逝きし世の面影 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 211
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  • Amazon.co.jp ・本 (604ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582765526

感想・レビュー・書評

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  • 日本の歴史について著した本は数あれど、このように江戸時代に日本を訪れた外国人の感想を通じての日本考察は面白い。

    当時の日本人の美しさと、それをもう取り戻すことが不可能であることに憧憬を抱いた。「逝きし世」はまさに秀逸なタイトル。本当に、亡くなってしまったものはもう二度と生き返ることはないのだ。それが人でも世でも。

    反面、好奇心旺盛で無邪気な日本人の変わらぬ気質も感じた。

  • 江戸時代あたりの日本は外国(西洋)から どう見えていたのか という本。
    自分達には当たり前の事でも 違う捉え方があって面白い。

    今 日本はどんな風に見られているんだろうか…

  • 日本が近代化する以前にはこれほど豊な風景や人々の生活、文化があった事に驚いた。それも知らなかった事や想像を越えた事実ばかりである。街並みの清潔感や簡素さや豊かさは人民の本当の幸福の姿だという箇所には考えさせられるものがある。その他、日本人がお喋りであった事、子供を皆が大切していた事、混浴が普通であった事など見た事はないのに懐かしさを感じる。また、家畜を家族と同じ感覚で捉えていた様々な証言は日本人として嬉しくもなる。西洋文明が入り込む前の日本や日本人に自信を持つ事が出来たし、これから先、形を変えて活かす事が出来るのではないかと思う。

  • ・幕末維新に日本に滞在した外国人の記録をテーマ毎に纏めた大作。

    ・全体的にポジティブなトーンで書かれているが、それが真実なのか、著者に意図があるのかは不明。ただ、当時の外国人が日本に来る前に抱いていた印象と比べて、ずっと文明的で知識水準が高かったことは事実なのだろう。

    ・工業化される近代社会の前の普遍的な姿としての評価と日本固有で現在も続くものの評価を峻別していく必要がある。
    例えば、東京を「田園化された都市であると同時に、都市化された田園」としてユニークな田園都市と評したが、これは明らかに過去の一側面でしかない。
    「各人がまったく幸福で満足しているように見える」、ことも近代化社会前にあった、ゆったりとした時間の中で醸成されていただけのことかもしれない。

    ・一方で、日本人として心に刻み込みたいことも多い。
    「日本の職人は本能的に美意識を強く持っているので、金銭的に儲かろうが関係なく、彼等の手から作り出せるものはみな美しいのです」
    「低廉な品物に優美で芸術的なデザインが見出される」
    「江戸の職人は真の芸術家である」
    「日本人は何と自然を熱愛しているのだろう。何と自然の美を利用することをよく知っているのだろう。」

    ・また、新たな気付きとして、封建社会にあっても庶民レベルは自由を享受し、民主的であった、ということ。
    確かに武士の比率が全体の数パーセントであったのだから、実際の行政は地域に根ざしていたのだろう。
    庶民レベルでは開明的であったことは、「攘夷」が「文明開化」に直ぐに切り替わったことでも明らか。島国が故に外からの新しいものに関心が高く、それを自らの生活に吸収する欲求が国民性として根付いていたのだろうか。(この点は、現代社会でも忘れてはいけない)

    ・その他面白かったことは、子供について。(表題は「子供の天国」)
    大人に怒られる子供を見たことがない、とか、日本の子供は泣かない、といった箇所。また、当時、公衆浴場での混浴の習慣があったことも面白い。

  • 現在では、この論が批判されてもいる

  • 和辻哲郎文化賞(1999年度)】昭和を問うなら開国を問え。そのためには開国以前の文明を問え…。幕末から明治に日本を訪れた、異邦人による訪日記を読破。日本近代が失ったものの意味を根本から問い直した超大作。

    関西外大図書館OPACのURLはこちら↓
    https://opac1.kansaigaidai.ac.jp/iwjs0015opc/BB40197225

  • 江戸から明治期に日本を訪れた外国人が日本に関して著した書物を、テーマごとに紹介する。
    もっとも、単に外国人の日本評を紹介するだけではなく、日本の知識人にありがちな文明開化以前の日本に関する否定的な評価に対する批判や、オリエンタリズム批判に対する批判を目的としている。

    知識人の文章にありがちな、冗長で過剰な表現や比喩がやや鼻につく。

  • 江戸時代の日本の文明について書かれた本。前近代が近代に移行する直前の爛熟した文明について、当時の外国人の記述など資料を紐解きつつ解説している。現代の我々とは地続きでありつつも異質であり、当時の異邦人のように江戸文化を楽しめる本である。現代人の忘れてしまった人間らしい生き方を教えてくれるところもあり、示唆に富んだ本である。

  • 日本の原風景が日本に滞在していた外国人の記録を通して明らかにしている貴重な本。
    現代日本の姿と対比すると有意義。特に仕事に誇りを持って個別に役割分担が細分化されていた個人事業の集積のような経済社会であった事が推測できるのが興味深い。

  • 読みごたえあり。
    全部で600ページ近くあるし、理解するため砕きながら読むには少し難しい。
    ただそういう吟味とは別に、江戸時代中後期から明治始めにかけて、日本人の生活や風俗,習俗はどうだったのか、またそれを当時日本に来ていた外国人にはどのように映っていたのかを知るところに焦点を当てれば、理解しやすいし、またとても面白い。
    もちろん彼らにとって、長短どちらの面もあるようだが、概して非常に賛美していると感じた。
    ただ、どちらかと言えば精神的にナイーブで、西洋人には少し劣った民族と映っていたように感じた。逆にそれが彼らにはとても新鮮で、忘れられた精神上の桃源郷のように思えたのかも知れない。

    しかし昭和時代、田舎ではまだそのような風習が残っていた気がする。
    もちろんITとテクノロジーが進歩した現在では、見る影もないが。

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著者プロフィール

1930年、京都市生まれ。
日本近代史家。2022年12月25日逝去。
主な著書『北一輝』(毎日出版文化賞、朝日新聞社)、『評伝宮崎滔天』(書肆心水)、『神風連とその時代』『なぜいま人類史か』『日本近世の起源』(以上、洋泉社)、『逝きし世の面影』(和辻哲郎文化賞、平凡社)、『新編・荒野に立つ虹』『近代をどう超えるか』『もうひとつのこの世―石牟礼道子の宇宙』『預言の哀しみ―石牟礼道子の宇宙Ⅱ』『死民と日常―私の水俣病闘争』『万象の訪れ―わが思索』『幻のえにし―渡辺京二発言集』『肩書のない人生―渡辺京二発言集2』『〈新装版〉黒船前夜―ロシア・アイヌ・日本の三国志』(大佛次郎賞) 『渡辺京二×武田修志・博幸往復書簡集1998~2022』(以上、弦書房)、『維新の夢』『民衆という幻像』(以上、ちくま学芸文庫)、『細部にやどる夢―私と西洋文学』(石風社)、『幻影の明治―名もなき人びとの肖像』(平凡社)、『バテレンの世紀』(読売文学賞、新潮社)、『原発とジャングル』(晶文社)、『夢ひらく彼方へ ファンタジーの周辺』上・下(亜紀書房)など。

「2024年 『小さきものの近代 〔第2巻〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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