弱者とはだれか (PHP新書 83)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569607269

感想・レビュー・書評

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  •  この本は「社会的弱者」の正体を明らかにするのが趣旨ではない。社会的弱者が発生する社会構造に焦点を置いて考察するのが狙いであり、優先席問題、五体不満足、子供、部落差別といった個々の事例を分析していく。あまり表立たない話題を取り扱っているため現実離れしているという感想を持つ人もきっといる。しかし、小浜逸郎の「何だかおかしいと感じながら、私たちがそれを表明したり追究したりしない理由」という問題意識は現在も共有されてもいいはず。
     小浜逸郎の問題意識は内田樹『街場のメディア論』が引き継いで語っているようにも思える。内田樹は「定型」的な文章構成に頼りジャーナリスティックを失ったメディアの態度がメディアの受け手である私達の「知の不調」に繋がり、誰が言っても問題なくリスクを負ってまで自分が言う必要のない世論形成を助長する、と述べている。本書で本位的に書かれないメディアの存在については、内田樹『街場のメディア論』を読んでみるのがおすすめ。
     個々の事例は小浜逸郎の「実感から立ち上る言葉」で記され、意識の凹凸が激しくて読むのに精神的な疲労が伴う。有益な知見は先に挙げた問題意識に集約されていると言っていい。したがって星3つ。

  • タイトルに惹かれ購入
    内容は一般に考えられることに伍しており目新しいことは特になかった
    また、極論になっていることもしばしばあり、やや反骨の念を抱かざるを得なかったが、本書の性格上、そして批判している相手が極論どころか暴論である場合が多いので仕方のないことか
    (複雑というよりはむしろ)面倒くさい問題なので、内容が今ひとつなのはどうしようもないことであろう

  • たとえば、これだけたくさんいる65歳以上の「高齢者」を、みーんな”弱者”とするのは無理があるよね。

  • 平成24年8月29日読了。

  • 原発事故や生活保護不正受給等々で「弱者」が騒がれるこの世の中、弱者ってなんなのかを考えた本。

    読んで損はしないとは思う。もうちょっと踏み込んだ話を展開してほしかったが、それは新書の限界か。

  • (「BOOK」データベースより)
    「弱者に優しい政治を」「差別のない明るい社会を」といった、だれも異議を唱えることのできないスローガン。しかし、現代社会における「弱者」とは、ほんとうはどういう存在なのだろうか?本書では、障害者、部落差別、マスコミの表現規制など、日常生活で体験するマイノリティの問題について、私たちが感じる「言いにくさ」や「遠慮」の構造を率直に解きおこしていく。だれもが担う固有の弱者性を自覚し、人と人との開かれた関係を築くための考え方を「実感から立ちのぼる言葉」で問う真摯な論考。

  • 脳性まひとして生まれて61年,人間は不公平は無いとようやく実感することができた。もちろん、弱者ではない。

  • すかした感じでクールな人というのが、著作のイメージです。
    弱者問題はきれいごとばかり言ってられない。
    一筋縄に明るいイメージを持たすことできない。
    著作の主張には賛成です、冷笑家みたいで少しイラっともしましたが。

  •   読みやすくて、興味深いことが書かれていました。
    中でも興味深かったのは、マスコミの言語規制のこと。いきすぎた言語規制は、本来の意味を見失いつつあるように思います。「肉屋」では駄目で「精肉業者」にしろなんて、なんておかしな話だろう。表面だけを変えたところで意味はないし、そうすることで糾弾から逃れようとしているかのようにすら見えます。

      あとは、逆差別の問題。被差別者に対して保護を、と優遇措置が行われている。しかし、これも言語規制と同じように目的を見失っているように思いました。弱者というのは、「社会で生活する上で何かしらの不利を生じるもの」という意味では、支援が必要な場合もあるでしょう。けれど、何が必要で何が不必要かをしっかり見極めるべきではないでしょうか。弱者を聖化するのは違うと思うんです。

      「平等」が叫ばれる中、差別を許さない雰囲気が高まっています。それ自体はとても良いことだと思うけれど、差別対象を見つけ出して保護するよりも、共に歩んでいく道を探すべきではないでしょうか。異なる共同性同士であれ、長く一緒にいて "慣れる" ことがその一番の近道になるのかもしれないと思いました。

  • 著者は右翼よりなだけあっていうこともぐっときます。ぼかさずはっきり述べる点で〇 マイノリティーを受け入れる社会であること、マイノリティー自身が内部から自分で解決できないものを発していく勇気をもっていくことが 弱者をなくす近道。

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著者プロフィール

1947年、横浜市生まれ。
批評家、国士舘大学客員教授。
『日本の七大思想家』(幻冬舎)『13人の誤解された思想家』(PHP研究所)、『時の黙示』(學藝書林)、『大人への条件』(ちくま新書)、『日本語は哲学する言語である』(徳間書店)など著書多数。自身のブログ「ことばの闘い」においても、思想、哲学など幅広く批評活動を展開している。(https://blog.goo.ne.jp/kohamaitsuo)

「2019年 『倫理の起源』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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