- Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
- / ISBN・EAN: 9784488417024
感想・レビュー・書評
-
中編2編の連作。旅で知り合った女性が自殺未遂をし、彼女から「手記」が送られてきた。手記に沿った形で事件の真相を追う。叙述トリックがお見事。第1話の最後はあっけに取られ「そうかー」と唸り、第2話はさらにその手記を深く掘り下げながら真実に対峙する。けっこう重い内容だった。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
葉村晶シリーズと葉崎市シリーズを読み尽くし、単発物を探していたときにこの作品に行きあたった。
若竹七海の描く、コージーでありながらブラック、ユーモラスでありながら毒がある作品の虜なんだけど、この作品はなんだかよくわからなかった。
確かに毒は効いている(毒殺犯が出てくるぐらいだから)、なんだけど〜作中作のような「手記」なるものの扱いに苦労したのだ。
そして、たった1回会っただけで友達認定して、最後まで死者に翻弄された主人公も結局何だったのか。七海と友人・ラビの会話も暗示的すぎて手に負えず、敢えなく敗退。
それでも社会がバブルで浮かれまくっていた時代に胡散臭さを感じ、「暗い話でも書いてやろうじゃないか」と暗〜いクリスマスの話を書いた若竹さんの姿勢が大好きです。
-
長らく入手困難だったそうで文庫化されたのも去年の12月中旬。
すじもクリスマスイブに向かってにぎやかに、華やかに、怖くたどっていくもの。
同時進行だとよかったのだが読み終わったのが年も明けてで、
もう一度戻りかえったような気がした。
バブル崩壊前とてさぞや派手なクリスマス週間だったろうと想像できる時。
主人公「若竹七海」は恐ろしい「手記」を読むことになる。
自殺未遂で植物人間になってしまった友の「手記」。
二重にも三重にももつれもつれた人間関係。
心の闇。
その恐ろしさはしかし、現在普通のことである。
いや、あまりにも見聞きする事件である。
だから、怖ろしい!
昨日も何ものかが閑静な住宅地で母娘を包丁殺傷した事件があったばかり。
去年は東海地方で母を毒薬中毒に追い込んだ娘の事件。
「心のなかの冷たい何か」
バブル期の華やかさの中では一層悲惨だったろう。
15年前に読んだ人はさぞや暗い気持ちになっただろう。
と、思う慣れてしまった今が怖い。
玄関のドアは注意して開けよう、いや、心のドアもやすやすと開けてはいけないんだ。
なんて、嫌な世の中。 -
「わたし」こと若竹七海の毒に当てられ、暴走気味の探偵行に若干引きつつも、その辺のイタさをまたしも逆手にとっていて感心することしきりである。そうはいっても奇策を弄して読者を煙に巻くというんではなく、その根っこには直球勝負を望んでいる作家像が見え隠れする。「わたし」の友人で、ロマンス作家でもあるラビのこんな台詞に若竹七海の作家魂をみた気がする。「でも映画や小説や音楽やそんなもののなかからストーリーや状況を使いながらも、もっとなにか本当のことを下敷きにして話ってのは作られていくもんさ」。
-
第1部の終わりで混乱。
今まで誰目線で読んでいたのか。
これは続けてもう1度読むと理解できて面白いのかもしれない。
ーーー
失業中のわたしこと若竹七海が旅先で知り合った一ノ瀬妙子。強烈な印象を残した彼女は、不意に電話をよこしてクリスマス・イヴの約束を取りつけたかと思うと、間もなく自殺を図り、植物状態になっているという。悲報に接した折も折、当の妙子から鬼気迫る「手記」が届いた。これは何なのか、彼女の身に何が起こったというのだろう? 真相を求めて、体当たりの探偵行が始まる。 -
若竹七海、ノンシリーズの初期作品。
著者ならではの、探偵役のキャラクターがよい。表面はドライでクールな20代半ば以降の女探偵だが、他人とのコミュニケーションに悩み、自分の限界に苛立ち、世の中の理不尽さに憤慨する、つまりいかにも人間らしい内面を持っている。
淡白になりすぎず、かといってクドクならない絶妙な書き口とこの人物描写によって、少しだけひねってある話をとても良好なエンタメに化かしていると思う。
昔より、よさが分かるのが嬉しい。人物の造形は特に。
3+