- Amazon.co.jp ・本 (880ページ)
- / ISBN・EAN: 9784560092613
感想・レビュー・書評
-
チリ出身ロベルト・ボラーニョの遺作。850ページ上下組というかなりのボリュームで、五部からなる長編作品。
それぞれの章は別の小説ともいえるし、細い糸でつながってもいる。その”糸”は謎の作家アルチンボルディと、メキシコで起こった女性連続殺人。
★★★
第一部は「批評家たちの部」
まずは読者にドイツ作家のベンノ・フォン・アルチンボルディが紹介される。
彼は何度かノーベル賞候補にもなっているが、完全に世間から行方をくらましている。第一部の評論家たちは、フランス、イタリア、イギリス、スペインのドイツ文学研究者。3人の男と1人の女の評論家たちはアルチンボルディがメキシコのサンタテレサにいるという情報を得て探しに行く。第一部では彼らの絡み合った恋愛模様と、文学論を中心に進み、そして向かったサンタテレサでの女性連続殺人事件に触れる。
第二部は「アマルフィターノの部」。第一部の批評家たちが立ち寄ったサンタテレサの大学のチリ出身の文学教授。ヒッピーの妻は自由奔放に暮らしアマルフィターノは一人娘ロサと暮らしている。庭の物干しには一冊の本を吊るし、たまに訪れる幻聴を思考する。
第三部は「フェイトの部」。アフリカ系アメリカ人の記者フェイトは、サンタテレサで行われるボクシングの試合の取材に行き、女性連続殺人を知る。
そして一番長い第四部は「犯罪の部」
第一部から少しずつ語られてきた「女性連続殺人」の様相と、捜査に係る警察や病院関係者の状況。メキシコのサンタテレサで次々見つかる女性たちの死体。殺され方も様々、犯人が分かるものあれば、未解決事件として埋もれるものもあり。それを追う警察関係者の話。
第四部までは、抑え、控えた事実の記録的な手法。作者の文学的情熱を感じるのは(それも静かな熱狂)最後の第五部「アルチンボルディの部」。
ここで語られるのはドイツの寒村で生まれたハンス・ライターの半生。彼の家族、戦争、病気の妻との生活、彼がアルチンボルディと名乗り作家になるまで、そして隠遁。
物語の最後で隠遁のアルチンボルディのはサンタヘレナへ向かう。
時系列的にはこの後、第一部の批評家たちがサンタヘレナへ向かうわけですね。
★★★
作者は当初、この本を一つの章ごとに一冊の本にしての出版を考えていたとのこと。しかしそうすると第四章はひたすらひたすら女が犯され殺され捨てられていく羅列になるわけで、しかも一番長い章なのでこればっかりで上下巻になったりしたかもしれない、ちょっとそれはキツイので、どんなに長くでも一冊で出してもらってよかったですよ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
間違いなく面白いです。確かに長いですが、裏切られることはありません。
読みやすいので、「通話」を読み終わって「野生の探偵たち」とどちらを読もうか迷っているなら、こちらから読むことを薦めます。
あと、この小説を読んで良かったのは長編に対して自信がつくこと。500p二段組くらいならもう怖くないですから。-
「500p二段組くらいならもう怖くないですから。」
それだけ、面白いってコトなんですよね、、、(私は時間を作れず積んだままにしている情けな...「500p二段組くらいならもう怖くないですから。」
それだけ、面白いってコトなんですよね、、、(私は時間を作れず積んだままにしている情けない人です)2013/11/20
-
-
超大作!端々で重なっている五つの中・長編が織り成す、重厚な物語。「批評家の部」も良いけど何と言っても最後の「アルチンボルディの部」が良い。
-
「五つの中・長編が織り成す、重厚な物語。」
おーー早く読まなきゃ!厚さに負けて後回しにしちゃってます。東京の方では色々イベントがあったみたい...「五つの中・長編が織り成す、重厚な物語。」
おーー早く読まなきゃ!厚さに負けて後回しにしちゃってます。東京の方では色々イベントがあったみたいで、とっても羨ましい。。。2013/05/09
-
-
読んでも読んでも終わらない 855 ページ。
作者のすべてが包括されているのであろう圧倒的な作品。
遺作であると知ると、より重みが増す。
読書を続けてきてよかった。
2008 年 第 33 回全米批評家協会賞小説部門受賞作品。 -
なんとも言い難い読後感。
螺旋階段のような本です。大きなすり鉢の内側にそって作られた螺旋階段を降りてゆくイメージ。最深部で謎が解き明かされることを信じてぐるぐる回りながら降りてゆくと、いつの間にか入口に戻っている。まるでエッシャーのだまし絵のように。途中の景色は美しくもあり、忌まわしくもあり。
ボラーニョの前2作を読んでからまた再読したい。
それまでに軽量化を希望…。 -
お弁当箱を通り越して、これは重箱!
がんばるよ。§^。^§
と宣言して始まった日から何日かかったかしら・・・
今、ため息。
凄い本を読了してしまいました。
五つの構成から成り、それぞれが独立した形をとってはいましたが、
ひとつひとつのエピソードや入れ子式になっているストーリーは
まさしく、アルチンボルドの絵の中にある果実や野菜のようでした。
最後まで読み通さなければアルチンボルドも表現したように
人物の顔が見えてこない仕掛けになっていました。
飛ばし読みや斜め読みを頑として許さないその文章は
達成感の極みという快感に私を連れてきてくれて
今はもう本当にため息のみ。
腕や手のひらに残る鈍痛が本の存在感を如実に残してくれてはいますが、
それよりも胸のうちに残る様々な残像が痛いほどです。
もっと沢山の人に読んでもらいたい!
語り合いましょう。 -
【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/571559 -
かなりの文量で読み終わるのに7ヶ月もかかった。
5章からなる物語で、それぞれがかなりの文量ある。第1章は楽しく読み進めていたが第2章からは分からなくなってきて、義務的読み進めていた。正直、面白いとは思えず、睡魔とよく戦った。第3章以降も章ごとの繋がりも感じつつ、話の脱線が多すぎて、脇役というか、サブストーリーの詳細がずっと続いたり、読むのがしんどくなってきた。第4章は、兎に角、女性が性的暴行を加えられながら死んでしまうという事件が凄い文量で続く。最初はサスペンス要素もあり楽しく読めたが
段々、いつまでも増え続ける被害者女性にこれはどういう小説なんだと思いながら読んでいた。犯人・容疑者が時々捕まりながらも、新たな事件が発生する。ストーリーはあるものの、これだけの量を次から次に同じような女性暴行事件を書き綴る作者に感心してしまいながら、かつ内容が内容だけに気持ちは進まず、小説の読み方としては良くないと思いながら、義務的に毎日数ページ読み進めた。
最後の5章は他の章と繋がる話になっており、読み終えると特に第1章が気になり始めた。しかし文量が文量だけに、もうなかなか手が動かない。
謎解きや伏線回収といった気持ちよさはなく、ジワジワと繋がりが感じられる。
個人的には、このジワジワくる繋がりや、他の登場人物の細かい描写やサブストーリーの多さがこの小説の魅力なのだと思った。読んでよかったと読み終えたから思えたし、将来、歳をとって、時間がたっぷり使える時に懐かしみながら読むかもしれない。読まないか。。勇気が少しいるかも。
兎に角、友人にはお薦めしずらいが、自分の読書人生で忘れられない小説になった事は間違い無い。 -
本の規模、構成やあらすじについては他の方の感想を参照のこと。純文学や文芸というものが作者の内面の発露であり、読者はそれを読み解くものだとすれば、それは現代美術にも通じるものがあるのだろう。少なくとも、読み解く/感じ取るスキルが必要だと思う。