期待したが、人物造形のピースとして扱われてるようだった。もう一点残念だったのは、真犯人が判明するプロセス。それまでの捜査はなんだったのか?

    本作品はシリーズ三作目。四作目もすでに刊行が決まり、評価次第では一作目から順に訳すとのことだが、前作で何かあっただろうなと思わせる人物間のやりとりが出てくるので、もったいぶらずに順番に読ませて欲しいところではある。今年は警察ミステリの当たり年かな?

  • 「深い疵」
    ホロコーストを生き残り、アメリカ大統領顧問をつとめた著名なユダヤ人が射殺された。凶器は第2次大戦期の拳銃で、現場には「16145」の数字が残されていた。司法解剖の結果、被害者がナチスの武装親衛隊員だったという驚愕の事実が判明する。そして第2、第3の殺人が発生。被害者の過去を探り、犯罪に及んだのは何者なのか。


    オリヴァー&ピアのコンビが連続殺人事件を追う独警察小説シリーズ。キーワードはドイツでは大きな意味と歴史を持っている「ナチス」「ユダヤ」と言う言葉。この「深い疵」ではまさにその意味と歴史が深く刻み込まれています。


    きっかけは高名高齢なユダヤ人が殺害された事件。それは普通の殺人事件と思われたが、被害者がナチスの隊員だったこと、カルテンゼー家というこちらも高名な一族が関係していたこと、そして謎のメッセージ16145が残されていたことから次第に事件が普通の事件ではなくなっていく・・・。さらに、カルテンゼー家に恨みを持つ複数の人物も現れ、オリヴァーの天敵まで登場して、事件は更なる混迷に・・・


    という展開です。登場人物が多く、カルテンゼー家には何やら悪が潜んでいそうで、更にオリバーもピアもそれぞれ色々抱えているので、読みながら様々な箇所に気を取られました。しかし、そんな中でも一番はやはり「犯人の動機と連続殺人事件に潜むもの」です。


    犯人の動機には悲しい過去があり、そして真犯人(殺人事件の被害者の多く)には許しがたい過去と人間が持ち、発揮し得る最大の悪がありました。特に、悪に関しては「何故ここまで残酷なことをしていていながら、ここまで落ち着いているのか」とピアが犯人を見て思うのですが、私も同感です。また、ピアは同時に「犯人の犯行を立証して、真犯人を追い詰め、罰を与えたい」という感情を抱き、犯人側に立って事件の真相を追いますが、この点も私は同意したいと思いました。それほど、真犯人の残虐性は許しがたいです。


    また、一連の殺人事件と同時に別の事件も発生していきます。実はこの別の事件には今回の犯人ではない別の人間が関わっているのですが、そこにあるのは嫉妬や執念を超えた悪です。まさしく人間の嫌な部分が潜んでいる事件ばかりでした。


    それでも読むことを止めなかった理由は「ピアが私の思いを代弁してくれたこと(刑事として人間として悪を見ていた)」と「犯人を捜すという推理小説の醍醐味(と思う)が存分に込められていた」からです。特に「犯人は誰なのか」という点に関しては、登場人物が多い上、彼らの視点での物語も進行し、更に様々な箇所に「こいつが犯人ではないか」というミスリードトラップが仕掛けられているので、非常に厄介です。


    しかし、オリヴァーとピアの捜査が綿密に描かれている為にそこまで置いてけぼり感も無く、個人的な推理が楽しめます。ちなみに、私は犯人が外れました。まさか、そこに繋がるなんて・・・という伏線もありで、著者の強さを感じます。


    シリーズ作品ではあるけれど、この1冊でも十分楽しめる作品です。次と前作が読みたくなる。

  • なぜ、ネレ・ノイハウスが「大本命」なのか? | ドイツ大使館 − Young Germany Japan
    https://bit.ly/37WIvgU

    翻訳ミステリ13の扉 | 東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/13doors/

    深い疵 - ネレ・ノイハウス/酒寄進一 訳|東京創元社
    http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488276058

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「深い疵」ネレ・ノイハウス著、酒寄進一訳|文庫で読む 警察小説 | 日刊ゲンダイDIGITAL
      https://www.nikkan-ge...
      「深い疵」ネレ・ノイハウス著、酒寄進一訳|文庫で読む 警察小説 | 日刊ゲンダイDIGITAL
      https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/303929
      2022/04/15
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