ユリイカ 2016年3月臨時増刊号 総特集◎出版の未来 出版社・書店・取次のリアル
- 青土社 (2016年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784791703050
感想・レビュー・書評
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何かに魅かれる人の話は面白い。それが自分も魅かれているものについてであれば尚更だ。本好きになれば、それを扱う人、書店員や書店が気になってくるのも不思議ではない。そして次の興味は出版業になる。僕は出版業界の未来を我が事のように憂い、考えて夜も眠れないわけではない。どこかの素敵な人たちが出版と本を守ってくれればいい、とどこか無責任に思っている。でもこうやって一たびその世界、その世界にいる人たちの想いに触れてみると、もはや「どこかの人たち」とは思えない。声を持った人々が届けてくれる。この間読んで涙したあの本も、いつか手にするだろうあの本も。
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『情報ソースとして昔ほど重要ではなくなった』『多大な娯楽の選択肢のうちの1つでしかない』という文言にハッとさせられた。ジャーナリズムとしての存在意義、雑誌ビジネスの崩壊等、興味深かった。しかし読書する人としての私が感覚的に向き合うのは、『スマホゲームをしていれば本を読む時間はない。』この事実に尽きると思う。
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出版の未来であり、書籍の未来ではなかった
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この本を読み込めば、未来は「業界」以外のところからくるんだろう、そんな気がする。間に合わないかもしれないけど。登場するほとんどの著者たちの言葉はちっとも響いてこない。「業界」の内部からは変わらないのだろう。それはたぶん、出版業界の問題ではなく、この国、社会の問題が基調にあってそれが出版業界「でも」現れているに過ぎないのかもしれない。国民性の問題・・・とは言いたくないが。残念ながら、いまそういう国なんだなー。
流通の変化は結局amazonによってもたらされたし、これからもそうなんだろう。そして、amazonによってもたらされる限り、amazonの後塵を拝するしかなく、書店は必然的に衰退していくことになる。
商品の問題はもっと悲惨かもしれない。出版社と取次は、一貫して読者に向き合ってこなかった。売れないことの理由を外部に求めるばかりだった。どうしようもない本ばかりを粗製乱造して「売れなくなった」と。読者、消費者の持っている時間とお金は有限で、それらを様々なものが奪い合っている。スマホやテレビだけではない、旅行やライブや食事・・・・それらに費やすより本を読んだ方が楽しい、面白い、有意義だ・・・という価値を提供できなかったということ。極めて商品の問題なのに、ほとんどそのことに言及されることがない。この本でも、それに言及することは一切なかった。そういうことでは、未来はない、と言える。残念だなー。 -
浅田次郎の軽減税率云々の一編を読んだときは大丈夫か、どうなるかと思ったが、後半に行くにつれて面白く、示唆も多い内容になってきた。届け方、有体に言うと売り方の話がしっかり含まれてる。
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出版の未来 書店・取次・出版社のリアル
定価 本体1,300円+税
ISBN978-4-7917-0305-0
<http://www.seidosha.co.jp/index.php?9784791703050>
『ユリイカ 2016年3月臨時増刊号』の【目次】
【提言】
知の公平性のために軽減税率を / 浅田次郎
フランクフルト・ブックフェアで感じたこと / 菅直人
【言説の未来】
緊張したゆるみをもつ言説のために / 千葉雅也
薄暗い未来についてお話させていただきます / 市川真人
「表現」のゆくえ 最後に残る本とは何か / 鹿島茂
苦悶する出版界 「軽減税率」と「ネイティヴ・アド」 / 斎藤貴男
【書店の未来】
「知のテーマ・パーク」としての書店 / 高井昌史
その「一つの場所」であるために 民主主義と出版、書店 / 福島聡
某書店員の日記 / 佐藤健一
【鼎談】
「裏通り」の書店の挑戦 / 堀部篤史+内沼晋太郎+永江朗
【インタビュー】
本とわたし / 星野みなみ
【グローバリゼーションと出版】
草稿へと戻る 中国のブックデザインから学ぶこと / 鈴木一誌
TPP以後の著作権 / 福井健策
世界の出版 / 大原ケイ
【対談】
構造変動期の出版流通と営業 / 工藤秀之+小林浩
【電子出版の未来】
電子書籍が「本物」になるための三つの条件 / 林智彦
セルフパブリッシングの未来 日本独立作家同盟の挑戦 / 鷹野凌